LXI、USB、PXI Express、VXIなどデバイス1ハイブリッドテストシステム統合する方法

概要

USBLXIを含むLANなどの通信バスをベースとした計測器制御の規格が普及すると、開発者はこれらの計測器をどのようにシステムに統合していくかという問題に直面します。スタンドアロン計測器は、USBやLXIなどの新しいバスや規格を取り入れながら絶えず変更を繰り返しており、それに伴いユーザはさまざまな計測器接続が提供する利点を活用することができます。同時に、テストシステムでソフトウェアの柔軟性、短いレイテンシ、高うスループットが要求されるアプリケーションにはVXIPXIまたはPXI Expressなどのモジュール式計測器バスを利用する場合もあります。そうすると、さまざまな理由で開発者が複数のバスを組み合わせたり、すでにあるテストシステムに追加のバスを統合したりする必要が出て来きます。複数プラットフォームのコンポーネントを組み合わせたハイブリッドテストシステムを利用すると、簡単に既存のテストシステムに新しいバスを統合でき、設計上の課題を解決したり、さまざまな技術の利点を活かしたり、システムの寿命を延ばしたりすることができます。PXIPXI ExpressVXIGPIBUSBLAN/LXI、およびシリアルなどのプラットフォームを1つのシステムに統合するために、開発者は適切なソフトウェアフレームワークを選択する必要があります。適切なフレームワークを選択することで、正しく統合を行うことができ、計測器バスの変更にも対応できる柔軟性も確保します。

技術的な詳細については、最新のバス技術を使用して計測器に接続する(英語)のウェブキャストをご覧ください。

内容

ハイブリッドテストシステム

システムを設計するにあたって、開発者はさまざまな課題を均衡よく解決する必要があります。システムニーズに応えるためには、ハイブリッドシステムを構築してさまざまなプラットフォームの利点を活用することです。たとえば、システムでVXI、PXI、PXI Express、PCI Expressなどのモジュール式計測器バスが提供するソフトウェアの柔軟性や高スループットを必要とし、同時にスタンドアロン計測器のUSBやLAN(LXIを含む)ベースの機能が要求される場合があります。ハイブリッドテストシステムとは、PXI、PCI、GPIB、VXI、USB、またはLAN/LXI などの複数のATEプラットフォームを1つのシステムにまとめたものです。さらに、ハイブリッドシステムを使用することで、エンジニアは再設計をすることなく新しいコンポーネントを簡単に既存のシステムに組み込むことができます。

ハイブリッドテストシステムを構築する上で重要になるのは、拡張可能な複数層のアーキテクチャでシステムを設計し、保守やアップグレードを簡単に行えるようにすることです。図に示すように5層のアーキテクチャで複数プラットフォームのハイブリッドテストシステムを設計することで、開発者はソフトウェアとハードウェアを明確に切り離すことができます。これによって複数プラットフォームの統合が簡素化され、特定の階層のみでも保守やアップグレードを容易に行えます。このような構造でなければ、新しいコンポーネントを追加するたびに毎回再設計しなければいけません。このアーキテクチャでは1番下の層は「デバイスI/O」層で、ここにはPXI、VXI、USB、またはLAN/LXIなどの複数の計測器バスを基にした個別の計測器が含まれます。その上の層は「コンピュータ」で、モジュール式計測器の制御および異なるスタンドアロンバスを接続する組み込み式リモートコントローラが含まれます。下から3番目の層は「計測/制御サービス」で、ハードウェアとソフトウェアの橋渡しをするハードウェアドライバおよび計測器ドライバが含まれます。その上の層は、「アプリケーション」層で、デジタルマルチメータ測定やパワースペクトルなど個別のテストプログラムで構成されています。一番上の層は「システム管理」で、テストプログラムを呼び出しや、データログ、レポート生成、ユーザ管理などを行うフレームワークを提供します。



図1. 複数層になったアーキテクチャを使用することで、開発者はVXI、PXI、USB、LAN/LXI などの
複数プラットフォームを組み合わせて柔軟的に設計を行うことが可能

スタンドアロン計測バス: GPIB、USB、およびLAN/LXI

スタンドアロン計測器では、GPIB、USB、LAN(LXIを含む)、シリアルなどのさまざまな計測器バスが使用されています。それぞれのバスに利点があり、アプリケーションによって適用性が異なります。GPIBは、実績のある計測器バス技術を提供し、多種多様の計測に使用できます。USBは、普及率とユーザビリティが高く、接続も簡単です。LAN/LXIを使用すると、分散システムやリモートシステムとして利用できます。このようにさまざまな計測器バスを使用できるので、ユーザは測定機能、帯域幅、レイテンシ、性能、接続性などの条件に対応できる適切な計測器を選択することができます。

