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Andreas Abel, ITI
装甲多目的車 (AMPV) に搭載する組込システムの総合的な検証方法を設計する。
NI VeriStandとTraceTronic社の自動化テストソフトウェア (ECU-TEST) を用いて構築したリアルタイムテストツールを使用して、一連のテストを設計し、組込システムの検証を迅速かつ完全に実施可能なHIL対応のテストベンチを構築する。
Andreas Abel - ITI
René Müller - TraceTronic
ITIは、システムシミュレーション用のソフトウェアとエンジニアリングサービスの分野を牽引するエンジニアリング企業です。当社のSimulationXは、Modelica言語を完全にサポートし、システム内のあらゆるコンポーネント間で生じる相互作用の評価を可能にする標準ツールとして業界で広く使用されています。ITIは、世界各地に子会社、代理店、パートナーを擁しており、NIのアライアンスパートナーでもあります。
TraceTronicは、複雑な組込システムを開発/検証するための革新的なソリューション、サービス、ソフトウェア製品を提供しています。同社のサービスは、ECU (電子制御ユニット) の機能を実現するソフトウェアの開発/テストから、HIL (Hardware-in-the-Loop) システムの構想から実現までの開発にいたるまで多岐にわたります。
防衛部隊や治安部隊、警察が現在の任務を遂行できるようにするためには、現在よりも高いレベルで、機動性に優れたモジュール式防護技術を活用する必要があります。このような目標に向けて、KMW (Krauss-Maffei Wegmann) 社をはじめとする多くの企業が、優れた機動性と最高レベルの防護を同時に実現する新世代の多目的装甲車 (AMPV: Armored Multipurpose Vehicle) の開発に挑んでいます。また、そうした車両向けの新たなベンチマークとなる装甲鋼製/複合装甲製の自己支持形セーフティセルの開発も行われています。AMPVは、現在の防護基準を上回る性能を備え、大幅に重量を削減したものになります。最適化されたHMI (ヒューマンマシンインタフェース) を搭載しており、車両は容易に操縦できまるため、運転手や乗員は任務に関するタスクに集中することが可能になり、防護レベルが向上します。AMPVの操縦が容易であればあるほど、乗員や機器の安全性が高まります。ITIは、経験豊富なソフトウェア/ハードウェアメーカーと共同で、車載組込システム向けの総合的な検証方法を確立しました。
私たちは、HILテストベンチの実装から始めました。最初に、顧客の要求とECU (電子制御ユニット) を分析しました。その結果に基づき、技術的なコンセプトとテストベンチの仕様の基盤を確立しました。既存のHILシミュレータに関する市場調査の結果から、柔軟性や、集積度、価格の面で当社のプロジェクトの要件を満たす標準的なソリューションは存在しないということがすぐに判明しました。そこで、当社は市販のコンポーネントと専用コンポーネントの両方をベースにカスタムシステムを開発することにしました。
リアルタイムプラットフォームとしてNI VeriStandを採用しました。このNIソリューションは、業界標準のハードウェアをベースにしているため、低コストで高性能なシステムを実装することができます。また、テスト要件の変化に応じて、システムの演算能力を柔軟かつ費用対効果の高い方法で拡張することができます。
リアルタイム対応のモデルを実現するためには、演算処理を高速に行う必要があるため、クロック周波数が2.53 GHzのIntel Xeonを2個搭載した標準的なサーバ製品を選択しました。2個のプロセッサにより、計8個のコアを使用できます。現時点のリアルタイム対応のモデルによって生じる負荷は比較的小さいため、ハードウェアをアップグレードしなくても、将来的な拡張に対応できるだけの十分な能力があります。
I/O用のハードウェアは、PXIに対応する拡張シャーシを介してPCに接続します。I/O用のハードウェアが占有するPCI Expressのスロットはわずか1つで済みむため、PXIシャーシにはI/Oボードを追加するために十分な数の空きスロットが確保できます。このプロジェクトで開発したテストベンチでは、CAN (Controller Area Network) による通信だけでなく、アナログI/OやデジタルI/Oにも対応しているNIのPXI対応ボードを使用しています。速度センサをエミュレートした信号など、特定のタイムクリティカルな信号向けには、NI PXI-RシリーズのFPGAモジュールを追加しました。FPGA用のプログラム開発は、NI LabVIEW FPGAソフトウェアを使用して行いました。
