電流ループ (420 mA) の基本、システム設計、セットアップ

概要

電流ループは1950年代から、工程を監視および制御するためのトランスデューサのデータの送信に利用されてきました。 4-20 mA(ミリアンペア)の電流ループは、実装コストが低く、ノイズに対する耐性があり、長距離の信号伝送が可能であるため、特に工業環境に適しています。 このホワイトペーパーでは、電流ループの基本機能、システム設計、およびセットアップを中心に説明します。

内容

電流ループ基本機能

電流利用したトランスデューサデータ送信

工業用レベルのトランスデューサでは、一般に電流信号を利用してデータを送信します。これは、電圧信号を利用する熱電対抵抗歪みゲージをはじめとする他のほとんどのトランスデューサとは対照的です。多くの環境で電圧ベースのトランスデューサは十分な機能を提供しますが、電流ベースのトランスデューサが求められる場合もあります。たとえば、産業環境において電圧を利用して信号を送信する場合、ケーブルが長くなるとワイヤ自体の抵抗によって電圧降下が発生するという特有のデメリットがあります。入力インピーダンスの高いデバイスを使用して信号の減衰を回避することも可能です。しかし、こうしたデバイスは近隣のモータやコンベヤベルト、無線伝送から発せられるノイズの影響を受けやすいという特徴があります。

キルヒホッフの電流法則 (KCL) は、任意の点に流れ込む電流の和と、その点から流れ出る電流の和は等しいと述べています。図1に示すように、理論的にはループの開始点にあるすべての電流がループの終点に到達するはずです。

図1. キルヒホッフの電流の法則に従えば、ループの開始点にあるすべての電流がループの終点に到達しなければならない

これが電流ループの動作に関する基本法則です。単一のループでは、どの位置で電流を測定しても同じ結果が得られます。電流信号と低インピーダンスのデータ収集デバイスを利用することで、工業用アプリケーションにおいて耐ノイズ性が向上し、伝送ケーブルの距離を延伸できるという利点が得られます。

電流ループコンポーネント

図2に示すように、電流ループの主要なコンポーネントにはDC電源、トランスデューサ、データ収集デバイス、これらを接続するためのワイヤがあります。

 

図2. 電流ループシステム

DC電源によってシステムに電源を供給します。トランスデューサはワイヤ上の電流を4~20 mAの範囲で調整し、4 mAがライブゼロを、20 mAが最大信号を表します。また、0 mAの信号はループに断線があることを意味します。データ収集デバイスが測定するのは、調整された電流です。効果的かつ正確に電流を測定するための方法として、データ収集デバイスのアンプから出ているリード線の間に高精度のシャント抵抗を配置して (図2参照)、電流を電圧測定値に変換します。これが最終的にトランスデューサの元の測定値に関連付けられます。

電流ループについて理解を深めるために、このホワイトペーパー全体を通して、トランスデューサを使用するサンプルシステムの設計について検討していきましょう。システムの仕様は、以下の通りです。

  • トランスデューサは圧力を測定する必要がある。
  • トランスデューサは、測定用デバイスから2,000フィート離れた場所にある。
  • 電流測定データ収集デバイスは、トランスデューサでの測定結果に関するフィードバックをオペレータに提供する。

ここの例では、アプリケーションに適したトランスデューサの選び方から始めます。

電流ループシステム設計

トランスデューサ選択

電流ループシステムの設計で最初のステップは、トランスデューサの選択です。測定タイプ (流量、圧力、温度など) が何であれ、トランスデューサを選択する上で重要な検討事項の1つは動作電圧です。電圧源が電流ベースのトランスデューサに電源を供給することによって、トランスデューサはワイヤ上で電流の流れを調整できるようになります。トランスデューサの機能性を維持するために、供給電圧は必要とされる最小電圧以上でなければなりません。また、規定された最大電圧より大きな電圧を供給すれば、トランスデューサを破損するおそれがあります。

この電流ループシステムの例で選択したトランスデューサは圧力を測定し、その動作電圧は12~30 Vです。このトランスデューサによって電流信号を適切に測定するには、トランスデューサに加えられた圧力を正確に表すことが求められます。

電流測定データ収集デバイス選択する

電流ループシステムを構築する上で重要な点は、グランドループを避けることです。測定データ収集デバイスでグランドループを避けるための一般的な方法は、絶縁です。絶縁することで、図3に見られるようなグランドループを避けることができます。

図3. グランドループ

グランドループは、回路中に接続されている2つの端子で、それぞれのグランド電位が異なる場合に作成されます。この電位差によって電流は相互接続の中を流れますが、そのためにオフセット誤差が生じることがあります。

