Kraft Foods​社​の​製造​設備​に​グラフィカル​システム​設計を​適用、​「EASY MAC」​と​コーヒー​の​パッケージ​ン​グ​ライン​に​インテリジェント​な​不具合​検出/​解析​機能​を​活用

Alok Sarwal, Handeportal Systems

グラフィカルシステム設計プラットフォームあるLabVIEWが、このアプリケーションにおいて握る要素した。 LabVIEWにより、リアルタイム対応検出/解析プラットフォーム迅速開発することできした。

- Alok Sarwal、Handeportal Systems

課題:

不具合の検出用に高度な診断/点検ツールを開発し、製造ラインのパフォーマンスを最大限に高めて装置のダウンタイムを短縮する。

ソリューション:

NIのCOTSハードウェアとLabVIEWを使用して、パッケージング用の機械に適用する診断ツールを開発する。

 

機械の誤動作や減速による処理効率の低下は、すべての製造ラインに共通する悩みです。機械が高速に動作することが、問題点の分離を困難にするケースがあります。 また、機械の故障やその他の予期せぬ障害の発生原因を製造ラインの作業員が誤って認識し、記録や問題の特定を行わないまま放置してしまうケースも少なくありません。加えて、複数の段階で構成されるシステムの場合、1つの問題や誤動作が別の問題を引き起こすというドミノ現象によって元の問題を特定しにくくなります。さらに、問題が不規則に発生したり、長い時間をかけて出現したりする場合には原因の特定がより一層難しくなります。

 

このような問題を解決するために、世界有数の食品/飲料企業であるKraft Foods社の研究者らが開発したのがROME (Remote Observer of Manufacturing Equipment) です。 ROMEは、システムの障害につながるイベントを再現するソリューションです。食品/飲料用機械を対象として設計された診断ツールであり、航空機で使われるフライトレコーダに似ています。信号のデータと複数のカメラで撮影した動画を統合し、タイムスタンプを付加したうえで一連のデータとして提供します。

 

ROMEは、当社 (Handeportal Systems社) が開発したAMS (Advanced Manufacturing System) アプローチの産物です。 AMSは、高度な診断/点検ツールを開発し、装置の処理効率の低下につながる問題に対処することにより、製造ラインのパフォーマンスを最大限に高めてダウンタイムを短縮することを目的としたものです。ROMEは、適切な動画、デジタルデータ、アナログデータを収集するために必要なすべての計測器を提供します。 加えて、それらのデータを解析し、高速に動作する装置の停止/減速、生産ラインの処理効率の低下といった深刻な問題を診断するために必要なツールを提供します。

 

ROMEは、高解像度のカラービデオカメラを少なくとも2台装備します。 シーン対応のカメラによって、30~60フレーム/秒の速度でデータを集録することが可能です。またROMEは、最大265のデジタル入力 (5~250 VDC/VACの光絶縁入力電圧) に対応します。加えて、4-20mAアナログ信号 (12ビット分解能) を16本入力可能です。さらに、リアルタイムクロックも内蔵しています。 なお、機械の制御システムの動作に影響を与えることがないよう、出力は設けられていません。

 

解析が必要なデジタルトリガ(つまりは不具合)を検出すると、高速なフレームグラバによって最大10秒間分の動画がROMEに集録されます。ROMEは、最大80件の独立した10秒間のイベントのデータを、10秒間分のバッファで連続的に集録することができます。 つまり、任意の時点に対し、その前の10秒間分のデータが保存されるということです。またROMEを使えば、任意のメーカや種類のPLC (プログラマブルロジックコントローラ) を装備する機械の監視が可能です。元のROMEシステムはROME-2にアップグレードされました。両方のアプリケーションは、Handeportal Systems社によって開発されました。

 

ROME-2のプロトタイプは、研究所における開発/試験を経て、実際の製造ラインに設置されています。このシステムは、さまざまな製造ラインにメリットをもたらしています。 現在では、装置全体の処理効率の向上につながる主要な不具合検出/診断ツールであると見なされています。

 

このシステムでは、NIの市販ハードウェアコンポーネントを選択し、約20,000ドルで試作システムを開発することができました。当初の開発は、データ収集およびビジョン搭載ロボットのリアルタイムプログラミングに特化した専門技術を持つコンサルタントによって行われました。物理インタフェースは製造ラインに混乱を招く可能性があるため、ROME-2用にカスタムインタフェースが開発されました。ROMEに非侵襲メカニズムを提供するために、データ収集信号はマルチプレクス方式で送信され、プラント制御機器の高分解能LEDから高速デジタルトリガを検出します。

 

また、FireWire®に対応するハードディスクドライブを追加することによって、ストレージリソースをホットスワップできるようにしました。 このストレージには不具合に対応するトリガのシーケンスを大量に保存することができます。 一方、プラントの作業員は、このハードディスクドライブをホットスワップして、データ解析や不具合の検出を行うことが可能です。このツールの全般的な目標は、ダウンタイムを短縮し、予知保全の概念を取り入れることによって、コストを大幅に削減することにあります。

 

グラフィカルシステム設計プラットフォームであるLabVIEWも、このアプリケーションの鍵を握る要素でした。 LabVIEWを活用することで、リアルタイムの検出/解析プラットフォームを迅速に開発することができました。LabVIEWでは、容易にさまざまなOSをターゲットにすることが可能です。 そのため、Windows環境でプロトタイプを開発し、リアルタイムOSを搭載するNI PXI組込コントローラにデプロイすることができました。NIが提供するCOTSのハードウェアは、標準規格に基づくことに加え、耐久性が求められる製造環境への配備に対応可能なものです。また、NIの営業と製品の専門家による技術的なサポートは、このアプリケーションに固有の問題を解決するうえでに非常に有益なものでした。

 

後処理

ROMEによって集録したイベントに対する詳細な処理は、x86対応のMicrosoft .NETアプリケーションをベースとするDataViewerというプログラムによって行います。DataViewerのユーザフレンドリなGUIにより、イベントに対応するバッファからの信号データとの同期をとった動画フレームを、ステップごとに解析することができます。

 

解析においては、複数の分解能を選択することが可能です。 またタイムウィンドウにどの信号を表示するかはユーザが選択することができます。このアプリケーションは、あるプラントにおいては、すべてのアナリストに配布されています。ユーザはオフライン解析により、ある条件下で機械が最大のキャパシティで動作していなかったり、時間によって動作が異なったりする原因を把握することができます。 また、最適なパフォーマンスで動作する基準となるシステムと、動作に不具合のあるシステムをオンラインで比較することも可能です。このように、基準になるものをベースとした比較 (フィンガプリント) は、それ以外の方法では特定が困難な不具合を予測するための有効な手段です。

 

FireWireは、米国およびその他の国におけるApple Computer, Inc.の登録商標です。

 

作成者​情報:

Alok Sarwal
Handeportal Systems
Tel: 303-683-2509
a_sarwal@msn.com

図1. ROMEを使えば、10秒間にわたる最大80件の独立したイベントのデータを、10秒間分のバッファで連続的に集録することができます。