処理能力が向上し続け、ストレージ容量も増え続け、ソフトウェアやハードウェアのコストは低下しています。その結果、収集されるデータの量は劇的に増えています。ただし、技術の進歩によって豊富なデータをすばやく保持できるようになった一方で、それらのデータを適切に保存し、管理して、共有するという難しい課題は依然として残っています。従来型のソフトウェアパッケージは、以下のどちらかのデメリットがありました。1) 特定の形式しか使えないため、他のアプリケーションやユーザとの間でデータを交換できない。2) データの保存方法に関する制約が少なすぎるため、データを整理し、ディスクに保存して共有できるようにする最適な方法を特定するのに無駄な時間がかかる。エンジニアリングのすべての工程向けに設計されたLabVIEWなら、データを簡単にディスクに保存して高度なレポートを作成するための機能が標準装備されています。堅牢でありながら使いやすいファイルI/Oおよびレポート生成機能が搭載されているため、収集したデータを存分に活用してすばやい判断を行うことができます。
テストシステムでデータを保存する適切なファイル形式を決めるのは、簡単なことではありません。現在のシステムで要件に適合した形式を選ぶ必要がありますが、テストのニーズの変化に伴って拡張可能なものでなくてはなりません。保存形式を選ぶ際は、次のまざまな特性について考慮する必要があります。
それぞれに異なるアプリケーションに対応するため、LabVIEWでは、ASCII、バイナリ、データログ、ZIP、XMLなど、多様なファイルI/Oオプションを用意しています。

図1に示すように、LabVIEWには、ファイルを一から作成できる基本関数や、ファイルI/Oパラメータをダイアログで構成できるExpress VIが搭載されているため、ファイルリファレンスを開いたり、文字列をフォーマットしたり、エンディアンを指定したりするなどの詳細な処理は必要ありません。正しいファイルI/Oを実行するのはテスト/計測システムの作成プロセスの中でも難しい部分です。NI LabVIEWには各ファイルタイプに合わせた多くのサンプルが付属しており、これらを活用することで、その作業を円滑に進めることができます。
LabVIEWには多くのファイルI/Oオプションが用意されていますが、それらの従来型ファイルタイプのほとんどは、ファイル形式に必要なすべての基準を満たしていません。たとえば、ASCIIファイルは交換可能ですが、容量が大きく低速であるため、読み取りと書き込みに時間がかかります。一方で、バイナリファイルの読み取りと書き込みは高速ハードウェアに対応できる速度ですが、他者と共有するのは簡単ではありません。
従来型のファイルI/Oには難点があるため、NIは、エンジニアや科学者の特殊なニーズや高度な要求を満たすために、TDMS (技術データ管理ストリーミング) ファイル形式を開発しました。TDMSファイルは、TDMデータモデルに基づいており、適切に整理され文書化されたテスト/計測データを保存することができます。TDMデータモデルには、図2に示すように、ファイル、グループ、チャンネルの3つの階層があります。ファイルレベルには無制限数のグループがあり、各グループには無制限数のチャンネルを含めることができます。このようにチャンネルをグループ化することで、データを整理して扱いやすくすることができます。例えば、1つのファイル内で1つのグループを生データ用、別のグループを解析済みデータ用にしたり、センサの種類や場所によって複数のグループに分けたりすることもできます。

図2: TDMデータモデルは計測データの各種要件に対応
また、3つのレベルのそれぞれで、独自のカスタムプロパティを組み込むこともできます。各レベルでは無制限数のカスタム定義の属性を設定できるため、整理された検索しやすいデータファイルを作成できます。TDMSファイルに説明が含まれていることはこのモデルの重要な利点であり、コードのドキュメント化と同様にデータを簡単にドキュメント化することができます。ドキュメント化の要件が増えてもアプリケーションを設計し直す必要はなく、ニーズに合わせてデータモデルを拡張するだけで済みます。
TDMSは、すべてのエンジニアのニーズを満たすことを目的に開発されているため、使いやすく、高速ストリーミングが可能で、交換性に優れています。LabVIEWでの多くの操作と同様、複数のインタフェースを使ってTDMSファイルを作成することができます。TDMSファイルの読み取りと書き込みは、簡単に行うことができます。その際、「計測ファイルに書き込む」Express VIなどのVI (仮想計測器) を使用しますが、さらに高い性能とカスタマイズ性を求める場合は、ファイルI/OパレットにあるプリミティブTDMS VIを使用します。また、LabVIEWをNI-DAQmxとともに使用する場合は、DAQパレットにある「ロギングを構成」VIを使用するか、図3に示すようにNI DAQアシスタントから直接ログを記録することができます。