データ収集デバイスを絶縁するという方法で、信号ソースのグランドとデータ収集デバイスのアンプのグランドを電気的に分離しているのが、図4です。電流は絶縁バリアを越えて流れることができないため、アンプのグランド基準を信号ソースのグランドと同じ電位にすることができます。それにより、グランドループが誤って作成されることがなくなります。

図4. 絶縁時のコモンモード電圧とノーマルモード電圧

絶縁はまた、大きなコモンモード電圧によってデータ収集デバイスが破損するのを防止します。コモンモード電圧とは、計装用アンプのプラス入力とマイナス入力の両方に存在する電圧です。たとえば図4では、データ収集デバイスに付属するプラス (+) とマイナス (-) の両方のピンのほかにコモンモード電圧の+14 Vがあります。多くのデータ収集デバイスで、最大入力レンジは±10 Vです。仮にデータ収集デバイスが絶縁されていない状態で、コモンモード電圧が最大入力レンジを超えた場合、データ収集デバイスが破損するおそれがあります。図4において、たとえノーマルモード電圧が+2 Vで、オフセットが+14 VDCであるとしても、結果として動作電圧は+16 Vになります。ここでノーマルモード電圧とは、プラス (+) ピンとマイナス (–) ピンの間の電圧差であり、動作電圧とはノーマルモード電圧とコモンモード電圧の和です。これより小さい動作電圧のデータ収集デバイスにとって、これは危険なレベルの電圧です。

絶縁することで、アンプのグランド基準がアースから電気的に分離されます。図4のように、アンプのグランド基準レベルをシフトして+14 Vに一致させることができます。アンプのグランド基準レベルを+14 Vに上げることで、+16 Vはデータ収集アンプで実質的に+2 Vへとシフトされます。もはやデータ収集デバイスが過電圧によって破損するリスクはありません。(各絶縁体には、回避可能な最大のコモンモード電圧があることに注意してください。)

これで電流測定データ収集デバイスが絶縁され、保護されたので、次に基本的な電流ループシステムを完成させるための最後のステップとして適切な電源を選択します。

電源選択


要件を満たす最適な電源を知る方法は簡単です。電流ループの電源は、システム中で生じる電圧降下の総和と等しいか、またはそれより大きい電圧を供給しなければなりません。 

この例でデータ収集デバイスは、高精度のシャント抵抗を使用して電流を測定します。この抵抗の両端での電圧降下を計算する必要があります。一般的なシャント抵抗は249 Ωです。これと4~20 mAの電流ループによる基本的な計算結果を以下に示します。



この249 Ωのシャント抵抗を使って電流を1~5 Vの範囲にマッピングできるようになり、それによってデータ収集アンプの電圧読み取り値を圧力トランスデューサの信号に関連付けることができます。

この圧力トランスデューサは12 Vの最小動作電圧と30 Vの最大動作電圧を必要とします。高精度シャント抵抗の電圧降下をトランスデューサに加えると、以下のようになります。

これによって17 Vの電源があれば十分であることがわかります。 ただし、電流ループのワイヤ内部の抵抗によって、電源には追加の負荷がかかります。

トランスデューサが計測器から離れた場所に設置されるアプリケーションでは、電流ループの計算にワイヤ抵抗を要素として入れる必要があります。銅線には直流 (DC) に対する導体抵抗があり、それは銅線の長さと直径 (ゲージ) に比例します。このシステム例で使用する圧力トランスデューサの場合、所要電力に2,000 ftの距離を加味して計算する必要があります。AWG24の無垢の銅線の場合、内部抵抗は2.62 Ω/100 ftです[1]。したがって、抵抗値の計算は以下の通りです。

つまり、2,000 ftの距離があると、ワイヤ全体で1.05 Vの電圧降下が生じます。この電流ループはワイヤを2本必要とするため、長さは2倍の4,000 ftとなります。

つまり、圧力トランスデューサがデータ収集デバイスから2,000 ft離れた場所にあると、ワイヤ配線によって約2.1 Vが失われます。その結果、電圧降下の総和は以下の通りです。

17 Vの電源を使用して前記のセットアップを駆動した場合、圧力トランスデューサの電圧は、ワイヤ自体の内部抵抗と必要とされるシャント抵抗のために最小動作電圧レベルを下回ることになります。一般的な24 Vの電源を選択すれば、圧力トランスデューサシステムの電源要件を満たします。 必要があれば、さらに離れた場所に圧力トランスデューサを設置しても、まだ十分な電圧があります。

こうしてトランスデューサ、データ収集デバイス、ケーブル長、および電源を正しく組み合わせることで、このシンプルな圧力トランスデューサループシステムは完成します。大規模なアプリケーションでは、システムに複数の計測器を加えることがあります。