また、フォルトシミュレーション機能を備えた信号調節モジュールも採用しました。これにより、信号品質を劣化させることなく、テストベンチ内の配線の複雑さを軽減することができます。オンボードで2種類の電圧レベルを使用するという車両の要件を満たすために、テストベンチには制御可能な電源を2つ統合しました。ディスプレイには、プロセッサコアの負荷の状況に加え、リアルタイム対応のシステムやモデルに関するメッセージも表示されます。
すべてのコンポーネントとHILテストベンチの配線は、19インチのラック内に完全に統合しました。ECUのソフトウェアの検証に加え、ECUキャリアのような小さいバッチのモジュールをテストするための構成も可能です。このような配置が可能な理由は、車両のワイヤーハーネスをテストベンチに直接接続できることにあります。
要件
コントローラの機能の複雑化が進むと、リアルタイム対応のプラントのモデルについても、その機能とモデル化の詳細度に関する要件が厳しくなります。特に、最新の車両に搭載されるアクチュエータは、今後は単にオン/オフするだけではなく、より細かく制御する方法が適用されるようになります。このため、ITI社のSimulationXを使用することにしました。
このプロジェクトでは、SimulationX上の車両コントローラとやり取りするすべての物理コンポーネントをモデル化しました。
リアルタイム機能に対応するために設計され、事前に構成(コンフィギュレーション)済みのソリューションは、ブラックボックスソリューションと呼ぶことができます。それとは対照的に、特定のタスク向けに調整された物理モデルや、ほかのリアルタイムモデルから派生した物理モデルは、通常はリアルタイムのタスクを実行できません。したがって、そのリアルタイム性は、モデルの開発を担当するモデラーによって保証されることになります。
モデルのリアルタイム性は、2つの主要なメカニズムに基づいて実現されます。1つのインスタンスには、一意的かつ完全でシンボリックな前処理が適用されます。SimulationXは、コードを生成する際、完成したシステムモデルの物理方程式と数学方程式による前処理を自動的に実行します。その際、SimulationXは方程式を解いたり値の代入を行ったりするとともに、複数回現れる式を1つの計算にまとめます。また、特定のインタフェース信号 (たとえば、内部の結果変数) に影響を与えない数量の計算を完全に排除することで、システムを簡素化します。これらの一連の処理は、ユーザの手を煩わせることなく実行されます。さらにコードの最適化手法を適用することで、極めて効率的なリアルタイム対応のコードが生成されます。一方、固有振動数や振動モードといった多くの解析手法だけでなく、エネルギーの分布や性能の解析を実行することにより、モデルの性能の最適化プロセスにおいてユーザを支援することが可能になります。その結果、すべての演算に要する時間の要件を満たすことが可能になります。
このプロジェクトのために開発したSimulationXのモデルは、優れた性能を発揮しました。たとえば、完成したドライブライン用のモデルは比較的高いサンプリングレートを使うように実装されているのにもかかわらず、1プロセッサコア当たりに必要となる演算能力はわずか20%で済みます。
ドライブラインのコンポーネントモデルは、異なる詳細度で実装されます。つまり、内蔵するECUのI/Oに関する要件に対応した詳細度で実装されます。エンジンの観点からエンジンの動作を記述するのであれば、マップベースのモデルを使えば十分です。しかし、噴射システムのアクチュエータの要件に基づくと、制御入力から位置センサに至るまでプラントを正確にモデル化し、パラメータ化することが必要になります。
このプロジェクトでは、現実の噴射制御システムと照らし合わせて、このモデルの部分を検証しました。ギアボックスとトルクコンバータに対しては物理モデルを開発しました。そのモデルには、摩擦の特性をベースとしてパラメータ化したブレーキとクラッチのモデルが含まれています。これにより、ギアチェンジのモデル化だけでなく、速度の勾配やギアチェンジの回数など、ギアをシフトしたときの遷移動作をモデル化することも可能になります。ギアボックスのアクチュエータはオン/オフするだけでなく、その中間の状態でも動作します。つまり、ブレーキのトルクとクラッチのトルクが変動している状態でも動作するということなので、遷移動作をモデル化するのは非常に重要なことだと言えます。ドライブラインの残りの部分については、駆動軸 (ドライブシャフト) の弾性もモデルに含めました。それにより、典型的なドライブラインのしゃくり振動を再現することができます。カーブの半径はステアリング角によって車輪ごとに変わるため、センサはコーナリングの際にそれぞれの車輪の速度変化を検出します。
