非​接触​式​超音波​検査​装置​の​開発・​製品​化​に​NI LabVIEW​と​高速​デジタイザ​を​採用

小倉 幸夫​氏, ジャパン​プ​ローブ​株式会社 代表​取締役​社長 

"グラフィカル​システム​開発​プラットフォーム​NI LabVIEW​と​モジュール​式​ハードウェア​PXI​と​を​使用​する​こと​により、​社内​の​リソース​だけ​で​新しい​計測​システム​を​開発​する​こと​が​可能​となり​ま​した。"

- 小倉 幸夫​氏, ジャパン​プ​ローブ​株式会社 代表​取締役​社長

課題:

接触媒質を使用せず、​非​接触​で​空中​から​検査​対象​物​へ​超音波​を​照射​し、​内部​の​検査​を​行う​空中​超音波​探傷​システム​を​開発​する。

ソリューション:

ジャパン​プ​ローブ​社​では、​非​接触​で​超音波​検査​が​実現​できる​「空中​超音波​探傷​システム​『エア​スキャナー​NAUT21』」​を​開発​した。​NAUT21​は、​NI LabVIEW​を​インストール​した​コンピュータ、​プローブ​を​取り付け​た​自動​スキャナ​装置、​拡張​ハードウェア​で​構成​した​自動​スキャナ​の​制御​システム​および​データ​集録​システム​で​構成​さ​れ​て​いる。​この​うち、​自動​スキャナ​の​制御​システム​および​データ​集録​システム​は、​一つ​の​PXI​シャー​シ​に​組み​込​まれ​て​おり、​自動​スキャナ​は​可動​部​に​取り付け​た​プローブ​を​2​方向​に​移動​させる​こと​が​できる。​これらの​装置​を​使​って、​検査​対象​の​表面​に​そ​って​プローブ​を​自動的​に​移動​さ​せ​ながら、​測定​を​繰り返す。​こうして​集め​た​データ​を​処理​する​こと​によって、​検査​対象​の​内部​の​状態​を​可視​化​する​こと​が​できる。

【背景】

鉄鋼​など​の​様々​な​素材​や​コンクリート​で​でき​た​構造​物、​生体​など​の​内部​を​非破壊​で​検査​する​こと​が​できる​超音波​検査​装置​では、​センサ​の​役割​を​担う​プローブ​を​検査​対象​に​直接​当てる​接触​式​の​装置​が​長年​にわたって​使​われ​て​きた。​その​よう​な​装置​では​接触​媒質​(水、​油​など)​が​必要​と​さ​れ​て​おり、​「リチウム​イオン​電池」​や​「ブレーキ​パッド」​など、​接触媒質を嫌う被検査体は検査できなかった。

 

【課題】

接触媒質を使用せず、​非​接触​で​空中​から​検査​対象​物​へ​超音波​を​照射​し、​内部​の​検査​を​行う​空中​超音波​探傷​システム​を​開発​する。


​【ソリューション】

ジャパン​プ​ローブ​社​では、​非​接触​で​超音波​検査​が​実現​できる​「空中​超音波​探傷​システム​『エア​スキャナー​NAUT21』」​を​開発​した。​NAUT21​は、​NI LabVIEW​を​インストール​した​コンピュータ、​プローブ​を​取り付け​た​自動​スキャナ​装置、​拡張​ハードウェア​で​構成​した​自動​スキャナ​の​制御​システム​および​データ​集録​システム​で​構成​さ​れ​て​いる。​この​うち、​自動​スキャナ​の​制御​システム​および​データ​集録​システム​は、​一つ​の​PXI​シャー​シ​に​組み​込​まれ​て​おり、​自動​スキャナ​は​可動​部​に​取り付け​た​プローブ​を​2​方向​に​移動​させる​こと​が​できる。​これらの​装置​を​使​って、​検査​対象​の​表面​に​そ​って​プローブ​を​自動的​に​移動​さ​せ​ながら、​測定​を​繰り返す。​こうして​集め​た​データ​を​処理​する​こと​によって、​検査​対象​の​内部​の​状態​を​可視​化​する​こと​が​できる。


【はじめ​に】

非​接触・​空中​伝搬​超音波​検査​システム​(NAUT21)​は、​非​接触​で​空中​から​検査​対象​物​へ​超音波​を​照射​し、​内部​の​検査​を​行う​もの​で、​画像​による​欠陥​有無​の​判定​が​可能​で​ある。​これまで​の​超音波​探傷​では、​超音波​を​伝搬​させる​ため​に、​探​触​子​と​試験​体​の​間​に​接触​媒質​(水、​油​など)​が​必要​と​さ​れ​て​おり、​「リチウム​イオン​電池」​や​「ブレーキ​パッド」​など、​接触媒質を嫌う被検査体は検査できなかったが、​NAUT21​では​空気​を​媒体​と​する​ので、​非接触での超音波探傷が可能となった。


