V2X​ユース​ケース​を​迅速​に​統合​する​ソフトウェア​定義​アプローチ

概要

自動車​市場​では​かつて​専用​狭​域​通信 (DSRC) テクノロジ​が​主流​で​した​が、​ここ​数​年​で​明らか​に​な​っ​た​の​は、​5G​の​セルラー​接続​が​普及​しない​限り​完全​な​自動​運転​車​は​実現​でき​ない​という​こと​です。​最近、​米国​連邦​通信​委員​会 (FCC) が​5.9 GHz​帯​の​一部​を​C-​V2X (Cellular Vehicle-​to-​Everything) 専用​に​割り当てる​という​出来事​が​ありま​した。​これ​によって​C-​V2X​の​動き​が​加速​さ​れる​の​は​疑い​ありま​せん[1]。​ただし、​その​加速​に​は​予測​でき​ない​部分​が​あり​ます。​という​の​は、​標準、​アプリケーション、​ビジネス​モデル​が​未だ​定​まっ​てい​ない​から​です。​競争​力​を​高める​ため​に、​自動車​OEM​と​サプライヤ​は、​テクノ​ロ​ジ​ロード​マップ​を​速やか​に​整備​し、​関連​する​技術​を​製品​や​機能​へ​と​統合​する​ため​の​枠組み​を​構築​する​必要​が​あり​ます。​新しい​テクノロジ​の​実現​可能性​を​証明​する​に​は、​シミュレーション​も​重要​ですが、​新しい​アイデア​を​プロトタイプ​として​具体​化​する​こと​が​不可欠​です。

内容

V2X​の​現在​と​テクノロジ​による​制約

自動車​と​家電​製品​の​境界​が​あいまい​に​なる​につれて、​自動車​メーカー​は​5G​接続​を​含む​幅広い​通信​技術​を​備え​た​システム​を​提供​する​こと​が​求め​ら​れ​てい​ます。​ところが、​5G​による​デプロイメント​は、​主に​3GPP​が​策定​する​標準​定義​と​その​作業​過程​に​大​きく​左右​さ​れ​ます。​この​記事​の​執筆​時点​では、​3GPP​の​最新​リリース (Release 16) は、​5G Phase 2​の​仕様​を​定義​し​てい​ます。​対象​と​なる​ユース​ケース​として​は、​その​ユース​ケース​は​隊列​走行 (platooning)、 車両、​路側​装置、​歩行​者​間​で​情報​共有​する​ため​の​拡張​センサ (extended sensors)、​自動​運転 (automated driving)、​クラ​ウド​ベース​の​遠隔​操作 (remote driving) から​構成​さ​れ​ます[2]

一方、​こうした​意欲​的​な​リリース​スケジュール​によって​さらに​多く​の​ユース​ケース​が​定義​さ​れる​ことに​なり、​今後​登場​する​すべて​の​要件​や​定義​に​自社​製​C-​V2X​ユニットを速やかに適合させ、​プロトタイプ​を​製造​し​なく​て​は​なら​ない​という​プレッシャー​が​各​自動車​メーカー​に​の​しか​かって​い​ます。​通常、​こうした​状況​が​意味​する​の​は​多額​の​投資​です。​多く​の​場合、​テスト​装置​の​アップ​グレード​は​不可能​な​ため、​事実​上、​大きな​リリース​が​ある​たび​に​各​メーカー​は​新しい​装置​を​購入​しな​け​れ​ば​なり​ま​せん。NI​では、​これを自動車コネクティビティ市場における厳しい現実とは考えずに、​テスト​テクノ​ロ​ジ​の​課題​と​捉​え​ます。

図​1.急速​に​変貌​する​テクノロジ

テスト​ベッド​が​標準​に​与える​影響

グローバル​システム​フォー​モバイル​コミュニケ​ー​シ​ョ​ンズ (GSM) など​の​過去​の​標準​と​同じ​よう​に、​コンバージェンス​に​向け​た​本格​的​な​取り組み​が​行​われ​てい​ます。​国際​標準化​は、​社会​を​変える​大きな​可能性​を​秘​め​てい​ます。​図​2​は​GSM​が​開始​さ​れ​た​経緯​を​示し​てい​ます。​参加​者​が​アイデア​を​吟味​し、​議論​を​重ね​た​末​に、​標準​を​定義​しま​した。​そして​標準化​が​策定​さ​れ​た​後​は、​いたるところで採用され、​最終​的​に​数​十億​もの​デバイス​に​導入​さ​れ​ま​した。

今日、​セルラー​V2X​すなわち​C-​V2X​は、​転換​点​に​あり​ます。​数々​の​アイデア​は​短時間​で​収束​し​て​標準​に​組み​込​まれ​ます。​この​ため、​貴社​が​この​標準​に​何らかの​インパクト​を​与える​チャンス​は​今​が​ピーク​な​の​です。​この機会を逃さず、​差別​化​を​推進​し、​市場​で​の​競争​力​を​高め​なく​て​は​なり​ま​せん。​ただし、​具体​的​な​メリット​が​必要​です。​どのようにすれば、​ご​自身​の​アイデア​や​ユース​ケース​の​実現​性​を​検討​し​証明​できる​ので​しょう​か。

