分散​型​計測​システム​の​構築

概要

アプリケーション​の​複雑​化​に​伴​って、​施設​内​における​センサケーブル​の​配線​は​ます​ます​困難​に​なり、​実装​コスト​も​増大​し​てい​ます。​多く​の​場合、​データ​集録​システム​を​新た​に​設置​する​際​に​生じる​センサケーブル​の​敷設​コスト​は、​人件​費​や​資本​コスト​を​含める​と​最大​の​予算​項目​となり​ます。​従来​の​中央​集中​型​の​データ​集録​システム​を​置き換える​方法​として、​アプリケーション​の​実行​環境​を​中心​に​据​えて、​その​周辺​に​データ​集録​デバイス​を​分散​配備​し、​敷設​する​ケーブル​は​サーバ​や​制御​室​に​データ​を​送出​する​ため​の​工業​用​ネットワーク​ケーブル​1​本​に​絞る​方法​が​あり​ます。​例えば、​風力​タービン​システム​では、​ブレード​から​中央​の​ハウジング​に対して​敷設​さ​れる​ワイヤ​は、​ブレード​の​回転​に​合わせ​て​自由​に​回る​よう​に、​必ず​スリップ​リング​を​通す​必要​が​あり​ます。​ブレード​に​敷設​する​ワイヤ​の​本数​が​増え​れ​ば​増える​ほど、​要求​さ​れる​スリップ​リング​の​システム​は​複雑​化​し​ます。​そのため、​障害​が​発生​する​可能性​の​ある​個所​が​増える​とともに、​システム​コスト​も​急激​に​増加​し​ます。​本稿​では、​従来​の​一般​的​な​中央​集中​型​アプローチ​と​は​対照​的​な​分散​型​センサ​計測​アーキテクチャ​について​解説​し​ます。​具体​的​に​は​その​アーキテクチャ​が​備える​メリット、​活用​方法、​実装​方法​を​紹介​し​ます。

内容

中央​集中​型​の​計測​システム vs. 分散​型​の​計測​システム

 

基本​的​な​計測​システム​は、​オペレータ​が​テスト​の​結果​から​質​が​高​く​信頼​できる​情報​を​確実​に​得る​ため​に​必要​な​コンポーネント​で​構成​さ​れ​てい​ます。​UUT(Unit Under Test:​被​試験​ユニット)​を​起点​として​考える​と、​まず​複数​の​センサ​が​あり、​それら​が​配線​によって​信号​調節​用​の​回路​(高​精度​の​センサ​計測​に​必要​な​センサ​の​励起​回路、​フィルタ​リング​回路​など)​に​接続​さ​れ​てい​ます。​信号​調節​回路​によって​ノイズ​を​除去​した​アナログセンサ​信号​が​データ​集録​システム​に​送信​さ​れる​と、​それらの​信号​は​コンピュータ​による​解析、​後処理、​保存​が​行える​よう​に​デジタル​信号​へ​と​変換​さ​れ​ます。​オペレータ​は​ユーザ​インタフェース​の​コンポーネント​を​使用​し​て、​データ​集録​システム​と​の​間​で​情報​を​やりとり​し​ます。 

図​1. 中央​集中​型​の​計測​システム​は、​あらゆる​コンポーネント​を​1​つ​に​まとめ​て​構築​さ​れる。​UUT​から​少し​離れ​た​場所​に​設置​さ​れる​こと​が​多い。

 

中央​集中​型​の​アーキテクチャ​を​採用​した​従来​の​データ​集録​システム​では、​計測​用​の​ハードウェア​や​コンピュータ​は​中央​制御​室​の​大型​ラック​内​に​配置​さ​れ​ます。​この​場合、​厳しい​テスト​環境​から​の​影響​が​システム​に​及​ば​ない​ため、​メンテナンス​が​容易​で​ある​という​メリット​が​得​ら​れ​ます。​しかし、​この​よう​な​形態​の​システム​は、​計測​システム​に​かかる​コスト​が​過剰​に​増加​し、​複雑​化​が​避​けら​れ​ない​という​問題​を​抱え​てい​ます。

