統合スイッチ管理ソフトウェアテストコスト削減する

概要

NI Switch Executiveは、自動テストシステムの設計と実装における革新です。業界初のスイッチ管理ソフトウェアは、システムスループットの向上、製造、設計検証、および研究開発の各分野のユーザに対して保守の手間を削減できる開発ツールです。このツールにより、納入時間が短縮され、より多くのコードが再利用できるようになり、テストのコストを大幅に削減できます。

NI Switch Executiveの開発ツールはテストシステムの納入時間を短縮し、多くの開発環境をシームレスに統合する構成形式のシステムを提供することで、コードの再利用に大きな変化をもたらしました。そのため、開発者にとってテストアーキテクチャのスイッチ部分の開発時間は、日単位でなく時間単位になります。

次のテストでどのスイッチが正しい位置にあるかをシステムが認識しており、両テストで共通のスイッチを接続解除しないため、NI Switch Executiveにより、開発者はシステムスループットを向上できます。スイッチ操作の合計回数を削減することで、システムの整定時間を低減でき、その結果、システムのテスト時間を短縮できます。

NI Switch Executiveは使いやすく高レベルの構成ツールで、テストコードからのスイッチ構成を削除でき、システム保守の手間を削減します。さらに、テスト反復間でスイッチの位置を保持することでスイッチハードウェアの寿命を大幅に延長でき、IVI(Interchangeable Virtual Instruments)に準拠しているためスイッチハードウェアの陳腐化によるダウンタイムのリスクも削減できます。

NI Switch Executiveは現在のテスト用ソフトウェアアーキテクチャにシームレスに統合されます。IVIに準拠して構築されているため、TestStand、LabVIEW、LabWindows/CVI、Measurement Studioなどのソフトウェアとの相性がよく、テスト用の非常に強力なプラットフォームを提供します。

内容

はじめに

多くの自動化テストシステムで、スイッチ機能は重要な要素です。スイッチ機能により、多種多様な計測に対して計測器を共有して、開発者は必要な計測器の数を削減でき、テストシステムサイズを縮小できます。しかし、スイッチは完全なソリューションを構築する場合に開発者が多大な努力を費やす部分で、機器の費用でも主要な部分を占めます。実際に、スイッチサブシステムの費用は、多くの最新テストシステムの自動テスト装置(ATE)ラックの、40%を超えるものです。

単純なレベルでは、スイッチ機能はリレーを使用して入力Aと出力Bを接続します。経路数がわずかなアプリケーションでは、開発者はソリューションを容易に実装できます。残念ながら、システムでは計測器をテスト対象ユニット(UUT)のテストポイントに接続するために数百、数千もの個々の経路が必要な場合があります。ハードウェアのレベルでは、開発者が任意の入力を任意の出力に接続するように構成可能なマトリクススイッチを使用してこの問題を解決できますが、ソフトウェアのレベルでは、この問題を解決する簡単なソリューションは今までありませんでした。

可能な経路数はスイッチ機能の複雑さの1つにすぎません。スイッチシステムはまた、多くの信号タイプを扱います。たとえば、スイッチシステムはRF、高帯域幅および低帯域幅の信号、電源、および光信号までをも混合した信号を扱う場合があります。さらに、スイッチトポロジが増えるにつれて、より大規模なスイッチ配列を形成するためにマトリクススイッチを追加して併用する必要がある場合もあります。これらの結合モジュールでは配線による接続が必要です。配線による接続では、最初のモジュールのスイッチ行またはスイッチ列が物理的な配線によって接続され、その線が2番目のモジュールの行または列のそれぞれに接続されます。ここでも、ソフトウェアのレベルでは、従来、開発者は可能な物理パスのそれぞれを記憶し、開発中のテストシステムでそのパスを効率的に使用するのが困難でした。

開発者は、完成したスイッチシステムを修復またはデバッグする際にもう1つの問題に直面します。大部分のテストシステムではスイッチ制御ソフトウェアは計測テストコード内部にあるため、特定の経路を実装するための呼び出しを1つ1つ記憶したり、特定のリレーを使用するテストを1つ1つ再び呼び出すのは実際は不可能になります。このジレンマは、多くの場合、スイッチモジュールの数百あるリレーのうちのたった1つが故障しても、故障したコンポーネントを回避して信号を経路接続するようにシステムを再プログラミングするよりもモジュールを交換してしまう方が安上がりだということです。