トランスデューサ計測追加


図5に示すように、大規模なアプリケーションではトランスデューサと計測器を電源に並列に接続して追加することができます。

図5. トランスデューサを追加する

この場合、電流ループが並列に追加されるので、電源の電圧を変更する必要はなく、要求される電流を電源が確実に供給できることだけが求められます。各トランスデューサと電源の動作電圧が一致していれば、さまざまなタイプのトランスデューサを組み合わせることができます。上図の例では、新規に追加するトランスデューサの最大動作電圧が電源の24 Vより低くないことを条件に、並列に新しいトランスデューサを追加することができます。

場合によっては、複数の電流測定データ収集デバイスを使用して同じ信号を測定する必要があります。同一のトランスデューサにもう1つデータ収集デバイスを追加するには、該当するループ内に直列に新規の計測器を配置する必要があります。図6に示す例では、既存のデータ収集デバイスに加えてシンプルなデジタル式電流ループメータを配置しています。


図6. 1つのトランスデューサに別の計測器を追加する

トランスデューサと直列に電流測定データ収集デバイスを追加するたびに、全体の電圧要件を再計算して、ループの所要電力が仕様の範囲内であることを確認する必要があります。この例で新規に追加された電流メータは、105 Ωの高精度抵抗を使用しています。

105 Ωのシャント抵抗を使用すると、電流メータは最大2.1 Vを必要とし、システム全体の電圧要件は以下のようになります。

電流メータを追加しても全体の電圧要件は約21.2 Vであるため、先に推奨した24 Vの電源はまだ、このアプリケーションに十分対応できます。

このようにハードウェアの追加と簡単な計算によって、電流ループシステムのアプリケーションベースをすばやく拡張することができます。また、トランスデューサの規格とタイプを新しくすることによっても、既存の電流ループインフラストラクチャの測定能力を向上させることができます。

電流ループ:基礎から先へ

デジタル信号技術の発展によって、電流ループを活用する場が広がり、この堅牢かつ低コストのシステムにさらなる機能性が加わっています。

Rosemount社によって開発されたハイウェイアドレス可能遠隔トランスデューサ (Highway Addressable Remote Transducer: HART) は、既存の電流ループシステムと同時に運用できるデジタル信号プロトコルです。HART対応のトランスデューサはデジタル信号によって、このプロトコル独自のコマンドに応答して特定の動作を実行したり、4~20 mAの電流信号に加えてステータスを返したりできるようになります。このテクノロジを利用して、工業オートメーションや制御用のアプリケーションでは、インテリジェントな現場計測器とホストシステムの間で能動的に状態を監視し、これに応答することが可能です。

HARTの詳細を見る

磁気流量計をはじめとする特殊なアプリケーションでは、3線式 (タイプ3) および4線式 (タイプ4) のトランスデューサを利用することもできます。

タイプ3のトランスデューサでは、2個のトランスデューサが1つのパッケージにまとめられています。こうしたトランスデューサの設計と取り付けは、このホワイトペーパーの説明にある2線式トランスデューサと同様な方法で行えます。

タイプ4のトランスデューサでは、電源用と電流測定用に接続が別々に用意されます。4線式トランスデューサでは、電源が計測システムから分離しているため、測定データ収集デバイスでの絶縁要件がありません。4線式トランスデューサの難点を1つあげると、ケーブル全長にわたって電源用に別のワイヤペアが必要になることです。このため、多くのアプリケーションでトランスデューサの近くに電源を設置しなければなりません。

タイプ3およびタイプ4トランスデューサの​詳細​を見る 

 

NI電流測定製品

電流ループは、長いケーブルを必要とする産業環境、またはトランスデューサとデータ収集デバイスの間で大量の電磁妨害が発生する産業環境において最適です。工場で自動化を進める場合、あるいは現場で測定する場合でも、NI製品から各種プラットフォームのさまざまな絶縁電流測定デバイスを見つけて、それぞれのアプリケーションのニーズに合わせて選ぶことができます。絶縁機能は通常、NIのオンラインカタログに記載されていますが、詳細については各デバイスの仕様を確認してください。推奨するオプションは、C​シリーズ​電流​入力​モジュールPXI​マルチ​ファンクション​I/​O​モジュールマルチ​ファンクション​I/​O​デバイスの各製品に含まれているか、またはその他の電流測定オプションで探すことができます。

NI CompactRIO 再構成可能な組み込み式制御/収集システム

 

NI CompactDAQ – モジュール式データ収集システム

 

  

関連リンク

工業計測に必要な高い信頼性を実現する絶縁技術

低電流測定の誤差を軽減する方法

DMMを使用したDC/AC電流計測に関する詳細

参考資料
[1] https://knowledge.ni.com/KnowledgeArticleDetails?id=kA03q000000x1AZCAY