品質​工学​修得​の​ため​の​バーチャル​実験​シミュレータ​の​開発

鈴木 真人 氏, アマ​ノ​株式会社 TR​製品​設計部

"本​教材​を​使​って​パラメータ​設計​の​学習​を​さ​せ​た​ところ、​実験​装置​の​構築​や​実験​条件​の​設定​に​戸惑う​こと​も​なく​実験​を​実施​でき、​ほとんど​の​者​が​パラメータ​設計​の​概要、​およびその有用性を理解するに至った。​これ​は、​LabVIEW​の​インタフェース​の​使い​やす​さ​に​負う​ところが​大きい​と​考える。" ​

- 鈴木 真人 氏, アマ​ノ​株式会社 TR​製品​設計部

課題:

パラメータ​設計​を​修得​する​方法​に​は​実際​に​その​方法​(実験​と​解析・​評価)​を​体験​する​こと​が​不可欠​で​あり、​いろいろ​な​研修・​教育​機関​など​で​各種​体験​学習​が​実施​さ​れ​て​いる。​その​中でも​手軽​さ​の​点​で​紙​製​の​有​翼​落下​体​(通称​カミコプター)​を​用​い​た​教育​が​よく​知​ら​れ​て​いる​が、​これ​に​は​かなり​の​時間​を​必要​と​する。​また、​カミコプター​自体​の​固有​技術​は、​教育​を​受ける​多く​の​研修​者​にとって​未知​な​もの​で​ある​ため、​カミコプター​の​設計・​製作​に​傾注​し、​本来​の​目的​で​ある​パラメータ​設計​の​修得​が​疎か​に​なり​がち​で​ある。 ​

ソリューション:

コンピュータ​上​で​仮想​実験​装置​の​開発​を​行い、​仮想​実験​を​実施​する。​その​実験​装置​に​与える​ノイズ​の​条件​や、​実験​諸​元​を​入力​し​て​実行​する​こと​で​実験​結果​が​瞬時​に​得​られる。 ​

課題:

品質​工学​(タグチ​メソッド)​と​は、​技術​や​製品​の​研究​開発​あるいは​設計​の​段階​において、​品質に優れ、​コスト​の​低い​成果​物​を​短期間​で​創造​する​ため​に​使​われる​優​れ​た​技術​手法​の​体系​で​ある。​その​体系​の​なか​の​一つ​に​パラメータ​設計​と​呼ばれる​技術​手法​が​ある。​パラメータ​設計​と​は、​研究​開発​者・​設計​者​が​コントロール​でき​ない​広義​の​ノイズ​(外乱​や​内乱、​製品​の​個体​差​など)​の​下​で​システム​構成​要素​を​複合​的​に​組み合わせ​て​実験・​評価​し、​その​結果​を​基​に、​第一​段階​として​ノイズ​に対して​頑健​な​システム​を​策定​し、​第二​段階​として​ノイズ​に​頑健​な​まま​目的​の​出力​値​を​出力​する​よう​に​システム​を​チューニング​する、​という​技術​手法​で​ある。​その​結果、​最適​な​コスト​で​ノイズ​の​影響​を​受け​にくい​安定​的​な​出力​を​目的​の​値​どおり​に​得る​こと​の​できる​システム​を​創造​する​こと​が​できる。



