SERIS、する気象観測つなぐ堅牢ネットワーク構築

シンガポール太陽光エネルギー研究機構(SERIS)、Mark Kubis氏
シンガポール太陽光エネルギー研究機構(SERIS)、Andre Nobre氏

「シンガポール気候常に高温多湿で、コンポーネントリモート監視する場合、通常より課題多くなります。そこで、SERISは、堅牢NIハードウェア使って、極めて堅牢システム構築しました。このシステムにより、シンガポール国内設置多数気象観測研究データ99.8パーセント以上使用可能なりした。」

- シンガポール太陽光エネルギー研究機構(SERIS)、Mark Kubis氏

課題

太陽光発電の応用技術として、シンガポールの太陽放射照度をリアルタイムでマッピングし、太陽エネルギー資源の評価と予測を行う。

ソリューション

国内のあらゆる場所に設置されたCompactRIOハードウェアをベースとして各地の気象観測所をつなぐネットワークを構築し、LabVIEWシステム開発ソフトウェアをインストールしたPCで監視する。

太陽光発電(PV)の設備が世界中で増加を続けており、この再生可能エネルギーは世界中のエネルギー基盤としてますます貢献度を増しています。シンガポールのような熱帯地域は、常に変化し続ける雲量と気象条件により天候が安定しません。そのため、このような国で再生可能エネルギーを利用する場合には、再生可能エネルギーと既存の化石燃料による発電エネルギーの統合利用が可能な公共設備を整える必要があります。

 

シンガポール太陽光エネルギー研究機構(SERIS: Solar Energy Research Institute of Singapore)は、太陽放射照度の評価と予測に関する研究プロジェクトの一環として、島全体にわたり、5 km×5 kmのグリッド上に包括的な気象観測所のネットワークを実装しました。すべてのリモートステーションは、NILabVIEWソフトウェアを使用してコーディングされたCompactRIOハードウェアを使用してシステムを実行します。短期間および日中の太陽放射照度を予測するために、アルゴリズムを開発して重要な気象パラメータを抽出します。これは後で、PVによる電力生産パターンの予測に使用できます。また、年間の太陽エネルギーの測定結果は、国内の季節別および年間の太陽放射照度マップの作成に利用されます。

 

ハードウェア

フロントエンドでは、現場に設置された25か所の気象観測所にてcRIO-9075リアルタイムコントローラを実行します。各気象観測所にはNI 9203 Cシリーズアナログ電流入力モジュールとNI 9217 CシリーズRTDモジュールが設置され、全天日射量および散乱日射量、気温、相対湿度、風速および風向、気圧などを測定するための気象センサに接続されています。バックエンドでは、SERISのPVシステム監視研究所(PV Systems Monitoring Laboratory)の中央監視ステーション(CMS: Central Monitoring Station)のPCで、LabVIEWをベースとしたソフトウェアを実行し、3Gネットワーク経由で各地の気象観測所とリアルタイム接続します。

 

システム説明

システム全体は、次の一連のタスクを実行するように構成されています。

  • リモートロギング - 各気象観測所において、全てのデータが1 Hzでサンプリングされ、1分間隔でロギングされます。
  • データ収集 - 全ての各気象観測所がCMSとの通信に3Gインターネットネットワークを使用しており、リアルタイム(毎秒および毎分)と「リサーチパケット」(毎日の終わりに研究者のために用意されるデータ)の両形式でデータを送信します。
  • データ保存 - データはバイナリ形式で保存されるため、データベースおよび統計エージェントで高速での転送および処理が可能です。
  • データのパブリッシュサービス - 研究者が履歴データセットに簡単にアクセスすることができます。このデータは自動でも手動でも設定することができます。
  • アラームチェック - CMSは、毎秒受信する「ハートビート」によって気象観測所の状態を監視します。送信ステータス、メモリレベル、CPU使用率などのシステムにとって重要な特性がレポートされます。
  • 時間同期 - CompactRIOのクロックがSERISの高精度タイムサーバから300ミリ秒を超えてドリフトするごとに、システムが時間修正ルーチンを適用します。

 