​【非​接触​式​検査​の​メリット】

超音波​検査​を​接触​式​から​非​接触​式​に​切り替える​こと​によって、​検査​対象​に​プローブ​を​密着​させる​必要​が​なく​なり、​多く​の​メリット​が​生まれる。​検査​対象​に​当て​た​超音波​は、​物体​の​中​を​通過​し、​か​たい​材料​に​突き当たる​と、​そこで​反射​する​(図​1​参照)。​しかし、​プローブ​から​発​せ​ら​れ​た​超音波​の​エネルギー​は、​材料​の​中​に​入り、​反射​し​て​再び​プローブ​に​帰​って​くる​まで​の​過程​で、​その​多く​が​失​われ​て​しまう。​従来​の​検査​では、​この​損失​エネルギー​を​抑える​ため​に​プローブ​を​検査​対象​に​密着​さ​せ​てい​た。​また、​安定​した​信号​を​得る​ため​に、​密着​さ​せ​た​プローブ​と​検査​対象​と​の​間​に​グリース​など​を​塗布​し​てい​た。

 

図​1. 空中​を​伝搬​する​縦​波​の​固体​表面​における​反射​透過​挙動​摸式​図​(出典:​「非破壊​検査​第​58​巻​7​号​(2009)」 p. 256 非​接触​Air-​coupled​超音波​探傷​の​ため​の​固体​材料​の​超音波​透過​率​の​特徴)

 

この​手法​の​場合、​検査対象が高温になる場合に試験が難しくなったり、​曲面​から​の​検査​で​安定​した​測定​結果​が​得​ら​れ​なか​っ​たり​する​など​の​問題​が​あっ​た。​それ​にもかかわらず、​高​出力​かつ​高​感度​の​パルサ・​レシーバ​が​なか​っ​た​こと​から、​超音波​検査​装置​の​実用​化​が​始​ま​って​から​最近​まで​の​約​50​年間、​超音波検査の主流は接触式だった。​非​接触​式​に​する​こと​によって、​グリース​を​塗布​する​など​の​前​処理​の​手間​が​省ける​ため、​検査​に​要する​作業​を​格段​に​減らす​こと​が​できる。​しかも、​対象​物​が​高温​で​あっ​て​も、​複雑​な​形状​で​あっ​て​も​対応​できる​ため、​適用​範囲​が​一気に​拡がる。

 

【システム​概要】

NAUT21​は、​NI LabVIEW​を​インストール​した​コンピュータ、​プローブ​を​取り付け​た​自動​スキャナ​装置、​拡張​ハードウェア​で​構成​した​自動​スキャナ​の​制御​システム​および​データ​集録​システム​で​構成​さ​れ​て​いる​(図​2​参照)。​以下​に、​それぞれ​の​役割​を​示す。

  • コンピュータ
    ​NI LabVIEW​を​インストール。​超音波​信号​の​計測​を​行い、​様々​な​アルゴリズム​を​適用​し​て​速度​を​算出。​LabVIEW​の​画面​上​に​画像​を​表示。​PXI​内蔵​型​の​コントローラ​と​外部​PC​の​いずれ​か​を​選択。
  • 自動​スキャナ​装置​(図​3​参照)
    ​超音波​の​送受信​用​プローブ​と、​超音波​パルサ・​レシーバ​で​構成。
  • 制御​/​データ​集録​システム

NI​の​高速​デジタイザ​PXI-5114​と​カウンタ​PXI-6602​を​使用。​集録​した​信号​を​LabVIEW​で​表示。

 

 

強力​超音波​発信​器、​空中​用​超音波​プローブ、​外部​プリアンプ​を​独自​に​開発

非​接触・​空中​伝搬​超音波​検査​では、​探​触​子​から​空中​に​超音波​が​伝搬​する​際​に、​探​触​子​と​空気​の​音響​インピーダンス​(材料​の​音速​と​密度​の​積)​の​相違​によって、​大きな​エネルギー​損失​(透過​損失)​が​生​じ​て​しまう。​空中​伝搬​超音波​検査​に​使用​する​音​は、​空中​で​発​さ​れ​被​検体​に​入り、​被検体から再度空中に放出されて、​空中​で​検出​さ​れ​て​初めて​非​接触​探傷​に​利用​できる。​空中​から​鉄​中​で​の​透過​損失​が​44.3 dB​で​ある​こと​から、​音​の​送受信​で​の​損失​は、​その​倍​の​約​90 dB​という​ことに​なる。​NAUT​では、​この​透過​損失​を​①​高​感度​の​探​触​子、​②60 dB​の​プリアンプ、​③​高​出力・​高​感度​の​装置​を​採用​する​こと​で​カバー​し​て​いる​(図​3​参照)。

 

