基本的な抵抗測定の概念は極めて単純です。一定の電流を抵抗に流して電圧降下を測定する、または一定の電圧を抵抗にかけて電流を測定するかのどちらかです。これらの方法はオームの法則(V = I * R)に照らし合わせるとどちらも有効です。しかし、テスト対象の抵抗が別の抵抗と並列に取り付けられている場合、または自動化テストプローブがほこりや溶液によって汚れている場合(これによって抵抗が平行に並んでいるのと同じ結果になる)、テスト方法は複雑になります。どちらの場合でも、テスト対象抵抗のガード処置が必要になります。これは6線式測定として知られています。
NI デジタルマルチメータおよびスイッチについては次を参照してください。
関連するプレゼンテーション、ウェブキャスト、およびホワイトペーパーに関しては、低レベル測定リソース(英語)を参照してください。
プリント基板(PCB)上でコンポーネントをテストする場合、テストするコンポーネントに対して必ずいくらかの並列抵抗が存在します。アセンブルされたPCB上のコンポーネントを隔離して、コンポーネントが正しく配置されて機能しているか検証するインサーキットテスター(ICT)やMDA(Manufacturing Defect Analyzer)では、この問題に絶えず直面しています。またこの問題は、何百回、何千回の測定を行った後で接点間に汚染物が蓄積しやすい大量のプローブを使用したアセンブリにも存在します。このような場合、並列抵抗によってケルビンまたは4線式の抵抗測定は無効になります。隣接する抵抗からソース電流が入り込まないようにするために、ユニティゲインのオペアンプを回路に取り付けて(図1参照)テスト対象の抵抗をガードします。
図1のR1はテスト対象抵抗です。DMMのテスト電流がR1を通過する際、電流の一部がR2とR3にも流れます。図1に示す構成では、NI PXI-4022ガード/電流増幅モジュールを使用してR1にかかっている電圧と同じ量の電圧を抵抗R2とR3間に印加します。印加電圧はR2における電圧降下を0Vにするため、R2とR3にはDMMからの電流が流れなくなります。そのため測定においてこれらの抵抗による影響を抑えることができます。R3による電圧降下はR1によるものと同等になります。しかし、その電流はガード増幅器から供給されます。結果的にR1はガードされることになります。コンデンサのネットワークにおいても同じ理論が適用されます。
関連資料:
NI PXI-4022ガード/電流増幅モジュール
DMMで使用するモードとレンジは、R1の抵抗値によって決定されます。R1の予想値によってもR1における電圧降下が決定されます。ガードアンプを適切に動作させるために、この電圧を使用してR3の最小抵抗値を計算します。たとえば、R1は1 kΩで、1 kΩレンジで測定される場合、DMMが生成するテスト電流は1 mAで、R1にかかる電圧は1 Vです。ガードアンプと一緒に使用した場合にもR3には同一の電圧降下がみられます。そのため、アンプにはR3で分割される電圧に相当する電流を出力できる機能が要求されます。それより小さい値のR3をガードする場合は、DMMをより大きなレンジに設定することができます。これによって通常システムで使用するテスト電圧とR3の最小値が下がります。ただし、R2とR3の値が低下することで、R1の誤差が大きくなるというトレードオフがあります。
また、アンプが理想的なものでないため、R2の値が小さい場合それに関連するオフセット電圧誤差も追加されます。ガードアンプのオフセット電圧はR2に直接かかり、これによる電流は本来はR1に流れますが、この場合DMMの校正テスト電流から差し引かれるため誤差が発生します。たとえば、上記の例のように1 kΩの抵抗を1 kΩ範囲で測定する場合、R2が100 Ωで標準のオフセット電圧が200 μVのとき、テスト電流の誤差は200 μV/100 Ω、または0.002 mAの1 mAとなり、テスト電流から0.2%を差し引いた値となります。これによりR1において0.2%の測定誤差が発生します。この追加誤差は正しく算出し、合計システムエラーに加算する必要があります。
R1 = 1kΩ、R2 = 8.2kΩ、 R3 = 4.3kΩの場合 | 4線式測定 | 6線式測定(NI PXI-4022使用) |
テスト電流 | 1 mA | 1 mA |
ガードオフセット電圧 | なし | 200 μV |
R1を流れる電流 | 926 μA | 999.976 μA |
R2を流れる電流 | 74 μA | 0.024 μA |
R3を流れる電流 | 74 μA | 23.255 μA |
R1の測定値 | 926 Ω | 999.9 Ω |
測定誤差 | <-7.4% | -.01% |
NI-4072 FlexDMMは、キャパシタンス測定レンジが300pF~10,000uFであるLCRメータです。同じ6線式測定テクニックをキャパシタンス測定でも使用できます。コンデンサのコモン電位を再度有効にすることで、ガードカードが並列キャパシタンスの影響を効果的に相殺します。これにより、PXI-4072は内在キャパシタンスを正確に測定することができます。
NI PXI-4022の基本構造はユニティゲイン増幅器で、微小な電流を測定するプリアンプとしても使用できます。図3は、ガードモードのブロックダイアグラムで、入力および出力コネクタの回路を示しています。図4は、PXI-4022の別のモードである電流アンプモードのブロックダイアグラムを示します。
低電流プリアンプモードについての詳細は、NI PXI-4022の仕様書をご覧ください。
関連資料:
NI PXI-4022 仕様
ガードテクニックまたは6線式測定を使用することで、抵抗確度またはアセンブルされたPCB上でのキャパシタンス測定を改善することができます。ICTやMDAシステムを構築する際にこれらのテクニックは有益です。NI PXI-4022ガード/電流増幅モジュールを使用すると、既存のDMMに6線式測定機能を簡単に追加することができます。
関連リンク:
NI デジタルマルチメータ
NI スイッチ
計測の基礎シリーズ