 

一方、​分散​型​の​計測​システム​では、​データ​集録​用​の​ハードウェア​は、​テスト​環境​内​に​ある​UUT​の​周辺​に​配置​さ​れ​ます。​より​詳​しく​言​え​ば、​配置​さ​れる​の​は​計測​センサ​に​できるだけ​近い​場所​となり​ます。​データ​集録​用​の​ハードウェア​は​UUT​と​ローカル​で​情報​を​やりとり​し、​テスト​の​オペレータ​が​待機​する​中央​サーバ​から​送信​さ​れる​コマンド​を​受信​した​り、​記録​を​行う​ため​に​メッセージ​や​データ​を​中央​サーバ​に​送信​した​り​し​ます。​こうした​アーキテクチャ​に​は、​中央​集中​型​の​システム​を​上回る​さまざま​な​メリット​が​あり​ます。​まず、​大規模​な​中央​集中​型​システム​を​小規模​な​分散​型​システム​に​細分​化​すると、​より​小型​で​安価​な​サブシステム​で​全体​が​構成​さ​れる​ことに​なり​ます。​そのため、​仮に​1​台​が​故障​した​として​も​交換​や​メンテナンス​が​容易​に​行​え​ます。​分散​型​サブシステム​に​通信​ケーブル​を​1​本敷設する方法をとれば、​テスト​セル​全体​にわたって​数百​本​に​も​上る​センサケーブル​を​敷設​する​より​も​配線​コスト​を​節減​でき​ます。​それだけ​で​なく、​敷設するケーブルの本数を減らせば、​コスト​削減​より​も​重要​だ​と​言える、​計測​精度​の​向上​を​達成​する​こと​が​可能​に​なり​ます。​システム​に​接続​する​センサケーブル​が​短​け​れ​ば​短い​ほど、​ノイズ​や​干渉、​信号​損失​が​抑え​られる​から​です。​加​えて、​分散​型​システム​に​は、​中央​の​メイン​コンピュータ​の​処理​負荷​を​軽減​できる​という​メリット​も​あり​ます。​通常、​分散​型​の​データ​集録​システム​は、​解析​を​実行​した​り、​中央​の​システム​に​データ​を​送信​する​前​に​その​データ​を​キー・​バリュー​形式​に​変換​した​り​する​ため​の​処理​機能​を​備え​てい​ます。 そのため、​中央​の​コンピュータ​で、​計測​チャンネル​から​の​データ​を​受信​した​状態​の​まま、​ユーザ​インタフェース​や​データ​ストレージ​の​処理​を​行う​場合​と​比べる​と、​中央​の​コンピュータ​の​コスト​を​大幅​に​抑え​られる​とともに、​高速​化​も​実現​でき​ます。

図​2. 分散​型​アーキテクチャ​では、​システム​を​構成​する​コンポーネント​を​分散​配備​する。​計測​用​の​デバイス​は、​実際​に​計測​が​行​われる​場所​の​近く​に​設置​さ​れる。

 

分散​型​システム​を​構築​する​うえ​で​の​要件

 

分散​型​計測​システム​向け​の​データ​集録​用​ハードウェア​を​選択​する​際​に​は、​いくつか​の​要件​に​留意​する​必要​が​あり​ます。​システム​の​性質​上、​信号​調節​機能​と​データ​集録​機能​の​ロー​カラ​イズ​は​必須​ですが、​その他​の​機能​(すべて​の​分散​ノード​で​行​われる​計測​の​同期​を​とる​機能​や、​堅牢​性​を​高める​ため​の​機能、​オン​ボード​の​処理​機能)​は、​アプリケーション​の​ニーズ​に​応​じ​て​選択​し​て​カスタマイズ​する​こと​が​可能​です。​アプリケーション​の​性質​や​要件​によって​は、​分散​配備​した​ノード​の​通信​を​確立​する​ため​の​ネットワーク​の​選択​も​重要​な​鍵​となり​ます。

