PXIプラットフォームの電力と冷却

PXI Expressの仕様では、各周辺スロットで少なくとも30 Wの電力が利用でき、各スロットで同じ量の熱を放散可能なことを要件としています。NIが設計するシャーシはこうした要件を上回っており、各スロットにそれぞれ38 Wの電力供給と冷却能力を備えています。現在、NIシャーシの中には、一部またはすべての周辺スロットで38 Wを超える消散や冷却を行い、新しいPXIモジュールをサポートできるシャーシがあります。サポートされるモジュールは、動作するために追加の冷却能力が必要となるモジュール、またはすべての機能を実現するために追加の冷却能力が推奨されるモジュールです。これらのシャーシはそれぞれ合計電力が異なっています。また、一般的なシャーシオーバーヘッドが原因で、シャーシの合計電力がシステムコントローラや周辺モジュールで使用可能な合計電力とは異なるため、システム許容電力を常に計算することが推奨されます。

表1. 38 Wを超えるスロット冷却能力を備えたNI PXI Expressシャーシ

* ホットスワップ可能な2台の電源を備えたPXIe-1095。すべてのスロットで82 Wの電力を消費する場合は、両方の電源が必要です。最大38 Wを消費するPXIモジュールのみで構成する場合、必要となる電源は1台だけです。もう1台は予備電源として使用できます。
** PXIe-1092では、スロット10に追加の周辺機器拡張スロットが装備されています。このスロットにはPXI Express接続はありませんが、マルチスロットモジュールに電力を供給することができます。詳細については、ユーザマニュアルを参照してください。

PXIモジュールへの影響

一部の新しいPXIモジュールでは、動作するために追加の冷却能力が必要となる場合や、すべての機能を実現するために追加の冷却能力が推奨される場合があります。

82 Wのスロット冷却能力が必要

一部の高性能PXIモジュールを動作させるには、82 Wのスロット冷却能力を備えたシャーシを使用する必要があります。

表2. 82 Wのスロット冷却能力を備えたシャーシを必要とするPXIモジュール―詳細については、デバイスの仕様書を参照してください

58 W以上のスロット冷却能力が必要

一部の高性能PXIモジュールを動作させるには、58 W以上のスロット冷却能力を備えたシャーシを使用する必要があります。

表3. 58 Wのスロット冷却能力を備えたシャーシを必要とするPXIモジュール―詳細については、デバイスの仕様書を参照してください

58 W以上のスロット冷却能力を推奨

一部のPXIモジュールについては、すべての機能を実現するために58 W以上のスロット冷却能力を備えたシャーシの使用を推奨しています。また、一般的に、シャーシの冷却機能を強化することでオンボードコンポーネントの温度が下がり、デバイスの寿命を延ばすことができるため、既存のすべてのPXIモジュールにとってもメリットがあります。

表4. これらのPXIモジュールですべての機能を実現するために、NIでは、58W以上のスロット冷却能力を備えたシャーシを推奨しています。詳細については、デバイス仕様書を参照してください。

PXIe-1095シャーシでは、すべてのスロットに82 Wの電力供給と冷却機能を備えており、これは従来のNI PXI Expressシャーシの2倍以上に相当します。この仕様は、シャーシに組み込まれたすべてのモジュールが82 Wの消費電力を必要とする場合に有効となります。すべてのスロットの電力容量と冷却機能を強化することで、PXIモジュールのパワーバジェットを向上させることができます。また、PXIプラットフォームで、厳しい要件を持つ高性能なアプリケーションに継続的に対応できるようになります。

PXIe-1095では、すべてのスロットに82 Wの電力供給と冷却性能を備えているだけでなく、18スロットシャーシには、静粛性が向上した第2の38 W冷却プロファイル、ホットスワップ可能で冗長性を備えた2台の独立電源、タイミング/同期のアップグレード (オプション)、理論上最大24 GB/秒のシステム帯域幅に対応するPCI Express Gen 3バスインタフェースなど、他の重要な機能も備えています。