重要監視設備特性ハイライト

シンガポールの気候は常に高温多湿で、コンポーネントをリモート監視する場合、通常よりも課題が多くなります。そこで、SERISは、堅牢性に優れたNIのハードウェアを使って、極めて堅牢なシステムを構築しました。このシステムにより、シンガポール国内に設置された多数の気象観測所の研究データの99.8パーセント以上が使用可能になりました。このシステムはシームレスな時間同期機能も備えています。現場に実装されたCompactRIOシステムは全て、SERISの専用時間サーバと同期しています。これによって、クロックのドリフトは最大でも300ミリ秒に抑えられます。空間的に離れた気象観測所の相関関係を考慮しながら調査を行うため、こうした同期の正確さは大変重要です。システムのその他の主な特長は次のとおりです。

  • リモート診断 - 現場に設置された気象観測所は、ソフトウェアアップデートなどのタスクをリモートから調整することができます。
  • アラーム機能(システム) - アラームが気象観測所の状態を監視します。
  • アラーム機能(センサ) - LabVIEWで記述した追加の統計ルーチンによってパラメータ範囲のチェックを行うため、現場のセンサが故障した場合でも、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
  • 自動ダウンロードルーチン - 毎日、日没後に研究データがダウンロードされるため、研究者はすぐさま新しいアルゴリズムに取りかかることができます。
  • データオンデマンド - 必要なときに簡単にデータを取り出すことができます。
  • リアルタイムシステム視覚化機能 - インターネットに接続されたどのPCからでもユーザインタフェース(あるいは「プレーヤー」)を介して、1秒刻みの「ライブ」データにアクセス可能です。

 

ライブ太陽放射照度マップ作成

各地の気象観測所からCMSにデータが届くと、整備されたデータベースを利用して、計算、プロット、アルゴリズムを実行することができます。さらに、カスタム設計されたLabVIEWソフトウェアを使って、ライブデータをリアルタイムで選択してサブセットにグループ化することで、ライブの太陽放射照度マッピング機能を構築することができました。この機能は、SERIS PVシステム監視研究所のユーザインタフェースで使用できます。25か所の気象観測所からの太陽放射照度の記録データが1秒以内に読み取られ、カラー補間アルゴリズムに使用されます。マップは、ネットワーク転送の遅延に応じて2~3秒ごとに更新されます。マップのインタラクティブ機能を使えば、カーソルを置いた位置、または郵便番号を入力して選択した位置の太陽放射照度の値を読み取ることができます。

 

このマップは、シンガポール全土における最大と最小の太陽放射照度の合計値と平均値も表示します。

 

SERISは、この太陽放射照度マップをNational Solar Repository of Singapore(NSR、www.solar-repository.sg)にて一般公開しています。NSRはシンガポールにおけるPVの使用を推進する政府のイニシアチブです。

 

SERISシステムメリット

SERISは、熱帯地域に適した、太陽電池、太陽電池モジュール、太陽光発電システム、エネルギー効率の高い建物に関する最先端の研究を行っています。このようなPVグリッド統合設備の研究は、上記に説明したとおり、各地の気象観測所の総合ネットワークを通じて促進されます。リモート監視ネットワークはNIのハードウェアおよびソフトウェアを使って稼動しており、SERISの研究者とエンジニアに対して、優れたデータの可用性と信頼性を保証しています。近い将来には、公共施設などにも利用される可能性があります。

SERISの研究者は、気象観測所の堅牢で、空間的に分解されたネットワークを使用することで、PVアプリケーションに向けた太陽エネルギー資源の予測を立てる予測アルゴリズムを開発することが可能になります。世界各国、特に熱帯地方やその他の発展途上国の新規未開拓市場でPVが広く普及すれば、PVをはじめとする再生可能エネルギーのシステムがあらゆる場所の電力供給網に大きく貢献するのも時間の問題となります。また、その過程において、強力かつ包括的なリモートデータ監視機能を利用し、変化しやすいエネルギー資源のスムーズな統合に必要なパラメータをさらに収集することにもなるでしょう。

 

お客様情報:

Mark Kubis
シンガポール太陽光エネルギー研究機構(SERIS)
National University of Singapore (NUS) 7 Engineering Drive 1 Block E3A, #06-01
117574
シンガポール
mark.kubis@nus.edu.sg