GPIB

テスト、計測、計測器制御アプリケーション用に設計された汎用インタフェースバス(GPIB)は、30年間堅固で信頼性の高い通信バスとして普及しており、現在も幅広く使用されています。パラレルバスを使用したGPIBは、レイテンシが短い計測器バスを提供します。IEEE 488.2-1987リビジョンでは、規格が強化され、コントローラや計測器がどのようにGPIBを介して通信するか細かく定義されました。さらに、IEEE 488.1-2003リビジョンでは、高速データ転送モードが定義され、これは帯域幅を8倍増加させてGPIB計測器制御に8 MB/s帯域幅を提供するようにしたものです。GPIBはPCの一般なバスではないので、PCに標準装備されていることはほとんどありません。そのため、通常はNI PCI-GPIBのようなプラグインボードを使用したり、GPIB-USBのような外部変換器を使用してGPIB計測器制御機能をPCに追加します。市場に出回っている1000万台近いデバイスで、さまざまな計測を可能にしたGPIBは、スタンドアロン計測器用の通信用バスとして普及し、高い信頼性を提供しています。

USB

ユニバーサルシリアルバス(USB)は、ほとんどのPCに装備されており、プラグアンドプレイで簡単に使用でき、帯域幅も大きいため、スタンドアロン計測器においても通信バスとしての使用が急速に普及しました。接続や構成が簡単であるため、開発者はシステムにUSBベース計測器を迅速に統合することができます。USB 2.0のリリースによって、最大転送レート480 Mb/sを実現して最低フレームレイテンシを1 msから250 µsに削減した高速デバイスの新規カテゴリが設立されました。さらに、USBTMC(USB Test and Measurement Class)では、シンプルなセンサから複数測定機能を実行するメインフレームまで広範囲におよぶテストや計測の通信要件に対応します。USBTMCは、USBを基本として構築されたプロトコルを設定し、USBデバイスとGPIBのように通信できるため、ユーザからみるとUSBがGPIBデバイスと全く同じように動作しているように見えます。たとえば、開発者は「VISA書き込み(VISA Write)」関数を使用して「*IDN?」クエリを送信し、「VISA読み取り(VISA Read)」関数で応答を取得できます。USBTMCプロトコルはサービス要求、トリガ、およびGPIB独自の操作をサポートしています。

LAN/LXI

成熟した技術であるLAN(ローカルエリアネットワーク)は、通常、一般的なネットワークやリモートデータストレージなどの計測機能を持たないシステムで使用されています。そのためLANは、分散システムやリモート管理などに適しています。現在、ほとんどのコンピュータに装備されているため、スタンドアロン計測器用通信バスとしてLANは急速に普及しています。LANではスイッチ、ルータ、リピータを利用することで長いケーブルを使用できるので、1か所に計測システムをまとめておく必要はなく、ネットワークとしてスタンドアロン計測器を分散して配置できます。さらに、VXI-11仕様では、TCP/IPを介したメッセージベース計測器との標準セットの通信用プロトコルを提供しています。VXIbusセット仕様の一部であるVXI-11仕様は、TCP/IPネットワークを使用したコントローラデバイス通信用のネットワーク計測器プロトコルを定義しています。LXI (LAN eXtensions for Instrumentation) 規格は、LANに基づいた計測器クラスを定義し、IEEE 1588技術ベースの同期オプション、およびLXIトリガバスでのオプショントリガ仕様も含みます。LXI計測器は、LANスタンドアロン計測器のサブネットです。これらのLXI規格の追加使用を適用する場合、低周波数分散システムとリモート監視システムにタイミングと同期のレベルを追加することができます。

これらすべての計測器バスを使用しても、ユーザはスタンドアロン計測器での課題と同じ課題に直面します。スタンドアロン計測器は、特別な機能や性能を提供できるという点で優れていますが、それぞれ製造元で定義された独自の計測器です。結果として、開発者は統合や拡張性での制限に悩むことになり、すでに確立されたソフトウェアモデルで作業せざるを得なくなります。技術的な詳細については、最新のバス技術を使用して計測器に接続する(英語)のウェブキャストをご覧ください。

モジュール計測バス: VXI、PCI、PXI、PCI Express、およびPXI Express

モジュール式計測器を使用すると、開発者はオープンなマルチベンダ規格を利用でき、アプリケーションに必要なユーザ定義のソリューションを作成することができます。モジュール式アーキテクチャとオープン規格を使用することで、異なる製造元の複数のコンポーネントを1つのシステムに簡単に統合でき、必要に応じて拡張することができます。高スループット、短いレイテンシ、ソフトウェアの柔軟性を提供するので、開発者はアプリケーションに要求される性能を実現するテストシステムをユーザ定義で構築することができます。モジュール式計測器バスは、スタンドアロン計測器バスに比べてスループットとレイテンシに優れているので、高速データストリーミングなどが必要なアプリケーションに最適です。オープンソフトウェアモデルとPCの処理能力を活用することで、ユーザはモジュール式計測器が提供するデータから必要なすべての測定を取得することができます。これによって、システムを必要に応じて自由に設計することができ、アプリケーションに必要なコンポーネントのみを購入することができます。