図​2.大きな​転換​点​へ​の​アプローチ [3]

答え​は​明白​です。​プロトタイピング​です。​システム​の​複雑​さ​が​増す​と、​シミュレーション​では​実現​性​を​証明​でき​ま​せん。​テスト​ベッド、​つまり​プロトタイプ​を​使用​する​必要​が​あり​ます。​テスト​ベッド​は​ワイヤレス​の​分野​で​広​く​使用​さ​れ​てい​ます。​米国​国立​科学​財団 (NSF) が​主催​する​ワークショップ​の​1​つ​で、​次​の​よう​な​結論​が​出​てい​ます。​「理論​的​研究​において​提示​さ​れ​た​仮説​が​現実​世界​によって​否定​さ​れる​傾向​に​ある​こと​は、​経験​から​明らか​だ。​そのため、​きわめて​現実​的​な​動作​条件下​で​の​評価​に​は​テスト​ベッド​が​重要​な​ツール​となり、​急進​的​な​アイデア​を​完全​かつ​実用​的​な​システム​で​テスト​できる​よう​な​テスト​ベッド​の​開発​が​不可欠​で​ある。」[4]

NI​が​果たす​役割

これまで​NI​が​ワイヤレス​の​プロトタイピング​に​携​わ​って​きた​過程​で、​ソフトウェア​定義​の​テスト​ベッド​ソリ​ュ​ー​ション​を​選択​し​て​成功​した​研究者​に​数多く​出会い​ま​した。​これ​と​同じ​ビルディング​ブロック​を​自動車​産業​でも​使う​こと​が​でき​ます。

  • NI​の​ソフトウェア​接続​型​アプローチ — この​方法​は、​C-​V2X​テクノロジ​を​研究​し​て​短時間​で​プロトタイプ​を​作成​する​上​で​大変​効果​的​です。​ここ​では、​シミュレーション​から​実装​に​いたる​まで、​統合​さ​れ​た​設計​ソフトウェア​と​市販​の​ハードウェア​を​使用​し​ます。​ソフトウェア​を​中核​の​要素​と​する​こと​で、​目的​の​アプリケーション​に​必要​な​システム​を​適格​に​構築​でき​ます。​アプリケーション​に​必要​と​なる​もの​が​変​わっ​た​場合​でも、​ソフトウェア​で​自分​の​アイデア​を​構築​でき​ます​し、​また​既存​の​ハードウェア​を​再​利用​できる​ため、​それ​まで​の​投資​が​無駄​に​なり​ま​せん。 

  • NI​の​エコ​システム — テスト​ベッド​の​開発​を​促進​する​に​は、​エコ​システム​の​活用​が​不可欠​です。​クローズド​ターン​キー​ソリ​ュ​ー​ション​と​異​なり、​NI​エコ​システム​では、​C-​V2X​の​操作​を​すぐ​に​開始​する​こと​が​でき​ます。​また、​要件​の​変更​に​応​じ​て​テスト​ベッド​の​カスタマイズ​や​強化​が​可能​です。​たとえば、英国​ウォーリック​大学 (University of Warwick) 工学​系​学部​の​WMG​に​所属​する​インテリジェント​ビークル​研究者​が​開発​した​コネ​ク​テッド​カー​の​シミュレータ​環境​は、​NI​の​テクノロジ​と​エコ​システム​を​活用​し​てい​ます。

V2X​ツール​と​ソリューション

この​3GPP NR V2X​作業​項目 [5] で​述​べら​れ​て​いる​主要​な​C-​V2X​の​ユース​ケース​は、​Vehicles Platooning (隊列​走行)、​Extended Sensors (車両、​路側​装置、​歩行​者​間​で​情報​共有​する​ため​の​拡張​センサ)、​Advanced Driving (自動​運転)、​Remote Driving (クラ​ウド​ベース​の​遠隔​操作) の​4​グループ​に​分け​ら​れ​てい​ます。​これらの​ユース​ケース​に​は、​きわめて​厳しい​要件​を​満たす​ため​に、​レイ​テン​シ​が​低​く​信頼​性​の​高い​新しい​NR​サイド​リンク​通信​戦略​が​必要​です。​その​戦略​では、​LTE-​V2X、​NR V2X、​DSRC​など​の​マルチ​無線​アクセス​技術 (Multi-​RAT) がサポートされ、​6 GHz​超​の​周波数​帯​が​検討​対象​となり​ます。​最新​の​無線​規格​の​導入​が​可能​か​どうか​は、​車両​通信​シナリオ​の​実験​によって​判断​でき​ます。​以下​に​紹介​する​V2X​ツール​と​ソリューション​は、​拡大​を​続ける​エコ​システム​を​提供​し​ます。


