ソフトウェア定義が可能なモジュール式計測器を使えば、再利用が容易な柔軟性の高いテストシステムを設計し、実装することができます。現在、1,500種類以上のPXI製品が市場に出回っていますが、その中で、ナショナルインスツルメンツ(NI)が設計した製品は400種類を上回ります。このような実績と歴史を持つNIが設計したPXI計測器には、多くの強みがあります。本稿では、あらゆるアプリケーションに対応可能な計測器群や、その高い性能と品質、ソフトウェアアーキテクチャについての選択肢の広さ、生産ラインでの厳しい検証といったNI PXI計測器の強みを紹介します。
NIは、PXI/PXI Express技術をベースとしたモジュール式計測器を450種類以上提供しています。これらのモジュール式計測器により、DCから26.5 GHzまでの幅広い周波数に対応します。製品群の中には、業界最高となる24ビットの分解能を誇るデジタイザや、業界最高の速度と確度を備えた7 1/2桁のデジタルマルチメータ(DMM)も含まれます。
図1. NIで、業界最高の分解能、精度を誇る製品など、さまざまなモジュール式計測器を提供する。
NIでは、効率性に優れた3UサイズでPXIモジュール式計測器を展開し、性能の限界を継続的に押し上げるべく開発に努めています。例えば、ベクトル信号アナライザ(VSA)の最新製品であるNI PXIe-5665は、業界で標準的に用いられているベンチトップ型計測器を上回る、クラス最高のRF精度と試験速度をPXIプラットフォーム上で実現しています。業界トップの計測技術を駆使した製品例としてもう1つ挙げられるのが、世界大手のオシロスコープメーカーTektronix™社とNIが共同開発したデジタイザNI PXIe-5186です。同製品の帯域幅は5 GHz、サンプリングレートは最大12.5 GS/秒で、市販の製品としては最高レベルの性能を有するPXIデジタイザです。
表1. NIモジュール式計測器のポートフォリオには、あらゆるアプリケーションに向けた製品が含まれている。
NIは、モジュール式計測器の広範な製品ポートフォリオを提供するだけでなく、PXIプラットフォームとFPGA(Field-Programmable Gate Array)の組み合わせをも可能にしました。大量のデータセットの管理に加えて、優れた柔軟性と高いカスタマイズ性が求められるアプリケーションでは、FPGAが強力なソリューションとなります。NI FlexRIOはFPGAのメリットを活かせる理想的なソリューションです。柔軟性とカスタマイズ性を備えたI/OをNI LabVIEW FPGAモジュールに提供し、再構成可能(リコンフィギュレーション)な高性能の計測器の構築を可能にします。同モジュールを活用することで、LabVIEWグラフィカル開発プラットフォームを使用してFPGAへの実装が可能になります。並列性や構造化データフローというプログラミング手法を前提としたLabVIEWは、FPGAプログラミングに非常に適しており、FPGA設計の経験の有無にかかわらず、誰でも再構成可能なハードウェアの性能を積極的に活用できます。オープンでカスタマイズ可能な信号フロントエンドを使用すれば、テストや組込システムの要件を正しく満たすことができます。
図2. NI FlexRIOのメリットを活かし、FPGAを利用してアプリケーションを構築することで、システムの性能向上を図ることができる。
NIは、製品が最高の状態で動作し、今日の最も要求の厳しいアプリケーションにおいても信頼性の高い測定結果が得られることを保証するために、特許取得済みの独自技術をモジュール式計測器に適用しています。そうした技術の例としては、以下のようなものが挙げられます。
• Synchronization and Memory Core (SMC)機能
• モジュール式計測器向けのNI-TClkタイミング/同期技術
• マルチファンクションデータ集録(DAQ)向けのNI-STC3タイミング/同期技術
• データ集録向けのNI-MCalキャリブレーションアルゴリズム
Synchronization and Memory Core (SMC)
