圧力騒音同期計測システム

"本システム構築することで、従来なかデータ一括管理3210超える長い時間系列波形計測可能た。また、トラバース装置連動した連続自動計測により、移動時間最大30秒、計測時間16同期計測により1/16以下短縮でき、測定環境変化最小限した高い実験た。"

- Noriaki KOBAYASHI, 東京大学生産技術研究所加藤千幸室

The Challenge:

乱れを考慮したときの翼騒音に関して、現象を本質的に明らかにするためには、単独翼を対象にした風洞実験において翼から発生する騒音と翼周りの流れ場を詳細かつ多点で計測する必要がある。しかし、長時間計測は温度と密度の変化し、各点での計測条件が異なってしまう。また、騒音は流れに起因するため、同時計測による解明が必要である。さらに、対象とする流れは乱流で規則性がなく、統計的な結果を得るためには各データが一定時間記録されている必要がある。したがって、多点を同時に長時間計測でき、後の統計処理にも適した結果の保存ができる実験用システムが必要である。

The Solution:

本研究の風洞実験で扱う測項目:計測装置は主に、騒音:精密騒音計、流速:熱線流速計、ピトー管・マノメーター、圧力:半導体型圧力センサー・マノメーター、温度:熱電対で、すべてアンプを介してアナログ信号を出力する。これらのセンサー類の信号はNI CompactDAQに取り付けたモジュールに接続し、LabVIEWで多点同期計測により時系列波形をTDMS形式で記録するシステムとして構築した。計測時は装置の不具合等を判別する簡易的な信号処理のみを行い、本格的な統計処理は別途実施する。また、センサーと計測位置を調整・設定するトラバース装置の制御と連動しており、自動運転による多点連続計測機能もシステムに付加した。

背景

近年、再生可能エネルギーの一種である風力発電に注目が集まっているが、大型風車の翼から発生する騒音が問題となっており、普及の妨げとなっている。このため、環境アセスメント用のデータとして、ウインドファームにおいて発生する風車騒音を予測するツールの開発が行われている。併せて、風車騒音の低減のための運転条件、翼形状の最適化が取り組まれている。一方、実在の流れには主流中の乱れが存在し、これが騒音に影響を及ぼすことが指摘されているが、乱れを考慮したときの翼騒音のデータや騒音発生のメカニズム解明など基本的な結果や知見が不十分で、その影響を定量的に評価することが難しいのが現状である。

 

課題

乱れを考慮したときの翼騒音に関して、現象を本質的に明らかにするためには、単独翼を対象にした風洞実験において翼から発生する騒音と翼周りの流れ場を詳細かつ多点で計測する必要がある。しかし、長時間計測は温度と密度の変化し、各点での計測条件が異なってしまう。また、騒音は流れに起因するため、同時計測による解明が必要である。さらに、対象とする流れは乱流で規則性がなく、統計的な結果を得るためには各データが一定時間記録されている必要がある。したがって、多点を同時に長時間計測でき、後の統計処理にも適した結果の保存ができる実験用システムが必要である。

 

ソリューション

本研究の風洞実験で扱う測項目:計測装置は主に、騒音:精密騒音計、流速:熱線流速計、ピトー管・マノメーター、圧力:半導体型圧力センサー・マノメーター、温度:熱電対で、すべてアンプを介してアナログ信号を出力する。これらのセンサー類の信号はNI CompactDAQに取り付けたモジュールに接続し、LabVIEWで多点同期計測により時系列波形をTDMS形式で記録するシステムとして構築した。計測時は装置の不具合等を判別する簡易的な信号処理のみを行い、本格的な統計処理は別途実施する。また、センサーと計測位置を調整・設定するトラバース装置の制御と連動しており、自動運転による多点連続計測機能もシステムに付加した。

 

 

アプリケーション概要・システム概要

本システムは大きく風洞装置測定部、計測システム制御部、計測システム処理部で構成されている。図1にその概観を示す。また、当研究室は研究室と実験室の2部屋に分かれており、風洞装置は実験室にある。このため、風洞装置測定部と計測システム制御部は実験室にある。

 

風洞装置測定部には、実験用の模型と各種計測機、トラバース装置が備えられ、実際に計測を行う部分である。この測定部は騒音計測の精度を高めるため、無響室を設けており、計測機のケーブルのみ外に排出し、遠隔制御を行っている。