 

信号​調節​機能​と​データ​集録​機能​の​ロー​カラ​イズ

分散​型​の​計測​システム​では、​計測​を​実行​する​センサ​の​近く​の​ノード​内​に​信号​調節​機能​と​データ​集録​機能​を​配備​し​ます。​信号​調節​機能​は、​データ​集録​デバイス​の​外部​に​設け​て​も​か​ま​いま​せん​し、​データ​集録​デバイス​に​内蔵​し​て​も​か​ま​いま​せん。​ただ、​後者の方法を採用すれば、​システムの複雑さが軽減され、​コスト​の​削減​に​も​つながり​ます。​信号​調節​機能​を​内蔵​する​製品​を​購入​する​という​こと​は、​ユーザ​に​代​わ​って​ベンダ​が​すでに​統合、​テスト、​検証​を​完了​し​て​いる​という​こと​を​意味​し​ます。​そのため、​テスト​システム​の​設計​と​実装​の​作業​負荷​が​大幅​に​軽減​さ​れ​ます。​信号調節機能を内蔵したコンポーネントを購入するユーザが増えれば、​ベンダ​に​も​スケール​メリット​が​も​たら​さ​れる​ため、​システム​の​総​コスト​も​低下​すると​考え​ら​れ​ます。

 

堅牢性

分散​型​システム​の​ノード​は、​UUT​と​同じ​テスト​環境​内​に​配備​さ​れる​こと​が​多く、​センサ​に​近い​位置​に​配置​でき​ます。​データ​集録​用​の​デバイス​は​過酷​かつ​熾烈​な​条件​に​さら​さ​れる​こと​が​多く、​デスク​トップ​向け​の​標準​的​な​デバイス​では、​精度の低いデータしか得られなかったり、​まったく​役​に​立​た​ない​データ​しか​得​ら​れ​なか​っ​たり​する​こと​が​あり​ます。​信号​調節​と​データ​集録​を​行う​デバイス​が​テスト​の​環境​に​耐え​られる​か​どうか​を​あらかじめ​確認​し​て​おく​こと​により、​一度​で​正確​な​データ​を​集録​する​こと​が​可能​に​なり、​コスト​の​かかる​再​テスト​を​行​わ​なく​て​も​済む​よう​に​なり​ます。​システム​に​求め​られる​潜在​的​な​要件​として、​システム​を​マシン​に​直接​搭載​する​場合​や、​HazLoc​認証​(Hazardous Location Certification)​の​取得​が​必要​な​場合​に​は、​極端​な​温度​範囲​で​の​テスト​や、​衝撃​や​振動​に対する​耐久性​の​テスト​を​行​って、​海洋​環境​や​爆発​の​可能性​の​ある​環境​でも​システム​が​安全​に​動作​する​こと​を​確認​しな​け​れ​ば​なり​ま​せん。

 

そうした​堅牢​性​に関する​要件​は、​データ​集録​システム​用​の​筐​体​を​設計​する​こと​で​満たす​こと​も​可能​です。​しかし、​過酷​な​条件​に対する​耐性​が​すでに​テスト​さ​れ​て​おり、​耐性​に関する​認証​を​取得​済み​の​システム​を​購入​した​ほうが​コスト​が​かかり​ま​せん。​ユーザ​自ら​が​堅牢​性​の​高い​ソリューション​を​一​から​開発​した​り、​システム​統合​を​行​っ​たり​する​場合、​設計​や​材料、​テスト、​コン​プライア​ン​ス​に​かかる​コスト​が​すぐ​に​高​く​積み​上​が​って​しま​い​ます。​また、​それらの​ステップ​を​適切​に​進める​に​は​長い​時間​を​要​し​ます。​専門​ベンダ​の​場合、​そうした​コスト​は​システム​を​数​千​台​販売​す​れ​ば​償却​できる​ので、​同等​の​メリット​を​低​価格​で​提供​できる​という​ことに​なり​ます。

 

