Massive MIMO​を​使​って​5G​無線​周波数​利用​効率​の​新​記録​を​打ち立てる

Paul Harris, University of Bristol

"NI PXI Express​プラットフォーム​は、​システム​構築​の​ベース​と​なる​強力​な​フレーム​ワーク​となり​ま​した。​この​プラットフォーム​は、​堅牢​性​が​高​く、​再​構成​が​簡単​で、​128​本​の​アンテナ​を​持つ​MIMO​の​運用​に​必要​と​さ​れる​高い​スループット​を​満たす​こと​が​可能​です。"

- Paul Harris, University of Bristol

課題

Massive MIMO(multiple input, multiple output)​を​将来​の​5G​ネットワーク​における​大規模​な​データ​通信​容量​確保​と​エネルギー​効率​の​向上​を​もたらす​技術​として​検証​する。​こうした​技術​は、​これ​以上​無線​スペクトル​を​消費​する​こと​なく、​スマート​デバイス​の​データ​レート​向上​と​急速​な​普及​に​対応​できる​必要​が​ある。

ソリューション

NI​プラットフォーム​を​使用​し​て、​128​本​の​アンテナ​を​備え​た​リアルタイム​Massive MIMO​テスト​ベッド​を​開発​する。​この​最先端​システム​を​使用​する​こと​により、​20 MHz​の​スペクトル​(3.5 GHz​帯)​のみ​を​使​って、​同時に​12​個​の​ク​ライアン​ト​デバイス​の​無線​に​対応​する​こと​が​でき​た。​この​ときの​合計​データ​レート​は​1.59 GB/​秒​で、​5G​の​周波数​利用​効率​の​世界​記録​を​マーク​した。

作成​者:

Paul Harris - University of Bristol
​Steffen Malkowsky - Lund University

 

ブリス​トル​大学​の​Communication Systems Networks(CSN)​Group​は、​1985​年、​固定​通信​ならびに​無線​通信​セクタ​の​研究​要請​に​応じる​目的​で​結成​さ​れ​ま​した。​この​グループ​は、​高度​な​産業​用​アプリケーション​を​用​い​た​学術​研究​を​行​って​おり、​最先端​の​テスト/​計測​装置​と​最高​レベル​の​コンピュータ​設備​を​備え​た​優​れ​た​研究​施設​を​所有​し​てい​ます。​「Bristol Is Open(BIO)」​と​名付け​ら​れ​た​ブリス​トル​大学​と​ブリス​トル​市議会​による​ジョイント​ベンチャー​が、​スマート​シティ​と​モノ​の​インターネット​(IoT:Internet of Things)​の​開発​に​貢献​する​イニシアチブ​を​サポート​し​てい​ます。

 

ルンド​大学​は、​世界​と​人類​の​現状​を​理解、​解説、​向上​する​ことに​努める、​世界​有数​の​大学​に​なる​こと​を​目指​し​てい​ます。​ルンド​大学​の​Electrical Engineering and Information Technology Department(EIT)​(電気​工学​および​情報​技術​学科)​は、​アナログ/​デジタル​と​通信​システム​設計​の​分野​を​広​く​網羅​し​て​おり、​Massive MIMO​理論、​チャンネル​計測、​アク​セラ​レ​ータ​設計​といった​Massive MIMO​の​最前線​で​研究​を​続​け​て​き​ま​した。

 

 

 

5G​へ​の​道のり

北米​において​は​2020​年​まで​に​携帯​電話​の​契約​者​が​ひと月​あたり​20 GB​を​消費​する​よう​に​なる​と​予測​さ​れ​てい​ます。​それに​加​えて、​地方​における​ブロード​バンド​インターネット​接続​の​普及​も​必要​に​な​って​くる​で​しょう。​最大​の​懸念​事項​は、​将来​の​ネットワーク​は、​IoT、​そして、​スマート​テレメトリ​デバイス​の​普及​に​対応​し​てい​か​なく​て​は​なら​ない​という​こと​です。​2020​年​まで​に、​イギリス​の​個人​が​所有・​使用​する​インターネット​接続​デバイス​は​27​台​に​なる​こと​が​アナリスト​によって​予測​さ​れ​てい​ます。​この予測に基づけば、​世界​で​500​億​台​の​デバイス​が​存在​する​ことに​なり​ます。​接続​性​の​ほかに、​新しい​工業​用​アプリケーション​(スマート​ファクトリ、​マシンツーマシン​通信)​および​消費者​向け​アプリケーション​(4K​動画​ストリーミング、​自動​運転​車)​に​は、​高い​データ​レート、​低い​レン​テン​シ、​信頼​性​の​向上​が​求め​ら​れ​ます。​これ​が​電気​通信​エンジニア​にとって​の​課題​となり​ます。​第​5​世代​移動​通信​(5G)​が​必要​と​する​全く​新しい​これらの​要件​に​対応​できる​よう​に、​イノベーション​を​速やか​に​実現​し​てい​く​必要​が​あり​ます。

