電力計測・制御システム内部

内容

概要

我々の生活を見渡してみても、電話から本の電子化まで、技術が進化していないものを見つけるのは容易でなくなってきています。

あらゆる業界がデジタル領域に方向転換しています。ソフトウェア、ネットワーク、プロセッサ、センサが融合し情報を交換する情報技術(IT)の新しい世界です。

どの業界も見過ごすことができないほどの魅力は、どこにあるのでしょうか。新しい機能から製品とサービスの早期提供、生産性の向上まで、その理由は様々です。しかし何よりも重要なのは、コストパフォーマンスです。性能は指数関数的に向上し(分子)、その間価格は指数関数的に下がる(分母)ため、ITの性能向上のペースは勢いを増しています。「デジタル化」に抵抗を示す企業は、時代遅れとのレッテルを貼られるリスクを抱えています。

ここで電気グリッドについて詳しく見てみます。他の多くの業界と同様、発電、送電、配電の方法には、IT以前の技術が根強く残っています。数百万キロに及ぶ電線や、数千基もの発電所、相互に接続された無数の装置などを含むグリッドが、主としてコンピュータやインターネットが普及する以前の旧式技術によって管理されているのです。それでも、新しいグリッドタイ制御システムの内部では、デジタル革命が始まっています。電気自動車のシームレスな統合や、グリッドレベルでのエネルギー貯蔵、再生可能エネルギーの分散型発電など、高性能で低コストの新たな仕組みが導入されています。まだ初期段階ではあるものの、スマートグリッド革命は始まっており、エネルギー関連企業はもはや無視することはできなくなってきています。

グリッド分散化

グリッドのデジタル化における第一段階は、分散型センシング技術です。送電線から電力信号を集録し、デジタル化して、インターネット経由で送電する組込計測システムがグリッド全体に分散されているとします。フェーザ計測装置(PMU)は、グリッド上の複数のポイントにおける同期された電圧計測と位相計測を比較することで、電力の流れを計測します。グリッドの安定性を評価し、停電が起こる前に問題を検出し、さらには障害が発生した時に「修復」するのが目的です。それには、リアルタイム解析によってグリッドからの高速データを処理し、コンピュータ化されたモデルに送り込んで、制御室のオペレータが理解できる値に変換する必要があります。NIでは、これを世界的規模で「集録・解析・表示」と表現しています。それを実現するための技術的要件を満たすのは、簡単なことではありません。PMUでは、高電圧/高電流の高精度計測、正確な同期サンプリング、オンボード信号処理、パケットを確実に伝送できる十分な通信帯域幅が必要です。これらの要件を実現させるのが、解析です。計測値は現場から毎秒30~60フレーム転送されます。アルゴリズムによってグリッドのオペレータに作業を伝えるには、データは最新かつ正確でなくてはなりません。FPGA技術をベースにしたPMUを使用すると、高品質の計測機能と複数のタスクを並列で実行する機能によって、それが実現できる可能性があります。最も重要なのは、現場で再構成が可能なことです。現場で再構成ができれば、システムが内部回路を再配線して要件の変化に適応することができます。現場に設置した後でも、PMUやその他のスマートグリッドデバイスは進化を続けているため、シリコンゲートアレイのレベルでシステムの再構成ができれば、その後何年にもわたって重要な役割を果たすことができます。

[+] 画像を拡大

図1. NI CompactRIOベースのPMUは、現場での再構成が可能な組込計測機能を提供します。そのためグリッドへの実装後何年経ってもリモートでアップデートすることが可能です。

グリッド応答

グリッドのデジタル化における第二段階は、ピーク性能を維持するためのセンシングとアクションが実行できるインテリジェントな分散システムによる制御です。高性能同期計測、リアルタイム通信、組込解析によってそのようなシステムが実現し、電力供給の最終段階である配電の信頼性が向上します。

配電システムには、高電圧送電信号が電線用に中電圧に減衰される変電所があります。そして電気は柱上変圧器に流れ、低電圧出力となって住宅や企業に送られます。世界の配電網は、スマートリクローザ保護装置などのデジタル制御システムを導入するなど、変化の時期を迎えています。

雷雨のときに照明が揺らめいたら、それはリクローザが働いていた可能性があります。スマートリクローザは、故障電流を遮断するための電気開閉装置と、電力信号をモニタしてスイッチをいつ開くかを決めるリアルタイム信号処理機能を兼ね備えています。スマートブレーカーのように動作し、故障電流などが発生した場合に回路を保護しますが、稼働を維持してダウンタイムを避けるため、「リクローズ」することもあります。

グリッド自己回復

スマートリクローザは、問題が発生した時に、認識を高めて電力の経路を変更するものです。これを「自己回復」といいます。2つのフィーダで構成されスマートデバイスに連結されたループは、優れた信頼性を実現します。一般に変電所近くには分割リクローザ、電力線上には中点リクローザ、そして2つのフィードを任意で接続できるタイリクローザがあります。故障の場合は、スマートリクローザが即時保護を提供し、同時に故障の特性を突き止めます。最後に、システムは適切なリクローザを起動して、自動で電力を維持し経路を変更して自己回復します。

図2. 「自己回復型」の配電システムは、優れた信頼性を実現するため検出と適応を自動で行います。

自動で診断しエネルギーの流れに適応するスマートリクローザは、スマートグリッド上にある未来のインターネットルータと考えることができます。計測、解析、制御機能を全て備えたネットワーク型の組込システムによって、グリッドは、自己診断型、自己回復型、そして集中型ではなく分散型のインターネットのような空間に変わろうとしています。インターネットと同様、スマートグリッド革命は、発電・配電・電力消費方法の革新につながる技術の開発に取り組む技術者たちによってもたらされています。