視覚​認知​の​研究​利用​を​目的​と​した​視線​測定​システム​の​開発

山口 智嗣​氏, 鹿児島​大学​大学院 理​工学​研究​科 情報​生体​システム​工学​専攻

"LabVIEW 2012 と NI Vision 開発​モジュール​を​使用​する​こと​で、​低​価格・​高​精度・​簡易​的​な​視線​測定​システム​を​開発​する​こと​が​でき​た。​本​システム​の​画像​処理​は​NI Vision 開発​モジュール​を​使用​し​て​おり、​OpenCV 等​の​よう​に​画像​処理​の​プログラミング​の​勉強​に​多く​の​時間​を​かける​こと​が​なか​っ​た​ため、​学生​1 人​で​約​1 年​半​という​短い​期間​で​システム​を​開発​する​こと​が​でき​た。"

- 山口 智嗣​氏, 鹿児島​大学​大学院 理​工学​研究​科 情報​生体​システム​工学​専攻

課題:

視覚​認知​の​研究​において、​視線​(眼球​運動)​と​視覚​認知​と​の​関連​性​について​調査​する​ため​に​視線​測 定​システム​を​開発​する。​眼球​運動​に​は​様々​な​種類​が​あり、​サッカー​ド​と​呼ばれる​急速​な​眼球​運動​は 注意​と​深​く​関​わ​って​いる​と​さ​れ​て​いる。​サッカー​ド​を​捉える​ため​に​は​高い​時間​分解能​で​眼球​運動​を 計測​する​必要​が​あり、​サッカー​ド​を​測定​可能​な​多く​の​市販​の​視線​測定​装置​が​存在​する​が​どれ​も​高価 で​ある。​また、​視線​測定​装置​は​海外​の​製品​が​多く、​問題​が​生​じ​た​際​に​サポート​が​難しい​点​や、​製品 の​仕様​に​縛​られる​ため​簡易​的​に​視線​測定​を​行​え​ない​という​問題​が​ある。

ソリューション:

NI LabVIEW、​NI Vision 開発​モジュール​を​使用​し​て​視線​測定​プログラム​の​作成​や​高速​カメラ​を​制御​する​こと​によって、​安価・​高​精度・​簡易​的​な​視線​測定​システム​を​開発​する。

1. 概要

本​研究室​では​視覚​認知​に関する​様々​な​研究​が​行​われ​て​いる。​私​の​研究​テーマ​では、​眼球​運動​を​測定​する​こと​で​人​の​視覚​的​な​情報処理​過程​を​解明​する​こと​を​目的​として​いる。​上記​で​挙​げ​ら​れ​た​課題​や​装置​を​使いこなす​よう​に​なる​まで​の​労力​を​考慮​した​結果、​安価・​高​精度・​簡易​的​な​システム​を​自作​しよう​と​考え​た。



​本​システム​では、​モニタ​を​見​て​いる​際​の​瞳孔​の​動き​を​高速​カメラ​で​撮影​し、​独自​の​アルゴリズム​を​使用​し​て​瞳孔​の​動き​から​モニタ​上の​見​て​いる​位置​(視線)​を​算出​する。​撮影​画像​に​画像​処理​を​施​し、​図​1 に​示す​よう​に​カメラ​座標​系​における​瞳孔​中心​座標​及び​角膜​反射​点​座標​を​算出​する。​独自​で​考案​した​アルゴリズム​を​使用​し、​瞳孔​中心​座標・​角膜​反射​点​座標​より、​モニタ​上の​視線​座標​へ​と​変換​する。

 

図​1. 瞳孔​中心・​角膜​反射​点​算出​まで​の​様子

​モニタ​上の​視線​座標​を​算出​する​ため​に​操作​する​フロント​パネル​画面​を​図​2 に​示す。​この​フロント​パネル​により、​各種​設定​ボタン​及び​バー​を​操作​する​こと​で、​カメラ​から​取り​込​ん​だ​画像​から​瞳孔​中心・​角膜​反射​点​を​算出​し、​モニタ​上の​視線​を​測定​する​こと​が​できる。

 

2. システム​構成

【ソフトウェア】
​• LabVIEW 2012
​• NI Vision 開発​モジュール
​• 視覚​刺激​呈示​ソフトウェア​「Presentation」

 