​この​パラメータ​設計​を​修得​する​ため​に​は​実際​に​その​方法​(実験​と​解析・​評価)​を​体験​する​こと​が​不可欠​で​あり、​いろいろ​な​研修・​教育​機関​など​で​各種​体験​学習​が​実施​さ​れ​て​いる。​その​中でも​手軽​さ​の​点​で​紙​製​の​有​翼​落下​体​(通称​カミコプター)​で​の​教育​が​よく​知​ら​れ​て​いる。​しかし、​手軽​で​ある​とい​って​も​パラメータ​設計​を​行う​ため​に​は、​通常​システム​構成​要素​の​組み合わせ​で​18​通り、​さらに​異なる​ノイズ​条件下​で​少なくとも​各​2​回、​計​36​回の実験を行わなければならず、​かなり​の​時間​を​必要​として​いる。​また、​カミコプター​自体​の​固有​技術​は、​教育​を​受ける​多く​の​研修​者​にとって​未知​な​もの​で​ある​ため、​カミコプター​の​設計・​製作​に​傾注​し、​本来​の​目的​で​ある​パラメータ​設計​の​修得​が​疎か​に​なり​がち​で​ある。​そこで、​誰​も​が​なるべく​短時間、​少ない​労力​で​純粋​に​パラメータ​設計​を​修得​できる​よう​な​方法​を​探​し​てい​た​ところ、​2005​年度​品質​工学​会​研究​発表​大会​における、​(有)​増田​技術​事務所 増田​雪​也​氏​の​研究​発表​を​拝聴​する​こと​が​でき​た。​その​内容​は​コンピュータ​上​に​実験​装置​を​仮想​し、​コンピュータ​シミュレーション​による​実験​を​行う​研修・​教育​方法​という​もの​で​あっ​た。​コンピュータ​上​で​実施​する​仮想​実験​は、​システム​の​構成​要素​の​組み合わせ​を​画面​上​で​選択​する​だけ​で​簡単​に​実験​装置​が​構築​でき、​その​実験​装置​に​与える​ノイズ​の​条件​や、​実験​諸​元​を​入力​し​て​実行​する​こと​で​実験​結果​が​瞬時​に​得​られる​という​ことに​大きな​メリット​が​ある。



​そこで、​筆者​も​パラメータ​設計​修得​の​ため​の​教材​として、​コンピュータ​上​で​の​仮想​実験​装置​の​開発​を​行う​ことに​した。

ソリューション:
​今回、​ただ​単に​品質​工学・​パラメータ​設計​の​修得​だけ​を​目的​と​する​の​では​なく、​過渡​現象​の​理解​および​その​解析​方法​の​修得​も​目的​の​一つ​に​加える​ため、​シミュレーション​する​実験​の​題材​を​バッチ​式​の​汚水​処理​装置​と​した​(図​1​参照)。​バッチ​式​汚水​処理​装置​の​汚水​処理​能力​を​表現​する​係数:​β​を​定め、​β​の​値​から​汚水​処理​装置​を​一定​時間​運転​した​時点​で​汚水​に​含​ま​れる​汚濁​物質​の​残留​量​を​計算​し​て​結果​として​出力​する​ことに​した。​詳細​は​省略​する​が、​運転​時間​-​汚濁​物質​の​残留​量​は​過渡​現象​と​なる。

図​1. 汚水​処理​装置​の​イメージ図 参照


​汚水​処理​装置​を​構成​する​複数​の​システム​の​構成​要素​(たとえば、​ポンプ​や​フィルタ​など)​で​各​構成​要素​の​選択肢​ごと​に​β​に対して異なる計算効果を持たせ、​各​構成​要素​同士​の​和​や​積​など​による​計算​を​行い、​β​を​出力​する。​さらに、​ノイズ​の​要素​に対する​ゆらぎ​量​や​β​へ​の​感度​の​比率​を​変える​こと​で​システム​構成​要素​の​選択肢​の​ノイズ​に対する​頑健​さ​に​差​を​つける​よう​に​考え​た。​また、​乱数​を​使う​こと​で​同じ​実験​装置​や​実験​諸​元​で​あっ​て​も、​毎回​異なる​結果​が​得​られる​よう​にし​て​バーチャル​実験​に​リアリティ​を​与​え​よう​と​考え​た​(実験​誤差、​計測​誤差​の​具現​化)。​さらに、​システム​構成​要素​の​選択肢​ごと​に​価格​を​想定​し、​実験​する​システム​の​トータル​コスト​も​表示​する​こと​で、​品質​と​コスト​の​関係​を​明確​に​意識​付け​する​よう​に​も​考え​た。

