医療​機器・​多​機能​超音波​凝固​切開​装置​の​開発​に​む​けた​圧​電​超音波​振動​測定・​制御​システム

Yoshinobu Murayama PhD, Department of Electrical and Electronic Engineering, College of Engineering, Nihon University

"この​よう​な​システム​構成​が​実現​した​の​は、​ナショナル​イン​ス​ツル​メンツ​社​製​の​PXI​プラットフォーム​を​用​い​た​多​階層​測定​系​構築​及び​LabVIEW 統合​開発​環境​の​組み合わせ​の​恩恵​で​あり、​他​に​選択​の​余地​は​ありま​せん​で​した。" ​

- Yoshinobu Murayama PhD, Department of Electrical and Electronic Engineering, College of Engineering, Nihon University

課題:

全く​新しい​細​径・​高​機能​型​の​超音波​凝固​切開​装置​の​開発​に​は、​主に​以下​の​3​点​において​課題​を​解決​する​必要​が​あっ​た。 ①​研究​開発​色​の​濃い、​柔軟​な​測定・​制御​システム​を​構築​する​必要​が​あっ​た。 ②​弱​電圧​から​実​駆動​電圧​(~​200 Vpp)​まで​の​幅広い​ダイナミック​レンジ​で​全て​の​測定・​制御​が​行える​必要​が​あっ​た。 ③①​及び​②​の​条件​を​満​た​し​ながら、​医療​機器​の​開発​に​最も​重要​と​なる​PMDA(医薬品​医療​機器​総合​機構)​の​薬事​承認​申請​に​向け​た、​規格​に​基づく​(品質、​安全​性​の​確保)​データ​を​揃える​必要​が​あっ​た。 ​

ソリューション:

全て​の​システム​は​同一​の​測定​系、​プラットフォーム​(PXIe-8133, NI)、​開発​環境​(LabVIEW 開発​システム, NI)​で​構築​し​て​おり、​品質​の​確保​から、​下位​(スタンド​アロー​ン​機器)→​中​位​→​上位​(FPGA)​の​システム​移行​が​容易​に​できる​よう​に​工夫​した。 ​ ​

【背景】
​より​人​に​やさしい​医療​の​実現へ


​内​視​鏡​下​外科​療法​が​導入​さ​れ​て​約​20 年​が​経過​し、​内​視​鏡​下​外科手術​は​手技​の​展開、​機器​の​研究​開発・​改良​に​伴​い、​NOTES、​単​孔​式​腹腔​鏡​外科手術、​ロボット​手術​など​の​新た​な​局面​を​迎え、​今後​の​動向​が​注目​さ​れ​て​いる。​すべて​の​術​式​に​共通​し​て​いる​の​は、​患者​により​低​侵襲​で​高度​な​医療​技術​で​あり、​患者​側​は​痛み​の​軽減、​術後​の​回復​促進、​早期​の​社会​復帰​を​求め​て​いる。​これ​は​より​QOL(Quality of Life)​に​重点​を​置​い​た​医療​が​求め​ら​れ​て​いる​こと​を​示し、​医療​技術​開発​における​基本​的​指針​として​考慮​すべ​き​課題​で​あり、​今後​さらに​侵襲​性​の​少ない​医療​機器​へ​の​ニーズ​が​増大​すると​思​われる。

 

超音波​凝固​切開​装置​の​細​径​化​が​求め​ら​れ​て​いる。

腹腔​鏡​下​外科手術​は、​開腹​手術​に​比べ​て​切開​部位​が​小​さく、​術後​の​回復​も​早い​ため、​手術​患者​に​負担​が​少ない​手術​方法​として​1990 年​以降​急速​に​普及​し​て​いる。​近年​では、​細​径​トロッカー​及び​挿入​する​機器​の​細​径​化​の​進展​により​傷​の​縮小​化​が​図​ら​れ​て​いる。​さらには、​単孔式腹腔鏡外科手術が医療現場で実施され、​挿入​器具​の​さらなる​細​径​化​が​求め​ら​れ​て​いる。


​2011 年​現在、​Johnson​&​Johnson 社​は、​これまで​は​不可能​で​あっ​た​3mm バイポーラ​鉗子​(電気​メス)​を​開発​し、​製品​化​に​至って​いる。​しかしながら、​超音波​凝固​切開​装置​で​の​細​径​化​は​業界​において​まだ​実現​さ​れ​てい​ない。

 

 

 

