NIスイッチメリット

概要

多くの自動テストアプリケーションでは、さまざまな計測器やDUT (検査対象デバイス) に対して信号経路設定が必要です。多くの場合、計測器とDUTとの間で信号経路設定を容易に行えるようにするためにスイッチネットワークが構築されています。スイッチを有効に活用すれば、信号経路設定を実現するだけでなく、測定の柔軟性を高めたり、同じ測定を繰り返し行えるようにしたりすることができます。さらに、高価な計測器を数多く購入することなく、低コストで測定チャンネル数を増やすことも可能になるのです。

 

自動テストシステムにスイッチを追加する場合、以下の3つが主な選択肢となります。(1) カスタムのスイッチネットワークを自社で設計してシステムに組み込む、(2) GPIBまたはイーサネットを介して制御可能なスタンドアロンのボックス型スイッチ製品を使用する、(3) デジタルマルチメータ (DMM) をはじめとする各種計測器を複数台組み込むことが可能なモジュール式のプラットフォームを採用する。ほとんどの場合、スイッチ製品は他の計測器とともに使用します。そのため、各種計測器と緊密に統合できることが前提になります。それを可能にするのが、モジュール式でCOTS (商用オフザシェルフ) のスイッチ製品です。

 

NIは、モジュール式PXIプラットフォーム用のスイッチトポロジを豊富に提供しています。これらのモジュールをRFアナライザ、ジェネレータ、デジタルマルチメータ、オシロスコープなどのNI PXI計測器と連携させることにより、フレキシブルで豊富なチャンネルの自動テストシステムを構築できます。

内容

ハードウェア概要

NIは、DCからRFまで幅広いI/Oポイントに対応した高密度なスイッチを提供します。これらのスイッチの用途は、汎用的な機能テストから、半導体のパラメトリックテスト、高出力の欠陥生成、最大40 GHzのレーダーテストなど、よりアプリケーション固有のモジュールにまで及びます。メカニカルアーマチュア、リード、ソリッドステート、電界効果トランジスタ (FET) などのリレータイプがこれらのスイッチに使用されています。

 

図1.NIは、高電圧、高電流、高周波数信号に対応した豊富なPXIスイッチを提供しています。

 

NIスイッチは、以下の利点によりテストの開発プロセスを簡略化し、テスト全体のコストを削減します。

 

ハードウェアスキャン

自動テストアプリケーションでは、スループットを最大に高めることが求められます。システムのスループットを高めるため、NIスイッチモジュールの多くはハードウェアスキャンをサポートしており、スイッチのオンボードメモリにスイッチの接続リストをダウンロードすることができます。また、PXIバックプレーンを使用してDMMなどの他の計測器と通信できます。これにより従来のソフトウェアベースのスキャンリストによるオーバーヘッドが解消し、スキャンリスト実行の確定性と速度が向上します。

ハードウェアタイミングのハンドシェイクにより、DMMやRFアナライザのような計測デバイスから計測ごとにデジタルパルスを発生させ、スキャンリスト内の次の接続を閉じるためのスイッチをトリガします。すべての計測シーケンスをハードウェアタイミングで動作させ、ソフトウェア遅延が追加されないことで、スループットを最適化することができます。図2は、この処理を示します。

 

図2.スイッチとDMMのハンドシェイクにより、ハードウェアタイミングのスキャンリストの作成が可能。  

 

この確定性により、追加のデータ処理などのソフトウェアのアクティビティが (ソフトウェアスキャンを使用したときのように) ハードウェアのハンドシェイクテストの結果に影響を及ぼすことはありません。

表1は、ハードウェアハンドシェイクの実行時間の改善を示しています。これらは、FETベースのマルチプレクサとNI PXI DMM使用時にDMMのスキャンを1,000回スイッチングした際のベンチマーク結果です。ハードウェアハンドシェイクを使用することにより、実行時間が46パーセント改善されました。ハードウェアハンドシェイクは、ソフトウェアのスキャン速度を著しく低下させる追加のソフトウェア処理タスクの影響を受けないことにもご注目ください。

 