VXI

VXI Consortiumは、マルチベンダの計測器をカード化して互換性を図る規格を掲げて1987に創立されました。それ以来、このコンソーシアムはハードウェアの相互運用性に要求されるシステムレベルのコンポーネントを定義してきました。IEEEでは、1993年3月に正式にVXI仕様であるIEEE 1155を承認しました。1993年9月に創立されたVXIplug&play Systems Allianceは、それよりさらに高レベルのすべてのVXIシステムコンポーネントに対応するシステム規格を追求しています。ソフトウェア規格の設立に焦点を当て、このアライアンスではマルチベンダのソフトウェア相互運用性を保持しながら、VXIシステムの統合および使用を容易に行える規格を定義しました。マルチベンダ規格と確かな技術仕様のおかげで、現在VXIは250以上のベンダにサポートされており、製品も1000種類以上が市場に参入しています。オープンでマルチベンダプラットフォームのVXIの普及は、マルチベンダ規格が市場で重要視されていることを証明しています。

VXIは、研究と工場オートメーションの両分野におけるテスト、計測、ATEからデータ集録や解析に至るまでさまざまなアプリケーションで使用されています。VXIシステムをVXIのみで使用する場合もありますが、多くのユーザはGPIB計測器、VMEカード、プラグインデータ集録ボードなどを含む既存のシステムにVXIを統合するといった傾向に移行しています。高速MXI(Multisystem eXtension Interface)バスインタフェースやGPIBを使用すると、リモートの汎用コンピュータでVXIシステムを制御することができます。また、コンピュータをVXIシャーシに組み込んでシステムを直接制御することもできます。システム構成に必要な課題がどのようなものでも、VXIは現在最も困難とされているアプリケーションに対応できる柔軟性と性能を提供しています。

PCIおよびPXI

1990年代の初めに導入されたPCIは、当初、ISAバスに置き換られるチップ間の相互接続として実装されました。それまでのバスに比べてPCIバスには、プロセッサの独立性、バッファ型絶縁、バスマスタ、プラグアンドプレイ操作などの利点があります。PCIバスは通常計測器制御に直接使用されることはなく、GPIBやシリアルデバイスを接続して計測器制御を行う周辺バスとして使用されます。また、帯域幅が大きいため、I/Oが測定デバイスに組み込まれているモジュール式計測器のキャリアバスとしても使用されています。

PXIは、PCIの電気的バス仕様に、CompactPCIの堅固なモジュール式Eurocardメカニカルパッケージを組み合わせたもので、同期バスと主要なソフトウェア機能を追加します。これによって、システムのテスト、測定、および制御における高性能と低コストを実現したデプロイメントプラットフォームとなります。これらのシステムは、製造テスト、航空宇宙産業、機械監視、自動車産業、工場テストなどの幅広いアプリケーションに使用されてます。PCIベース通信を使用すると、PXIで短いレイテンシおよび132 MB/sの高スループットを実現できます。さらに、PXIでは8線式トリガバスで10 MHz基準クロックでのタイミングとトリガ、モジュール間スキューが1ナノ秒内の専用トリガラインを持つスタートリガラインを提供します。PXIは、主にモジュール式計測用のプラットフォームとして使用されており、従来型のスタンドアロン計測の代替として使用できるタイミングと同期リソースが統合されたコンパクトで高性能計測ハードウェアデバイスです。

PCI Express

PCアプリケーションの帯域幅への依存性が高まるにつれ、PCIバスの物理的制限がさまざまな状況で障害になる場合あります。これに対応すべく、PCIを定義する規格団体であるPCI-SIGは、さまざまな市場に対応し拡張性のある低コストインタフェースを提供し、既存のPCIカードドライバとソフトウェアにソフトウェアレベルで互換性を提供することを目的としたPCI Expressを発表しました。PCIアドレスモデルとの互換性は、すべての既存アプリケーションとドライバが変更なく動作できるようにするためのものです。PCIが進化したPCI Expressは、x1実装では各方向に250 MB/s、x16実装では最大4 GB/sの基本通信レーンを提供します。さらに、PCIでは帯域幅を共有するのに対し、PCI Expressは各PCI Expressスロットをスイッチファブリックに接続することで各スロットが独自の帯域幅をもちます。互換性を考慮して設計されたPCI Expressは、層を積み重ねたアーキテクチャを使用して、次世代技術との互換性、およびPCI Expressとのソフトウェア互換性を確保しています。PCIと同様、PCI Expressは通常計測器制御に直接使用されることはなく、GPIBデバイスをPCに接続して計測器制御を行う周辺バスとして使用されます。速度に優れたPCI Expressは、モジュール式計測器用のキャリアバスとして使用できます。

