LabVIEW/​CompactRIO​により、​バイラテラル​制御​の​マスタスレーブ​式​ロボット​を​超​短期間​で​開発

- Katsuya KANAOKA, 立命​館​大学 総合​科学​技術​研究​機構 ロボティクス​研究​センター

"グラフィカル​開発​によって​高い​生産​性​が​得​られる​ことに​加​え、​FPGA​が​備える​高い​性能/​並列​性/​柔軟性​を​活用​できる​こと​など​も​考える​と、​現時点​で​当社​の​要求​に​期待​どおり​に​応え​て​くれる​もの​は、​恐らく​LabVIEW/​CompactRIO​しか​存在​しない​だ​ろう。"

- Katsuya KANAOKA, 立命​館​大学 総合​科学​技術​研究​機構 ロボティクス​研究​センター

課題:

テレビ​番組​『ロボット​日本一​決定​戦!​リアル​ロボット​バトル』​(日本​テレビ​系列)​に​出場​する​ため​の​マスタスレーブ​式​ロボット​を​開発​する。​その​ロボット​に​は、​独自​の​方式​で​ある​力​順​送​型​バイラテラル​制御​を​適用​する。​また、​マスタスレーブ​間​の​通信​を​無線​で​行う​という、​実績​の​ない​方法​で​実現​しな​け​れ​ば​なら​ない。​しかも、​この​よう​な​システム​を、​わずか​数​ヶ月​間​で​完成​さ​せ​な​け​れ​ば​なら​ない。

ソリューション:

マスタ​側、​スレーブ​側​ともに、​制御​用​の​ハードウェア​として​NI CompactRIO​を​採用​する。​高い​性能/​並列​性/​柔軟性​など、​CompactRIO​が​備える​FPGA​の​メリット​を​フル​に​活用​し、​複雑​な​システム​を​効率​良く​開発​する。​アプリケーション​ソフトウェア​と​FPGA​用​の​コード​は、​NI LabVIEW​の​グラフィカル​プログラミング​手法​によって​高い​生産​性​で​開発​する。

 

1.        背景

当社​(マシン​シナ​ジ​ー​エ​フェ​クタ​ズ​株式会社)​は、​立命​館​大学​発​の​ベンチャー​企業​で​ある。​社名​に​ある​「マンマシンシナジーエフェクタ」​と​は、​「人間​のみ、​あるいは​機械​のみ​では​実現​でき​ない​機能​を、​人間​と​機械​の​相乗​効果​(マンマシンシナジー)​によって​実現​する​効果​器」​の​こと​だ。​その​よう​な​ロボット​の​研究​開発​を​行​って​実用​化​を​果たす​こと​が​当社​の​目標​で​ある。​研究/​開発​の​中心​に​ある​の​は、​操作​者​で​ある​人間​の​動作​を​反映​し、​その​力​を​増幅​し​て​作業​を​行う​大​出力​の​ロボット​だ。​この​種​の​ロボット​は、​操作​する​側​で​ある​「マスタ​ロボット」​と​操作​さ​れる​側​で​ある​「スレーブ​ロボット」​の​2​つ​の​ロボット​によって​構成​さ​れる​こと​から、​一般​的​に​は​マスタスレーブ​式​と​呼​ば​れ​て​いる。​極めて​単純​な​例​として​は、​人間​の​手​では​持ち​上げ​ら​れ​ない​重たい​荷物​を​運ぶ​ケース​が​挙​げ​られる。​この​よう​な​場合、​通常​で​あれ​ば​フォークリフト​の​よう​な​機械​を​利用​する​ことに​なる​が、​マスタスレーブ​式​の​ロボット​でも​同様​の​運搬​作業​を​実現​する​こと​が​できる。​マスタ​側​の​操作​者​が​荷物​を​両手​で​持ち​上げ​て​運ぶ​動き​を​すると、​スレーブ​側​の​ロボット​が​その​動き​に​追従​し​つつ​力​を​増幅​し、​その​重たい​荷物​を​実際​に​持ち​上げ​て​運搬​する​といった​具合​で​ある。

 

 