計測システム制御部では、CompactDAQのモジュール(NI 9215を8台)に計測機のアナログ信号(最大32 ch)を接続し、USB2.0により計測用PCに接続し、計測の指示、計測した時系列波形の転送を行っている。転送された結果はTDMS形式のファイルで保存される。また、RS-232Cによりトラバース装置と計測用のPCを接続し、座標の移動指示を行っている。この計測と座標移動の両者は、LabVIEWで制御するため、移動と計測を繰り返す多点連続自動計測機が可能である。なお、このときの計測用PCでは、簡易的な処理機能として瞬時値の表示と短時間の平均値、変動値の算出、FFTによるスペクトルの表示機能を備えている。これは、計測時の装置の不具合の装置発見に役立ち、かつ処理が軽いことから計測データの保存の妨げとならない。計測時間はハードディスクの容量の範囲内で可能であるが、筆者の使用実績では16点の翼面圧力と翼騒音を10分間計測する作業を繰り返し、1日あたり4 GBのファイルを30個生成した。

 

 

計測システム処理部では、計測用PCに保存されたTDMSファイルをEthernetで研究室にある処理用PCに転送し、計測結果を基に本格的な平均値、変動値の算出、FFTによるスペクトル、各計測点の相関算出を行っている。

以上のように本システムでは多彩な計測機の信号をNI製の計測機に統合することで1台のPCに計測機能を集約して構成されている。また、LabVIEWを計測機制御と分析の2種類の役割を持たせているため、保存したファイルがそのまま処理に回せ、データが非常に扱いやすくなった。

ここで、各点の相関を得るためには長時間の分析が必要で、上記の翼面圧力と翼騒音の相互相関計測・処理の場合、合計8時間の計測結果に対して48時間以上の処理時間を要し、計測用PCで処理を行うと終日実験を行えないことがある。また、当研究室では数値流体解析を行っており、計測用PCよりもはるかに高性能な大容量のメモリと高性能なCPUを搭載したワークステーションを処理用PCとしたほうが有利である。このため、計測には標準性能PCにLabVIEW(32bit版)、処理には高性能PCにLabVIEW(64bit版)と使い分けをしている。

また、本システムを活用した翼面圧力と翼騒音の相互相関(多点同期計測)と風洞断面の流速分布(多点連続自動計測)を図2、3にそれぞれ示す。

 

 


導入効果

本システムを構築することで、従来は行えなかった多点データの一括管理と32点で10分を超える長い時間の時系列波形の計測が可能になった。また、トラバース装置と連動した連続自動計測により、各点間の移動時間は最大30秒、各点計測時間は16点同期計測により1/16以下に短縮でき、測定環境の変化を最小限にした質の高い実験が行えた。

特記すべきは、今回のシステム構築に際して機器類の追加購入はしておらず、既存の設備を組み合わせているため、直接的な経費は0に等しい。

また、アナログ信号を記録するというシンプルな構造のため、計測機の組み合わせや変更、計測条件の設定も自由であり、CompactDAQもノートPCと組み合わせることで外部の実験設備で利用できる。さらに、以前のシステムでは計測機ごとに記録デバイスが異なったことや旧式のPCのみ読み取り可能なデバイス、計測系メーカーの独自形式ファイルを用いていたため、データの変換が不便であった上に、分析用のソフトも複数使用していた。そのため、計測時も処理時も複数のデバイスが必要であったが、本システムではLabVIEWとNI製の計測機に集約したため、計測からデータの管理、分析まで一括で実行できる。

 

まとめ今後展望

本システムを用いて、風洞実験における各種計測内容について自動化・多点化を行い、時間短縮による質の高い実験が行えた。また、計測データの一元管理で計測後の取り扱いも容易にできた。さらに、この開発に際しては既存の設備を活用したため、費用を最小限に抑えることができた。

今後は計測と処理の連携をさらに深め、計測後のファイルの自動転送機能、転送されたファイルの自動処理開始機能など、より一体となるシステムを構築したいと考えている。

 

Author Information:

Noriaki KOBAYASHI
東京大学生産技術研究所加藤千幸室
Japan

図2. 多点同期計測による翼面圧力と翼騒音の相互相関
図1. 計測システム概観
図3. 多点連続自動計測による風洞断面の流速分布