直流電流 (DC) 電圧測定

圧力センサ、ロードセル、サーミスタなどの多くの測定センサは、測定可能なDC電圧を生成します。しかし、それぞれの測定とセンサのタイプについてはさらに注意すべき事項があります。 ここでは、中間センサのセットアップを必要としない一般的なDC電圧測定について考察します。電圧測定はあらゆるアナログ測定の中でも最も簡単な測定ですが、ノイズ問題による独自の課題を抱えています。

電圧測定 

 

電圧とは、電気または電子回路の2点の間の電位差のことで、単位はボルトで表します。電圧は、導体に電流を発生させる電界のポテンシャルエネルギーを測定したものです。 

 

電圧を測定するには、測定の基準となる電圧レベルと信号ソースについて理解する必要があります。電圧の測定方法には、グランド基準差動の2種類があります。一般的な信号ソースのタイプとしては、浮動型信号ソース接地型信号ソースがあります。

 

どちらの信号ソースにも、個々の測定方法に応じた最適な接続方法があります。信号ソースのタイプによっては、ある電圧の測定方法が別の測定方法より良い結果を出す可能性もあります。  詳細については、アナログ信号の配線とノイズに関する注意事項を参照してください。

 

 

測定基準ポイント方式

 

電圧の測定方法には、グランド基準差動の2種類があります。

 

 

グランド基準による電圧測定 (RSEまたはNRSE)

 

1は、「グランド (接地)」ポイント基準にし電圧測定する方法です。多く場合、これらの「グランド」安定かつ不変で、通常0 Vです。「グランド (接地)」という言葉元々、一般事例において、信号直接大地接続すると電位0 Vなることに由来ています。特に、以下条件満たすチャンネル場合グランド基準入力接続ています。

 

  • 入力信号レベルが高い場合 (1 Vを超える場合)
  • 信号とデバイスを接続する銅線が3 m (10 ft) 未満の場合
  • 入力信号が他の信号と基準点を共有できる場合

 

グランド基準は測定装置または測定対象物によって提供されます。グランド基準が測定装置によって提供された場合、このセットアップは、基準化シングルエンド (RSE) と呼ばれ、グランド基準が測定対象物によって提供された場合、セットアップは、非基準化シングルエンド (NRSE) と呼ばれます。

 

 

差動による電圧測定 (DIFF)

 

電圧を測定するもう1つの方法は、電気回路の2つの異なる点の間の「電圧の差」を求める方法です。たとえば、1つの抵抗の電圧を測定するには、抵抗の両端の電圧を測定します。測定した2つの電圧の差がその抵抗の電圧となります。通常、差動電圧測定は、回路の個々の素子に存在する電圧を求める場合や、信号ソースにノイズが多い場合に使用できます。

 

特に、以下の条件を満たすチャンネルの場合に差動型入力接続が適しています。

 

  • 入力信号のレベルが低い場合 (1 V未満)
  • 信号とデバイスを接続する銅線が3 m (10 ft) 以上の場合
  • 入力信号が個別のグランド基準ポイントまたは帰還信号を必要とする場合
  • 信号を伝える銅線がノイズの多い環境を通る場合

 

差動モードでは、負 (-) の信号は、正 (+) の信号に接続されたアナログチャンネルに面しているアナログピンに直接接続します。そのため、差動モードのデメリットは、アナログ入力測定チャンネルの数が半分になることです。

 

 

信号ソースタイプ

 

入力チャンネルの構成と信号接続を行う前に、信号ソースを浮動型、グランド基準型のどちらかに決める必要があります。

 

 

浮動信号ソース

浮動型信号ソースは、建物のシステムグランドに接続されていませんが、絶縁グランド基準ポイントを持ちます。浮動型信号ソースの例としては、変圧器、熱電対、電池式デバイス、光アイソレータ、絶縁型アンプなどが挙げられます。絶縁出力を持つ計測器やデバイスは、浮動型信号ソースです。浮動型信号のグランド基準は、測定装置のグランドに接続することにより、信号ソースのローカル基準またはオンボード基準とする必要があります。これを行わないと、ソースがコモンモード入力レンジを超えて浮動したときに、測定された入力信号にばらつきが生じます。

 

浮動型信号の場合の入力構成には、差動 (DIFF)、グランド基準化シングルエンド (RSE)、または非基準化シングルエンド (NRSE) の選択肢があります。

 