2014​年​4​月​に、​日本​テレビ​から​同局​の​番組​『ロボット​日本一​決定​戦!​リアル​ロボット​バトル』​へ​の​出場​の​打診​が​あっ​た。​同​バトル​は、​体高​2 m​ほど​の​ロボット​が​格闘​し、​トーナメント​方式​で​優勝​を​競う​という​もの​で​ある。​当社​の​研究​目的​は、​先端​ロボット​工学​に​基​づ​い​て、​本当に​人​の​役に立つ​ロボット​を​生み出す​こと​だ。​その​目的​と​今回​の​「バトル」​と​は​必ずしも​相容​れる​もの​では​ない​が、​テレビ​番組​へ​の​出演​は、​そうした​当社​の​考え方​と、​先端​ロボット​工学​技術​に​基​づ​い​て​開発​さ​れ​た​ロボット​が​どの​よう​な​もの​で​ある​か​を​広​く​アピール​できる​絶好​の​機会​だ​と​考え​て​出場​を​決め​た。

 

大会​へ​の​出場​にあたり、​当社​が​掲​げた​コンセプト​は​「人​機​一体」​だ。​これ​は、​人間​と​機械​の​相乗​効果​を​意味​する​「マンマシンシナジーエフェクタ」​を​一般​向け​にわか​りや​すく​言い換え​た​もの​で​ある。​マスタスレーブ​という​言葉​は、​ロボット​に​携わる​人​にとって​は​ある程度、​一般​的​な​もの​と​な​って​いる。​しかし、​マスタスレーブ​の​本来​ある​べ​き​姿​は​必ずしも​正しく​理解​さ​れ​て​いる​と​は​言​え​ない。​「マスタスレーブ式のロボットをきちんと作れば​『人​機​一体』​が​実現​さ​れる」​という​こと​を、​テレビ​を通して​示し​たい​と​考え​た。

 

 

 

当社​の​マスタスレーブ​式​ロボット​は​2​つ​の​特徴​によって​「人​機​一体」​を​実現​する。​1​つ​は​バイラテラル​制御​に​対応​し​て​いる​こと​だ。​バイラテラル​制御​と​対​に​なる​もの​に、​ユニラテラル​制御​が​ある。​ユニラテラル​制御​では、​スレーブ​側​の​動作​の​状態​を​マスタ​側​に​フィードバック​する​こと​なく、​力​や​位置​など​に関する​指令​を​マスタ​側​から​スレーブ​側​に​一方​的​に​送る​こと​で​制御​を​行う。​それ​に対し、​バイラテラル​制御​では、​マスタ​側​から​スレーブ​側​に対して​指令​を​送る​とともに、​スレーブ​側​の​動作​の​状態​(位置​や​力​など)​を​マスタ​側​に​フィードバック​し​ながら​制御​を​行う。​つまり、​当社​の​ロボット​の​場合、​操作​者​で​ある​人間​が​無理やり​動​か​そう​として​も、​負荷​が​大​き​すぎる​といった​理由​で​スレーブ​ロボット​が​それに​追随​でき​ない​状態​に​ある​ときには、​その​こと​が​マスタ​ロボット​を​介​し​て​人間​に​伝​わ​って​くる​(ユニラテラル​制御​では、​スレーブ​ロボット​が​追従​し​てい​なく​て​も​マスタ​側​は​勝手​に​動​け​て​しまう)。​結果​として、​ロボット​と​人間​の​動き​が​遅延​なく​一致​し​て​いる​よう​に​見える。​言い換えれば、​操作​者​で​ある​人間​は、​実際は​マスタ​ロボット​のみ​と​機械​的​に​繋​が​って​いる​にもかかわらず、​主観​的​に​は​スレーブ​ロボット​のみ​と​機械​的​に​つ​な​が​って​いる​よう​な​状態​に​なる。​これ​が​「人​機​一体」​という​言葉​の​意味​する​ところ​だ。

 

当社​の​ロボット​では、​バイラテラル​制御​の​中でも、​「力​順​送​型」​という​独自​の​方式​を​採用​し​て​いる​(図​3)。​バイラテラル​制御​に​対応​する​ロボット​では、​一般​的​に​は​「力​逆​送​型」​や​「力​帰還​型」​が​使​われる​が、​これらの​方式​は、​過酷​な​条件​に​さら​さ​れる​スレーブ​側​の​堅牢​性​を​確保​し​にくい​という​欠点​を​持つ。​その​原因​は、​スレーブ​側​に​力​センサ​を​設け​な​け​れ​ば​なら​ない​こと​だ。​一方、​力​順​送​型​の​場合、​スレーブ​側​では、​位置​制御​では​なく​力​制御​を​実行​する。​スレーブ​側​に​力​センサ​を​配置​しない​こと​から、​過酷​な​環境​や​大​出力​に​耐える​堅牢​性​を​持​たせる​こと​が​可能​に​なる。​マスタ​側​の​操作​感​が​良好​に​なる​ことに​加​え、​スレーブ​側​では​非常​に​滑らか​な​動き​を​実現​できる​よう​に​なる。

