CompactRIO​を​用​い​た​次世代​電気​自動車​用​車両​制御​ECU​の​開発

"車両​開発​期間​が​1​年​と​非常​に​短​く、​さらに​プログラム​開発​は​6​ヶ月と短かった。​しかしながら、​LabVIEW​の​わか​り​やすい​操作性​により、​完成​まで​導く​こと​が​でき​た。" ​

- 島村 和樹 氏, 日本​自動車​研究所 FC・​EV​研究​部​性能​研究​グループ

課題:

タイヤ​の​性能​を​最大限​引き出す​ため​に、​電池​の​状態​を​把握​し​ながら、​4​輪​の​モータ​へ​適切​な​制御​指令​を​出す​こと​が​できる、​高速​高​精度​の​車両​制御​ECU​を​開発​する。 ​

ソリューション:

プラットフォーム​に​CompactRIO(cRIO-9104)、​その他​下記​の​モジュール​を​採用​し、​要件​を​満​た​した​車両​制御​ECU​の​開発​を​実現​した。 ​• ​車両​の​走行​安定性​の​制御​を​行う​うえ​で、​加速度​センサー​入力​用​に​NI 9215(同時​サンプリング​アナログ​入力​モジュール) ​• ​アクセル​ペダル​信号​や​ブレーキ​ペダル​信号、​電流​センサー​など​の​入力​用​に​NI 9205(32​チャンネル​アナログ​入力​モジュール) ​• ​4​つ​の​モータ​へ​の​指令​用​に​NI 9264(16​チャンネル​アナログ​出力​モジュール) ​• ​バッテリ​の​温度​管理​用​に​NI 9211(熱電​対​入力​モジュール) ​• ​モータ​の​回転​パルス、​モータ​の​異常​警告​用​として​NI 9401(高速​双方向​デジタル​I/​O​モジュール)​を​2​台 ​• ​キー​操作​や​充電​動作​用​に​NI 9422(シンク/​ソース​デジタル​入力​モジュール)

【背景】

財団​法人 日本​自動車​研究所​では、​石油​に​依存​しない​モビリティ​かつ​循環​型​の​低​炭素​社会​を​実現​する​ため​の​手段​の​ひとつ​として​大幅​な​燃費​向上​を​図​っ​た​次世代​型​電気​自動車​の​普及​が​必要​で​ある​と​考え​た。​そこで、​我々​は、​図​1​および​表​1​に​示す​よう​な​次世代​型​電気​自動車​の​試作​車​を​開発​し、​評価​を​行う​ことに​した。

 

電気​自動車​の​燃費​を​考える​際、​影響​を​及ぼす​因子​が​いくつか​考え​られる。​電気​自動車​特有​な​もの​として、​バッテリ​の​充​放電​効率、​モータ​の​効率​が​ある。​また、​自動車​として​は 車両​重量、​空気​抵抗、​転​がり​抵抗​が​ある。​今回​の​開発​車両​では、​モータ​および​バッテリ​は​市販​品​を​使用​する​こと​から、​これらの​効率​向上​による​燃費​向上​は​期待​でき​ない。​また、​実用​的​な​車内​空間​を​確保​する​ため​に​は、​空気​抵抗​の​大幅​低減​も​期待​でき​ない。​そこで、​電気​自動車​の​メリット​を​最大限​生かす​べ​く、​大​きく​分け​て​3​項目​について​取り組み​を​行う​こと​と​した。

 

・​超低​転​がり​抵抗​タイヤ​の​採用
​・​超​軽量​ボディ​&​シャシ​の​採用
​・​4​輪​イン​ホイール​モータ​を​用​い​た​高​精度​車両​制御​技術​の​採用

 

