FieldDAQ選択堅牢分散データ収集実現

概要

自動車、航空機、産業機器などの複雑な電気機械的システムが高度化するに伴い、イノベーションに後れを取らないためにも、検証テストの厳格化は必須となります。これらのシステムの安全性、信頼性、品質を保証するために、テスト中に高確度なデータを取得することが基本となります。

テストエンジニアは、このようなニーズを満たすために、ノイズの影響を受けやすい集中型の計測システムを避け、デジタル化と信号調節をセンサのできるだけ近くで行う分散型計測ノードに移行しています。しかし、分散型計測トポロジが増えることで、新しい課題も発生しています。DAQデバイスには、過酷なテスト環境での耐久性だけでなく、システム全体で同期したデータの取得や、シームレスな統合および拡張が必要です。

NIの新しいFieldDAQデバイスは、これまで製造されてきたNI DAQデバイスの中で最も堅牢なものです。FieldDAQを使用して、雨、泥、雪、泥などの非常に厳しいテストセル環境や屋外環境で、信頼性の高い高確度な計測を行う方法をご紹介します。

内容

最も過酷環境でも計測保証


各センサのできるだけ近くに分散型計測をデプロイする場合、DAQハードウェアは過酷で厳しい条件にさらされます。 そのため通常のデスクトップ装置では、確度の低いデータが取得されたり、完全に故障したりすることがあります。保護等級、耐衝撃/振動の認証、動作温度範囲は、DAQハードウェアがテスト環境に耐えられるようにするための重要な仕様ですが、こうした条件下でデータの品質を保証するには十分ではありません。


FieldDAQは、過酷な環境でも高品質の計測が可能です。FieldDAQデバイスは、最高でIP67 (防塵および耐水) の保護等級の評価を受けており、-40~85℃の環境で動作し、100 gの衝撃と10 grmsの振動に耐えることができます。これらのデバイスは、現場への即応性があるだけでなく、熱安定性を備え、広い温度範囲で確度ドリフトを最小限に抑えるように設計されています。たとえば、FieldDAQ熱電対デバイスは、-40~85℃の動作温度範囲全体で絶対確度を1.19℃に維持します。

  

図1. 計測器のセットアップ時間を短縮、最大IP67の保護等級、-40~85℃の温度範囲、100 gの耐衝撃性、10 grmsの耐振性により、過酷な環境での実地試験に対応


FieldDAQデバイスは、優れた信号調節機能と診断機能も備えており、外部干渉による影響を低減し、計測確度を向上させます。内蔵アンチエイリアスフィルタにより、高周波数ノイズが信号にエイリアスされるのを防ぎ、チャンネル間の絶縁により、システムのグラウンドループから生じるノイズを除去します。

 

システム信頼向上によるリスク低減


堅牢なDAQハードウェアであっても、システムを実世界の厳しい環境にさらすと、コストのかかるダウンタイムが生じるリスクが高まります。数日、数週間、数か月、または数年間にわたって、24時間365日実行されるテストでは、更にリスクが高まります。システムの信頼性を強化することは、不適切なタイミングでのソフトウェアの更新やネットワーク障害など、予期しない事態による問題を最小限に抑えるために不可欠です。

FieldDAQでは、データリンクの冗長性とリアルタイムOSのサポートにより、テストの実行を維持することができます。ネットワーク接続の切断や破損が起きた場合、リングトポロジは代替経路を介してデータを自動的にリダイレクトすることにより、データ損失のリスクを軽減します。FieldDAQでは、内蔵の統合型スイッチを使用して、複数のユニットをデイジーチェーン接続し、リングトポロジを簡単に実現できます。