 

 

 

当社​の​マスタスレーブ​式​ロボット​が​備える​もう​1​つ​の​特徴​は、​パワー​の​増幅​方法​で​ある。​機械​的​に​つ​な​が​って​いる​だけ​の​マスタスレーブ​式​ロボット​の​場合、​力​を​2​倍​に​しよう​と​すると​変位​が​1/2​に​なる​という​関係​が​ある。​より​多く​の​力​を​かけ​よう​と​すると、​移動​量​が​小​さく​な​って​しまう​という​こと​だ。​一方、​当社​の​マスタスレーブ​式​ロボット​の​場合、​その​つながり​は​電気​的​に​実現​さ​れ​て​いる。​つまり、​コンピュータ​で​情報​を​やり取り​する​だけ​なので、​力​と​変位​の​関係​を​自由​に​変える​こと​が​できる。​ロボット​バトル​用​の​システム​では、​力​の​増幅​度​を​約​10​倍、​変位​の​増幅​度​を​約​5​倍​に​設定​した。​機械​的​に​つ​な​が​って​いる​だけ​だ​と​力​を​10​倍​に​すると​変位​が​1/10​に​なる​が、​変位​も​同時に​5​倍​に​増幅​できる​という​こと​だ。

 

実際​に​は、​もっと​高度​な​制御​を​行う​こと​も​可能​で​ある。​例えば、​弱い​力​を​加​え​た​ときには​0​倍​や​1​倍​に​増幅​し、​大きい​力​を​加える​と​一気に​10​倍​に​なる​といった​非線形​の​増幅​も​容易​で​ある。​大きな​力​を​得​たい​とき​に​大きな​力​が​得​られる​だけ​で​なく、​より​精密​な​動作​を​さ​せ​たい、​より​優しい​力​で​動​か​した​い​といった​場合​に​は、​人間​が​優​しく​力​を​入れる​こと​で​ロボット​も​優​しく​力​を​出す​という​こと​だ。

 

さらには、​力​を​周波数​領域​で​評価​し、​高周波​領域​と​低周波​領域​で​増幅​率​を​変更​する​こと​も​可能​だ。​このようなフィルタ処理を導入すれば、​人間​の​細かい​力​の​振​れ​の​よう​な​もの​は​カット​し​て、​大きな​動き​だけ​を​スレーブ​側​に​伝える​こと​が​できる。​スレーブ​側​から​の​フィードバック​について​も​同様​で​ある。​このように、​マスタ​側​の​人​の​動き、​スレーブ​側​の​ロボット​の​動き​を​単に​コピー​し​て​互いに​伝える​の​では​なく、​その間​に​フィルタ​など​の​信号​処理​を​適用​する​こと​で、​伝え​たい​情報​だけ​を​選択​的​に​増幅​する​こと​が​可能​に​なる。​例えば​手術​用​の​ロボット​など、​より​繊細​な​作業​が​求め​られる​用途​では、​そうした​処理​が​必須​に​なる​だ​ろう。​機械​の​数値​的​な​正確​さ​と、​人間​ならでは​の​数値​化​でき​ない​熟練​の​スキル​を、​1​つ​の​システム​で​両方​活かす​こと​が​できる。​それ​故に、​当社​が​研究​し​て​いる​マスタスレーブ​システム​に​は​非常​に​高い​ポテンシャル​が​ある​と​期待​さ​れる。

 

 

2.        課題

大会​で​使用​する​ロボット​について、​日本​テレビ​から​は​「ロボット​は​無線​で​制御​し​て​ほしい」​と​の​要望​が​出​さ​れ​てい​た​が、​それ​以外、​制御方式をはじめとする技術的な面で特に決まりがあるわけではなかった。​しかし、​われわれ​にとって​は​単に​バトル​を​行​え​れ​ば​よい​という​こと​では​なく、​独自​の​技術​を​実装​し​て、​近​未来​の​ロボット​の​ある​べ​き​姿​を​見せる​ため​に、​マスタスレーブ式にすることも必須だった。​そこで、​バトル​用​の​スレーブ​側​に​加​え、​操作​用​の​マスタ​側​として​同じ​よう​な​ロボット​を​もう​1​体​作る​ことに​なる。