堅牢​性​を​備え、​過酷​な​環境​に​も​耐え​られる​システム​の​選択​方法について、​詳​しく​は​こちら​を​ご覧​くだ​さい。

 

同期

同期​と​は、​クロック​と​トリガ​信号​を​システム​の​あらゆる​部分​で​共有​する​こと​によって、​同一​の​時間​の​概念​を​持​たせる​こと​です。​通常、​大型​の​計測​システム​では、​テスト​によって​得​ら​れ​た​データ​を​適切​に​関連​付け​て​解析​する​ため​に、​同期​は​必須​の​技術​となり​ます。​適切に同期をとらなければ、​2​つ​の​計測​が​同時に​行​われ​て​いる​の​か​どうか​を​確かめる​こと​は​でき​ま​せん。​また、​刺激‐​応答​型​の​テスト​では、​計測​の​対象​と​なる​応答​が​どの​刺激​に​対応​した​もの​な​の​か​が​わ​から​なく​な​って​しま​い​ます。​Boeing​社​は、​分散​型​マイクロホン​の​大規模​な​アレイ​を​使用​し、​航空機​の​音​が​複数​の​マイクロホン​に​届く​まで​の​遅延​時間​を​計測​する​こと​によって、​低空飛行​テスト​における​航空機​の​主要​な​ノイズ​源​の​三角​測量​を​実施​しま​した。​この​とき、​分散配備されたマイクロホンのノードの同期が適切にとれていなければ、​複数​の​ノード​間​の​遅延​時間​を​正確​に​計測​する​の​は​不可能​です。​各​マイクロホン​の​ノード​が​同じ​時間​概念​を​有​し​てい​ない​から​です。

 

中央​集中​型​の​計測​システム​の​場合、​大半​の​システム​は​同じ​シャー​シ​内​に​存在​し​ます。​そのため、​同期​を​とる​の​は​非常​に​容易​です。​一方、​分散​型​システム​の​場合、​長い​距離​を​介​し​て​システム​間​で​同期​を​とる​ため​に​克服​しな​け​れ​ば​なら​ない​課題​が​いくつ​も​あり​ます。​分散​型​システム​では、​ソフトウェア​による​同期、​時間​ベース​の​同期、​信号​ベース​の​同期​など、​複数​種​の​同期​手法​の​中​から​いずれ​か​を​選択​する​ことに​なり​ます。

 

ソフトウェア​による​同期​は​データ​集録​ソフトウェア​に​依存​する​もの​で、​すべて​の​デバイス​に対して​同時に​スタート​トリガ​を​送信​し​ます。​それ​によって​実現​さ​れる​同期​は​精度​が​低​く、​一般​的​に​は​数​ミリ​秒​の​オーダー​で​実行​さ​れ​ます。​複数​の​分散​型​サブシステム​の​間​では​情報​が​一切​共有​さ​れ​ない​ため、​時間​の​経過​とともに​内蔵​クロック​に​ズレ​が​生じる​こと​が​あり、​計測​を​実行​し​て​いる​間​に​同期​の​精度​が​低下​し​てい​き​ます。

 

時間​ベース​の​同期​では、​システム​の​コンポーネント​に対して、​既知​の​クロック​ソース​から​共通​の​基準​時間​が​与​え​ら​れ​ます。​その​基準​時間​に​基​づ​い​て、​イベント​や、​トリガ、​クロック​を​生成​する​こと​が​でき​ます。​長い​距離​で​分散​化​さ​れ​た​システム​でも、GPSIEEE 1588、​IRIG-​B​など​から​得​られる​基準​時間​を​用いる​こと​により、​計測システムの間が直接接続されているか否かにかかわらず、​世界中​の​どこ​で​あっ​て​も、​絶対​時間​に​関連​付け​て​計測​の​同期​を​とる​こと​が​可能​です。​時間​ベース​の​同期​は、​サブシステム​間​の​同期​用​ケーブル​を​敷設​する​必要性​を​緩和​した​り、​必要性​を​なく​した​り​する​こと​を​目的​として​採用​さ​れる​こと​が​よく​あり​ます。​同期​用​ケーブル​の​代わり​に、​すでに​設置​さ​れ​て​いる​ネットワーク​ケーブル​や、​GPS​など​の​無線​同期​クロック​を​使用​する​こと​が​でき​ます。

