From Friday, April 19th (11:00 PM CDT) through Saturday, April 20th (2:00 PM CDT), 2024, ni.com will undergo system upgrades that may result in temporary service interruption.

We appreciate your patience as we improve our online experience.

パルスSMU出力使用した電力IV特性評価

内容

ソースメジャーユニット (SMU) にはすべて、DC電力境界があり、これは、シンク/ソース動作双方における計測器の電圧と電流の限界値を示します。ただSMUの中には、一定のDC電力を供給するのではなく、電流/電圧をパルス出力することによって、基本的なDC電力境界の範囲外で動作させることができるものがあります。広いパルス境界における出力制限であっても、これらのSMUは高電力IVの特性評価で非常に役立ち、全体がよりシンプルになります。

パルス出力メリット

パルス出力に対応したモードでテストを行うことには、以下のような2つのメリットがあります:

電力境界広がる — 単一SMUによって、非常高い瞬時電力テスト可能

高電力の供給は、高輝度LEDや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ (IGBT)、MOSFETといったデバイスのIV特性評価に役立ちます。また高電力のパルスのシンク動作は、電源管理ICなどのようなデバイス用の負荷としてSMUを動作させる場合に有用です。パルス出力範囲が広いSMUを使用すれば、複数のSMUをまとめてスタックすることなく高電力でのテストを行い、より高い電力が可能となります。

DUT自己発熱抑えられる — 高電力コンポーネントテスト必要ヒートシンクなどインフラ最少化 (または不要に) すること可能

全般に、SMUが供給する電力は、テスト対象デバイス (DUT) において熱として放散されます。これにより、温度上昇を引き起こし、DUTの電気的特性や物理的特性が変化します。ある一定の温度に達すると、DUTの特性が著しく変化してIV特性に歪みが生じたり、場合によっては、DUTが損傷してしまうこともあります。一定のDC電力を供給するのではなく、パルス出力によって電力を供給すれば、DUTを通る平均電力損失が低下し、自己発熱の影響を最小限に抑えることができます。実際、多くのテストエンジニアはパルスを利用したテストは非常に有用であると考えています。複雑な熱管理システムを構築することなく、高電力デバイスのテストを実施できるからです。

パルス出力アーキテクチャ

通常、パルス出力範囲が広いSMUは独自の出力用アーキテクチャを使用して、定格のDC電力境界を超える範囲の電力を一時的に出力するようにしています。例えば、高精度のシステムSMUであるNI PXIe-4139では、20 W DCと比較して最大500 Wのパルスを生成できます。

 

パルス出力用のアーキテクチャ

 

SMU (Vpwr) の内部電源を十分な内部キャパシタンスによってサポートすることで、最大DC出力である20 Wを一時的に超えられるようになっています。これにより、NI PXIe-4139は出力段に制限を課すことなく、大電力の短いパルスを供給することが可能です。

NI PXIe-4139のようなSMUでは、電源からの供給電力を超える電力を一時的に出力することになります。したがって、その電力をどれだけ速く出力できるか、またどれだけ長く出力できるかという点に制約があります。一般的には、SMUが所望の電力を均一に出力でき、過剰な電力のシンクによって過熱しないことを保証するために、パルス出力の主な仕様には制限が設けられています。SMUを広いパルス出力境界で動作させる場合、デューティーサイクル、最大電力、パルスの最大オン時間、最小オン時間、パルスの最小サイクルなどの仕様を確認することが重要です。

 

SMUでのパルス出力

 

パルステストDCテスト比較

SMUを使用する半導体テスト機器は、何らかの形態のソースと計測操作を伴うものが多いです。その基本的な手法であるDCスイープでは、シーケンスが完了するまで出力を段階的に増加させるということが行われます。以下の図は、5つのステップから成る電流値のシーケンスを示しています。

 

パルス型スイープとDCスイープは、恐らく設定値を出力し、それが一定の値に落ち着くのを待ってから、測定を行うという手順を踏むという点では同様です。パルステストとの主な違いは、短いパルス持続時間後にソースがバイアスレベルに戻るという点です。大抵の場合、バイアスレベルはDUTをオフにするために設定されます (例えば、0 Vまたは0 A)。

 

理想的な条件下では、上記の2つのグラフのパルスシーケンスとDCシーケンスは、同じIVデータを返します。しかし、これまで述べたように、DCシーケンスは、DUTを介してより多くの熱を放散するので、動作が異常になり、テスト結果の低下を招く恐れがあります。そのため、この様な用途では、パルスシーケンスの方が適しています。  

パルスモードでテストする場合、パルス幅は、デバイスが完全なオン状態に達して、安定した測定を行うのに長さが十分であるものの、DUTの自己発熱を最小限に抑えるのに十分短くする必要があります。加えて、パルスの出力時には、高速でクリーンなSMUの応答がより重要になります。これは、SMUが出力を短い増分ステップで徐々に増加させるのではなく、必ずパルスバイアスレベルから開始しているためです。

DUTのインピーダンスと求められるパルス特性によっては、SMUの過渡応答が速すぎたり遅すぎたりすることがあります。応答が速すぎると、出力がオーバーシュートしたり不安定になったりして、DUTが破損する恐れがあります。応答が遅すぎると、SMUはパルスオン時間の間に所望の出力に達しません。どちらの場合も、SMUが十分高速に測定できる状態に達しないため、パルス幅を広げる必要が生じます。これにより、テストシーケンス全体が遅くなり、DUTの放熱量が増加します。