手術​ツール​の​さらなる​高​機能​化​が​最先端​医療​の​鍵​を​握る


​同様​に、​医療​機器​の​開発​と共に​今後​実現​が​期待​さ​れる​高度​先進​医療​が​存在​する。​胎児​外科​(出生​前​治療)​では、​子宮​を​切開​する​直視​下​手術​では​なく​より​胎児​の​自然​な​環境​に​近​いままで​行​われる​(つまり​低​侵襲​な)​子宮​内​内​視​鏡​手術​が​行​われる​よう​に​なり、​有効​性​が​注目​さ​れ​て​いる。​今後、​出生前に診断した胎児の障害部位に幹細胞を注入できるようになれば、​多く​の​障害​児​の​誕生​が​防げる​と​さ​れ​て​いる。​また、​一部​の​再生​医療​では​異種​動物​の​胎児​の​臓器​発生​プログラム​を​か​り​て​ヒト​臓器​を​再生​させる​試み​が​進​んで​おり、​胎児​外科​と​同様​に​子宮​内​胎児​に​低​侵襲​で​幹​細胞​を​注入​する​技術​が​必要​と​さ​れ​て​いる。​特に、​東京​慈恵​会​医科​大学・​横尾​隆​講師​は​異種​胎児​発生​系​を​用​い​た​腎臓​再生​に​着手​し​て​おり、​これまでに​ラット​胎児​の​腎臓​発生​部位​に​注入​した​ヒト​骨髄​由来​間​葉​系​幹​細胞​の​腎臓​系譜​へ​の​分化​誘導​(ク​ローン​腎臓​の​形成)​に​成功​し​て​いる。
​しかしながら、​現​段階​で​の​ラット​胎児​を​用​い​た​再生​腎臓​の​樹立​成功​率​は​1​0%​程度​と​低​く、​原因​は​胎児​の​腎臓​発生​部位​に​正確​に​幹​細胞​を​注入​する​技術​が​困難​で​ある​ため​と​さ​れ​て​いる。​今後​ヒト​へ​臨床​応用​させる​ため​に​は​より​大きな​動物​(ブタ)​を​用​い​た​スケール​アップ​が​必要​で​あり、​子宮​内​の​ブタ​胎児​に対して​内​視​鏡​的​に​幹​細胞​を​注入​する​技術​は​さらに​困難​と​なる。​すなわち、​内​視​鏡​的​胎児​外科手術​ツール​の​開発​が、​臓器​再生​医療​の​「鍵」​を​握​って​いる。​明らか​に​現在​の​手術​手技​では​難しい​操作​で​あり、​最先端​技術​を​導入​し​て​解決​手法​を​開発​する​必要​が​ある。



​この​よう​な​背景​の​なか、​日本​大学​工学部・​生体​生理​工学​研究室​では、​これまでに​細​径​内​視​鏡​ツール​の​開発​実績​を​有する​株式会社​ニチオン​及び​株式会社​ペ​リ​テック​と​共同​で、​経済​産業​省​「戦略​的​基盤​技術​高度化​支援​事業」​の​採択​(H23-25)​を​受け、​「ニードル​型​超音波​凝固​切開​装置​の​開発」​の開発を行うこととなった。​超音波​凝固​切開​装置​の​細​径​化​及び​高​機能​化​の​開発​目標​は、​直径​3​ミリメートル​以下​の​ツール​に、​接触​センサ​による​電流​の​オン・​オフ​機能​及び​凝固​切開​に​最低限​必要​な​出力​を​検知​する​機能​を​追加​し​て​安全​性​と​操作性​を​向上​させる​こと​で​ある。​この​よう​な​開発​事例​は​これまでに​類​が​なく、​同様​に​これまでに​ない​開発​システム​が​必要​と​なる。​本​提案​作品​は、​該当​研究​課題​の​遂行​において​特に​必須​で​あっ​た​「圧​電​超音波​振動​測定・​制御​システム」​に関する​内容​を​紹介​する​もの​で​ある。

 

【課題】


​全く​新しい​細​径・​高​機能​型​の​超音波​凝固​切開​装置​の​開発​に​は、​主に​以下​の​3​点​において​課題​を​解決​する​必要​が​あっ​た。



