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インライン画像検査リアルタイム品質管理システム開発

村上 建二 氏, サンコール株式会社

"DSCモジュール使うことにより、LabVIEW機能品質管理品質傾向管理行うこと可能た。システム開発により生産、品質携わる関係から高い評価受けた。今後NI製品活用し、造り関わる総合システム開発行く。"

- 村上 建二 氏, サンコール株式会社

課題:

溶接に関わる品質不具合の流出をゼロにするべく、下記の要件を満たしたインライン画像検査システムを開発する。 • 1秒以下/1個の高速画像検査 • 画像処理による微小溶接の安定検出 • 品質管理用SPCプログラムの開発 • 内製化による開発コストの削減

ソリューション:

LabVIEWをメインプログラムとしてシステム開発を行い、OPCサーバとの通信処理や画像処理検査Vision Builder AIとのデータ通信、DSCモジュールを活用したSPC解析を行うシステムを構築する。

1. はじめに

 HDDの小型化・大容量化に伴いサスペンション自体も小さくなり、その結果、溶接径の微小化(φ0.1~φ0.2)が要求されている。現在この微小溶接の寸法検査、外観検査、品質管理はオフラインの画像検査システムで行っています。溶接に関わる品質不具合の流出をゼロにする為には、インライン画像検査システムの開発/導入が必須である。また、画像検査の結果は、統計的工程管理(Statistical Process Control:以下、SPC)を用いてリアルタイム品質管理を行うことで、製造工程の工程能力を確認/保証できるシステムとなる。このリアルタイム品質管理システムの情報は、遠隔地の関係者が品質状況を即座に確認できるようWEB配信機能を持たせることで、リアルタイムな品質情報の共有化が可能となる。

 

2. 課題

① 1秒以下/1個の高速画像検査
② 画像処理による微小溶接の安定検出
③ 品質管理用SPCプログラムの開発
④ 内製化による開発コストの削減


3. 測定ワーク概略

 ・Photo1に測定対象ワークの写真を示す。
 ・白丸部分が溶接。

 

4. ソリューション

① システム構成
・Fig.1に示したように、LabVIEWをメインプログラムとしてシステム開発を行い、OPCサーバとの通信処理や画像処理検査Vision Builder AIとのデータ通信、DSCモジュールを活用したSPC解析を行うシステムを構築する。

 

<ハード>
 モノクロ画像入力 : PCI-1426
 パソコン     : WindowsXP
<ソフト>
 LabVIEW 8.6
  ・DSCモジュール
  ・OPCサーバ
 Vision Builder AI 3.6
 ・Vision Assistant
② システムプログラム
ⅰ.インライン画像処理検査
 ・本システムでは導入後、作業者レベルでも容易に画像処理関数の閾値変更や関数追加など、柔軟に対応出来るようVision Builder AIを採用している。
 ・Vision Builder AIでは、1つの製品(13箇所の溶接位置検査)に対し44個の画像処理関数を実行し、検査時間は140msecという速さで処理される。そのため、課題であったタクト1秒以下/1個を十分クリアする処理能力が得られる。 製品はFig.1に示すように16個の製品が繋がった状態でテーブルに載せられ20mm/secの等速度で移動するようPLCからパルス制御を行う。 移動する際、各製品の位置でトリガセンサーの信号がONになりPCI-1426の外部トリガ入力端子に入力され、撮像→画像処理→結果表示→保存というプロセスを実行する。
 

 

・画像処理のステップでは撮像した画像に対し、まず、フィルタ処理を行いパターンマッチングと位置補正を行う。 次に、13箇所の溶接に対して1つずつ2値化処理(Detect Objects)関数を実行しXY中心座標と大きさの情報を求め、その結果を演算処理(Geometry)関数にかけ必要な結果を算出する。 最後にOK or NGのメッセージを表示し検査結果のデータをLabVIEWへ転送する。
 ・LabVIEWで受け取った検査結果のデータは必要な形に処理されFig.2に示すLabVIEWで作成したユーザーインターフェースに表示され、NGの場合、生産装置に不具合発生のNG信号を送信し、装置を停止するようプログラミングしている。 また検査結果を時系列的に表示,管理することで画像処理検査システムの状態も把握できる。

 