 

上半身​に​は​人間​と​同じ​よう​な​腕​を​持​た​せ​て​マスタスレーブ​式​で​制御​を​行う。​下半身​について​は、​車輪​によって​移動​できる​よう​に​する。​片腕​の​4​自由​度​(肩​が​3​自由​度、​ひじ​が​1​自由​度)​に​加​え、​腰​の​回転​の​1​自由​度​を​加​え​た​トータル​9​自由​度​を​持​たせる​もの​と​した。

 

基盤​技術​は​すでに​確立​し​てい​た​ので、​必要​な​作業​は​仕様​に​応​じ​て​設計・​実装を行うことだけだった。​メインの制御技術はこれまでに開発してきたもので十分だったし、​ソフトウェア​について​も​その​ロジック/​アルゴリズム​は、​以前​開発​した​マスタスレーブ​システム​で​ほぼ​完成​し​てい​た。​ハードウェア​について​も、​当社​が​すでに​製品​化​し​てい​た​ロボット​制御​工学​の​研究・​教育​用​ロボット​キット​『MMSEUnits』​を​使う​ので​問題​は​ない。​つまり、​技術的な課題はあまり存在せず、​やればできるという状態だった。​しかし、​開発に許される時間が非常に短いことが大きな不安要素だった。

 

2014​年​4​月​に​出場​の​打診​が​あり、​実際​に​バトル​を​行う​の​は​同年​11​月​初旬​と​決まって​い​た。​7​ヶ月​間​の​うち、​4​~​8​月​の​5​ヶ月​間​は、​資金​調達、​チーム​メンバー​選定、​基本​設計​や​コンセプト​の​構築、​メカ​部分​の​基本​的​な​フレーム​ワーク​設計​など、​開発前段階の基礎固めに費やされた。​結果​として、​それ​以外​の​すべて​の​開発​作業​は​最後​の​2​ヶ月間で完了させなければならなかった。

 

開発​期間​の​短​さ​に​加​えて、​実は​技術​的​な​面​でも​1​つ​だけ​課題​が​存在​した。​それ​は、​無線による制御を行わなければならないことだった。​それ​まで、​マスタスレーブ式のロボットを無線制御で実現したことはなかった。​バトル​の​会場​で​必要​な​通信​距離​は​せいぜい​15 m​ほど​で​あっ​た​し、​ユニラテラル​な​システム​で​あれ​ば​片方向​で​制御​信号​を​送り​続ける​だけ​で​よい。​しかし、​当社​の​バイラテラル​制御​では、​双方向​かつ​リアルタイム​で​高速​に​データ​を​やり取り​しな​け​れ​ば​なら​ない。​当社​は​無線​システム​の​実装​ノウハウ​を​まったく​持​って​いなか​っ​た​ので、​そこをどのようにして実現するのかということが唯一の技術的な課題だった。

 

 

3.        ソリューション/​効果

上述​した​よう​な​状況​の​中、​当社​は​NI​の​製品​を​選択​する​ことに​した。​マスタ​側、​スレーブ​側​ともに、​制御​用​の​ハードウェア​として​NI CompactRIO​を​使用​する​(図​4)。​CompactRIO​上​で​稼働​する​プログラム​(アプリケーション​ソフトウェア、​FPGA​用​の​コード)​は、​NI LabVIEW​を​使用​し​て​開発​した。​LabVIEW​による​グラフィカル​な​システム​開発​手法​と、​FPGA​の​高い​性能/​柔軟性​を​活用​できる​CompactRIO​を​採用​した​こと​で、​短期​開発​と​無線​制御​という​2​つ​の​課題​を​非常​に​容易​に​クリア​する​こと​が​でき​た。​特に、​LabVIEW​による​プログラム​開発​は​10​日​程度​で​終わらせる​こと​が​でき​た。​基盤​技術​は​確立​し​て​いる​ので​実装​だけ​の​問題​だ​と​は​いえ、​従来​の​システム​と​は​軸​数​も​運動​学​も​異なる​し、​使​って​いる​アクチュエータ​も​違う。​しかも、​無線​化​も​行​わな​け​れ​ば​なら​ない。​実質​的​に​は​一​から​プログラム​を​開発​し​て​いる​よう​な​もの​だ。​それ​を​たった​一人​で​10​日​で​完了​でき​た​という​の​は​驚異​的​な​速​さ​だ​と​言える。