 

信号​ベース​の​同期​では、​物理​的​な​接続​によって​各​サブシステム​に​クロック​や​トリガ​を​供給​し​ます。​通常、​この​手法​では​最高​の​精度​で​同期​を​実現​する​こと​が​でき​ます。​ただし、​同期​信号​を​共有​する​ため​に、​サブシステム​同士​を​接続​する​信号​線​が​必要​に​なり​ます。​この​手法​で​起​こ​り​うる​問題​点​は、​物理​的​な​信号​線​の​ルーティング​遅延​によって​スキュー​が​生​じ​たり、​不​確実​性​が​生​じ​たり​する​こと​です。

 

同期​の​実現​手法​の​選択肢について、​詳​しく​は​こちら​を​ご覧​くだ​さい。

 

オン​ボード​の​インテリジェンス​機能

オン​ボード​の​インテリジェンス​機能​は​分散​型​システム​の​構築​に​必須​という​わけ​では​ありま​せん。​しかし、​データ​集録​用​の​ノード​に​オン​ボード​の​インテリジェンス​機能​を​追加​する​こと​は、​システム​にとって​大きな​メリット​に​なり​ます。​ノード​に​インテリジェンス​機能​を​追加​す​れ​ば​各​ノード​に​データ​の​解析​処理​を​分散​させる​こと​が​可能​に​なり、​中央​の​コンピュータ​が​抱える​データ​処理​の​負荷​を​軽減​する​こと​が​でき​ます。​場合​によって​は、​ノード​によって​サブシステム​を​制御​する​こと​も​可能​です。​データ解析処理を分散型で行うようにすれば、​ネットワーク​経由​で​中央​の​コンピュータ​に​送信​さ​れる​データ​の​量​が​減少​する​ので、​トラフィック​量​と​必要​な​帯域​幅​を​大幅​に​削減​でき​ます。​計測​した​波形​データ​を​そのまま​ネットワーク​経由​で​送信​する​の​では​なく、​ローカル​で​解析​を​実施​し、​その​結果​だけ​を​中央​の​コンピュータ​に​送信​する​こと​により、​そのまま​データ​を​保存​した​り、​より​大規模​な​解析​や​意思​決定​の​ため​に​統合​した​り​する​こと​が​可能​に​なり​ます。​言う​まで​も​なく、​状況​に​応​じ​て、​波形​データ​を​そのまま​ネットワーク​経由​で​常に​送り返す​よう​に​する​こと​も​可能​です。

 

オン​ボード​の​インテリジェンス​機能​は、​柔軟性​と​複雑​さ​に​応​じ​て、​レベル​の​異なる​3​つ​の​中​から​選択​でき​ます。

 

Windows​は、​おそらく​3​つ​の​選択肢​の​うち​最も​認知​度​の​高い​システム​です。​Microsoft​社​が​組​込​システム​向け​の​Windows​に対して​継続​的​に​投資​を​行​って​いる​こと​を​考える​と、​計測​アプリケーション​に​Windows​を​採用​する​こと​で​信頼​性​に関する​問題​が​生じる​こと​は​まず​ない​と​言える​で​しょう。​また、​Windows​上​で​ユーザ​インタフェース​を​直接​稼働​さ​せ​られる​こと​は、​アプリケーション​を​自社​で​開発​する​場合​に​は​大きな​メリット​に​なり​ます。​加​えて、​一般​的​な​Windows​アプリケーション​(EXE​ファイル)​の​実行​が​可能​で​あり、​Windows​以外​の​一般​的​な​組​込​システム​に​向け​た​コーディング​について​も​特に​心配​する​必要​が​ありま​せん。

 