 

Massive MIMO​システム​は、​極めて​貴重​かつ​希少​な​周波数​スペクトル​を​これ​以上​消費​する​こと​なく、​より​多く​の​デバイス​を​空間​多重​する​こと​が​でき​ます。​さらに、​マルチ​パス​伝搬​環境​(都市​部​および​工業​環境​の​大半)​における​高速​な​フェージング​による​利得​の​変化​を​平均​化​する​作用​が​生まれる​こと​で、​信号​レベル​の​急激​な​低下​によって​生じる​エラー​の​数​を​減らす​こと​が​でき、​物理​層​における​レイ​テン​シ​を​根本​的​に​改善​する​こと​が​でき​ます。

 

Massive MIMO​が​もたらす​数多く​の​メリット

マルチ​ユーザ​MIMO​通信​システム​では、​全て​の​ユーザ​が​同じ​周波数​帯域​を​使用​し​て​同時​伝送​を​行う​こと​が​可能​です。​この​とき、​基地​局​は​複数​の​アンテナ​を​使用​する​こと​で、​各​ユーザ​から​の​データ​ストリーム​を​空間​的​に​分離​し​て​受信​処理​を​行う​こと​が​でき​ます。​ダウン​リンク​伝送​の​場合、​基地​局​は​この​逆​の​プロセス​を​実行​し​ます。​ビーム​フォーミン​グ​という​テクニック​を​使用​し​て、​全て​の​ユーザ​に​同時​伝送​を​行い​ます。​各​デバイス​の​アンテナ​間​相関​を​十分​低​く​した​場合、​システム​の​通信​容量​は、​K​を​ユーザ​数​と​すると、​K​倍​で​増加​し​てい​き​ます。​信号​処理​上の​理由​から、​基地​局​は​少なくとも​ユーザ​と​同じ​数​だけ​アンテナ​を​必要​と​し​ます。​MIMO​で​設置​さ​れる​アンテナ​は​現在、​Wi-​Fi​と​4G​セルラー​方式​の​両方​において​最大​8​本​です。

 


Massive MIMO​テスト​ベッド​の​開発

オース​ティン​の​NI Advanced Wireless Research Group、​スウェーデン​の​ルンド​大学、​ブリス​トル​市議会​の​協力​の​下、​128​本​の​アンテナ​を​備え​た​Massive MIMO​システム​の​実装​に​成功​しま​した。​この​システム​は、​12​台​の​無線​デバイス​に対し、​同じ​時間・​周波数​リソース​を​用​い​た​同時​伝送​が​でき​ます。

 

この​テスト​ベッド​は、NI​の​Massive MIMO​リファレンス​設計に​基​づ​い​て​おり、​5​台​の​NI PXIe-1085​シャー​シ​を​組み合わせ​て​作成​さ​れ​てい​ます。​マスタ​シャー​シ​に​は​NI PXIe-1085​コントローラ、​NI PXIe-6674T​タイミング​モジュール、​4​台​の​NI PXIe-7976R FlexRIO FPGA​モジュール​が​搭載​さ​れ​てい​ます。​4​台​の​スレーブ​シャー​シ​は​x8 PCI Express(PCIe)​経由​で​接続​さ​れ​てい​ます。​そして、​それぞれ​16​台​ずつ​の​USRP-2943R​ソフトウェア​無線​機​(SDR)​を​x4 PCIe​リンク​で​各​スレーブ​シャー​シ​に​接続​しま​した。​1​台​の​USRP-2943R​に​は​2​チャンネル​の​RF​送受信​機能​が​搭載​さ​れ​て​いる​ため、​合計​で​128​個​の​RF​チェーン​が​完成​しま​した。​NI PXIe-6674T​の​高​確度​な​10 MHz OXCO​リファレンス​と​デジタル​トリガ​が、​8​台​の​OctoClock​クロック​分配​モジュール​を​使​って、​全て​の​USRP-2943R​に​送​ら​れ​ます。​これ​によって、​正確​な​ハードウェア​同期​が​確保​さ​れ​ます。

 

最後​に、​x1 PCIe​リンク​で​ノート​PC​に​接続​した​USRP-2953R SDR​を​6​台​追加​し​て、​ユーザ​を​シミュレート​しま​した。​LabVIEW​ソフトウェア、​LabVIEW FPGA​モジュール、​NI-​Sync​を​使用​し​て​開発​した​Massivie MIMO​リファレンス​設計​によって、​システム​は​さらに​強化​さ​れ​ま​した。