​以上​の​内容​の​バーチャル​実験​装置​を​制作​する​にあたり、​ユーザ​にわか​り​やすい​インタフェース、​開発​の​容易​さ​の​観点​から​プラットフォーム​として​LabVIEW​を​選択​した。​その​結果、​骨子​と​なる​アルゴリズム​を​簡単​に​具現​化​する​こと​が​でき​た。​図​2​が​開発​した​品質​工学・​パラメータ​設計​の​教材、​バーチャル​実験​シミュレータ​の​一つ​で​ある。

 

図​2. バーチャル​実験​シミュレータ​の​フロント​パネル 参照



​図​3. バーチャル​実験​シミュレータ​の​ブロック​ダイ​ア​グラム 参照

​前述​の​よう​に、​この​バーチャル​実験​シミュレータ​は​汚水​処理​装置​を​モデル​化​した​もの​で、​3​つ​の​システム、​凝集​部・​捕​集​部・​循環​部​で​構成​さ​れ​て​おり、​それぞれ​複数​の​構成​要素​から​な​って​いる。​各​構成​要素​は​プルダウン​で​3​つ​の​選択肢​が​選択​でき、​それぞれ​β​の​大​き​さ​に対する​効果​や​ノイズ​に対する​頑健​さ​が​異​な​って​いる。​図​3​に​当該​シミュレータ​の​ブロック​ダイ​ア​グラム​の​一部​を​掲載​する。    

​本​バーチャル​実験​シミュレータ​に​付属​する​解説​書​に​そ​って​実験​を​進​め、​その​実験​結果​を​本​シミュレータ​に​付属​する​Excel​で​作​っ​た​評価​シート​に​入力​すると、​ノイズ​に対する​頑健​性​を​現す​SN​比​の​要因​効果​図、​および​感度​の​要因​効果​図​(図​4)​など​が​得​られる。​ユーザ​は​品質​工学​の​パラメータ​設計​を​実際​に​体験​し​その​効果​を​知る​と同時に、​パラメータ​設計​の​手法​を​修得​する​こと​が​できる。

 

図​4. SN​比​と​感度​の​要因​効果​図 一例 参照

まとめ:

以上​が​LabVIEW​で​開発​した、​品質​工学・​パラメータ​設計​を​修得​する​ため​の​バーチャル​実験​シミュレータ​の​概要​で​ある。​弊社​技術​者​の​有志​何​名​か​に​本​教材​を​使​って​パラメータ​設計​の​学習​を​さ​せ​た​ところ、​実験​装置​の​構築​や​実験​条件​の​設定​に​戸惑う​こと​も​なく​実験​を​実施​でき、​ほとんど​の​者​が​パラメータ​設計​の​概要、​およびその有用性を理解するに至った。​これ​は、​LabVIEW​の​インタフェース​の​使い​やす​さ​に​負う​ところが​大きい​と​考える。

​また、​この​学習​において​品質​工学​や​過渡​現象​の​解析​に関する​理解​だけ​で​なく、​LabVIEW​に対する​興味​も​高​まっ​た​よう​で​ある。​なお、​開発​した​バーチャル​実験​装置​を​筆者​が​参加​し​て​いる​浜松​品質​工学​研究​会​において​も​発表​した​ところ、​大きな​反響​が​あり、​品質​工学​の​参考​書​として​出版​し​て​は​どうか、​と​の​意見​を​頂​き、​産業​技術​大学院​大学 越水​重臣​准​教授​と​の​共同​執筆​で​日刊​工業​新聞​社​より​2007​年​1​月​に​「バーチャル​実験​で​体得​する 実践・​品質​工学」​として​出版​さ​せ​て​いただく​こと​が​でき​た。​本​シミュレータ、​または、​品質​工学​に​ご​興味​の​ある​方​は、​ぜひ、​こちら​を​御​一読​願い​たい。

図​1. ​ 汚水​処理​装置​の​イメージ図 ​
図​2. ​ ​バーチャル​実験​シミュレータ​の​フロント​パネル ​
図​3. ​ ​バーチャル​実験​シミュレータ​の​ブロック​ダイ​ア​グラム ​
図​4. ​ ​SN​比​と​感度​の​要因​効果​図 一例 ​