このドキュメントでは、負荷/トルク計測の基本と、センサ仕様の違いによるロードセルやトルクセンサの性能への影響について解説します。
センサを選ぶ際には、センサの特性のほか、必要なハードウェアが負荷/トルク計測を正しく調節し収集できるものであることを考慮する必要があります。例えば、未調節のセンサには電圧励起が必要で、その機能は一部の計測ハードウェアにしか搭載されていません。トルク計測に必要な計測ハードウェアをよりよく理解するには、高確度のセンサ計測を実現するためのテクニカルガイドのダウンロードをお勧めします。
力とは、物体間の相互作用を測る基準です。あらゆる作用には、同等の逆反応があります。力は物体に対するプッシュまたはプルともいいます。振幅と方向の両方を表すベクトル量です。
負荷とは、構造物または物体にかかる力を表す用語としてよく使用されます。力を表すSI基本単位はニュートン(N)です。ロードセルは、力または重量を直接計測します。これらのトランスデューサは、力や重みによって生じた変形を計測することで、機械力を電気信号に変換します。このようなデバイスの一般的なアプリケーションとしては、ホッパーの乾燥物質や液状物質の計測があります。ロードセルで重量を計測する場合、ホッパー内の物質の量が計測されます。
図1. ロードセルは、力または重量の計測に使用します。
トルクとは、軸を中心に物体を回転させる力の性質をいいます。力をプッシュ/プルと表現するのと同様、トルクは物体のツイストと表現できます。トルクを表すSI認定単位はニュートンメートル(Nm)です。シンプルに定義すると、トルクは力に距離を乗算したものと同等です。ここで時計回りのトルクは通常正で、反時計回りのトルクは通常負となります。トルクセンサは、トーションバーに取り付けた歪みゲージからなります。バーが回ると、ゲージはバーのせん断応力に応答します。このせん断応力はトルクに比例します。
図2. 回転式スリップリングトルクセンサを使用して、始動トルク、回転トルク、停動トルクのレベルを計測できます。
多くの各種ロードセルが様々な方法で稼動していますが、最もよく使用されるロードセルは歪みゲージロードセルです。一般に、複数の歪みゲージがホイートストーンブリッジ構成で設置されているビーム/ヨークアセンブリを使用するため、力をかけることで歪みゲージで計測するアセンブリに歪みを生じさせます。通常そうしたデバイスは、力が抵抗の変化と直接的に関連付けられるよう、校正を行います。それより一般的ではない空気圧/油圧ロードセルは、力を圧力計測値に変換します。ピストンまたは振動板の一方に力が加えられると、その力とバランスを取るためにもう一方にかかる圧力(空気圧/油圧)の量を計測します。以降のセクションでは、歪みゲージまたはブリッジベースロードセルについて解説します。
ロードセルまたは歪みゲージトランスデューサで最も重要な機械コンポーネントは、構造体(バネ要素)です。構造体はかけられた荷重に対して反応し、その荷重を絶縁された均一の歪みフィールドに集中させます。そこに歪みゲージを配置して、荷重計測を行います。ロードセルの構造体には、複数曲げビーム、複数コラム、せん断ウェブの3つの設計があり、全てのロードセルプロファイル/構成の基本構成要素となっています。
複数曲げビーム型 |
複数コラム型 |
せん断ウェブ型 |
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図3.ロードセル構造体の設計には、様々な方法で圧縮と引張を計測する歪みゲージが取り付けられています。 [1]
複数曲げビーム型ロードセルは、低容量(20~22K N)で、低プロファイルトランスデューサに適応できるホイール型のバネ要素が特徴です。1つのブリッジアームにつき4個のアクティブゲージがあり、2個ずつが同等の歪みと反対の歪み(引張と圧縮)を受けます。
複数コラム型ロードセルは、複数のコラムによって高容量(110K~9M N)を実現します。この構成では、各ブリッジアームに4個のアクティブ歪みゲージがあり、ポアソン効果を補償するため、2個は歪みの主軸に対して平行、あとの2個は垂直方向に設置されています。
せん断ウェブ型ロードセルは、中容量(2K~1M N)で、 直接せん断される放射状のウェブの付いたホイール形状となっています。ブリッジアームにある4つのアクティブ歪みゲージは、ビームの軸に対し45度でウェブの側面に接着されています。
ロードセルは、2つの基本モードで動作します。1つは荷重を1つまたは複数のロードセルの上に乗せる圧縮モード、もう1つは荷重をロードセルから吊るす引張モードです。これらの構成を使用して、圧縮力のみを計測する上述のような様々な構成のロードセル構造を設計することも、引張力と圧縮力の両方を計測するものを設計することもできます。
ロードセルは、主計測のほかに、容量、確度、物理的な設置条件、環境保護などに基づいて選定します。いずれの要件もそれ1つでは予測される性能を特定することはできません。様々なセンサパラメータを組み合わせたり、ロードセルをシステムにどのように組み込むか等を考慮して、選定する必要があります。各種ロードセルの範囲、確度、感度、価格については下表を参照してください。
ロードセルセンサ | 価格 | 重量範囲 | 確度 | 感度 | 比較 |
ビーム型 | 低 | 10 – 5k lb | 高 | 中 |
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Sビーム | 低 | 10 – 5k lb | 高 | 中 |
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キャニスター | 中 | 最大500k lb | 中 | 高 |
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パンケーキ/小型 | 低 | 5 – 500k lb | 中 | 中 |