 

 

この​よう​な​大規模​かつ​複雑​な​システム​に​トラブル​は​つきもの​です。​しかし、​NI​の​ソフトウェア​開発​ツール​と​ハードウェア​製品​が​他​に​類​を​見​ない​優​れ​た​統合​力​を​発揮​し​てく​れ​た​おかげ​で、​この​複合​的​な​システム​の​モジュール​化​を​スムーズ​に​行う​こと​が​でき​ま​した。​柔軟​かつ​優​れ​た​ソリューション​を、​信頼​性​の​高い​単一​の​プラットフォーム​で​実現​する​こと​が​私​たち​の​目指す​ところで​した。

 

PXI Express​プラットフォーム​は、​高​スループット​で​低​レイ​テン​シ​の​いかなる​システム​において​も、​優​れ​た​基盤​として​の​役割​を​果​た​し​ます。​NI​の​長年​の​経験​を​生​か​した​この​プラットフォーム​の​信頼​性​は​大変​高い​と​言​え​ます。​この確固たる基準に基づき、​100​個​近く​もの​ハードウェア​部品​を​組み込み​ま​した​が、​1​つ​の​ソフトウェア​フレーム​ワーク​の​中​で​アプリケーション​全て​を​シームレス​に​開発​する​こと​が​でき​ま​した。​高度​な​モジュール​式​アプローチ​や、​ソフトウェア​と​ハードウェア​の​優​れ​た​統合​は、​今​私​たち​が​必要​として​いる​ソリューション​を​も​たら​し​て​くれる​だけ​で​なく、​将来​的​な​ハードウェア​構成​の​変更​に​要する​コスト​と​時間​が​効率​的​に​なる​こと​を​保証​し​てく​れ​ます。

 

12​台​全て​の​無線​デバイス​から​の​信号​を​空間​的​に​分離​し​て​区別​し​つつ、​リアルタイム​処理​を​可能​に​する​ため、​4​台​の​FlexRIO​モジュール​に​組み​込​まれ​た​FPGA​全体​に​並列​の​MIMO​プロセス​を​実装​しま​した。​各​モジュール​は、​信号​の​検出​だけ​で、​1​秒​あたり、​12x128​と​128x1​の​行列​乗算​を​2400​万​回​実行​する​必要​が​ありま​した。

 

そこで​活躍​し​て​くれる​の​が、​PXI Express​の​主​と​なる​メリット​で​ある​ピアツーピア​(P2P)​ストリーミング​です。​これ​によって、​PXI Express​内​の​モジュール​間​で​データ​を​確定​的​に​転送​する​こと​が​可能​に​なり​ます。​P2P​は​アプリケーション​を​成功​させる​ため​の​極めて​重要​な​要素​となり​ま​した。​つまり、​68​個​の​FPGA​の​間​で​ポイントツーポイント​の​直接​転送​を​可能​にし​て、​ホスト​プロセッサ​や​メモリ​経由​で​データ​を​送信​する​必要​を​なく​した​の​です。​これ​により、​リアルタイム​操作​に​必要​と​さ​れる​最適​な​スループット​と​レイ​テン​シ​の​パフォーマンス​を​得る​こと​が​でき​ま​した。​LabVIEW​の​P2P​関数​によって、​各​ストリーミング​を​容易​に​実装​でき​た​ため、​ソース、​宛先、​データタイプ​を​簡単​に​マッピング​でき​ま​した。

 

新​記録​を​打ち​立て​た​成果

これ​こそ​が、​同じ​周波数​帯域​で​12​台​の​デバイス​に​同時​対応​する、​世界​初​の​128​本のアンテナを使った​Massive MIMO​システム​の​リアルタイム​デモ​です。​20 MHz​の​帯域​幅​のみ​で​全​ユーザ​合計​で​1.59 Gb/​秒​の​スループット​を​達成​し、​周波数​利用​効率​として​79.4 b/​秒/​Hz​を​達成​しま​した。​これ​は​現在​まで​で​最も​高い​周波数​利用​効率​です。​この​技術​によって、​現在​の​LTE(4G)​ネットワーク​の​12​倍​の​周波数​利用​効率​を​実現​する​と同時に、​IoT​および​リアルタイム​制御​アプリケーション​に​必要​な​接続​の​信頼​性​と​低​遅延​を​確保​する​こと​が​でき​ます。

 