図3:TDMSファイルの作成には複数のインタフェースを使えるため、ニーズに最適なものを選択可能
TDMSは使いやすさを重視していますが、この数年におけるハードウェアの速度の大幅な向上に伴い、収集速度を決定する上でファイルI/Oがボトルネックとならないよう、高速ストリーミング処理を実現するための最適化も重要になっています。バッファ処理をバイパスするための内部的な最適化により、TDMSはNIプラットフォームでデータを書き込むための最速の手段を実現しています。現時点で、TDMSはベンチマークテストにより最大3.6 GB/秒のデータストリーミング速度が実証されています。
別のアプリケーションでの使用が必要となる場合があるため、TDMSは他のプログラムとの間での交換も可能です。TDMSファイルをMicrosoft Excelで開くには、TDM Excelアドインを使用します。TDM Excelアドインは、NIソフトウェアに付属しており、ni.comから無料で入手することもできます。また、C DLLを使用すると、他のプログラミング言語でTDMSファイルの読み取りと書き込みを行うことができます。NIでは、どの製品をご利用のお客様も、TDMSファイル形式を使用して、整理された扱いやすいデータを書き込むことができるよう、支援しています。
アプリケーションごとにファイル形式を選べることが理想的ですが、レガシーファイルや、カスタムファイル形式を使用するハードウェアが使われていることが原因で、カスタムファイル形式での読み取りと書き込みに限定されてしまうことがあります。多くのエンジニアがこのような課題に直面していることを認識したNIでは、それらのカスタムファイル形式をLabVIEWで使用できるようにするため、データプラグイン技術を開発しました。図4に示すように、データプラグインはファイルパーサーの役割を果たし、LabVIEWをはじめとするNIソフトウェアにカスタムファイル形式の読み取り方法を指示し、それらの形式をメモリ内でTDM階層モデルにマッピングします。

図4:データプラグインを使用し、任意のファイル形式をTDMデータモデルにマッピング可能
NIでは、無料でダウンロード可能な200種類以上のデータプラグインを提供しています。これにより、ほとんどの一般的なファイル形式がサポートされています。カスタムファイル形式の場合は、公開されているAPIを使用して、LabVIEWとNI DIAdemソフトウェアで独自のデータプラグインを作成するか、NIのエキスパートに作成を依頼することができます。データプラグインを使用すれば、カスタムファイル形式やカスタムアプリケーションの制約を受けることなく、データの利用方法に幅を持たせることができます。
多くのアプリケーションでは、集めるデータの量はあっという間に膨大になります。一般的には、検索と傾向分析をすばやく行うために、この時点でデータベースに保存することを考えるでしょう。NIが提供するLabVIEW Database Connectivity Toolkitを使用すれば、低レベルのSQL (Structured Query Language) クエリを抽象化することができ、データベースとの連携が容易になります。ただし、既存のデータをデータベースに移行し、データベースを管理して、データにアクセスするためのアプリケーションを作成することは、非常に多くのコストと時間のかかる作業となりかねません。
この課題に対処するため、NIではNI DataFinderテクノロジーを開発しました。このテクノロジーはLabVIEW DataFinder ToolkitとDIAdemに採用されており、大量のデータベースを設定して管理することに労力やコストをかけずに、テストファイルを管理することを可能にします。NI DataFinderを使用すると、フォーマットや企業イントラネット内の場所に関わらず、すべてのデータファイルをインターネット形式で検索することができます。NI DataFinderをデータファイルの場所を指定するだけで、インターネットでの情報検索と同じように、わずか数秒でファイルを検索することができます。
NI DataFinderは、NI DataFinderの構成におけるファイルタイプと場所の条件に合致するすべてのファイルのインデックスを自動で作成し、管理します。NI DataFinderのインデックスに自動保存されたプロパティをクエリ条件に使用できます。有効なデータファイルが作成されたり、削除されたり、編集されたりしたときは、NI DataFinderが直ちに認識してファイルの階層とプロパティのインデックスを変更します。NI DataFinderにないプロパティを新たに作成したファイルに保存すると、それらのプロパティは自動的にインデックスに追加されます。NI DataFinderは、データテーブルを動的に管理し、ファイルのイベントと各ファイルの内容に基づいてアップデートします。そのため、多くの高価なデータベースソリューションと異なり、ニーズが変化した場合は、データ管理ソリューションを設計し直すことなく、情報の変更や追加ができます。NI DataFinderを使用すると、テストで保存した大量のデータから傾向や相関関係をすばやく見つけることができます。
データをファイルに保存し、解析して、結果や傾向を調べた後は、それらの内容を他者にわかりやすく共有できる必要があります。レポートでは、ファイルに保存されたデータセット全体ではなく、最終結果の視覚化と交換性に重点が置かれます。VIのフロントパネルは、収集中のライブデータの視覚化や操作には非常に適していますが、最終結果のレポートには適していません。LabVIEWを使用すると、レポートを即座に作成したり、テンプレートを使用して自動生成したりできます。レポートは、HTML、PowerPoint、PDFなどの一般的なファイル形式で作成することもできます。
LabVIEWには、基本的なレポート生成用に、テキストとHTML形式のレポートを作成できるVIが組み込まれています。シンプルなVIを使用してプログラムでレポートを作成するか、「レポート」Express VIを使用してレポートパラメータを構成し、図5に示すように、そのすべてを1つのウィンドウに出力することができます。