 

幅が非常に狭いパルスを生成する場合、上記の2つの状況を避けることが不可欠です。良好なIVデータが得られなくなるからです。下図に示すようなクリーンなパルスをSMUで確実に生成するには、十分な速度でサンプリングが可能な計測器によって、詳細な応答の過渡特性を取り込む必要があります。従来、この作業には外部のオシロスコープが使われていましたが、新しいSMUの中には、デジタイザ機能を内蔵しているものもあります。 

 

SMUでクリーンなパルスを生成

パルスをデジタル化するもう1つの利点として、必要なソース遅延と測定ウィンドウ (アパーチャ遅延) を視覚化することがあります。通常、SMUではソース遅延直後に測定を開始します。そのため、この値の最適化は、パルス化にとって重要です。ソース遅延が短すぎると、出力がまだ立ち上がっている最中にSMUによる測定が始まり、誤ったデータが得られてしまいます。一方、ソース遅延が長すぎる場合には、測定用ウィンドウが短くなり、測定精度が落ちます。

用途例:電力LEDパルステスト

SMUによるパルスを実演するために、NI PXIe-4139を使用して、CREEからの高出力LEDを特性評価します。このLEDのIV要件 (Vf=37 V、Imax=2.5 A) を満たすためには、SMUを広いパルス出力範囲で動作させる必要があります。これにより、従来の20 W DC境界と比較して、最大500 Wのパルスを発生させることができます。

 

SMUによるパルスの実演

IVの特性評価のために、このLEDには0~2.5 Aの電流スイープを適用します。従来のDCシーケンスでこのLEDの特性を評価しようとすると、2つの問題が生じます。1つは、IVスイープに必要な電流と電圧を得るためには、複数のSMUを並列に接続する必要があるということです。SMUを増やすと、配線とプログラミングの観点からセットアップが複雑になるだけでなく、テストシステムのコストとサイズも増加します。もう1つは、この小さなLEDに100 Wにも達する電力を供給することに起因する問題です。下図に示すように、ヒートシンクを付けないと、このLEDはDC電力を長時間供給することによって損傷してしまいます。SMUをパルスモードで使用すれば、ヒートシンクを追加することなく、単一の計測器でLEDに対する完全なIVスイープを行うことができます。つまり、2つの問題のいずれも回避できるということです。

 

テストをできる限り高速に実行しつつ、LEDの発熱を最小限に抑えるために、パルス幅は計測器の最小設定値である50 μsとします。使える50 μsパルスを生成するのは難しいため、SMUからクリーンで安定したパルスを確実に取得するために、NI PXIe-4139の2つの独自の機能を使用します。まず、パルスの詳細な過渡特性を調べるために、計測器をデジタイザとして使用します。次に、NI SourceAdaptテクノロジを使用して、オーバーシュートや発振のない高速立ち上がり時間用にパルスをカスタマイズします。

 

パルス生成デジタル化

高電力で幅の狭いパルスを生成するには、高速で安定したSMUの応答を確保することが重要です。この例で使用したNI PXIe-4139というSMUは、最大1.8 MS/秒でサンプリングが可能なデジタイザモードを備えています。これにより、同じSMUの測定機能を使用して、出力をデジタル化できます。この機能がなければ、電流と高電圧を共に測定できる外部オシロスコープが必要になります。

 

NI PXIe-4139によるパルス生成

 

SMUのパルスをデジタル化することで、パルスの特性を詳細に調査し、SMUがシーケンスの各ステップで正確に測定を行えるかどうかを確認することができます。この例では、50 μsの時間窓内では整定が完了しないことが確認できました。つまり、この設定ではIVデータを正確に取得することはできないということです。この時点で、パルスのオン時間を長くするか、あるいはSMUの応答を調整する必要があります。

 

NI SourceAdaptによるパルス整形

NI PXIe-4139はNI SourceAdaptと呼ばれるテクノロジを搭載しているので、SMUの過渡応答をカスタマイズすることができます。この例では、この機能を使用して、オーバーシュートのない安定した応答を維持しつつ、パルスの立ち上がり時間を改善する必要があります。

 

上図は、SourceAdaptの設定を調整した後のパルス特性を示したものです。上のパルスを見れば、SMUに必要な整定時間とアパーチャ遅延を判断できるので、その最終的なIVスイープにより正確なデータを取得できるという確信を持つことができます。以下のグラフは、SMUが0から2.5 Aまでスイープし、シーケンスの各ポイントで電圧と電流を測定したものです。

 

 

関連情報

SMUのパルス出力機能は非常に便利なものです。これにより、複数のSMUとヒートシンクを使って複雑なテストシステムを構築することなく、高電力デバイスのテストを行うことができます。このような利点により、多くのテストエンジニアは、従来のDCシーケンスの代わりにパルス機能を利用するようになっています。高出力パルスによるテストを構築する場合、SMU応答、パルス仕様、およびパルス特性調査機能はすべて、優れたIVデータを取得する上で不可欠です。