BIO​テスト​ベッド​が​証明​し​て​いる​よう​に、​Massive MIMO​では、​ネットワーク容量が増強され、​ネットワーク​オペレータ​は​増加​の​一途​を​辿る​無線​デバイス​に​確実​に​対応​できる​よう​に​なり​ます。​さらに、​放射​エネルギー​効率​が​100​倍​に​なり、​無線​ネットワーク​の​電力​消費​と​運用​コスト​を​大幅​に​削減​する​こと​が​でき​ます。​消費者​の​視点​から​は、​無線​デバイス​と​携帯​電話機​の​バッテリ​寿命​が​長​く​なる​という​メリット​を​感じ​られる​で​しょう。

 

プロジェクト​の​未来

NI PXI Express​プラットフォーム​は、​システム​構築​の​ベース​と​なる​強力​な​フレーム​ワーク​となり​ま​した。​この​プラットフォーム​は、​堅牢​性​が​高​く、​再​構成​が​簡単​で、​128​本​の​アンテナ​を​持つ​MIMO​の​運用​に​必要​と​さ​れる​高い​スループット​を​満たす​こと​が​可能​です。​NI​の​市販​ハードウェア​を​LabVIEW​および​LabVIEW FPGA​と​組み合わせ​て​使う​こと​で、​必要​な​機能​を​実装​し​て、​す​ば​やく​新しい​アイデア​を​テスト​する​こと​が​でき​ま​した。​その​結果、​世界​初​の​79.4 b/​秒/​Hz​の​周波数​利用​効率​を​実現​し、​共同​研究者​たち​とともに、​この​新しい​技術​を​最も​現実​に​近づける​こと​が​できる​最先端​の​研究​の​道​を​開く​こと​が​でき​ま​した。

 

私​たち​は​近い​うち​に​Massive MIMO​テスト​ベッド​を​ブリス​トル​市内​の​屋上​設置​場所​に​実装​し、​BIO​光​ファイバ​ネットワーク​に​接続​し​て、​実​世界​で​の​実装​環境​で​さらなる​調査​を​実施​する​予定​です。

最終​的​に、​この​システム​は​アンテナ​が​32​本​の​サブシステム​4​台​に​分割​し、​光​ファイバ​ネットワーク​を​使用​し​て、​分散​型​Massive MIMO​構成​を​実装​する​予定​です。​こうした​取り組み​全て​が​最終​的​に​は、​この将来性のある技術の検証を前進させ、​ネットワーク​オペレータ​が​現実​の​ネットワーク​へ​の​実装​を​検討​できる​よう​に​なる​の​です。

 

謝辞

一緒​に​調査​を​実施​し、​この​プロジェクト​の​成功​に​貢献​し​て​くだ​さった​教授​と​博士​課程​の​学生​の​方々​に​感謝​い​た​し​ます。 ブリス​トル-​Mark Beach、​Andrew Nix、​Paul Harris、​Siming Zhang、​Henry Brice、​Wael Boukley Hasan、​Benny Chitambira ルンド​大学-​Fredrik Tufvesson、​Ove Edfors、​Liang Liu、​Steffen Malkowsky、​Joao Vieira、​Zachary Miers、​Hemanth Prabhu、​Erik Bengtsson、​Xiang Gao、​Dimitrios Viastaras(敬称​略)

 

また、​Massive MIMO​リファレンス​設計​の​ため​の​FPGA​アーキテクチャ​の​開発​と、​その後​の​システム​の​オンライン​化​に​多大​な​協力​を​し​て​くだ​さった​NI Advanced Wireless Research Group​の​メンバー​の​方々​に​も​感謝​い​た​し​ます。​皆様のご協力がなければ、​この​よう​な​すばらしい​成果​を​上げる​こと​は​まず​不可能​で​した。

 

著者​情報

Paul Harris
University of Bristol
​CSN Group, University of Bristol, Woodland Road
​Bristol BS8 1UB
​United Kingdom
paul.harris@bristol.ac.uk

Figure 1. ​ ​The University of Bristol and Lund University implemented the world's first 128-​antenna, real-​time massive MIMO testbed, which was used to set two consecutive world records in wireless spectral efficiency. ​
Figure 2. ​ ​The NI MIMO prototyping system is a modular system based on USRP RIO software defined radio and PXI hardware that enables a wide array of antenna configurations. ​
Figure 3. ​ ​The NI MIMO Application Framework gave the Bristol and Lund team a head-​start on development because of its open software reference with real-​time FPGA IP. ​
Figure 4. ​ ​Paul Harris and Steffen Malkowsky test their 128-​antenna array in the University of Bristol's anechoic chamber. ​
​ ​The University of Bristol and Lund University implemented the world's first 128-​antenna, real-​time massive MIMO testbed, which was used to set two consecutive world records in wireless spectral efficiency. ​
​ ​The University of Bristol Research Team ​