PXI Express

バックプレーン通信としてのPCIの使用に伴い、PXIの採用も急速に浸透し、PXI ExpressではPCI ExpressをPXI規格に統合することで更なるアプリケーション要求に対応することができるようになりました。PCI Express技術を活用して、PXI ExpressではPXIモジュールとのソフトウェア/ハードウェア互換性を保持しながら、使用可能なPXI帯域幅を132 MB/sから6 GB/sの45倍に拡大しました。この性能強化により、従来高価で独自技術のハードウェアのみで構成されていたアプリケーションでも採用されるようになっています。PCI Expressとのソフトウェア互換性があるため、PXIが提供する標準ソフトウェアフレームワークはPXI Expressでも使用できます。ハードウェア互換性を提供するために、新しいCompactPCI Express仕様では、エンジニアがPCIまたはPCI Expressアーキテクチャのどちらでもモジュールに取り付けられる新規ハイブリッドスロットを定義しています。この技術を使用することで、ハードウェアとソフトウェアの互換性を活用し、エンジニアとベンダはPXIシステムおよび製品への既存投資を維持することができます。

ソフトウェアフレームワーク重要性

ハイブリッドシステムは、モジュール式計測器バスとスタンドアロン計測器用のバスインタフェースを組み合わせて使用することができ、ユーザはモジュール式計測器の高速性と柔軟性を取り入れつつ、既存の特殊化したスタンドアロン計測器を使用することができます。使用されているソフトウェアフレームワークは、これらのプラットフォームを1つのシステムに統合し、絶えず進化する計測器バスに対応できる柔軟性を確保するために重要になります。市販のバスが普及するにつれて、ソフトウェア層を基礎にしたハイブリッドアーキテクチャがますます重要性を増しています。市販のバスは常に改善を繰り返して変化しているので、その変化を取り入れて遅れをとらないうように任意の層だけを変更できるソフトウェア層構造が重要になります。

ソフトウェアフレームワークで統合できる部分は、計測/制御サービス層で、ハードウェアとソフトウェアの橋渡しを行い、テストコードを持つハードウェアの構成と統合を簡素化できる柔軟性のあるデバイスドライバが含まれます。ハードウェアをシームレスにソフトウェアに統合するには、高速性能、プログラミングでの柔軟性、および一貫性のあるスケーラブルなAPI(Application Programming Interface)を提供するドライバが必要になります。VISA(Virtual Instrument Software Architecture)規格は、使用している計測器バスに依存することなくドライバソフトウェアと通信できる共通APIを提供ます。VISAは、標準セットの関数呼び出しを使用して、PXI、VXI、GPIB、LAN/LXIなどをベースとした計測器と通信を行います。コントローラ互換性とバス互換性を提供するバスを使用して、開発者は使用しているコントローラを相互交換することができます。さらに、計測器ドライバは、アプリケーション開発環境において使用する計測器機能を適切に活用することができるため、アプリケーションで重要な役割を担います。計測器ドライバの規格であるIVI(Interchangeable Virtual Instrument)ドライバは、オシロスコープやスイッチのような計測器クラス用のテストソフトウェアを変更することなく、計測器を相互交換できます。これらのクラスの1つに準拠するIVI計測器は、製造元またはバス接続に関わらず、同じクラスの別の計測器で代用することが可能です。たとえば、IVIドライバを使用すると、開発者は同じコードでPXI、VXI、GPIB、またはLAN/LXI計測器と通信することができます。

まとめ

ハイブリッドテストシステムを使用すると、モジュール式計測器バスとスタンドアロン計測器の周辺バスを組み合わせることができます。PXIおよびPXI Express、またはUSBおよびLAN/LXI計測器などの新しい計測器バスを活用して、開発者はハイブリッドテストシステムを使用して複数のプラットフォームを1つのシステムに統合することができます。複数のプラットフォームが混在できるので、モジュール式計測器バスが提供する高速で柔軟性に富み、カスタマイズも可能なソフトウェアを。スタンドアロン計測器と一緒に使用することができます。システムでPXI、USB、LAN/LXIなどのバスを基本とした計測器を効果的に統合するには、VISAやIVIなどのツールが提供するソフトウェアアーキテクチャを利用することです。このソフトウェアを使用すると、市販のバスが変化しても、その変更を反映するのは1層のみなので、変化よる影響を最小限に抑えることができます。