表1.スキャンによりハードウェアタイミング式の計測を促進し、スループットを改善。

 

予知保全 

NI PXIスイッチモジュールは、モジュール上でのリレーサイクル数を追跡し、保存することができます。リレーカウントの情報により、スイッチモジュールの寿命時期を予測することができます。この機能により、交換が必要なリレーを特定するプロセスを合理化し、コストがかかるダウンタイムを回避することができます。

一部のマトリックススイッチはNIスイッチヘルスセンターを搭載しています。これはリレーの障害を診断するビルトインツールです。スイッチヘルスセンターは、指定されたモジュール内のすべてのリレーをテストし、開閉状態が固着しているリレーを示すグラフィカルなレポートを生成します。 

図3.スイッチヘルスセンターにより、特定のマトリックススイッチ用の包括的なメンテナンスツールを提供。

 

NIは、FETとソリッドステートリレー (SSR) を使用する複数のスイッチモジュールも提供しています。これらのコンポーネントには可動部品がないため、機械的な寿命の制限がありません。 

 

コンプライア安全性 

NIスイッチモジュールはすべて、関連する認証機関による認証を得ています。国や地域によっては、その地域内で使用するために認証が必要なこともあります。CEなどの一部の認証については、社内でコンプライアンスをテストすることができます。ただし、NIでは多くのモジュールについて、第三者機関による追加のコンプライアンス試験を求めています。

図4.NIスイッチモジュールは適切な電圧レベルの認証を取得済み。

 

60 VDCまたは30 VAC、および42.2 Vpを超える電圧定格のNIモジュールは、高電圧モジュールとみなされます。これらのモジュールはUL (さらに、必要に応じてVDEまたはDemko) の認証を受け、すべての安全性規定への準拠が保証されています。

 

統合サポート 

豊富なPXIスイッチの他、NIはオシロスコープ、関数発生器、RFジェネレータ/アナライザなどのPXIベースの計測器を提供しており、システムレベルのサービスとサポートを備えた、完全統合された自動テストシステムを構築できます。NI システム保証プログラムでは、完全にアセンブリおよびテストされたPXIシステムを、ソフトウェアをインストールした状態でお届けします。お客様のシステム向けにカスタマイズしたドキュメントもお付けします。NI システム保証プログラムの追加サービスでは、標準の3年間保証を3年または5年延長し、お客様のPXIシャーシ内の全モジュールに対して修理サービスを提供します。10億ドル規模の企業として、NIは先進的な修理オプション、グローバル管理されたスペア部品、予防保全、ライフサイクル設計などのカスタマイズされたサービスを提供することにより、長期にわたって持続可能なテストシステムの構築と維持を支援いたします。

図5.NI システム保証プログラムでは、お客様のシステムの稼働状態を維持するための迅速かつ容易な手段を提供。

 

さらに、NIスイッチソフトウェアは、NI TestStand、LabVIEW、LabWindows™/CVIのようなソフトウェア環境で最適化され完全にテスト済みであるため、あらゆるPXIベーススイッチのソフトウェアパフォーマンスを最大限に引き出します。また、世界各国のNIアプリケーションエンジニアがNIスイッチに関する問題のローカルサポートだけではなく、NI PXI製品やNIソフトウェアに関する問題のトラブルシューティングもお手伝いします。お客様のテストシステムのハードウェアやソフトウェアコンポーネントのサポートを提供することにより、NIは初期の開発作業を簡略化し、システムの稼働状態を維持します。

 

ソフトウェアサポート 

インタラクティブに開閉するリレーから、テスト管理ソフトウェアと連携するアプリケーションレベルのソフトウェアの開発まで、NIは幅広い機能を提供する広範なスイッチソフトウェアツールを提供します。さらに、NI-SWITCHドライバにより、NIの他の計測器ドライバと一貫したソフトウェアエクスペリエンスを提供しているため、他の計測器のプログラミングから得られた学習や知識を再利用することができます。

 