図1. 浮動型信号ソースと推奨される入力構成

 

 

グランド基準信号ソース

グランド基準型信号ソースは、建物のシステムグランドに接続されているため、測定デバイスが同じ電源系統に接続されている場合、測定デバイスから見るとすでにコモングランドに接続されていることになります。建物の電源システムに接続されている計測器およびデバイスの非絶縁出力は、このカテゴリに含まれます。同じ建物の電源システムに接続された2つの計測器のグランド電位差は、通常は1~100 mVですが、配電回路が適切に接続されていないと差がそれ以上になる場合があります。接地型信号ソースが正確に測定されないと、この差が測定誤差として表れる可能性があります。測定する信号のグランド電位差を除去するには、接地型信号ソースの接続手順に従ってください。

 

グランド基準信号の場合の入力構成には、差動 (DIFF) または非基準化シングルエンド (NRSE) の2つの選択肢があります。グランド基準型信号ソースにグランド基準化シングルエンドの入力構成を使用することは推奨されません。

 

図2. グランド基準型信号ソースと入力構成

 

 

接地信号ソース入力構成

 

接地信号場合入力構成2選択肢あります。メモ:グランド基準信号ソースグランド基準シングルエンド入力構成使用すること推奨せん。

差動 (DIFF)グランド基準化シングルエンド (RSE)非基準化シングルエンド (NRSE)
 
差動 (DIFF)グランド基準化シングルエンド (RSE)非基準化シングルエンド (NRSE)

電圧測定に関する注意事項 

 

電圧測定では、高電圧測定、グランドループ、コモンモード電圧、絶縁トポロジなどについて考慮する必要があります。

 

電圧測定絶縁

 

高電圧の測定には、考慮すべき事項が多数あります。データ収集システムを選ぶとき、最初に考慮すべき点は、そのシステムの安全性です。高電圧測定は、装置、テスト対象ユニット、そして操作を行う人間に危険を及ぼす恐れがあります。システムの安全性を確保するには、絶縁測定デバイスを使用してユーザと危険電圧の間に絶縁バリアを設ける必要があります。

 

絶縁とは、測定デバイスの2つの部分を物理的、電気的に分離する手段であり、「電気」絶縁と「安全」絶縁に分類できます。電気絶縁では、2つの電気装置間を仕切ってグランドパスを遮断します。電気絶縁を行うことにより、グランドループを切断し、データ収集システムのコモンモード範囲を拡大し、信号のグランド基準を単一のシステムグランドにレベル変化させることができます。「安全絶縁」とは、危険な電圧との接触から人間を守るための要件を定めた基準のことです。また、高電圧と過渡電圧が境界を越えてユーザが接触する電気システムに伝達されるのを防ぐという、電気システムの機能を特徴付けています。

 

データ収集システムに組み込む絶縁機能には、グランドループの防止、コモンモード電圧の除去、安全の確保という3つの主要な役割があります。

 

詳細については、高電圧測定と絶縁を参照してください。

 

 

グランドループ

グランドループは、データ収集アプリケーションにおいて最も多く見られるノイズ原因です。グランドループの発生原因は、回路上の接続された2つの端子のグランドの電位差が異なるために、2地点間に電流が流れることです。システムのローカルグランドは最も近くにある建物と数ボルトの違いがあることがあり、近くで落雷が起こるとその差が数百あるいは数千ボルトに跳ね上がる恐れがあります。この余分な電圧自体が重大な測定誤差の原因となることがありますが、それを引き起こしている電流は近くのワイヤでも電圧を結合する可能性があります。そのような誤差は、過渡や周期信号のように見えることがあります。たとえば、グランドループが60 HzのAC電力線で形成されている場合、不要なAC信号は測定の中で周期的電圧誤差として現れます。

 

図3に示すように、グランドループが存在すると、測定した電圧ΔVmは信号電圧 (Vs) と接地電位 (ΔVg、信号ソースのグランドと測定システムのグランド間に存在) を合計した電圧となってしまいます。この電位差は、通常DCレベルではありません。ノイズの多い測定システムでは、読み取り値に電源周波数 (60 Hz) 成分が含まれる場合がよくあります。

 

 

図3. 接地型信号ソースをグランド基準システムで測定したことでグランドループが発生

 

 

 

 