4​輪​イン​ホイール​モータ​を​採用​する​こと​だけ​では​燃費​を​向上​させる​こと​は​でき​ない。​逆に、​重量​が​増加​し、​燃費​は​悪化​する​可能性​が​ある。​しかしながら、​今回​採用​する​非常​に​転​がり​抵抗​の​低い​タイヤ​による​燃費​向上​の​効果​は​非常​に​大きい。​この​タイヤ​は、​駆動​輪​が​2​つ​の​場合、​タイヤ​の​性能​を​すべて​使い​切​って​しま​い、​車両​の​走行​安定性​に​影響​を​及ぼす​可能性​が​ある。​そこで、​4​輪​駆動​化​し、​タイヤ​の​グリップ​限界​を​最大限​利用​し、​転​がり​抵抗​の​低い​タイヤ​でも、​走行​安定性​を​維持​する。​さらに、​直接​駆動​方式​の​モータ​を​採用​する​こと​で​タイヤ​の​グリップ​限界​を​直接​監視​し、​モータ​特有​の​高速​制御​を​用​い​て、​タイヤ​の​性能​を​最大限​引き出す​こと​が​可能​で​ある​と​考え​られる。​さらに​4​輪​に​最適​な​トル​ク​配分​を​設定​する​こと​も​可能​となり、​燃費​の​面​で​の​デメリット​を​抑える​こと​が​できる。

 

そこで、​タイヤ​の​性能​を​最大限​引き出す​ため​に、​図​2​に​示す​よう​に​電池​の​状態​を​把握​し​ながら、​4​輪​の​モータ​へ​適切​な​制御​指令​を​出す​必要​が​あり、​高速​高​精度​の​車両​制御​ECU​を​開発​する​必要​が​ある。

 

【課題】

・​高速​かつ​多​ch​の​IO
 ドライバー​から​の​アクセル​ペダル​や​ブレーキ​ペダル​など​の​指令​に対して、​高速​かつ​高​精度​に​信号​を​取得​しな​け​れ​ば​なら​ない。​また、​ドライバー​の​指令​に対して​1msec​以下​で​4​輪​の​それぞれ​の​モータ​に​制御​指令​を​出す​必要​が​ある。

 

・​高速​演算
 車両​は​各​輪​の​モータ​角度​信号​から、​モータ​回転​数​や​車速​や​加速度​など​を​演算​し、​モータ​電流​より​各​輪​の​モータ​トル​ク​を​演算​する​必要​が​ある。​同時に​バッテリ​の​残​容量​や​温度、​電圧、​電流​など​が​許容​レベル​に​ある​か、​モータ​の​温度​や​電流​が​異常​を​示し​てい​ない​か​の​判断​を​行う​必要​が​ある。

 

・​情報​伝達
 車両​の​あらゆる​情報​を​ビジュアル​的​に​ドライバー​に​知らせる​必要​が​ある。

 

・​車載​へ​の​要求
 車両​制御​ECU​プロトタイプ​は、​自動車​として、​日常​的​に​使用​する​こと​から​スタンドアロン​で​動作​できる​こと​が​求め​られる。​さらに、​万が一、​トラブル​が​生​じ​て​も、​最低限​の​動作​を​確保​する​必要性​も​求め​られる。​今回、​開発​する​電気​自動車​は​非常​に​小型​軽量​で​ある​ため、​車両​制御​ECU​自体​も​軽量​コンパクト​かつ​堅牢、​省​エネルギ​で​ある​必要​も​ある。

 

・​開発​期間​の​短縮
 車両​完成​まで​の​期間​が​1​年​しか​ない​ため、​ECU​の​開発​も​短期間​で​終了​させる​必要​が​ある。

 

【ソリューション】

[システム​構成]

これまで​の LabVIEW​で​の​データ​収録​の​実績​や​車載​可能​な​コンパクト​ボディ​という​メリット​から、​今回​は​CompactRIO cRIO-9104​を​採用​する​ことに​した。​車両​の​走行​安定性​の​制御​を​行う​ため​に、​加速度​センサー​を​用いる​が、​その​入力​用​に​NI 9215​を​選択​した。​アクセル​ペダル​信号​や​ブレーキ​ペダル​信号、​電流​センサー​など​の​入力​用​に​NI 9205、​4​つ​の​モータ​へ​の​指令​用​に​NI 9264​を​使用​した。​バッテリ​の​温度​管理​用​に​NI 9211​を​用​い​て​温度​計測​を​行​って​いる。​モータ​の​回転​パルス、​モータ​の​異常​警告​用​として​NI 9401​を​2​台、​キー​操作​や​充電​動作​用​に​NI 9422​を​採用​した。