最新の電子設計では、1つの製品に多数の機能を集積し、アナログ技術とデジタル技術を統合した設計を採用する傾向が強まっているように見えます。動画と音声、データを組み合わせた最新世代の携帯電話機やセットトップボックスなどがその例です。こうしたシステムの設計や、プロトタイプの開発、テストを行うには、共通のベースバンドサンプリングレートや、歪み、タイミング特性を持ち、アナログ/デジタルが緊密に統合された集録/生成ハードウェアが不可欠です。タイミングエンジンやアナログ特性が異なるスタンドアロン型のシステムでは、もはやアナログ/デジタル対応の計測器としての機能を果たしません。また、今日、こうしたシステムの生産工場は世界各地に分散配置され、24時間体制で稼働し続けています。そのため、広範な温度範囲に対応させることと、一貫した性能仕様を安定して確保することが不可欠であり、高い信頼性と高いスループットの機能テストを実現する必要があります。
NIは、多機能集積型のデバイスをテストするという課題に対応するために、モジュール式高速計測器に向けた共通アーキテクチャとして、Synchronization and Memory Core(SMC)を設計しました。統合型のミックスドシグナルプロトタイプ/テストシステムの開発に不可欠なSMCの機能には、以下のようなものがあります。
• 柔軟性に優れた入力/出力データ転送コア
•チャンネルごとに最大512MBまで拡張可能な高速/大容量のオンボードメモリ
• 高精度のタイミング/同期エンジン
SMCアーキテクチャの中核を成すのは、FPGAコントローラであるDSF(DataStream FPGA)です。これは、「計測器のCPU」と呼ぶことができます。このDSFが、すべての命令の処理と、トリガおよびロックに対する応答、外部への信号のルーティング、計測器とホストコンピュータ間の波形転送の管理を行います。
図3. SMCのアーキテクチャ
SMCとその仕組みについて、詳しくは技術ドキュメント「ナショナルインスツルメンツのSynchronization and Memory Core(SMC)~ミックスドシグナルテストのための新しいアーキテクチャ~」をご覧ください。
モジュール式計測器向けのNI-TClk技術を利用したタイミング/同期機能
1台の計測器に搭載できる刺激/応答チャンネルの数には限りがあります。また、ミックスドシグナル刺激/応答チャンネルに対するニーズも高まっています。こうした状況に対応するために、複数の計測器間でのタイミングと同期を要求するテスト/計測アプリケーションが増えています。例えば、最大4つのチャンネルを備えたオシロスコープや、最大2つのチャンネルを備えた信号発生器などがあります。電子業界のミックスドシグナルテストから科学業界のレーザー分光に至るあらゆるアプリケーションにおいて、多チャンネル間でのタイミングの制御と同期や、デジタルI/OチャンネルとアナログI/Oチャンネルを関連付けることが必要とされています。
PXIプラットフォーム、特にシャーシでは、タイミング機能と同期機能を統合しているので、PXIモジュール間で一貫性を維持することができます。とはいえ、クロックとトリガを分配して高速同期デバイスを実現するには、問題があります。複数の計測デバイスを調整する際に生じる遅延やタイミングの不確定性は、特に高速計測システムの同期をとる場合に深刻な障害となります。こうした問題はシステムの初期設計段階では見落とされがちで、同期システムの速度と精度を制限してしまいます。クロックとトリガの分配によって生じる主な問題には、スキューとジッタがあります。
NIは、別の信号クロック領域を用いて、サンプルクロックの整合とトリガの分配/受信を可能にする同期方式としてNI-TClkを開発しました。特許出願中の同技術には、以下の2つの目的があります。
• 10MHz基準クロックに位相ロックされていても、初期段階で必ずしも整合されているとは限らないサンプルクロックを整合
• 同期されたデバイスの正確なトリガを実現
PXI Expressシャーシは、スロット間スキューを最大100psに抑えるように設計されています。これで大半のアプリケーションの要件を満足できます。NI-TClk技術を導入すると、スキューを10ps未満にまで低減できるので、モジュール式高速計測器においてマルチチャンネルの位相コヒーレンスをより厳しく制御できるようになります。