ドライブラインのモデルは、コントローラの出力信号に加え、ブレーキシステムのモデルが提供するブレーキのトルクも処理します。そのうえで、処理の結果を車輪に印加します。ドライブラインに従った速度センサの出力は、複数のECUに提供する必要があります。信号の周波数が高すぎるために、それらの出力をリアルタイム対応のモデルで生成するのは不可能です。そうした理由から、これらの信号はFPGAによって生成することにしました。この部分のモデルは、センサを通過する車輪歯のパルス周波数を送信することだけに使用しました。
開発したモデルは、リアルタイムシステムの1つのプロセッサコアにより0.1 msのサイクル時間で実行されます。この処理によって使用されるコアの演算リソースは、20%未満で済みます。
HILテストベンチのメリットを最大限に生かすには、テストを自動化するための柔軟性に優れた環境が必要でした。KMW社の社内開発向けに大規模な回帰テストを実現する必要があったため、テストの自動化は品質とコストの両面からも不可欠でした。
このプロジェクトでは、TraceTronic社のテスト自動化環境であるECU-TESTを採用しました。このツールを使って、テスト仕様の策定、実装、実行、テストケースの実行結果のドキュメント化を行いました。
テストケースを再利用すれば、ユーザは貴重な時間を節約できます。テストケースの再利用は、テスト環境ごとに、開発段階に応じて信号のマッピングを変更することで実現します。各テストはグラフィカルな操作で設計でき、ソースコードを手作業で編集する必要はありません。
ECU-TESTに実装された回帰テストは、必要な検証レベルのすべてを網羅しています。ECUへの入力となる刺激や、CANにおける各応答の監視といった低レベルのテストはもちろん、障害の管理/検出といった高度かつ相互に作用する複雑な機能のテストにも対応しています。これにより、テストに関する作業量を、以前に比べてわずか15%まで削減することができました。同時に、より深いレベルでのテストを実施できるようになりました。
新型のAMPVは、高度な防護性能と多くの新機能を備えています。それに加えて大幅な軽量化も図られています。その具現化は、複雑にネットワーク化されたECUを使用しなければ不可能でした。車両メーカーは、車両自体と、自社で開発したECU、外部から入手したECUから成るシステム全体に対して責任を負います。このような責任を果たすためには、すべてのECUが最初の時点で車両に正しく配備できるようにする必要があります。それには、すべてのECUを構築したうえで、それらを組み合わせてテストを実施しなければなりません。
当社の新たなHILテストベンチでは、国際的に認められた標準的なハードウェアコンポーネントとソフトウェアコンポーネントを独自に組み合わせて開発しました。その結果、顧客は拡張性に優れた検証用フレームワークを最適な価格で入手できるようになりました。そのフレームワークは、HILテストベンチと、調整済みのリアルタイムモデル、高度に自動化されたテスト環境を組み合わせることで実現されています。このフレームワークを使用すれば、メーカーは、車両向けの各種ECUを、最適かつコスト効率に優れた方法で統合することが可能になります。言い換えれば、顧客は拡張性とI/Oの柔軟性というメリットを十分に生かすことができます。「real-time models in-the-loop」という手法を採用したことにより、システム全体の最適化に向けた統合的なアプローチを実現し、AMPVのECUネットワークを短期間で検証できるようになりました。このプロジェクトでは、HILテストを使用しない場合と比べてテストに関する作業量を85%削減することができました。同時に、より深いレベルでのテストを実施できるようになりました。
NIが提供するリアルタイム対応のハードウェアとNI VeriStandを採用したことから、モデルの開発とHILテストベンチの構築を極めて効率的に実施することが可能になりました。モデル、テストベンチのソフトウェア、ハードウェアの間のインタフェースを明確に定義することで、各領域のあらゆる作業を並行して進めることができました。NI VeriStandの使い方は短期間で習得可能です。そのため、HILテストシステムを極めて短期間で構築し、テストを実行することができました。柔軟性の高い環境を採用したことから、開発したHILテストシステムは、将来のニーズを満たすために拡張できることが保証されています。NI VeriStandは構成も容易です。そのため、例えば、信号やモデルのデバッグを行うために再ルーティングの必要がある場合でも、テストの要件の変化に応じて容易に再構成できます。NI VeriStandをリアルタイム/FPGA対応のハードウェアとネイティブに統合することで、必要なタイミング要件を満たしたテストシステムを実現しつつ、将来の拡張に備えることが可能になります。
Andreas Abel
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