【ハードウェア】
​• 高速​カメラ​(IDS 社​製)
​• 赤外線​投光器​(自作)
​• 頭部​固定​用​チン​レ​スト​(自作)
​• NI USB-6009 × 2 台

 

LabVIEW 2012、​NI Vision 開発​モジュール​を​使用​し、​高速​カメラ​の​制御・​視線​測定・​視線​解析​プログラム​を​作成​した。​また、​視覚​刺激​呈示​ソフトウェア​「Presentation」​を​使用​し、​被​検​者​に​呈示​する​画像​及び​動画​を​制御​した。​LabVIEW​側​と​の​同期​方法​は、​NI USB-6009 を​使用​し​て​同期​パルス​を​LabVIEW 側​へ​送り、​画像​呈示​と​高速​カメラ​と​の​同期​を​行​って​いる。​本​システム​の​構成​を​図​3 に​示す。

 

また、​視線​測定​システム​として​の​有用​性​を​評価​する​ため​に、​視線​測定​精度​評価​実験​を​行​っ​た​結果、​本​システム​の​平均​注​視点​誤差​は​0.59°​で​あっ​た。​視覚​認知​の​研究​に​使用​さ​れ​て​いる​市販​の​視線​測定​装置​(Arrington Research 社​製)​の​測定​精度​は​0.25°​~ 1°​で​あり、​本​システム​の​測定​精度​は​視覚​認知​の​研究​に​使用​する​システム​として​十分​で​ある​こと​が​示唆​さ​れる。

 

3. まとめ

LabVIEW 2012 と NI Vision 開発​モジュール​を​使用​する​こと​で、​低​価格・​高​精度・​簡易​的​な​視線​測定​システム​を​開発​する​こと​が​でき​た。​本​システム​の​画像​処理​は​NI Vision 開発​モジュール​を​使用​し​て​おり、​OpenCV 等​の​よう​に​画像​処理​の​プログラミング​の​勉強​に​多く​の​時間​を​かける​こと​が​なか​っ​た​ため、​学生​1 人​で​約​1 年​半​という​短い​期間​で​システム​を​開発​する​こと​が​でき​た。

 

本​システム​は​最高​200 fps で​視線​測定​を​行う​こと​が​でき、​市販​の​視線​測定​システム​と​変​わら​ない​時間​分解能​で​測定​が​可能​で​ある。​市販​の​システム​は​数​百万​円​と​高価​で​ある​が、​本​システム​は​ソフトウェア​代​(LabVIEW 2012, NI Vision 開発​モジュール)​を​差し引く​と​約​10 万​円​の​コスト​で​構築​する​こと​が​でき​た。​尚、​画像​呈示​に​時間​的​な​精密​さ​を​必要​と​しない​場合、​Presentation​を使用せずに​LabVIEW を​使用​し​て​画像​呈示​を​行える​ので、​Presentation と​の​同期​に​必要​な​費用​を​差し引く​と、​約​5 万​円​という​費用​で​視線測
​定​が​可能​で​ある。

 

また、​本​システム​は​LabVIEW と NI Vision 開発​モジュール​が​導入​さ​れ​て​いる​PC で​あれ​ば、​カメラ・​赤外線​投光器・​チン​レ​スト​を​用意​する​だけ​で​視線​測定​が​可能​という、​簡易​性​に​優​れ​た​システム​を​実現​でき​た。​実際​に、​本​研究室​では​LabVIEW と NI Vision 開発​モジュール​を​ノート​PC に​導入​し、​ノート​PC・​カメラ・​赤外線​投光器・​チン​レ​スト​を​持ち運ぶ​こと​で​研究室​外​で​の​計測​も​行​って​いる。

 

著者​情報:

山口 智嗣氏
​鹿児島​大学​大学院 理​工学​研究​科 情報​生体​システム​工学​専攻

図​1. ​ ​瞳孔​中心・​角膜​反射​点​算出​まで​の​様子 ​
図​2. ​ ​瞳孔​中心・​角膜​反射​点・​モニタ​上の​視線​座標​を​算出​する​ため​の​操作​画面 ​
図​3. ​ ​視線​測定​システム​の​構成​図 ​