NI-TClkによる同期は柔軟性が高く、幅広いアプリケーションに対応可能です。具体的には、以下のようなケースに適用できます。
• 単一のPXIシャーシから複数台のPXIシャーシに同期を拡張し、NI PXI-665xやNI PXIe-667xといったシステムタイミング/制御モジュールを使用して、多チャンネルシステムに対応
• 内部または外部のサンプルクロックを使用し、同じまたは異なるサンプルレートで動作するデバイスを同種同期/異種同期
TClk(NI-TClkのクロック)による同期の目的は、トリガに対してすべてのデバイスを同時に応答させることです。ここで言う「同時」とは、同じサンプル周期で、サンプルクロックと緊密に同調することを意味します。TClkによる同期は、各デバイスがサンプルクロックからトリガクロック信号を生成することによって実現します。トリガはTClkのパルスと同期を取ります。外部ソースからトリガを受信したり、内部でトリガを生成したりするデバイスは、TClkの立ち下がりエッジで、自らを含む全デバイスにトリガ信号を送信します。すると、すべてのデバイスが、次のTClkの立ち上がりエッジでトリガに応答します。
NI-TClkとその仕組みについて、詳しくは技術ドキュメント「ナショナルインスツルメンツのT-Clockテクノロジを使ったモジュール式計測器のタイミングと同期」をご覧ください。
マルチファンクションデータ集録向けのNI-STC3タイミング/同期技術
NI-STC3タイミング/同期技術を導入することで、NI XシリーズのマルチファンクションDAQデバイスにおける性能向上を達成しました。同技術は、デジタル処理や、タイミング、トリガ、同期、カウンタ/タイマ、バスマスタリングといった高度な機能を実現するドライバ技術です。
特定のトリガイベントが発生する度に、指定された操作を実行する計測タスクを再トリガが可能なタスクと呼びます。前世代の同期/タイミング技術では、再トリガできるタスクはカウンタ操作のみに限られており、ほかのタスクに対して再トリガ可能なサンプルクロックを提供することは可能ですが、極めて複雑なコードの作成が必要でした。一方、NI-STC3技術は、あらゆる集録/生成タスクに対して、再トリガを可能にする独自機能を提供します。
また、前世代の同期/タイミング技術では、多くのカウンタアプリケーションで80 MHzのタイムベースが使用されていました。それに対し、NI-STC3技術は、より高速な100 MHzのタイムベースが用いられます。この100 MHzのタイムベースは、アナログ/デジタルのサンプリングレートを生成したり、従来のデバイスで使用されていた20 MHzのタイムベースと比較してレートを更新したりする目的でも使用されます。加えて、任意のサンプリングレートを生成する場合の生成速度が5倍にアップしました。これにより、生成されるクロックレートは、ユーザが要求するレートへとさらに近づきました。さらに、タイムベースの高速化とデバイスのフロントエンドの改善によって、トリガから最初のサンプルクロックエッジまでの時間が短縮され、トリガに対するデバイスの応答性が向上しました。
NI-STC3技術を用いたバッファ型カウンタ入力機能は、バッファリング周期と周波数計測で、従来のデバイスを上回る性能を発揮します。タイミングの種類については、これまでどおり暗黙的にタイミングを選択することもできますが、サンプルクロックの選択も可能になりました。タイミングの種類を選択する際にサンプルクロックを選び、サンプルクロックの立ち上がりエッジが発生するまでの間、(組込みカウンタによってカウントされる)内部のタイムベースと、関心のある未知の信号の両方をカウントすることで、バッファ周波数/周期の計測が可能になります。ただし、サンプルクロック信号は、ユーザが指定して、生成しなければなりません。算出されたカウントで、内部のタイムベースの理想的な周波数を割ると、次のサンプルクロックエッジまでの範囲内で効果的な周波数を見つけ出すことができます。