​①​研究​開発​色​の​濃い、​柔軟​な​測定・​制御​システム​を​構築​する​必要​が​あっ​た。​従来​の​超音波​凝固​切開​装置、​及び​関連​する​超音波​加工​器​等​の​開発​に​は、​LCR 回路​素子​と​同様​の​インピーダンス​測定​と、​先端​振動​振幅​を​測定​し、​消費​電力​に​合わせ​た​駆動​電源​回路​を​測定​する​1​9​7​0​年代​から​変​わら​ない​手法​が​取り入れ​ら​れ​て​おり、​超音波​共振​子​へ​の​質量・​スチフネス​負荷​や​ハイ​パワー​駆動​における​非線形​現象​を​考慮​に​入れ​た​繊細​な​測定、​及び​フィードバック​制御​システム​を​構築​する​例​が​なく、​したがって​試行錯誤​し​ながら​開発​手法​を​構築​する、​柔軟​で​あり​ながら​開発​時間​が​短縮​できる​システム​が​必要​で​あっ​た。



​②​弱​電圧​から​実​駆動​電圧​(~​200Vpp)​まで​の​幅広い​ダイナミック​レンジ​で​全て​の​測定・​制御​が​行える​必要​が​あっ​た。



​③①​及び​②​の​条件​を​満​た​し​ながら、​医療​機器​の​開発​に​最も​重要​と​なる​PMDA(医薬品​医療​機器​総合​機構)​の​薬事​承認​申請​に​向け​た、​規格​に​基づく​(品質、​安全​性​の​確保)​データ​を​揃える​必要​が​あっ​た。

 

【課題】

全く​新しい​細​径・​高​機能​型​の​超音波​凝固​切開​装置​の​開発​に​は、​主に​以下​の​3​点​において​課題​を​解決​する​必要​が​あっ​た。

 

 

①​研究​開発​色​の​濃い、​柔軟​な​測定・​制御​システム​を​構築​する​必要​が​あっ​た。​従来​の​超音波​凝固​切開​装置、​及び​関連​する​超音波​加工​器​等​の​開発​に​は、​LCR 回路​素子​と​同様​の​インピーダンス​測定​と、​先端​振動​振幅​を​測定​し、​消費​電力​に​合わせ​た​駆動​電源​回路​を​測定​する​1​9​7​0​年代​から​変​わら​ない​手法​が​取り入れ​ら​れ​て​おり、​超音波​共振​子​へ​の​質量・​スチフネス​負荷​や​ハイ​パワー​駆動​における​非線形​現象​を​考慮​に​入れ​た​繊細​な​測定、​及び​フィードバック​制御​システム​を​構築​する​例​が​なく、​したがって​試行錯誤​し​ながら​開発​手法​を​構築​する、​柔軟​で​あり​ながら​開発​時間​が​短縮​できる​システム​が​必要​で​あっ​た。



​②​弱​電圧​から​実​駆動​電圧​(~​200Vpp)​まで​の​幅広い​ダイナミック​レンジ​で​全て​の​測定・​制御​が​行える​必要​が​あっ​た。



​③①​及び​②​の​条件​を​満​た​し​ながら、​医療​機器​の​開発​に​最も​重要​と​なる​PMDA(医薬品​医療​機器​総合​機構)​の​薬事​承認​申請​に​向け​た、​規格​に​基づく​(品質、​安全​性​の​確保)​データ​を​揃える​必要​が​あっ​た。

 

 

【ソリューション】
​システム​構成

【下位​システム】​まず、​前節​に​記​した​課題​③​を​解決​する​ため​に、​装置​校正​が​保証​さ​れ​て​いる​既存​の​インピーダンス​測定​系​(周波数​分析​器​FRA5097, NF)​を​GP-​IB で​制御​する​システム​を、​圧​電​駆動​系​の​品質​測定​に​用いる​下位​の​測定​システム​として​配置​した。​同​システム​は、​製品​化​後​の​品質​管理​システム​として​も​利用​できる​よう​に​構築​し​て​ある。



​【中​位​システム】​次に、​課題​①​を​解決​する​ため​に、​同一​PXI プラットフォーム​内​に​GP-​IB による​下位​計測​と​並列​さ​せ​て​信号​発生​器​(PXI-5412, NI)​及び​高速​デジタイザ​(PXIe-5122, NI)​を​組み合わせ​た​中​位​の​測定・​制御​系​を​組​ん​だ。​下位​システム​と​同一​の​測定​系​を​利用​する​こと​で、​校正​する​こと​により​完全​互換性​を​確保​した​研究​開発​が​行える。



