LabVIEW Communicationsアプリケーションフレームワーク概要

概要

人間にとっても機械にとっても信頼性が高く、ユビキタスな低コストワイヤレスデータ通信のニーズはとどまるところを知らず、通信業界に、特にワイヤレス技術について大きな課題を突きつけています。通信業界では、コストの増加は抑えつつ、次世代のワイヤレスネットワーク (5G) が2020年までに容量を1000倍に向上させる必要があるとの一致した見方があります。そのような技術的課題に対処するため、ワイヤレス技術の研究者には既存の枠組みにとらわれない、机上のシミュレーション環境を超えた思考が必要です。求められるイノベーションを実現するには、ワイヤレスシステムの試作をリアルタイムで行うことが必要です。

ただし、リアルタイムワイヤレスプロトタイピングは高コストで時間のかかるタスクです。異なるスキルセットが求められる、あるいは共通のハードウェアプラットフォームがない、といった多くの要素を検討する必要があります。そのなかでも最も重要な課題は、LTEや802.11などの既に普及しているワイヤレスシステム規格や、Massive MIMO (Multiple Input, Multiple Output) などの新しい技術に対応する実用的なスターティングポイントがないという点です。

LTE、802.11、MIMOアプリケーションフレームワークは、簡単に修正できて即実行可能なリアルタイム物理層 (PHY) と媒体アクセス制御 (MAC) 層のリファレンス設計を提供します。これらのアプリケーションフレームワークは、LabVIEW Communications System Design Suite (LabVIEW Communications) を使って実装したモジュール式のベースバンドPHYおよびMACブロックで構成されています。これらのフレームワークはNIソフトウェア無線 (SDR) ハードウェアのRFおよびアナログフロントエンドと統合されたFPGAおよび汎用プロセッサ上で動作するよう設計されています。



LabVIEW Communicationsアプリケーションフレームワーク



内容

このようなアプリケーションフレームワークは、試作システムの改善と構築を行うための実質的なスターティングポイントとなります。 研究用のサンプルには、端末を大幅に増やすことができる新しいアルゴリズムやアーキテクチャの検証、信号の変調と復調を行う新しい波形の作成、ワイヤレスメディアにおける自由度をフルに活用した新しいマルチアンテナアーキテクチャの開発などがあります。

フレームワークは簡単に修正できるように考えられ設計されています。そのためワイヤレス研究者は、LTE/802.11規格およびMIMO技術に基づいたリアルタイムプロトタイプを短時間で立ち上げ、動作を開始することが可能です。その後改善を行いたいプロトコルの一部分のみを選んで重点的に取り組んだり、設計の修正や既存規格との比較を簡単に行ったりすることができます。

PHYブロックとMACブロックは、LabVIEW Communicationsを使用して、製品上で文書化でき、グラフィカルなブロックダイアグラム形式で表示できます。明確に定義されたインタフェース、文書化されたシステム性能のベンチマーク、および計算リソース使用量があります。 さらに、LabVIEW Communicationsには、これらの規格に準拠したワイヤレスリンクを使用してリアルタイムでデータを転送するビデオストリーミングアプリケーションが付属しています。 

ワイヤレスリンクに関係するパラメータは、LabVIEW Communicationsによって生成されるソフトウェアのフロントパネルで簡単に調整できます。 さらに、受信パワースペクトル、受信コンスタレーション、スループット、ブロックエラーレートなどの関連リンクメトリックも表示されるため、リンク品質を簡単に評価できます。様々なパラメータが通信性能にもたらす効果を理解することができます。

これらのアプリケーションフレームワークに開発の容易なLabVIEW Communicationsを加え、NI SDRハードウェア製品と緊密に統合することで、ワイヤレス技術の研究を加速し、次のイノベーションを短期間で世に送り出すことが可能となります。