NI-STC3技術は、XシリーズのデバイスのデジタルI/OおよびPFI(Programmable Function Input)ライン向けの機能も提供します。具体的には、電源の投入状態をプログラムする機能や、ウォッチドッグタイマ、イベントの検出、新機能のPFIフィルタリングなどが挙げられます。
NI-STC3技術を導入すると、これまでは不可能だった高度なアナログ/デジタル/カウンタ操作が可能になります。また、従来は追加のオンボードリソースを必要としたアプリケーションを単独で実行できるようになったり、プログラミングが困難だったアプリケーションを簡易なNI-DAQmxコードで実行できるようになったりするというメリットが得られます。
NI-MCalを用いたデータ集録用キャリブレーションアルゴリズム
NI-MCalは、電圧測定誤差の原因となるオフセット、ゲイン誤差、非線形性を補正するための3次多項式を生成するソフトウェアベースのキャリブレーションアルゴリズムです。ソフトウェアベースのキャリブレーションでは、ハードウェアベースのキャリブレーションとは異なり、選択する各レンジに固有の補正多項式を適用することができます。
NI-MCalのアルゴリズムは、LabVIEWなどのソフトウェアでセルフキャリブレーション関数が呼び出されると実行されます。一般的な最新型のコンピュータにおいては、NI-MCalによる非線形性、ゲイン誤差、オフセットの特性化と、補正多項式のオンボードEEPROMへの書き込みは10秒未満で完了します。それ以降の測定値は、アプリケーションソフトウェアがユーザに返す前に、デバイスのドライバソフトウェアによって自動的にスケールされます。NI-MCalは、ほかのセルフキャリブレーションスキームとは異なり、1回のスキャンで、チャンネルごとにキャリブレーション済みのデータを返すことができます。チャンネルの入力レンジが異なる場合でも同じです。これは、デバイスにおける個々の入力レンジに対して補正多項式を決定、保存、適用することで実現します。ほかのセルフキャリブレーションメカニズムでは、データの補正にハードウェアコンポーネントを使用するため、1回のスキャンで複数の入力レンジを使用する場合、適切な精度を維持するのに十分な速度で補正関数を動的にロードすることは不可能です。一方、NI-MCalでは、データの補正にソフトウェアを使用するため、デバイスの最大速度でスキャンを実行している場合でも、チャンネルごとに補正関数を簡単にロードして適用することができます。
NI-MCalとほかのセルフキャリブレーション関数の違いとしてもう1つ挙げられるのが、スキャンシーケンスで、チャンネルごとに補正関数を適用するだけでなく、非線形誤差を補正できるという点です。NI-MCalは、デバイスにおける誤差の補正に従来使用されてきたハードウェアコンポーネントの限界を取り除き、ソフトウェアとPCの処理性能/速度を利用することで、測定精度のレベルを引き上げ、デバイスのセルフキャリブレーションのあり方を一変させました。
NI-MCalとその仕組みについて、詳しくは技術ドキュメント「NI-MCalキャリブレーション方法による測定確度の向上」をご覧ください。
図4. LabVIEWグラフィカルプログラミングで開発時間を短縮する。
NI PXIモジュール式計測器は、Windows OSや、確定性に優れた操作が必要となるアプリケーションに向けたリアルタイムOS、一般的なLinuxディストリビューションに対応可能です。こうした幅広い選択肢によって、モジュール式計測システムを設計するのに必要な柔軟性を確保することができます。
Windows OS
WindowsをベースにしたPXIシステムの開発と操作は、標準のWindows PCを使用する場合と何ら変わりません。PCベースのシステムとPXIベースのシステム間の移行作業では、既存のアプリケーションソフトウェアを書き直したり、新しいプログラミング手法を習得したりする必要はありません。