​【上位​システム】​さらに、​最終​製品​に​する​際​の​組み込み​システム​系​の​開発​へ​向け​て​FPGA(PXI-7845R, NI)​を​同様​に​並列​に​組み、​下位​から​中​位​の​システム​で​開発​した​制御​系​を​実装​し​て​リアルタイム​処理​する​上位​測定・​制御​システム​と​した。

 

図​3. 圧​電​超音波​振動​測定・​制御​システム​の​構成図


​また、​レーザードップラ​振動​計​と​専用​に​開発​した​光学​測定​ステージ​を​用​い​て​超音波​振動​速度​の​測定​を​行い、​速度​信号、​及び​先端​の​顕微鏡​ビデオ​映像​は​それぞれ​高速​デジタイザ​(PXIe-5122, NI)​及び​USB 入力​に​て​同一​PXI プラットフォーム​で​集録​できる​よう​に​した。​さらに、​課題​②​に関して​は​同一​測定​系​に​高速​バイポーラ​電源​を​組み込む​こと​により​達成​し​て​いる。
​全て​の​システム​は​同一​の​測定​系、​プラットフォーム​(PXIe-8133, NI)、​開発​環境​(LabVIEW 開発​システム, NI)​で​構築​し​て​おり、​品質​の​確保​から、​下位​(スタンド​アロー​ン​機器)→​中​位​→​上位​(FPGA)​の​システム​移行​が​容易​に​できる​よう​に​工夫​した。​この​よう​な​システム​構成​が​実現​した​の​は、​ナショナル​イン​ス​ツル​メンツ​社​製​の​PXI​プラットフォーム​を​用​い​た​多​階層​測定​系​構築​及び​LabVIEW 統合​開発​環境​の​組み合わせ​の​恩恵​で​あり、​他に選択の余地は無かった。

 

図​4. 圧​電​超音波​振動​測定・​制御​システム​の​構成​要素​写真図

 

図​5. LabVIEW により​開発​した​測定・​制御​プログラム​の​ユーザー​インターフェース​タブ​切り替え​により、​下位​→​中​位​→​上位​の​システム​選択​が​できる

 

【結果】

第​3​節​で​記​した​①​~​③​の​課題​は、​前節​で​記​した​ように



​(1)​下位​→​中​位​→​上位​の​並列​システム​構成​として、​医療​機器​開発​における​品質​の​確保​から​研究​開発、​製品​化​まで​を​同一​プラットフォーム​内​で​実現​し、​解決​した。
​(2)​全て​の​システム​は​LabVIEW 開発​環境​により​プログラム​可能​で​あり、​開発​システム​の​移行​を​極端​に​容易​と​し、​解決​した。


​これ​により、​全て​の​下位​→​中​位​→​上位​の​システム​開発​に​要​した​時間​は​約​1​週間​と、​推定​では​有る​が​従来​の​システム​開発​に​要する​時間​に​比​し​て​80%​程度​の​時間​短縮​を​可能​として、​研究​開発​を​加速​さ​せ​て​いる。​実際​に、​導入​後​1​週間​で​既に​第​1​段階​の​研究​開発​と​データ​取得​を​終​えて、​平成​24​年​9​月末​に​国際​会議​で​の​発表​*​を​終​えて​いる。



​*Yoshinobu Murayama, Kenta Yoshida, Kenta Hattori, Hiroshi Honda, “Minimum But SufficientUltrasound Power Sensing For Safe And Intuitive Ultrasonic Surgery.” SMIT2012 (24th conference ofSociety for Medical Innovation and Technology), Barcelona, Spain (2012/09/21)



​加​えて、​研究​開発​に​必要​な​スペース​を​3​分​の​1​に​縮小​し、​必要​に​応​じ​て​移動​可能​として​いる。

 

著者​情報:

Yoshinobu Murayama PhD
​Department of Electrical and Electronic Engineering, College of Engineering, Nihon University

​ ​図​2. 単​孔​式​において​行​われ​た​手術​は​術後​の​回復​も​早く、​手術​痕​は​見た目​では​ほとんど​わ​から​ない。 ​
​ ​図​3. 圧​電​超音波​振動​測定・​制御​システム​の​構成​図 ​
​ ​図​4. 圧​電​超音波​振動​測定・​制御​システム​の​構成​要素​写真​図 ​
​ ​図​5. LabVIEW により​開発​した​測定・​制御​プログラム​の​ユーザー​インターフェース​タブ​切り替え​により、​下位​→​中​位​→​上位​の​システム​選択​が​できる ​