デジタルフィルタ
- 更新日2025-12-09
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アナログフィルタの設計は、電子設計における最も重要な分野の1つであり、通常は専門家の領域となります。これは、アナログフィルタの設定には数学の専門知識、そしてフィルタに影響を与えるシステムに関するプロセスを理解する必要があるためです。NI-SCOPEのデジタルフィルタを使用するにあたっては、設計に関する高度な知識は必要ありません。NI-SCOPEでは、設計に関する問題、計算、メモリの管理、および実際のフィルタ処理など、内部ですべて処理することができます。
デジタルフィルタはアナログフィルタと比較して利点もありますが、浮動小数点における精度の制限、数値の不安定さ、量子化ノイズ、および周波数ワープなどの欠点もあります。
フィルタの種類
フィルタは、不要な周波数を除去します。指定した範囲に基づいて周波数を通過または減衰します。フィルタは、以下の種類に分類されます。
- ローパスフィルタは、低周波数を通過させ、高周波数を除去(または減衰)します。カットオフ周波数を指定するには、測定フィルタカットオフ周波数属性を使用します。
- ハイパスフィルタは、高周波数を通過させ、低周波数を減衰します。カットオフ周波数を指定するには、測定フィルタカットオフ周波数属性を使用します。
- バンドパスフィルタは、特定の帯域の周波数を通過させ、その他の周波数を減衰します。バンドパスフィルタを指定するには、カットオフ周波数が中心周波数 ± 幅の1/2の場所で、測定フィルタ中心周波数属性およびフィルタ幅属性を使用します。
- バンドストップフィルタは、特定の帯域の周波数を減衰し、その他の周波数を通過させます。バンドストップフィルタを指定するには、カットオフ周波数が中心周波数 ± 幅の1/2の場所で、測定フィルタ中心周波数属性および測定フィルタ幅属性を使用します。
- 理想的なフィルタでは、パスバンドでのゲインは1(0 dB)であり、増幅も減衰も起こりません。フィルタを通過できない周波数範囲をストップバンド(SB)と呼びます。
無限インパルス応答 (IIR) および有限インパルス応答(FIR)フィルタ
フィルタを分類するもう1つの要素は、インパルス応答です。インパルス応答は、インパルスの入力に対するフィルタの応答です (x[0] = 1、すべてのi ≠ 0においてはx[i] = 0) 。フィルタ処理されたインパルス応答のFFTは、フィルタの周波数応答となります。フィルタの周波数応答から、異なる周波数におけるフィルタ出力を判断することができます。つまり、異なる周波数におけるフィルタのゲインが判断できるようになります。最適なフィルタでは、ゲインはパスバンドで1、ストップバンドで0になります。この場合、パスバンドのすべての周波数が出力として通過され、ストップバンドの周波数では何も出力されません。
フィルタのインパルス応答が一定時間経過後ゼロになる場合はFIRフィルタです。反対に、インパルス応答が無限に存在する場合は、IIRフィルタとなります。インパルス応答が有限がどうか(フィルタがFIRかIIRどうか)は、出力が計算される方法によって異なります。FIRとIIRフィルタの基本的な違いは、FIRフィルタの出力が現在と過去の入力値のみに依存するのに対し、IIRフィルタの出力は現在と過去の入力値のみでなく、過去の出力値にも依存する点です。FIRフィルタと比較した際のデジタルIIRフィルタの利点は、少ない係数で同じようなフィルタ処理を行うことができることです。そのため、IIRフィルタはその場で実行されるため、より高速で余計なメモリを必要としません。IIRフィルタの欠点は、位相応答が非線形であることです。振幅スペクトル解析など、アプリケーションが位相情報を必要としない場合は、IIRフィルタが適しています。線形の位相応答が必要なアプリケーションでは、FIRフィルタを使用してください。