分散​型​の​計測​システム​では、​信頼​性​と​確定​性​という​2​つ​の​性質​を​備える​こと​が​理由​と​な​って、リアルタイム​OS(RTOS)​が​よく​使用​さ​れ​ます。​リアルタイム​システム​では、​コマンド​と​計測​が​一定​時間​内​に​実行​さ​れる​こと​が​保証​さ​れ​ます。​そのため、​動作​可能​時間​に​制約​が​ある​とともに​高い​信頼​性​が​求め​られる​計測​システム​や、​厳密​な​タイミング​要件​が​存在​し​て​おり​確定​性​が​要求​さ​れる​計測​システム​に​最適​です。

 

FPGAは、​再​プログラム​が​可能​な​IC​で​あり、​分散​型​システム​に対して​も、​最高​レベル​の​柔軟性​と​カスタマイズ​性​を​提供​し​ます。​再​プログラム​が​可能​な​FPGA​は、​プロセッサ​を​ベース​に​した​システム​で​動作​する​ソフトウェア​と​同じ​レベル​の​柔軟性​を​有​し​てい​ます。​しかも、​利用​可能​な​プロセッシング​コア​の​数​の​面​で​制約​が​ありま​せん。​FPGA​は、​プロセッサ​と​は​異​なり、​本質​的​に​並列​性​を​備え​てい​ます。​そのため、​同一​の​リソース​に対して​複数​の​処理​が​競合​する​こと​は​ありま​せん。​さらに、​FPGA​では、​ハードウェア​によって​処理​が​実現​さ​れる​ので、​プロセッサ​ベース​(ソフトウェア​ベース)​の​システム​より​も​はるかに​高速​に、​計測、​解析、​データ​出力​を​実行​でき​ます。

 

ネットワーク

システム​の​分散​化​に​使用​する​ネットワーク​は、​その​ネットワーク​上​に​分散​配備​する​ハードウェア​と​同じ​くらい​重要​な​要素​です。​ネットワーク​の​選択肢​は、​分散​化​する​距離​や、​データ​帯域​幅、​同期、​確定​性​といった​要件​に​応​じ​て​多岐​にわたります。​シリアル​通信​技術​に​基​づ​い​た​通信​ネットワーク​も​存在​し​ます​が、​本稿​では、​シリアル​通信​に​比べ​て​メリット​が​大​きく、​低​コスト​で、​導入​率​が​向上​し​て​いる​イーサネット​を​ベース​に​した​通信​技術​に​焦点​を​絞り​ます。

 

 

UDPは、​コントローラ​から​複数​の​送信​先に​パケット​を​ルーティング​する​マルチ​キャスト​の​プロトコル​です。​データ​のみ​の​送信​に​有用​な​もの​で​あり、​イーサネット​の​標準​技術​と​な​って​い​ます。​1​台​の​コントローラ​から​複数​の​受信​者​に​データ​を​送信​する​場合​に​効果​的​な​通信​方法​ですが、​ネットワーク​帯域​を​大量​に​消費​する​ブロードキャスト​ストーム​と​呼ばれる​現象​を​生​じ​させる​恐れ​が​あり​ます。​しかも、​情報​が​受信​さ​れ​た​こと​が​保証​さ​れ​ない​ので、​その​用途​は、​重要性​の​低い​データ​を​低速​で​アップデート​する​場合​に​限​ら​れ​ます。

 

TCP/​IPも​イーサネット​の​標準​技術​ですが、​重要​な​データ​の​送信​に​は​こちら​の​ほうが​より​適​し​てい​ます。​TCP/​IP​では​データ​を​バッファリング​し、​送信​者​と​受信​者​と​の​間​で​ハンド​シェイク​プロセス​を​実行​し​ます。​その​結果、​データ​が​適切​に​受信​さ​れ​た​こと​が​保証​さ​れ​ます。​したがって、​重要​な​データ​の​送信​に​適​し​て​おり、​シングル​ポイント​の​データ​と​スト​リー​ミン​グ​データ​の​いずれ​に​も​使用​でき​ます。

 