 

図​3​に​示す​よう​に、​CompactRIO​に​実装​さ​れ​て​いる​FPGA​では、​モータ​の​回転​速度​の​演算​および​ドライバー​から​の​指令​値​から​最低限​の​処理​だけ​行い​モータ​へ​制御​指令​を​出し​て​いる。​こう​する​こと​で​RT​や​Windows​側​で​エラー​が​生​じ​た​場合​に​も​最低限​の​動作​と​エラー​時​の​車両​停止​を​可能​にし​て​いる。​RT​では、​FPGA​で​演算​し​て​いる​モータ​へ​の​指令​値​に対して​割り込み​ゲイ​ン​の​演算​を​行​って​いる。​ここ​では、​車両​の​駆動​力​配分​や​トラ​ク​ション​コントロール​など​を​実装​し​て​いる。​また、​RT​から​制御​乗数​および​車両​データ​を​LAN​経由​で​タッチ​パネル​式​PC​へ​と​送信​し​て​いる。​PC​では、​Windows​ベース​で​LabVIEW​を動作させ、​RT​から​送​ら​れ​た​データ​を​PC​上​に​表示​し、​ドライバー​へ​の​情報​表示​機能​を​果たして​いる。​この​車両​は、​試験​ベンチ​を​兼​ね​て​いる​ため、​車両​データ​の​大半​を​ロギング​し​て​いる。​また、​図​4​に​示す​よう​に、​情報​表示​用​PC​では、​車両​の​4​輪​の​トル​ク​配分​の​変更​を​行う​こと​が​可能​と​な​って​いる。

 

[結果]

・​高速​かつ​多​ch​の​IO
 CompactRIO​を​採用​する​こと​で​必要​な​信号​形態​に​あ​わせ​た​モジュール​を​選定​する​こと​が​でき、​高速​かつ​多​ch​の​IO​を​実現​する​こと​が​でき​た。 また、​電気​自動車​の​特徴​で​ある​モータ​の​高速​な​応答​を​利用​すべ​く、​4​輪のモータへ高速かつ最適な指令を出すことが可能となった。

 

・​高速​演算
 CompactRIO​に​は、​高速​処理​が​可能​な​FPGA​が​搭載​さ​れ​て​いる​ため、​モータ​回転​数​は、​μsec​オーダーでの演算が可能となった。

 

・​情報​伝達
 LAN​を​経由​し​て、​タッチ​パネル​式​WindowsPC​へ​データ​送信​する​こと​で、​ドライバーに的確な情報を提供することが可能となった。​同時に​PC​から​の​操作​によって、​車両​制御​を​変更​する​こと​も​実現​でき​た。

 

・​車載​へ​の​要求
 FPGA​を​搭載​する​CompactRIO​を​採用​する​こと​により、​不安定​な​動作​を​省く​こと​が​でき、​車両にトラブルが生じても安全に車両を停止まで導くことが可能となった。​また、​図​5​に​示す​よう​に、​CompactRIO​は、​コンパクト​な​ため、​車両​の​限​ら​れ​た​スペース​に​も​搭載​する​こと​が​可能​で​あり、​効率​よく​レイアウト​する​こと​が​でき​た。

 

・​開発​期間​の​短縮
 車両​開発​期間​が​1​年​と​非常​に​短​く、​さらに​プログラム​開発​は​6​ヶ月と短かった。​しかしながら、​LabVIEW​の​わか​り​やすい​操作性​により、​完成​まで​導く​こと​が​でき​た。​今後​は、​さらに​制御​の​最適​化​や​車両​運動​性能​の​最適​化​を​行う​予定​で​ある。

表​1  ​開発​車両​諸​元
図​1  ​開発​車両​外観
図​2  ​車両​レイアウト
図​3  ​車両​制御​ECU​役割​分担
図4  車両​システム​変更​画面
図​5  ​開発​車両​の​メイン​部分