 

また、​LabVIEW/​CompactRIO​を​ベース​と​する​こと​の​メリット​として​は、​モジュール​化​を​実施​し​やすい​開発​システム​で​ある​こと​が​挙​げ​られる。​さまざま​な​機能​を​異なる​場所​から​寄せ​集め​て​統合​する​といった​こと​が​C​言語​に​比べ​て​非常​に​や​り​やすい。​加​えて、​タイミング​ループ​の​よう​な​処理​を​プログラム​に​複数​盛り​込​んで​も​問題​なく​動作​する。​マルチスレッド​処理​を​行う​場合、​C​言語​による​プログラミング​では​かなり​頭​を​使​わな​け​れ​ば​なら​ない​が、​LabVIEW​で​あれ​ば​非常​に​容易​に​実現​できる。​今回​の​LabVIEW​による​開発​では、​ほぼゼロと言えるくらい手戻りの回数が少なかった。​仮に​C​言語​で​プログラミング​を​行​わな​け​れ​ば​なら​なか​っ​た​と​したら、​かなり​の​手​戻り​が​発生​し​て​しま​い、​期限​内​に​開発​を​終える​の​は​不可能​だ​っ​た​で​あ​ろう。

 

FPGA​を​使用​できる​こと​から​も、​いくつか​の​メリット​が​得​られる。​ここ​では、​FPGA​が​システム​性能​に​もたらす​利点​を​特に​強調​し​て​おき​たい。​例えば、​シリアル​データ​伝送​を​行う​部分​では、​データ​を​解釈​する​処理​を​すべて​FPGA​に​担​わせ​る​こと​により、​ロボット​が​備える​センサ​の​最高​速度​で​通信​が​行える。​FPGA​を​ユーザ​が​自由​に​プログラミング​できる​点​が​ポイント​だ。​FPGA​が​使​え​ない​場合​や、​機能​が​固定​さ​れ​て​いる​システム​を​採用​した​場合​に​は、​力​センサ​の​能力​を​十分​に​引き出す​こと​が​でき​ない。​最近​の​センサ​は​デジタル​で​情報​を​やり取り​する​もの​が​多い​ので、​高い​通信​速度​を​実現​できる​点​は、​通信​遅延​が​制御​性能​に​直ちに​悪影響​を​及ぼす​バイラテラル​制御​において​は​大きな​魅力​だ。

 

技術​的​な​課題​で​あっ​た​無線​制御​について​も、​LabVIEW/​CompactRIO​によって​極めて​容易​に​解決​でき​た。​今回​の​システム​では、​さまざま​な​データ​を​送受信​する​こと​から​処理​が​複雑​に​なる。​上半身​だけ​で​全部​で​10​軸​9​自由​度​あり、​下半身​も​含める​と​16​軸​12​自由​度​分​の​データ​を​扱​わな​け​れ​ば​なら​ない。​1​軸​に​は、​力、​変位​(回転​角度)、​温度​の​3​種類​の​データ​が​あり、​それぞれに​更新​周期​も​異なる。​このように​多様​な​データ​を​扱​わな​け​れ​ば​なら​ない​の​だが、​LabVIEW​を​使​え​ば​非常​に​簡単​に​必要​な​処理​を​プログラミング​できる。​あまりに​も​容易​に​モジュール​化・​無線​化​を​実現​でき​た​ため、​開発​チーム​一同​が​感嘆​の​声​を​上げ​た​程​だ。

 

実際​の​システム​では、​無線​LAN​の​新​規格​で​ある​IEEE 802.11ac(5 GHz​帯​の​Wi-​Fi)​を​採用​した。​同​規格​に​正式​対応​する​機器​は、​2014​年​9​月末というロボット開発の最終段階で発売された。​LabVIEW​を​採用​した​こと​で、​それら​も​即座​に​システム​に​組み込む​こと​が​でき​た。​ループ​制御​は​3​ミリ​秒​程度​の​周期​で​行​っ​た​の​だが、​バトル​の​会場​でも、​瞬​断​すら​一切​発生​する​こと​なく​非常​に​安定​した​状態​で​無線​通信​を​継続​でき​た。

 