OPC(OLE for Process Control)​は、​異なる​ベンダ​が​提供​する​複数​種​の​デバイス​が、​特定​の​ベンダ​に​依存​しない​共通​の​プロトコル​を​用​い​て​相互​に​通信​できる​よう​に​する​ため​に​開発​さ​れ​た​プロセス​制御​用​の​規格​です。​多く​の​場合、​工業​用​の​データ​集録・​制御​デバイス​の​サプライヤ​は、​OPC​に​準拠​した​設計​を​採用​し​てい​ます。

 

Modbus は、​イーサネット​向け​の​標準​的​な​ハードウェア​と​TCP/​IP​の​トランスポート​層​を​ベース​と​した​シンプル​な​クライアント‐​サーバ​型​アーキテクチャ​で​使用​さ​れる​非​確定​的​な​プロトコル​です。​異なる​ベンダ​が​提供​する​ハードウェア​が​混在​し、​低​域​から​中​域​の​帯域​幅​が​要求​さ​れる​アプリケーション​に​最適​です。

 

 

 

EtherCATは、​Beckhoff Automation​社​によって​開発​さ​れ​た​規格​です。​同期​と​確定​的​な​データ​転送​が、​マスタ‐​スレーブ​型​の​アーキテクチャ​に​統合​さ​れ​てい​ます。​シングル​ポイント​通信​向け​に​最適​化​さ​れ​て​おり、​マシン​制御​など、​モーション​を​伴う​アプリケーション​で​一般​的​に​使用​さ​れ​てい​ます。 

 

分散​型​計測​システム​向け​の​NI​製品

 

ナショナル​イン​ス​ツル​メンツ​(NI)​は、​質​の​高い​分散​型​計測​システム​の​構築​に​役立つ、​多彩​な​プラットフォーム​と​製品​を​取り​そ​ろ​え​てい​ます。​多​チャンネル​に​対応​する​高性能​の​NI PXI​や、​小型​の​フォーム​ファクタ​で​信号​調節​機能​も​内蔵​する​NI CompactDAQ、​柔軟性​と​カスタマイズ​性​を​兼​ね​備え​た​NI CompactRIO​など、​アプリケーション​の​ニーズ​を​満足​する​プラットフォーム​が​必ず​見つかる​はず​です。

 

NI PXI

NI PXI は、​オープン​な​規格​で​ある​PXI​と​PXI Express​に​準拠​する​PC​ベース​の​堅牢​な​プラットフォーム​です。​1​台​の​システム​に、​シャー​シ、​コントローラ、​そして​高性能​の​多​チャンネル​データ​集録​カード​を​最大​18​枚​搭載​可能​です。​また、​必要​に​応​じ、​ネットワーク​を​構築​し​て​シャー​シ​と​の​緊密​な​同期​を​とる​こと​で、​チャンネル​数​を​さらに​増​や​した​分散​型​サブシステム​を​構築​する​こと​も​でき​ます。​PXI​コントローラ​は、​クロック​周波数​が​1.66 GHz​で​シングル​コア​の​プロセッサ​(Intel​社​の​Atom)​から、​同​2.3 GHz​で​クワ​ッド​コア​の​プロセッサ​に​至る​まで、​Windows​と​RTOS​の​いずれ​に​も​対応​する​オン​ボード​の​プロセッシング​性能​を​提供​し​ます。​ユーザ​は、​テスト​の​ニーズ​や​分散​型​計測​の​ニーズ​に​合わせ​て、​センサ​用​の​信号​調節​機能​を​内蔵​した​モジュール​を​含む​450​種​以上​の​NI PXI​モジュール​の​中​から​最適​な​モデル​を​選択​する​こと​が​でき​ます。

 

NI PXI​システム​は、​あらゆる​工業​用​ネットワーク​規格​に​対応​し​ます。​また、​分散​型​計測​システム​の​開発​者​向け​に、​計測、​同期、​プロセッシング​について​最高​レベル​の​性能​を​提供​し​ます。

図​3. 多​チャンネル​対応​の​NI PXI​は、​分散​型​の​計測​ノード​向け​に​最高​の​性能​を​提供​する。

 