時間も費用も極端にかかるこの問題の解決策には、テストコードからのスイッチ制御の抽出があります。今まで、この機能を提供する唯一のツールは非常にハイエンドなテストシステムをベースにしており、コストが$100,000以上でした。別の方法として、テスト開発者は構築、サポート、保守に費用がかかるソリューションを社内で開発する必要がありました。

この問題を解決するために、ナショナルインスツルメンツではNI Switch Executiveを提供しています。これは低コストで強力なツールで、開発者はスイッチ経路の作成や保守を容易に行うことができ、スイッチシステムをテストアーキテクチャに統合できます。

スイッチ管理オープンソフトウェア

NI Switch Executiveの利点には開発スピードの向上、スループットの改善、テストシステムの保守の削減があります。これらはテストシステムの構築や所有コストを大幅に削減します。NI Switch Executiveは、スイッチアプリケーションに必要な柔軟性と制御を実現した、使いやすい開発ツールです。さらに、ナショナルインスツルメンツはNI Switch ExecutiveをNIのスイッチデバイスまたはIVI準拠のスイッチデバイスで動作するように設計しました。IVIに準拠して作成されているため、NI Switch Executiveは、汎用、マルチプレクサ、マトリクスモジュールといったどのタイプのスイッチモジュールとも動作し、PXI、VXI、GPIB、SCXIなど多くの異なる構成にも対応しています。

NI Measurement & Automation ExplorerはNI Switch Executiveのホストとなり、テストシステム内のNIまたはIVI準拠ハードウェアコンポーネントの構成を簡素化します。最初に、開発者はMeasurement & Automation Explorerでスイッチハードウェアを構成します。この構成情報はNI Switch Executive内の構成ユーティリティにシームレスに送られます。

開発者がテストシステムのスイッチデバイスをNI Switch Executiveで選択すると、チャンネルや経路にわかりやすい別名を付けることができます。そのため、スイッチベンダのアーキテクチャに依存しない名前を使用できるため、混乱を避けることができます。名前が適用されると、ユーザはスイッチの属性に関する情報を表示する対話式ツールを使用して、すぐに経路や経路グループを構築できます。これらのツールはスイッチ帯域幅からインピーダンス、電力伝送能力までの信号要件をどのスイッチモジュールが処理できるかをユーザに提供します。

NI Switch Executiveツールは操作が簡素化されているため、システムのセットアップ時間が速く、システムのデバッグも容易になり、非常に複雑なシステムでも構成時間の大幅な短縮につながります。

ただし、ユーザは経路を実際のテストコードまたは計測コードに関連付ける必要があるため、システム経路の構成は作業の半分にすぎません。システム開発のこの関連付け作業をさらに簡素化するため、ナショナルインスツルメンツではNI Switch ExecutiveインタフェースをTestStand やLabVIEWなど弊社のテスト開発ツールに統合しました。

自動化テスト強化するソフトウェア

ナショナルインスツルメンツは、ユーザがアプリケーション開発を迅速に行うことができ、またテスト期間を短くできるように、緊密に統合されたソフトウェアツールのセットを構築しました。これらのツールを組み合わせて使用することで、計測デバイスからアプリケーション開発環境、システム管理ソフトウェアまで広範囲にわたる独特のプラットフォームが実現できます。


図1. ナショナルインスツルメンツの統合ソフトウェアフレームワーク

計測サービスは、GPIB、データ集録、モーション、ビジョンデバイスなどさまざまな計測ハードウェアとコンピュータを統合する低レベルソフトウェアを提供します。また、このレベルにはNI Switch Executive構成ツールのホストとなるMeasurement & Automation Explorerなどの構成ツールも含まれています。

アプリケーション開発環境にはLabVIEWLabWindows/CVIMeasurement Studioなどのソフトウェアパッケージがあります。NI Switch Executiveはこれらのツールに完全に統合され、簡素な低レベルソフトウェア制御を実現します。