図2. FieldDAQをリング構成で使用し、破損した接続によるデータ損失のリスクを軽減

FieldDAQは、NI Linux Real-Time OSサポートによるマルチタスク処理で、ソフトウェアの中断のリスクを低減します。汎用オペレーティングシステムは、多くの異なるアプリケーションにリソースと実行時間を与えるようにする必要があるため、クラッシュおよび他の問題が発生する機会や頻度が増加します。NI Linux Real-Time OSは、使用されるコンポーネントを最小限に抑え、システム障害の可能性を低減します。FieldDAQは、産業用コントローラ、CompactDAQ、CompactRIOなど、さまざまなLinux Real-Timeホストに接続できます。

 

不正確同期タイミングによる後処理オーバーヘッド除去


正確なタイミングと同期は、分散型計測システムで重要な要素であり、テスト対象となる構造物やデバイス全体のさまざまなノードからのデータを関連付け、解析する場合に必要となります。通常、正確なタイミングと同期はクロック信号およびトリガ信号を物理的に共有することによって実現できるため、サブシステム間のケーブル長を同じにして、伝搬遅延の変動を最小限に抑えることが重要です。伝播遅延が起きると、データのタイムスタンプを揃えるために集中的な後処理が必要になる場合があります。

FieldDAQでは、Time Sensitive Networking (TSN) を使用して、遠距離での計測データを正確に同期します。TSNは次世代のIEEE 802.1イーサネット規格であり、DAQノードの分散型ネットワーク上でマイクロ秒以下の同期を実現します。正確なタイムスタンプとパケット単位の通信を使用して、ネットワーク内のすべてのノードで共通の時間概念を共有し、信号の伝搬遅延をなくします。NI-DAQmxドライバは、複数のFieldDAQデバイスを自動的に同期するため、簡単なプログラミングでTSN同期を実行できます。

図3. NI-DAQmxドライバを使用し、1つのタスクで複数のFieldDAQデバイスを同期

 

テスト開発時間短縮保守軽減


過酷な環境に耐える必要があるテストシステムを開発するには、社内でシステム用のケースを製作するか、または必要な条件に関してテストおよび認定済みのシステムを購入することが考えられます。独自の堅牢なソリューションを開発して統合する際には、ハードウェアが仕様どおりに動作することを確認するための時間に加え、設計や材料、テスト、コンプライアンスなどのコストもかさむ可能性があります。


しかし、最高でIP67の保護等級の評価を受けたFieldDAQを使用すれば、ケースの設計に必要な材料費と検証時間を節約できます。また、FieldDAQは統合ネットワークスイッチと組込電源回路を備えているため、複数のユニットをまとめてデイジーチェーン接続することができ、システムに外部スイッチや複数の電源は必要ありません。FieldDAQは、TSNによるネットワーク経由の同期タイミング機能を搭載しているため、トリガおよび同期を1本のイーサネットケーブルを介した高速データと組み合わせることにより、ケーブル配線を減らすことができます。また、センサ、電源、ネットワーク接続を1つの堅牢なパッケージに統合することで、システムの障害発生箇所や潜在的な誤差原因を減少させることができます。

避けることできない要件変化対応て、お客様資産保護


エンジニアリング設計の革新により、より複雑な電気機械的システム/コンポーネントが製造されており、テストが必要となるさまざまなユースケースが増加しています。設計が進化するにつれて、テストエンジニアは、システムの性能を効果的に検証するために、新しいセンサと産業用プロトコルの統合および同期を継続的に行う必要性を予期しています。

FieldDAQは、NIのオープンなソフトウェア中心のプラットフォーム上に構築されているため、複雑さや不要なコストを増やすことなく、新しい機能やI/Oを追加できます。FieldDAQは、産業用コントローラやCompactDAQ、CompactRIOなどの他のTSN製品と簡単に接続して同期することで、システムの構成をカスタマイズできます。これにより、実世界の信号を収集、視覚化、解析してデータに基づいた意思決定を行うことができます。オープンで拡張可能なFieldDAQソリューションにより、ハードウェアとソフトウェアを最大限に再利用しながら、変化する要件に対応することもできます。

図4. FieldDAQソリューションに他のTSN製品を組み合わせて拡張

 

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