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ボタンとワッシャ | 低 |
0 – 50k lbまたは 0 – 200k lb |
低 | 中 |
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容量―最大と最小の容量要件を定義します。ロードセルを選択する前に、最大動作荷重の容量を選択し、全ての外部荷重とモーメントを特定する必要があります。 荷重容量は、以下の重要を支える能力が必要です。
計測頻度―ロードセルは、多目的利用向けの設計となっており、性能を落とすことなく数百万回の荷重サイクルにも耐えられる耐久性を備えています。汎用ロードセルは、静的または低サイクル周波数負荷のアプリケーション向けに設計されています。荷重レベルとトランスデューサの材質によっては、百万サイクルに耐えることができます。高耐久性ロードセルは、荷重レベルと振幅により、一般に5千万~1億回の両振り荷重サイクルに耐えられる設計となっています。
物理的/環境的制約―考慮すべき要件の1つとして、ロードセルをシステムにどのように組み込むかというのがあります。サイズ(幅、高さ、長さなど)を限定する物理的制約や、ロードセルの設置方法を特定します。ほとんどの引張/圧縮ロードセルは、上と下に設置用の雌ねじがありますが、雄ねじのものや、両方が混ざっているものもあります。最大温度範囲、計測に必要な最小重量変更、最悪の環境条件(洪水、暴風雨、地震など)、最大の荷重条件など、システムの動作や最悪の動作状況についても考慮する必要があります。
反作用トルクとは、力がかけられたり吸収されたときに、装置の回転部分によって固定部分に課される回転力(モーメント)のことです。負荷源が固定されているときに駆動源が回転しようとすると、トルクが検知されます。反作用トルクセンサは動きが制限されており、ハウジングやカバーがセンサ要素に固定されているため、360度回転することはできません。そうしたセンサは、一般に反復的にかくはんするような動きのトルク計測に使用されます。それらのセンサはベアリングやスリップリングといった回転要素を一切使用しないため、設置や使用のコスト効果が優れています。
回転トルクセンサは、設計と用途が反作用トルクセンサに似ていますが、トルクセンサが被検体と直列に設置される点が異なります。トルクセンサの軸は360度回転するため、回転要素からの信号を固定面に伝達する手段が必要です。それにはスリップリング、回転トランス、テレメトリが使用できます。
スリップリング方式では、歪みゲージブリッジが回転軸に設置された4個のスリップリングに接続されています。シルバーグラファイトのブラシでスリップリングをこすることで、入ってくるブリッジ励起と送り出される信号の電気経路が作られます。ACとDCのいずれかを使用して、歪みゲージブリッジを励起します。
図4.スリップリングによって励起とブリッジ計測信号の電気経路が生成 [1]
トランス方式において、回転トランスが従来のトランスと異なるのは、1次巻線と2次巻線のどちらが回転しているかという点のみです。1つのトランスを使用してAC励起電圧を歪みゲージブリッジに伝送し、2つ目のトランスを使用して信号出力をトランスデューサの回転していない部分に送信します。そのため、2個のトランスが4個のスリップリングの代わりとなり、トランスデューサの回転要素と固定要素の間での直接的な接触は必要なくなります。
図4.2個のトランスを使用―励起信号の送信用とブリッジ出力信号の送信用 [1]
デジタルテレメトリ方式では、接触点が一切ありません。システムは、レシーバ/トランスミッタモジュール、結合モジュール、信号処理モジュールから成り立っています。トランスミッタモジュールは、トルクセンサに統合されています。これはセンサ信号をラジオ周波数搬送波に増幅、デジタル化、変調するもので、その信号はキャリパ結合モジュール(レシーバ)によって受信されます。するとデジタル計測データが信号処理モジュールによって復元されます。
ロードセルの選び方と同様、トルクセンサを選ぶ際も、原則として容量のニーズと物理的/環境的要件が基準となります。
容量―適切な容量を選ぶには、予測される最大/最小トルクを特定する必要があります。外力トルクとモーメントによってさらに圧力が加わり、疲労が加速するため、センサの確度と性能に影響が出ます。軸、半径、曲げ以外のあらゆるトルクは外力とされ、事前に特定する必要があります。設置方法によってそのような負荷の影響を最小限にすることができない場合は、センサのマニュアルを参照して、外力負荷がセンサの定格内であるかどうかを確認します。
物理的/環境的要件―あらゆる物理的制約(長さや直径など)や、トルクセンサのシステムへの設置方法などについて検討します。どのような環境でセンサを稼動させるについて考えておくことで、様々な温度範囲や湿度、汚染物質(油、泥、埃など)の影響を受ける環境でも適正な性能が保証できます。
1分間あたりの回転数―回転トルクセンサでは、トルクセンサが回転する時間長と速度を理解して、RPMを特定する必要があります。
負荷/トルクセンサには、調節済みと未調節があります。調節済みセンサは、計測用の通常回路のほかにフィルタ、信号アンプ、励起リード線に必要なコンポーネントを搭載しているため、DAQデバイスに直接接続することができます。未調節センサを使用している場合は、優れたブリッジベースの負荷/トルク計測システムを構築するためには、いくつかの信号調節要素について検討する必要があります。以下のいずれかに当てはまる必要があります。
そうした誤差の補正方法や、ブリッジベースの負荷/トルク計測におけるその他のハードウェア面での注意事項につきましては、高確度のセンサ計測を実現するためのテクニカルガイドを参照してください。