ソフトフロントパネル

NIスイッチにはインタラクティブなソフトフロントパネルが備えられており、迅速な起動とモジュールとの連携、開閉式リレーの基本操作を支援します。ソフトフロントパネルではアクティブなスイッチ接続のステータスがリアルタイムに更新されるので、テストの実行中にリレーの接続を監視および変更することができます。さらに、スイッチのソフトフロントパネルからオンボードリレーカウントにアクセスし、各リレーの稼働期間に何回動作したかを把握することができます。

図6.ソフトフロントパネルでスイッチモジュールのリレーをインタラクティブに制御。

 

LabVIEWまたはLabWindows/CVIプログラミング

NI PXIスイッチはNI-SWITCHドライバでプログラムされており、モジュールやトポロジの違いに関係なく、あらゆるNIスイッチに一貫したドライバとプログラミングインタフェースを提供します。NI-SWITCHドライバは、LabVIEW、LabWindows/CVI、NI Measurement Studioなどのプログラミング環境に最適化されています。開発とテストの両方において高い統合性を発揮するNIスイッチは、使いやすさの点で他社製計測器ドライバをはるかに凌ぎます。以下に、NIスイッチのソフトウェア機能の詳細の一部を示します。

  • ビルトインされた計測パレット
  • 学習用サンプルプログラム
  • 詳細かつ統合されたLabVIEWヘルプ
  • 充実したエラー処理とメッセージ機能

図7.NI-SWITCHとNI-DMMドライバのサンプルプログラムにより、他の計測器でスイッチを使用する方法を修得。

 

NI Switch Executive

これらの基本的なプログラミングAPIに加えて、NIはNI Switch Executiveと呼ばれるソフトウェアプログラミングパッケージを提供しており、スイッチプログラミングの全体像を示すことによりお客様のシステム開発を加速させます。NI Switch Executiveは以下の機能を提供します。

  • エイリアシング: 全体像を把握せずに数千ものチャンネルを処理しても、混乱を招き時間を浪費します。エイリアシング機能があれば、チャンネルに名前を付けて直感的に経路設定し、プログラミングを簡略化できます。
  • グラフィカル構成: NIスイッチのグラフィカル経路構成ユーティリティにより、ポイントアンドクリックで構成できるようになります。テキストフィールドの代わりにスイッチの図を利用して、個々の経路や経路のグループを作成できます。このインタラクティブなユーティリティにより、チャンネルの名前をカスタマイズして、有線接続されたチャンネルを定義することもできます。
  • Excelとの統合: このインポート/エクスポート機能により、仮想デバイスをファイルにエクスポートし、Microsoft Excelで開くことができます。ここから、テキスト編集機能と高度な演算式により構成を編集してチャンネルカウントを拡張できます。変更が終了した後、構成を新規または既存の仮想デバイスにインポートできます。Excelのテキスト編集機能により、プログラミングに要する時間を大幅に短縮できます。

図8.NI Switch Executiveにより全体像を把握し、プログラミングに要する時間を短縮。

 

さらに、NI Switch Executiveを使用すると、対話式デバッグ、検証、レポート作成ツールによりスイッチコードの保守が容易になります。また、LabVIEWとLabWindows/CVI用のAPIを使用できます。このほか、NI TestStandからNI Switch Executiveの経路と経路のグループをネイティブに呼び出し、お客様の自動テストシステムの開発を簡略化し、最大限にコードを再利用できます。NI Switch ExecutiveとNI TestStandは、NI Developers Suite基本パッケージの自動テストオプションに含まれる、2つの自動テスト専用ソフトウェアツールです。

 

適切スイッチからられる利点

モジュールとシステムのどちらにおいても、NI PXIスイッチは、スループットと開発の効率化を向上させるツールから、PXIシャーシに搭載された他の計測器との緊密な統合まで、さまざまなメリットを提供します。さらにNIは、長期にわたって使用するテストシステムの迅速な起動と維持を支援する、広範なソフトウェアエクスペリエンスを提供します。PXIのフォームファクタは、豊富なリレータイプとI/O仕様を含む数百種類のスイッチトポロジから成ります。

 

 

LabWindowsという商標は、Microsoft Corporationからの使用許諾を得て使用しています。Windowsは、Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標です。