NI CompactDAQ

NI CompactDAQは、​シャー​シ、​NI C​シリーズ​の​データ​集録​モジュール、​RTOS/​Windows​対応​の​コントローラ​(オプション)​によって​構成​さ​れる​モジュール​式​の​データ​集録​システム​です。​PXI​より​も​小型​な​フットプリント​と​高い​堅牢​性​を​実現​する​こと​を​目指​し​て​設計​さ​れ​てい​ます。​NI CompactDAQ​を導入すれば、​実験​室​の​テスト​ベンチ​や​堅牢​性​が​要求​さ​れる​テスト​セル​など、​多様​な​環境​で​信頼​性​に​優​れ​た​計測​を​実施​でき​ます。​標準​的​な​電圧、​歪み、​温度、​振動​など、​さまざま​な​計測​に​対応​できる​よう、​C​シリーズ​の​I/​O​モジュール​として​50​種​以上​の​ライン​アップ​が​用意​さ​れ​てい​ます。​ユーザ​は、​信号​調節​機能​を​内蔵​し、​アプリケーション​の​ニーズ​を​満たす​カスタム​の​分散​型​計測​ソリューション​を​構築​する​こと​が​でき​ます。

 

NI CompactDAQ​は、​2​つ​の​動作​方法​に​対応​し​ます。​1​つ​は、​USB​や​イーサネット、​Wi-​Fi​経由​で​ホスト​コンピュータ​に​接続​し​て​動作​させる​方法​です。​もう​1​つ​は、​Windows/​RTOS​を​搭載​した​スタンドアロン​の​システム​として​動作​させる​方法​です。​この​方法​は、​オン​ボード​の​プロセッシング​や、​データ​リダクション、​工業​用​の​ネットワーク​通信​など​に​利用​さ​れ​ます。

図​4. NI CompactDAQ​は、​分散​配備​が​可能​な​フォーム​ファクタ​を​採用​した​堅牢​な​システム​で​ある。​カスタマイズ​を​施す​こと​により、​あらゆる​タイプ​の​計測​器​に​接続​する​こと​が​できる。

 

NI CompactRIO

NI CompactRIOは、​通信​と​処理​を​担う​組​込​コントローラ、​ユーザ​が​プログラム​できる​FPGA​を​備え​た​再​構成​が​可能​な​シャー​シ、​ホット​スワップ​が​可能​な​C​シリーズ​の​I/​O​モジュール​(NI CompactDAQ​で​使用​する​の​と​同じ​モデル)​で​構成​さ​れ​ます。​CompactRIO​シリーズ​に​は、​低​価格​で​ある​こと​を​重視​した​もの​から、​高性能​の​デュアル​コア​プロセッサ​を​搭載​した​Windows/​RTOS​システム​まで​多彩​な​コントローラ​が​用意​さ​れ​てい​ます。​アプリケーション​の​要求​に​応える​オン​ボード​の​プロセッシング​機能​を​備える​ほか、​工業​用​ネットワーク​に​も​対応​し​ます。​内蔵​する​FPGA​を使用すれば、​カスタム​の​信号​処理​や、​タイミング​制約​に関する​処理、​プロトコル​に関する​処理​を​追加​し​て、​最高​レベル​の​柔軟性​を​実現​する​こと​が​可能​です。

図​5. NI CompactRIO​は、​分散​配備​が​可能​な​フォーム​ファクタ​を​採用​した​堅牢​な​システム​で​ある。​オン​ボード​の​プロセッシング​を​可能​に​する​もの​で​あり、​最高​レベル​の​柔軟性​を​提供​する。

 

関連​情報

 

分散​型​システム​向け​の​堅牢​性​に​優​れ​た​計測​ハードウェア​の​選択​方法​について​は、​こちら​を​ご覧​くだ​さい。

分散​型​サブステム​の​同期​について​は、​こちら​を​ご覧​くだ​さい。

 

NI​プラットフォーム​について​の​情報

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