PXIを導入すると、直感的な操作で作業が可能なグラフィカルプログラミング言語で、業界標準のテスト環境であるNI LabVIEW、もしくはANSI C開発環境であるNI LabWindows™/CVIを用いて、開発時間を短縮し、計測器による測定を短時間で自動化できます。また、Visual Studio .NETや、Visual Basic、C/C++といったほかのプログラミング言語の使用も可能です。
さらに、PXIコントローラでは、NI TestStandなどのテスト管理ソフトウェアを使用して開発されたアプリケーションを実行できます。PXI用のテストアーキテクチャの開発について、詳しくは技術ドキュメント「NI TestStandとLabVIEWでモジュール式テストソフトウェアアーキテクチャを開発」をご覧ください。
リアルタイムOS
確定的なループレートやヘッドレス操作(キーボード、マウス、モニタなし)を必要とするタイムクリティカルなアプリケーションでは、Windowsベースのものではなく、リアルタイムソフトウェアアーキテクチャを使用することができます。リアルタイムOSを使用すると、最重要のタスクがいつでもプロセッサを制御できるように、タスクの優先順位付けを行うことが可能です。その結果、ジッタを抑制することができます。LabVIEW Real-TimeモジュールやLabWindows/CVI Real-Timeモジュールといった業界で標準的に用いられている開発環境のリアルタイムバージョンを使用すると、リアルタイムシステムをより簡単に開発できるようになります。動的テストやHIL(Hardware-In-the-Loop)テスト用のPXIシステムを構築する際には、NI VeriStandなどのリアルタイムテストソフトウェアを使用することで、開発時間をさらに短縮できます。確定性の高いテストについて、詳しくはリアルタイム計測に関するページをご覧ください。
Linux OS
NIは、一般的なLinuxディストリビューションに対応するモジュール式計測器を含む、さまざまなハードウェアデバイスをサポートしています。Linuxのサポート状況について、詳しくはNIのLinuxに関するページ(英語)をご覧ください。
計測/制御サービス
NIモジュール式計測器は、NI Measurement & Automation Explorer(MAX)や、NI-DAQmx、Virtual Instrument Software Architecture(VISA)、LabVIEWプラグアンドプレイ計測器ドライバ、Interchangeable Virtual Instrument(IVI)ドライバなどの強固なソフトウェアインタフェースを備えています。これらの計測/制御サービスソフトウェアは、モジュール式ハードウェアでテストをコンフィギュレーション(構成)したり、プログラミングしたりすることができるインタフェースを提供します。大半のNIモジュール式計測器には、計測器のトラブルシューティングやデバッグを短時間で完了できるようにするソフトフロントパネル(SFP)が付属しています。SFPに加えて、上述した計測/制御サービスソフトウェアパッケージを使用すれば、テストシステム内の特定のハードウェアやチャンネルに恒久的に紐づけされるテストプログラムの開発が不要となり、コードをより簡単に再利用できるようになります。このセクションでは、計測/制御サービスソフトウェアパッケージのコンポーネントについて、1つ1つ詳しく見ていきましょう。
構成マネージャ
MAXをはじめとする構成マネージャを使用すれば、システム内のあらゆる計測ハードウェアをすべて表示し、システム全体を俯瞰することができます。MAXではチャンネル名を定義し、信号を組織化したり、デジタル化された信号を計測量に変換するスケーリング関数を指定したりすることが可能です。構成マネージャの主なメリットとして挙げられるのが、アプリケーション開発環境(ADE)との統合が行えることです。ADEと統合することで、面倒なプログラミングを行わなくても、複数の計測器を1つのアプリケーション向けに簡単に統合できるようになります。構成マネージャを使わない場合には、かなりの時間をかけて、複数の計測機能を統合するようプログラムで構成しなければなりません。
計測器の接続性