図5:LabVIEWの「レポート」Express VIを使用してプロフェッショナルなレポートを構成可能
さらに、レポートをExcelやWordなどのMicrosoftアプリケーションに直接送信できると便利です。 これは、ActiveXまたはLabVIEWプロフェッショナル版に含まれているLabVIEW Report Generation Toolkitを使用して、プログラムで実行できます。LabVIEW Report Generation Toolkitを使用すると、ExcelとWordとの連携が抽象化され、扱いやすくなるため、実際のレポート要素の設計に専念することができます。これらのVIを使用すれば、見出しや表、グラフなどをMicrosoftドキュメントに追加するのも簡単です。また、WordとExcelで作成したテンプレートをLabVIEWから呼び出すことで、統一されたレポートを自動で生成することも可能です。
テンプレートを作成しておくと、新しいデータや結果が得られるたびに更新されるカスタムレポートを自動で生成することができます。DIAdemデータ管理ソフトウェアを使用すると、グラフ、表、グラフィックスなどを含むレポートテンプレートを対話式に作成して、そのテンプレートを「DIAdemレポート」Express VIでLabVIEWから呼び出すことができます。テンプレートを作成すれば、あとはデータソースを配線してアプリケーションを実行するだけです。アプリケーションを実行するたびにテンプレートのデータが更新され、図6に示すように、PowerPointやPDFなどの一般的なファイル形式で出力されるため、簡単に共有することができます。また、DIAdemレポートエンジンは大量のデータセットに適しているため、レポートに含めるデータの量には制限がありません。

図6:DIAdemレポートは一般的なレポート形式で出力して他者と共有することが可能
LabVIEWのレポート生成機能を使用すると、複数の方法で、視覚的に説得力のあるレポートを作成し、結果を共有することができます。また、エンドユーザを念頭に置いて、結果を簡単に共有できるように一般的な形式でレポートを印刷することができます。
LabVIEWのストレージ、管理、およびレポート生成ツールを使用すると、ファイルI/Oとレポート生成の細部や複雑な部分が抽象化され、扱いやすくなるため、データ収集に専念することができます。エンジニアリングデータ用のTDMSファイル形式、レガシーファイル用のデータプラグイン、検索用のNI DataFinder、そして強力なレポート生成ツールを利用すれば、ストレージやレポート生成などの制約によって収集が制限されることもありません。ハードウェアが高速化し、ストレージが低価格化する中、LabVIEWは、収集したすべてのデータを最大限に活用するためのさまざまなツールを提供し続けています。