LabVIEW Communications LTEアプリケーションフレームワーク

最新バージョンのLabVIEW Communications LTEアプリケーションフレームワークには以下のような特長があります。

  • 3GPP-LTE release 10準拠の物理層の一部
    • SISO構成
    • チャンネルの状態とACK/NACKフィードバックによる閉ループ無線操作
    • 20 MHz帯域幅
    • 物理ダウンリンク共有チャンネル (PDSCH) および物理ダウンリンク制御チャンネル (PDCCH)
    • 最大75 Mbpsのデータスループット
    • 通常のサイクリックプレフィックスモード
    • FDDおよびTDD構成の5フレームストラクチャ
    • QPSK、16-QAM、64-QAM変調
    • 可変物理リソースブロック (PRB) の割り当て
    • LTE準拠のデータチャンネルコーディング
    • セルおよびUEに特化した基準信号
    • プライマリ同期信号
    • サウンディング基準信号 (SRS)
  • 受信機アルゴリズム
    • 自動ゲイン制御
    • 時間/周波数トラッキングを含むPSSに基づく同期
    • チャンネル推定とゼロフォーシングチャンネルイコライゼーション
  • パケットベースのデータ送信を可能にするベーシックMACとレート適応のためのMAC適応フレームワーク
  • USRP RIO、スタンドアロンUSRP-RIO、NI Linux Real-Time、FlexRIO用PXIe-7975/7976 PXI FPGAモジュール、FlexRIO用NI-5791 RFアダプタモジュールのハードウェアサポート
  • L1/L2 APIと上位MACの連携

 

LabVIEW Communications 802.11アプリケーションフレームワーク

最新バージョンのLabVIEW Communications 802.11アプリケーションフレームワークには以下のような特長があります。

  • 802.11a/g/ac PHY層の一部
    • SISO伝送
    • 20 MHz帯域幅のレガシー (802.11a)
    • 20 MHz/40 MHzのVHTモード (最大MCS 9 (802.11ac))
    • 80 MHz VHTモード (MCS 4 (802.11ac) まで)
    • BPSK、QPSK、16-QAM、64-QAM、256-QAM変調のサポート
    • 畳み込み符号化とビタビ復号化
  • 受信機アルゴリズム
    • トレーニングフィールドに基づくパケット検出
    • 時間と周波数の同期、チャンネル推定、およびゼロフォーシングチャンネルイコライゼーション
    • 信号フィールドに基づく復調と復号化
    • 位相補正
  • 下位MAC層
    • MACおよびPHYインタフェース:802.11規格に準拠したPHY-SAP
    • MPDUの生成と認識
    • マルチノードアドレス指定、CRCとフレームタイプの確認、SIFSタイミング準拠 (16µs) ACKの生成
    • PHYからのクリアチャンネル評価 (CCA) 情報、MACによる処理
    • CSMA/CA手順
    • 再送信
    • RTS、CTS、NAVのサポート
  • L1/L2 APIと上位MACの連携
  • USRP RIO、スタンドアロンUSRP-RIO、NI Linux Real-Time、FlexRIO用PXIe-7975/7976 PXI FPGAモジュール、FlexRIO用NI-5791 RFアダプタモジュールのハードウェアサポート

 

LabVIEW Communications MIMOアプリケーションフレームワーク

最新バージョンのLabVIEW Communications MIMOアプリケーションフレームワークには以下のような特長があります。

    • SU-MIMO、MU-MIMO、Massive MIMOのサポート
    • 50 MHz~6 GHzの周波数帯
    • 20 MHzの帯域幅TDD ULおよびDL
    • 基地局のアンテナ数は2~128基に拡張可能
    • 移動局のアンテナ数は12基まで拡張可能
    • 最大12の空間ストリームをサポート
    • LTEベースの完全に再構成可能なフレーム構造
    • 128x12 MMSE、ZF、MRC MIMOプリコーダ/イコライザFPGA IP
    • 4-QAM、16-QAM、64-QAM、256-QAM変調のサポート
    • 対称性に基づくプリコーディングを可能にするチャンネル対称性の校正 
    • AGCと開ループ電力制御
    • 無線同期
    • DLとULでのパケットベースのユーザデータ伝送をサポートするベーシックMAC機能により、ビデオ伝送などのデータストリーミングアプリケーションが可能

 

関連情報

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