開発​用​の​プラットフォーム​として​は、​現存​する​ものの​中​で、​LabVIEW​が​最も​使い​やすい​と​考え​て​いる。​という​より​も、​グラフィカル​開発​によって​高い​生産​性​が​得​られる​ことに​加​え、​FPGA​が​備える​高い​性能/​並列​性/​柔軟性​を​活用​できる​こと、​マイコン​を​使用​すると​非常​に​複雑​化​する​多種​多数​の​インタフェース​へ​の​対応​が​容易​で​ある​こと​など​を​考える​と、​現時点​で​われわれ​の​要求​に​期待​どおり​に​応え​て​くれる​もの​は、​恐らく​LabVIEW/​CompactRIO​しか​存在​しない​だ​ろう。​もしサイズやコストの制約が存在しなければ、​現​段階​では、​当社​の​ほぼ​すべて​の​開発​に​NI​の​プラットフォーム​を​適用​できる​と​考え​て​いる。

 

4.        今後​の​展開

今回​の​システム​に​は、​新た​な​試み​として​視覚​機能​も​付加​した。​これ​は、​スレーブ​側が​備える​カメラ​で​取得​した​映像​を、​マスタ​側​の​操作​者​が​ゴーグル​型​の​モニター​によって​見​ながら​操作​できる​よう​に​する​という​もの​で​ある。​詳細​な​説明​は​別​の​機会​に​譲る​が、​今回​の​開発​を​経験​し​て、​マスタスレーブ​システム​では​視覚​機能​が​必須​だ​という​こと​を​改めて​確信​した。​直接​手​で​作業​を​行​って​いるか​の​よう​に​感じ​られる​という​点​で、​マスタスレーブ​システム​における​触覚​は​非常​に​重要​な​もの​だ。​ただ、​それだけ​では、​手術​など​の​用途​に​応用​する​に​は​不十分​で​ある。​触覚​だけ​では​なく、​「触覚​+​視覚」​のシステムにしておかなければ、​マスタスレーブ​システム​の​爆発​的​な​普及​に​は​至​ら​ない​だ​ろう。​今後​は​この​技術​について​研究​開発​を​進​め​てい​きた​い。

 

当社​の​目標​は​マスタスレーブ​式​の​ロボット​を​実用​化​し​てい​く​こと​だ。​それに​向け​て、​当面​は​市場​開拓​が​重要​な​取り組み​に​なる。​当社​が​開発​した​よう​な​ロボット​が​いきなり​大きな​市場​を​得る​と​は​考え​難い​ので、​その​前​の​段階​として​もう少し​小規模​かつ​実用​的​な​システム​によって​市場​を​形成​し​てい​きた​い。​現在​は、​物流​や​建築​の​分野​で、​当社​の​技術​に​関心​を​持​って​くれる​企業​が​現れ​て​きた​ところ​だ。​そうした​企業​と​地道​に​開発​を​継続​し、​数​年のうち​に、​試作​機​でも​よい​ので​市場​に​成果​物​を​出し​てい​きた​い。​同時に、​「将来​的​に​は​この​よう​な​こと​も​可能​に​なる」​という​ビジョン​も​発信​し​てい​く​つもり​だ。​当社​だけ​でも​ここ​まで​できる​の​だから、​意欲のある企業との協業によって多くのリソースを投入できるようになれば、​もっと​すごい​こと​を​実現​できる​と​確信​し​て​いる。

 

著者​情報:

Katsuya KANAOKA
​立命​館​大学 総合​科学​技術​研究​機構 ロボティクス​研究​センター
​滋賀​県​草津​市​野路東​1​丁目​1-1
​525-8577
​Japan
​Tel: 077-561-4863 (Ext. 7607)
kanaoka@fc.ritsumei.ac.jp

​ ​図​1. 人​機​一体・​金岡​博士​チーム​の​ロボット MMSEBattroid ver.​0(スレーブ​側) ​
​ ​図​2. 人​機​一体・​金岡​博士​チーム​の​ロボット MMSEBattroid ver.​0(マスター​側) ​
​ ​図​3. 力​順​送​型​の​バイラテラル​制御​(上)​では、​力​逆​送​型​(下)​や​力​帰還​型​と​は​異​なり、​スレーブ​側​に​力​センサ​を​配置​しない。​そのため、​高い​堅牢​性​を​確保​できる。 ​
​ ​図​4. CompactRIO を​用​い​た​マスタスレーブ​式​ロボット​の​システム​構成 ​