ⅱ.リアルタイムSPC解析(品質管理)
【本システムとPLCのインタフェース】
・生産設備(PLC)で検査あるいは計測したデータを本システムに取得するために、Fig.1に示すインタフェース“OPCサーバ”を採用する。一旦OPCサーバでの通信を確立しておけば、PLCの仕様変更や検査データの追加,削除の際にもLabVIEWシステムのプログラム変更が容易に行える。
【 SPC管理図のリアルタイム表示】
・データ処理/統計解析/SPC管理図表示については、LabVIEWとDSCモジュールのSPC解析ツールを活用しプログラム開発を行うことでFig.3に示すようなSPC管理図のユーザーインターフェースを開発した。

 

・生産設備で計測されたデータはOPCサーバを経由しLabVIEWのDataSocketに渡される。そのデータをSPC解析ツールによりX-bar管理図、σ管理図、ヒストグラムをリアルタイム解析し表示する。SPC管理図に表示するデータ数は、期間の指定、群の数の指定が可能である。X-bar管理図、σ管理図にはFig.4に示す領域ABCがあり、その領域内でのバラツキをTable.1に示す異常判定ルールで監視しアラームイベントを発生する。尚、管理図の更新は時間周期の設定か任意のボタン操作で更新される。Fig.5にヒストグラムを、Fig.6にX-bar管理図を示す。

 

Table.1 JISの異常判定ルール
1 領域Aを超えている
2 連続する9点が中心線に対して同じ側にある
3 連続する6点が増加,又は減少している
4 14の点が交互に増減している
5 連続する3点中、2点が領域A又はそれを超えた領域にある(>2σ)
6 連続する5点中、4点が領域B又はそれを超えた領域にある(>1σ)
7 連続する15点が領域Cに存在する(≦1σ)
8 連続する8点が領域Cを超えた領域にある(>1σ)

 

ⅲ.品質管理システムの共有化
・本システムでリアルタイムに表示しているSPC管理図は、LabVIEWのリモート表示機能のウェブパブリッシュ機能を組込むことで、LANを経由して弊社内の離れた場所の別のパソコンからWebブラウザ画面で表示することができる。

 

ⅳ.SPCソフトウエアの機能
✓全数ロット,指定ロットの管理図表示
✓現行生産中ロットデータの管理図表示
✓ヒストグラムの表示(Cp,Cpk算出)
✓SPC異常判定ルールの採用(Table1)
✓任意ロットデータの削除
✓管理値(UCL,LCL,CL,領域ABC)の任意設定と自動計算
✓社内遠隔地PCへSPC管理図のWeb配信

 

5. 結果

・Table1に示したように、このソリューションを開発したことで溶接画像検査の測定工数が大幅に改善された。また生産工程のラインタクト16秒を切る検査時間が実現し、インライン画像検査機として十分仕様を満たすシステムとなった。また検査精度においても従来のオフライン画像検査機と同等の繰り返し性を確保し、予算においても内製化をすることでハードウエアの価格だけで押さえることが出来た。
・リアルタイム品質管理システムにおいては、市販のSPC機能を有する品質管理システムは非常に高価で、弊社で一部導入済みのシステムにおいては、開発費用を含め400万円程度する。 今回、LabVIEWとSPC開発ツールを組合せてリアルタイム品質管理システムを開発したことにより、開発工数の削減(1週間程度で開発)ができ、また開発コストもDSCモジュールの

20万円と、OPCサーバの20万円のみで、既存システムの約1/10のコストで開発出来た。

 

・今までは抜き取り検査の結果を蓄積し、オフラインで統計的手法を活用して工程管理と保証を行っていたが、今回本システムを開発し,弊社生産工程へ導入出来たことにより、生産工程内での品質保証が可能になった。

 

Table.1 現行システムとの比較(画像検査とSPC)

 現行システムソリューション効果
画像検査工数40秒13秒67%低減
SPCコスト 400万円40万円90%低減

 

6. まとめ

 ・今まではLabVIEWやNI製品群を活用して、計測制御システムの開発を主にしていたが、 今回DSCモジュールを使うことにより、LabVIEWで高機能な品質管理や品質の傾向管理を行うことが可能になった。本システムの開発により生産、品質に携わる関係者から高い評価を受けた。今後もNI製品を活用し、物造りに関わる総合的なシステム開発を進めて行く。

Fig1. 画像検査&品質管理システムの概略
Fig.2  画像検査結果の画面
Fig.3  リアルタイムSPC管理図
Fig.4  領域ABC
Fig.5  ヒストグラム
Fig.6  X-bar管理図
Photo1. サスペンション外観写真