システム​全体​を​自社​で​開発

単体​で​の​パルサ・​レシーバ​の​開発​において​は​長年​の​経験・​実績​を​有する​ジャパン​プ​ローブ​社​だが、​測定​システム​の​開発​は​同社​にとって​新規​の​分野​と​なる。​新しい​装置​を​開発​すると​なる​と、​ハードウェアの設計から製造まで全て外注せざるを得なかった。​そこで​NI​の​「グラフィカル​システム​開発」​手法を利用することに思い至った。​グラフィカル​システム​開発​プラットフォーム​NI LabVIEW​と​モジュール​式​ハードウェア​PXI​と​を​使用​する​こと​により、​社内のリソースだけで新しい計測システムを開発することが可能となった。
​また、​超音波​検査​では、​検査​対象​物​の​素材・​形状​は​お客様​によって​千差万別​で​あり、​当然​の​こと​ながら​検査​装置​も​顧客​ごと​に​カスタマイズ​する​必要​が​ある。​特定​の​用途​向け​に​専用​に​開発​した​システム​の​場合、​検査​要件​や​対象​物​の​変更​の​たび​に​ハードウェア​を​設計​し​なお​さ​な​け​れ​ば​なら​ない​が、​LabVIEW​と​拡張​ハードウェア​を​ベース​と​した​システム​では、​既存​の​環境​を​利用​し​て、​短期間​で​カスタマイズ​に​対応​する​こと​が​できる。​また、​ターン​キー​ソリ​ュ​ー​ション​として​の​提供​と​なる​ため、​超音波​の​伝搬​等​に関する​専門​的​知識​の​ない​現場​の​スタッフ​でも​簡単​に​使用​し、​問題​の​箇所​を​容易​に​特定​する​こと​が​可能​と​な​って​いる。


​【NAUT​の​使用​実績】

これまで​の​検証​により、​NAUT21​は様々な材質の探傷検査に応用できることが分かった。​以下​に​主​な​実績​を​4​点​紹介​する。

  1. CFRP(炭素​繊維​強化​プラスチック)​の​探傷
    ​CFRP​に​衝撃​荷重​を​加​えて​生​じ​た​層間​剥離​と、​模擬​剥離​欠陥​として​配置​した​アクリル​製​円​板​を​探傷​した​透過​波​の​分布​例​を​示す。​剥離​部分​では​透過​波​は​減少​する。

        2.  板​波​による​ステンレス​鋼板​の​探傷
            板​波​(薄い​板​状​の​固体​を​伝搬​する​波)​を​用​い​て​厚​さ​1​ミリ​の​ステンレス​鋼板​を​探傷​した。

        3.  ブレーキ​パッド                

        4.  リチウム​イオン​電池        

 

 

 

【今後​の​展開】

今後​は、​パルサ・​レシーバ​を​PXI​にし​て​シャー​シ​に​入れ、​制御​/​データ​集録​部分​と共に​一台​の​ユニット​として​構成​した​い​(図​14​参照)。​また、​現在​1​チャンネル​で​データ​集録​を​行​って​いる​ので、​多​チャンネル​から​データ​集録​できる​システム​を​構築​し、​一度に​複数​の​被​検体​の​検査​に​も​対応​した​い。​さらには、​現在​高速​デジタイザ​を​使用​し​て​いる​部分​を​NI FlexRIO​で​置き換える​こと​により、​より​細かい​カスタマイズ​ニーズ​へ​の​対応​も​検討​し​て​いる。    

 

著者​情報:

小倉 幸夫氏
​ジャパン​プ​ローブ​株式会社 代表​取締役​社長 

​ ​システム​概要 ​
​ ​図​1. 空中​を​伝搬​する​縦​波​の​固体​表面​における​反射​透過​挙動​摸式​図​(出典:​「非破壊​検査​第​58​巻​7​号​(2009)」 p. 256 非​接触​Air-​coupled​超音波​探傷​の​ため​の​固体​材料​の​超音波​透過​率​の​特徴) ​
​ ​図​2. NAUT​の​原理 ​
​ ​図​3. 非​接触​空中​超音波​検査​法​を​実現​する​ため​の​技術​の​キーポイント ​
​ ​図​4. VaRTM​(真空​樹脂​含浸​製造​法)​工法​CFRP(打​痕​あり)​と​模擬​剥離​欠陥​(アクリル​製​円​板)​の​配置 ​
​ ​図​5. VaRTM​工法​CFRP​の​検査​結果​(点​集束​エアプローブ 周波数:​800 kHz、​有効​振動​子​径:​20 mmφ、​凹面​半径 r​=20mm) ​
​ ​図​6. 板​波​による​ステンレス​鋼板​の​探傷 ​
​ ​図​7. ブレーキ​パッド​の​非​接触​超音波​検査​の​2​次元​スキャン ​
​ ​図​8. ブレーキ​パッド​金属​面​側​(黒​塗装)​(剥離​あり​模擬​サンプル) ​
​ ​図​9. ブレーキ​パッド​の​検査​画像​(剥離​あり​模擬​サンプル) ​
​ ​図​10. ブレーキ​パッド​焼​結​体側​(市販​の​ブレーキ​パッド​の​一例) ​
​ ​図​11. リチウム​イオン​電池​の​検査​風景 ​
​ ​図​12. 市販​サンプル​A​の​検査​画像 ​
​ ​図​13. 市販​サンプル​B​の​検査​画像 ​