2つの冷却プロファイル: 38 W 、および58 W/82 W

PXIe-1095には、ソフトウェアで選択可能な2種類の冷却プロファイルが用意されています。それらは、38 Wの冷却プロファイルと、58 W/82 Wの冷却プロファイルです。38 Wの冷却プロファイルでは、PXIe-1095に挿入されたどのPXIモジュールも最大38 Wしか電力を消費としない場合に必要十分な冷却性能となるよう、ファンのアルゴリズムが調整されています。一方、58 W/82 Wの冷却プロファイルでは、最大58 Wまたは82Wを消費するPXIモジュールが全スロットに挿入されている場合にも必要な冷却性能を提供できるよう、ファンが高速化されます。設定された冷却プロファイルのすべてのモードは、システムの再起動後も保持されます。なお、PXIe-1095では、特定のモジュールからの要求に応じて、ファンの設定が「Auto」から「High」に、または38 Wプロファイルから58 W/82 Wプロファイルに変更される場合があります。

図1. Measurement & Automation Explorer (NI MAX) 上で適切な冷却プロファイルを選択

ファンノイズの低減

PXIe-1095の38 W冷却プロファイルではファンノイズが大幅に低減されており、過去にリリースされたPXIe-1085シャーシと比較してノイズが13 dBも低減されています。その結果、電力容量が38 Wの場合において、PXIe-1095はNIのPXI Expressシャーシの中で最も静かなモデルの1つとなっています。PXIe-1084では、38Wの冷却モードでの静粛性がさらに向上しています。これまでにリリースされたどのPXI ExpressやPXIハイブリッドモジュールでも、38 W冷却プロファイルモードの適用により、向上した静粛性を利用できます。なお、ノイズが10 dB低減されることは、ヒトの感覚上ノイズが1/2になることを意味します。

表5. PXI Expressシャーシのファンノイズの音圧レベルの比較

* 音圧レベルはISO 7779規格で定められた計測法に従い、操作者位置で測定

** 38 W冷却プロファイルモードを適用した場合。 58 W/82 W冷却プロファイルを適用した場合の音圧レベルはこれより高い

ホットスワップ可能な2台の電源

PXIe-1095は、PXIシステムの稼働中に電源を切らずに交換できる2台の1,200 W電源を備えています。すべてのスロットで82 Wの電力を消費する場合は、両方の電源が必要です。最大38 Wを消費するPXIモジュールのみで構成する場合、必要となる電源は1台だけです。もう1台は予備電源として使用できます。

図2. ホットスワップ可能な2台の1,200 W電源を備えるPXIe-1095

タイミング/同期機能のアップグレード

PXIe-1095では、購入時にタイミング/同期機能のアップグレードを追加できるオプションを用意しています。このアップグレードには、内蔵の恒温槽付水晶発振器 (OCXO) や、外部クロックおよびトリガ経路設定機能が含まれます。これにより、システムタイミングスロットにPXIタイミング/同期モジュールを挿入することなく、システムのクロックの安定性と確度をアップグレードできるため、スロット数を節約できます。ただし、このアップグレードオプションはすべてのアプリケーションに最適なわけではありません。PXIタイミング/同期モジュールは、スタートリガや差動スタートリガ、あるいはマルチシャーシシステムのケーブル長スキュー補正などさまざまな機能を提供しますが、このアップグレードオプションではこれらの機能に対応できないためです。

図3. クロック確度を高める内蔵OCXO、外部クロックおよびトリガ経路設定機能を含むタイミング/同期のアップグレードも利用可能

PCI Express Gen 3のシステム帯域幅

PXIe-1095は、過去にリリースされたPXIe-1085と同様に、24レーンのPCI Express Gen 3テクノロジにより、理論上の最大レート24 GB/秒のシステム帯域幅を提供します。

図4: 各世代のPXIおよびPXI Expressのシステム帯域幅 (24本のデータレーンを利用)

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