グランドループを回避するには、測定システム内にグランド基準が1つしかないようにするか、絶縁された測定用ハードウェアを使用するようにしてください。絶縁されたハードウェアを使用することで、信号源のグランドと測定デバイスの間のパスが取り除かれるため、複数のグランドポイント間で電流が流れるのを防ぐことができます。

 

 

コモモード電圧

理想的な差動測定システムは、2つの端子間 (正 (+) と負 (-) の入力) の電位差のみに反応します。2つの回路の差動電圧は望ましい信号ですが、2つの差動回路の両側に共通の不要な信号が存在することもあります。この電圧は、コモンモード電圧と呼ばれます。理想的な差動測定システムでは、コモンモード電圧を測定せず、完全に除去します。ただし、実用的なデバイスにはコモンモード電圧レンジやコモンモード除去比 (CMRR) などのパラメータで示されるいくつかの制限があり、コモンモード電圧を完全には除去できないことがあります。

 

コモンモード電圧の範囲は、測定システムグランドに対する各入力の最大許容範囲として定義されます。この制限を超えた場合、測定値の誤差が生じるだけでなくデバイスのコンポーネントが損傷する原因ともなります。

 

コモンモード除去比とは、測定システムがコモンモード電圧を除去する能力を示すものです。コモンモード除去比が高いアンプは、コモンモード電圧を除去する効果が高いということになります。

 

非絶縁差動測定システムでは、入力と出力の間の回路に電気経路が存在します。そのため、アンプの電気特性により、入力に印加できるコモンモード信号レベルが制限されます。絶縁型アンプを使用することで、導電性電気経路が取り除かれ、コモンモード除去比は劇的に向上します。

 

 

絶縁トポロジ

測定システムを構成する際は、デバイスの絶縁トポロジを理解しておくことが重要です。それぞれのトポロジには、コストや速度の面で考慮すべき点がいくつかあります。一般的なトポロジとして、チャンネル間とバンクの2つがあります。

 

 

チャンネル間

最も堅牢な絶縁トポロジは、チャンネル間絶縁です。このトポロジでは、各チャンネルは互いに絶縁されているほか、非絶縁システムコンポーネントからも絶縁されています。さらに各チャンネルには、独自の絶縁された電源があります。

速度に関しては、いくつかのアーキテクチャから選ぶことができます。チャンネルごとにA/D変換器 (ADC) を持つ絶縁型アンプを使用すると、すべてのチャンネルに並列にアクセスできるため、速度は上がります。速度は落ちるものの費用対効果が高いのは、各絶縁入力チャンネルを1つのADCに多重化するアーキテクチャです。

チャンネル間絶縁のもう1つの方法として、すべてのチャンネルに共通の絶縁電源を使う方法もあります。この場合、アンプのコモンモード範囲は、フロントエンドアッテネータを使用しない限り、その電源の電源レールに限定されます。

 

バンク

バンク絶縁トポロジは、複数のチャンネルをグループ化して1つの絶縁型アンプを共有させるものです。このトポロジでは、チャンネル間のコモンモード電圧の差は少なくなりますが、チャンネルバンク間と測定システムの非絶縁部とのコモンモード電圧の差は拡大します。個々のチャンネルは絶縁されていませんが、チャンネルバンクが他のバンクおよびグランドから絶縁されています。このトポロジは、1つの絶縁型アンプと電源を複数のチャンネルで共有するため、コスト面で優れた絶縁ソリューションです。

NIハードウェアによる電圧測定

 

収集ハードウェアの品質によって、収集する電圧データの品質が決まります。NIが提供している幅広い電圧計測ハードウェアは、広範な値の電圧を正確に測定できるほか、制御/通信アプリケーション用に電圧信号を生成することもできます。NIの電圧製品では、工業用途や危険箇所での設置向けに最適化されたオプションが用意されており、高電圧アプリケーションに対応した絶縁や過電流保護を内蔵できます。

シンプルなハードウェアのセットアップ

NI定番ハードウェア電圧収集

CompactDAQ電圧計測バンドルには、一般的な電圧入力モジュールとCompactDAQシャーシがバンドルされており、電気信号と電圧出力センサのPCへの接続が簡素化されます。

その他電圧測定向け製品

 

以下の製品は電圧測定向けですが、NIではマルチファンクションI/OおよびデジタルI/O向けにさまざまなハードウェアを提供しています。また、温度歪み/圧力/力音響/振動デバイスなど、測定およびセンサ用として特別に設計され、信号調節機能を内蔵した計測専用ハードウェアも提供しています。