図​3.NI SDR​プラットフォーム​に​基づく​S.E.A.​社​の​V2X​テスト​ベッド (画像​提供: S.E.A社)

  • NI​ソフトウェア​無線 (SDR) を​使用​する​こと​で、​ワイヤレス​通信​システム​の​プロトタイプ​を​短期間​で​作成​し、​より​迅速​に​成果​を​上げる​こと​が​でき​ます。​低コストながらも柔軟性に優れた​SDR​により、​普通​の​PC​が​次世代​ワイヤレス​プロ​ト​タイ​ピン​グ​ツール​に​変わり​ます。LabVIEWと​の​組み合わせ​による​NI SDR​ソリューション​は、​ソフトウェア​と​ハードウェア​を​かつて​ない​レベル​で​統合​し、​貴社​の​イノベーション​を​加速​し​ます。​また、​標準​規格​に​基​づ​い​た​アプリケーション​フレーム​ワーク​は​そのまま​使用​する​こと​が​でき​ます。​これ​によって、​特定​の​コンポーネント​を​対象​と​した​迅速​かつ​集中​的​な​イノベーション​を​実現​し​ます。
 
図​4.移植​性​と​パフォーマンス​に​優れる​NI SDR​プラットフォーム
 
  • あらゆる​機能​を​網羅​した​V2X​ソリューション​を​実現​する​ため​に、​NI​は​S.E.A.​社​と​提携​し、​要件​変更​に​伴う​テスト​ハードウェア​交換​の​手間​と​費用​を​省​い​て、​以下​の​こと​を​可能​にし​ます。

    • 第​1​日​目​に​行う​シナリオ​を​直ちに​テスト​する。​または、​自分​の​シナリオ​を​カスタマイズ​する。
    • オープン​または​クローズド​ループ​の​HIL (Hardware-​in-​the-​Loop) で​V2X​サブシステム​の​テスト​を​実行​する。
    • テスト​で​すべて​の​レイヤ​へ​アクセス​する​こと​によって、​さらに​速​く、​より​徹底​した​テスト​を​実行​する。
    • ハードウェア​交換​に​コスト​を​かける​こと​なく、​現在​および​将来​の​すべて​の​3GPP​標準​に​対応​する。

まとめ

技術​要件​を​常に​把握​し、​トレンド​の​変化​に​適応​できるだけ​の​十分​な​柔軟性​を​維持​する​必要​が​あり​ます。​貴社​が​ご​自身​で​テクノ​ロ​ジ​ロード​マップ​を​整備​し、​関連​する​技術​を​製品​へ​と​統合​する​ため​の​枠組み​を​構築​できる​よう、​必要​な​機能​を​NI​が​提供​し、​貴社​の​負担​を​軽減​し​ます。​NI​の​アプローチ、​拡大​を​続ける​エコ​システム、​ワイヤレス​研究者​の​実証​済み​ベスト​プ​ラ​ク​テ​ィ​ス​を​利用​する​こと​で、​自動車​エンジニア​は​V2X​テスト​ベッド​を​構築​し​て​すぐ​に​検証​できる​よう​に​なり、​その​結果、​製品​の​差別​化​を​推​し​進​め​て​市場​で​の​競争​力​を​高める​こと​が​でき​ます。

関連​情報

V2X​の​プロトタイピング​と​シミュレーション​の​詳細​は、​以下​を​ご覧​くだ​さい。

 

参考​資料
 

[1] FCC votes to allow Wi-​Fi, C-​V2X in 5.9GHz.​2021​年​1​月​29​日​に​アクセス、https://​www.lightreading.com/​4g3gwifi/​fcc-​votes-​to-​allow-​wi-​fi-​c-​v2x-​in-59ghz/​d/​d-​id/​765536

[2] 3GPP Release 16。​2021​年​1​月​29​日​に​アクセス、https://​www.​3gpp.org/​release-16

[3] History of GSM.“Who Created GSM?” 2019​年​2​月​18​日​に​アクセス、http://​www.gsmhistory.com/​who_created-​gsm/

[4] NSF Workshop on Future Wireless Communication Networks.​『Report:NSF Workshop on Future Wireless Communication Research (ワイヤレス​通信​研究​の​将来​に関する​米国​国立​科学​財団 (NSF) の​ワークショップ) レポート)』​の​29​~​31​ページ。​2019​年​2​月​18​日​に​アクセス、https://​cpb-​us-​e1.wpmucdn.com/​blogs.rice.edu/​dist/​2/3274/​files/​2014/08/​nsf-​wireless-​workshop.pdf

[5] 3GPP TSG RAN Meeting #80。​『Study on NR V2X』。 2019​年​2​月​18​日​に​アクセス、http://​www.​3gpp.org/​ftp/​tsg_ran/​TSG_RAN/​TSGR_80/​Docs/​RP-181480.zip