TATA Motors社、NIツール使用ハイブリッドシミュレーション向けHILテストシステム構築

TATA Motors社、Sanjay Mane氏

「NIモジュールハードウェア拡張高いソフトウェア使用したことで、信頼適応備え、今後プロジェクトでも継続使用できるHILテストシステム構築することできした。」

―TATA Motors社、Sanjay Mane氏

課題:

パラレルハイブリッド車に搭載される複数のECUの評価に対応できる拡張性と柔軟性を備えた汎用HIL (Hardware-In-the-Loop) プラットフォームの開発。

ソリューション:

PXIプラットフォームの拡張性、NI VeriStandの即座に使用できる機能を活用し、相互接続された6台のECUのテストを2か月で完了できるシステムの構築。

Tata Motorsについて

Tata Motors社はインド最大手の自動車メーカーです。商用車においては各セグメントの業界トップ、乗用車においては小型車、中型車、ユーティリティビークルの各セグメントにおいて受賞歴を誇る製品を提供し、業界上位の地位を築いています。さらに、トラック製造においては世界第5位、バス製造においては世界第4位のメーカーです。

 

筆者らの役割は、Tata Motors社の先進統合チームの一員として、ECU (電子制御ユニット) や計器群など、自動車内の主要な電子部品の統合を評価することでした。また、フィールドで発生した不具合報告への対応と対策、関連チームへの情報のフィードバックも担当しました。私たちのチームは、自動車の開発工程において、設計段階と最後の実装段階との架け橋の役割も担っていると言うことができます。

 

アプリケーション仕様

本稿で取り上げるプロジェクトの目的は、最小限の労力ですべてのECUのテストができ、カスタマイズが容易な汎用テスト装置を構築することでした。また、そのシステムには、複数のECUを同時に扱うことができる拡張性と、別のECUとの通信を実現できる柔軟性が必要でした。

 

私たちは、パラレルハイブリッド車に対応できるように、すべてのECUと電子部品を統合した実験環境を作り、HIL (Hardware-in-the-Loop) テストによって検証するという方針をとりました。また、フィールドで起こり得るあらゆるシナリオに対処し、最初の試作品を製作する前に問題を解消しておきたいと考えていました。このテストの結果は、ECUに適用するソフトウェアの選択と、複数のベンダから提供される多くの機能を備えた選択肢の評価に大いに役立ちました。

 

最初に自動車の概念設計を行った際には、4つの主要なECUに対し、それぞれの要件ごとにテストを実施するという手法を考えていました。その時点では、この手法に対応可能なNI製以外のHILシステムを使用することに決定し、実際にそれを調達していました。それと同じ時期に、NIのPXIシステムを使用して、別の自動車用のECUのHILテストにNIのPXIシステムを使用していました。 そのときの経験から、私たちはPXI技術のモジュール性に強い関心を持ちました。そこで、私たちはPXIプラットフォームの利点について検討し、将来にわたって活用できるものとしてNIのPXIリアルタイムシステムを購入することにしました。

 

2~3か月経って自動車の設計が進んだ結果、主要なECUの数が4台から6台に変更になりました。NI製ではないHILシステムは当初の要件であった4台のECUに対応するようオーダーメードされていたので、チャンネル数が不足しました。その時点で、私たちはNIのPXIリアルタイムシステムに移行し、NI VeriStandを使い始めました。

 

私たちは、チャンネルを増やすために数個のモジュールを追加しました。NI VeriStandを採用した結果、6台のECUのテスト環境を2か月もかからず開発することができました。

 

 

 

システムアーキテクチャ

NI VeriStandのエンジンは、複数のプラントモデルを同時に実行できます。 各モデルは、CAN (Controller Area Network) 上の物理I/Oを介して、それぞれに対応するECUとの通信を行います。そして、各ECUは共通のCANネットワークを介して相互に通信を実行します。私たちは、排気再循環バルブやモータ、電気的負荷など、複数のコンポーネントをテストシステムに組み込みました。

 

通常、モデルI/OはハードウェアI/Oにマッピングされます。しかし、カムやクランクなど、特定の非標準信号ではインライン処理が必要でした。私たちはNI LabVIEW FPGAモジュールとNI RIO (再構成可能I/O) テクノロジを活用して、高速のデータ収集と非標準的な信号に対する信号処理をNI VeriStandに組み込みました。それによって、非常に高い柔軟性を得ることができました。

 

 

 

テストの実施中、私たちは駆動条件のシミュレーションを行いました。 また、CANネットワークにおいて各種ECUからのエラーフレームと診断メッセージを監視しました。それらのフレームは、統合結果の質を表す指標となり、潜在的な不具合を検出するうえで役立ちました。また、ECUのファームウェアの問題を分離することもできました。テストによって得られた結果は、設計チームにフィードバックするとともに、場合によってはコンポーネントのサプライヤにも送付しました。

 

 

メリット

NIの製品を使用したHILテストシステムにより、以前のテスト装置における問題を解決することができました。それだけでなく、さまざまな面で生産性の向上を図ることもできました。このシステムの主な利点としては以下のようなことが挙げられます。

 

  • 拡張性: 私たちが担当したプロジェクトでは拡張が可能なテストシステムを必要としていました。それが、PXIによって実現されました。システムのチャンネル数に対する要件は将来的に増加する可能性があります。このことは従来のオーダーメードのソリューションでは大きな障害になりました。PXIシステムにはモジュールを容易に追加することができるため、簡単にアップグレードを施すことができ、長期間にわたってシステムを使用できます。
  • 柔軟性: 私たちは、将来ほかの自動車のECUにも適用できるテストシステムを構築したいと考えていました。開発したテストシステムは、一般的なハードウェアモジュールと、カスタマイズが可能で柔軟性に富んだソフトウェアで構成されています。私たちは異なるECUのセットで同じ構成を使用することができます。必要な変更点の1つは、新たなNI VeriStandプロジェクトを作成して新たなプラントモジュールを取り込むことです。 もう1つは、新たなECUに物理的な接続を加えることです。
  • 生産性: テストを行う際、その時点ではまだECUの現物が存在しないという状況がありました。このようなケースでは、実際のECUの代わりにECUのシミュレーションモデルを使用してプラントモデルのマッピングを行いました。パラメータを使ってハードウェアのI/OをモデルのI/Oに大変容易にマッピングすることができるので、生産性は大幅に向上しました。筆者はNI VeriStandのプロジェクトを1人で担当しましたが、ソフトウェアの開発には1か月もかかりませんでした。
  • ハードウェアの品質: NIのPXIハードウェアは、ほかのシステムと比較して品質と信頼性の面で優れていました。また、FPGAのプログラミングを自由に行えることから、ほぼ完全なシステム応答を得ることができました。

 

 

 

NIHILプラットフォーム選択する理由

NIのモジュール型ハードウェアと拡張性の高いソフトウェアを使用したことで、信頼性と適応性を備え、今後のプロジェクトでも継続して使用できるHILテストシステムを構築することができました。システムに対して独自にカスタマイズを施せることから、試験の結果に確信が持てるとともに、NIの継続的なサポートのおかげでいち早く目標を達成することができました。

 

作成者​情報:

Sanjay Mane
TATA Motors

図1. 全体のシステムアーキテクチャ
図2. システムのユーザインタフェース
図3. HILシステムの構成