既存の旧型計測器をテストソフトウェアフレームワークに統合すると、プラグアンドプレイ計測器ドライバやIVIといった技術を活用して、旧型計測器との通信性と互換性を高めることができます。LabVIEWプラグアンドプレイ計測器ドライバには、プログラム可能な計測器を制御する関数(LabVIEWではVI)がセットで収録されています。計測器ドライバを用いると、コンピュータから計測器を操作できるようになるので、各計測器のプログラミングプロトコルを習得する必要がなくなります。それにより、開発時間とコストの節約が可能になります。定評があるオープンソースの計測器ドライバを用いれば、操作をカスタマイズして、性能の向上を図ることができます。
IVIは、計測器の互換性の向上を促進するドライバフレームワークを実装したものです。IVIドライバでは、計測器の種類に応じて汎用APIを用いるほか、特定の計測器との通信を可能にするドライバを個別に実装します。各計測器の特定のドライバ実装とAPIを分離することで、特定のIVIに対応するオシロスコープを用いて、システムを設計することができます。システムのデプロイ(実装)が完了した後、テストアプリケーションを書き換えなくても、ほかのメーカーの計測器や別のモデルに変更することが可能です。
プログラミングツール
ドライバは、使い勝手に優れたAPIを提供するだけでなく、開発の推進と開発時間の短縮を可能にするツールを追加することでより良いものとなります。I/Oアシスタントは、計測アプリケーションやスティミュラスアプリケーションを短時間で作成できるようにする対話式のツールです。具体的には、NI-DAQmxドライバに収録されているDAQアシスタントなどがこれに相当します。DAQアシスタントは、一般的なデータ集録パラメータをプログラミングなしで設定できるパネルを搭載しています。開発期間を短縮するということと、広範なアプリケーション要件に対応するということの両方を満たすには、使い勝手の良いアシスタントと、強力なプログラミング環境を組み合わせる必要があります。
サンプルプログラム
NIのモジュール式計測器には、先述した計測/制御サービスソフトウェア以外にも、サンプルプログラムが必ず同梱されています。例えば、NI高精度DC電源向けのIVI対応計測器ドライバであるNI-DCPowerは、シンプルなコンフィギュレーションから高度なスイープ/監視に至るまで、さまざまな概念のデモを披露するサンプルプログラムを収録しています。
図5. NI-DCPowerに収録されているサンプルプログラム
NI PXIモジュール式計測器の設計が完了し、生産段階へ移行したら、1台1台の製品が仕様に適合しているかどうかを評価します。生産されたモジュール式計測器の1台1台に対し、所定のアプリケーションに配備した際、確実に動作することを保証するために、何時間もの厳しいテストを実施します。実施するテストには、自動光学検査(AOI)や、インサーキットテスト(ICT)、初期機能確認テスト(IFT)、環境ストレススクリーニング(ESS)、機能検証テスト(FVT)などがあります。
最初に行うAOIでは、生産された製品1台ずつをメモリ内の優良製品の図と比較し、部品の向きが間違っていたり、部品が紛失したりしていないことを確かめます。ICTでは、ボードの全テストポイント間で抵抗値の評価を行い、短絡や開放、劣化している部品の有無をチェックします。IFTは電源投入シーケンスを確認し、製品の基本機能を保証するものです。ESSは、熱調節試験(TCT)と高度加速ストレススクリーニング(HASS)から成ります。生産したボードが特定の温度に達した状態で、スティミュラスを与えた場合と与えない場合の両方で、応答を監視します。ESSの「燃焼」状態は、数時間から数日間に及ぶこともあります。生産された製品に対して最後に行うのがFVTです。FVTでは、すべてのモジュール式計測器のキャリブレーションを行い、仕様に準拠しているかどうかを確認します。一部の計測器については、精度を確保するために、FVT用テストステーションのキャリブレーションを週に1回の頻度で実施します。
図6. NIで使用しているHASS用高温度室
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