システム管理ソフトウェアは、テストや大規模なデータセットの管理、整理、実行するためのツールの集合体です。このソフトウェアには、NIフレームワークで重要なコンポーネントであるNI TestStandがあります。これは、自動プロトタイプ、設計検証、製造テストシステムを整理、即実行可能なテスト管理環境です。TestStandは柔軟性が高く、開発者は自社のテストへのニーズの変化に対応するようにTestStandアプリケーションを変更し、強化できます。TestStandを使用すると、構成されたコンポーネントすべてがテストステッププロパティとして利用できるようになり、NI Switch Executiveとのスムーズな統合が可能となります。

自動化テストアーキテクチャ

自動化テスト用の最新アーキテクチャは大部分がソフトウェアのモジュール性に基づいているため、コードの再利用が推奨されています。開発者は、レポート、データベース統合、ユーザ管理など共通機能を開発する必要がなく、開発対象の製品に必要な実際のテストに集中できます。図2に示すように、通常このアーキテクチャはテストコードモジュールとして作成されるテストを含み、そのようなテストを制御するテスト管理ソフトウェアとして表現されます。これらのモジュールは機能的な計測を行うために、計測サービスを介してハードウェアレベルを呼び出します。スイッチは従来、テストコードモジュール内で限定されていました。そのため、テストコードモジュールの開発や保守は困難でした。しかし、図2に示すように、NI Switch Executiveを使用すると、スイッチ要件を抽出したり、アーキテクチャ全体を通して要件を実装できるようになり、開発者は必要なレベルでスイッチを適用できます。


図2. モジュール式テストシステムアーキテクチャ

Switch ExecutiveTestStand統合する

TestStandを使用すると、開発者はテストに必要なすべての構成および計測を単一のTestStandステップにカプセル化できます。このステップは、値を設定するだけの簡単なものから完全なシステムテストのように複雑なものまであります。ただし、TestStandステップには、通常UUTの1つの要素をテストするのに必要なすべての構成や計測が含まれます。この原則に従う限り、モジュール式で再利用可能なコードを作成でき、将来の開発オーバーヘッドが軽減されます。ステップの集合体はシーケンスとも呼ばれ、開発者は多くのシーケンスを作成して本格的なテストシステムアーキテクチャを構築することができます。

NI Switch ExecutiveはTestStandと統合し、構成をTestStandステッププロパティとして利用できるようにします。これにより、NI Switch Executiveは非常に容易にスイッチ経路またはスイッチグループをTestStandステップに関連付けることができます。したがって、完全なシステムの構築や保守が容易になります。TestStandステッププロパティのスイッチパネルを図3に示します。


図3. TestStandステッププロパティのスイッチパネル

TestStandステッププロパティにはNI Switch Executiveが自動的に組み込むリング制御器が含まれます。NI Switch Executiveの仮想デバイス制御器はどのスイッチ構成が必要かを定義する一方、Operation制御器はステップをスイッチ経路に接続するか、またはスイッチ経路から接続解除するかを尋ねます。Route-to-Connect制御器はどの経路または経路グループを変更するかを定義し、Connection Lifetime制御器は当該のスイッチ経路または経路グループが適用している時間を定義します。この時間は、ステップ実行時間、シーケンス実行時間、または他のステップで手作業で接続解除されるまでの時間のいずれかです。

大部分のテストシステムではスイッチ機能が実際のテスト計測の一部ではなく、計測を有効にするテスト構成の一部にすぎないため、TestStandはスイッチ統合プラットフォームとして理想的です。

Switch ExecutiveLabVIEW統合する

スイッチをテスト管理システムに統合する代わりに、スイッチをテストコードモジュールで保守する方法があります。このアプローチは、チャンネル数の少ないスイッチシステムの開発者にとって実行可能なオプションです。そのようなユーザに対しても、NI Switch Executiveはコードを簡素化し実際のスイッチ経路の複雑さを排除することで大幅に有利になります。図4は、開発者が単純なスイッチ経路を実装する方法を示す簡単なLabVIEWダイアグラムです。


図4. Switch ExecutiveのLabVIEWサンプル

NI Switch Executiveを介してLabVIEWでスイッチを実装すると、LabVIEWコードが経路を名前で呼び出すため、開発者はスイッチマトリクスを通過する信号の物理的経路を変更できます。したがって、低レベルのLabVIEW呼び出しに影響を与えずに、NI Switch Executive構成環境を介してスイッチパスを容易に更新できます。

多くのユーザにとって、テストコードを物理的な実装から切り離せることは長期保守やサポートのコストの大幅な節減を意味します。このようなコストは通常、開発全体のコストです。このデュアルインタフェースアプローチを実装することで、リレーまたはスイッチモジュールがたった1つ故障した時にかかってしまうデバッグの膨大な時間を削減できます。

ハードウェア統合

NI Switch ExecutiveはIVIに準拠しているため、開発者はテストシステムに多くの異なるスイッチモジュールを結合でき、開発者が使用しているモジュールが廃止になっても完全に互換性があるため、システムの開発をより簡単に素早く行えます。IVIは最新のテストアーキテクチャで非常に重要な技術であるため、スイッチの購入前にスイッチベンダに連絡して、製品にIVI準拠のドライバが付属しているかどうかを確認することが重要です。弊社を始め、Pickering、Ascor、Racal、Agilentなど多くの製造業者では、スイッチモジュールにIVIドライバを付属しています。

以下の図5に、IVIがIVIクラスドライバ層を提供している様子を示します。この状態で開発者環境は共通インタフェースを呼び出すことができ、これにより特定のハードウェアにおける正しい計測器ドライバを呼び出します。


図5. IVIの実装がスイッチの互換性を実現する

スイッチハードウェアには多くのプラットフォームがありますが、現在最も一般的なプラットフォームはPXI、GPIB、SCXI、VXIです。IVIドライバまたはNI-SWITCHドライバのいずれかが付属されていれば、NI Switch Executiveでこれらすべてのタイプのスイッチモジュールをまとめて操作できます。

VXIデバイスおよびGPIBデバイスはスイッチの中では一番サイズが大きく、スイッチ配列の数も多くなりますが、1リレーあたりのコストを比較すると通常はかなり高価です。このような大きく処理が遅いソリューションの代わりに、PXIまたはSCXIのユニットを数台つなげて単一の仮想スイッチを構築する方法があります。NI Switch Executiveにより、配線接続をシステムに記述することで、大規模なスイッチ構成の開発作業が非常に容易になります。従来は、あるモジュールから他のモジュールへ行または列を拡張しようとする場合、開発者はコードを拡張するためにプログラムする必要があり、プログラムの理解やデバッグが非常に困難でした。NI Switch Executiveを使用すると、配線接続は別に定義され、設計時に自動ルーティングが配線接続をパスに統合するため、開発からデプロイまでの時間と費用が節減できます。

SCXIプラットフォームのその他の利点としては、拡張可能なモジュール式スイッチシステムに容易に対応できるように設計されている点です。たとえば、NI SCXI-1129マトリクススイッチモジュールでは、ユーザは「マトリクス拡張プラグ」を挿入するだけで複数のモジュールを接続できます。このプラグにより、個々の配線を手作業で作成するのに数時間かかっていた接続作業がわずか数秒で完了します。また、誤配線の可能性もなくなります。図6に、8台のNI SCXI-1129をこの方法で接続する様子を示します。


図6. SCXI-1129をSCXI-1336端子台と併用するとテストシステムの配線が大幅に削減される


まとめ

NI Switch Executiveを最新のテストアーキテクチャに統合すると、スループットの向上、システムの寿命期間にわたって保守の最小化を実現しつつ、テストシステムを製造現場で使用するまでの時間が大幅に削減されます。

NI Switch Executive、TestStand、および上級の開発環境に基づいた最新のテストシステムアーキテクチャは、以前は10万ドル以上もしたベンダ定義のハイエンドシステムのみで利用可能だった技術を低コストで実現します。ナショナルインスツルメンツは、スイッチおよびテスト管理などの技術を、手頃な価格で、使いやすく、保守しやすいものとしてより広いユーザ層にお使いいただけるようにしました。この技術によりテストのコストが削減され、市場投入までの時間が短縮され、市場での競争力が高まります。