CRRCBig Analog Data™から価値採掘するためベンチマーク策定

「CompactRIOは、演算能力メモリ割り当て要件完全ています。InsightCM導入した結果、マルチチャンネルデータ収集同期実現しただけなく、NTPタイムサーバ利用デバイスサーバ時刻一貫性維持できるようなりした」

- Zhiqiang Zhang氏、CRRC Qingdao Sifang (青島四方軌道車輛有限公司)

課題:

高速鉄道の営業距離や運行本数が増えるにつれ、安全性と効率性の向上に対する関心が高まってきました。当社は、現在でも運行や保守のさらなる最適化が必要であると考えます。状態監視により従来の受け身型の保守から脱却することで、最適化を進め、経済効率を改善できます。

ソリューション:

CRRC (中車四方車輛有限公司) ​は、InsightCM™およびCompactRIOにCyberInsight Technology社の機械学習アルゴリズムを組み合わせて、予知保全システムを構築しました。列車の稼働時間を増やすとともに、時速350 kmに達する高速運転時の安全確保に役立てています。

予知保全は、インダストリアルIoT (IIoT) の重要な応用領域の1つとして注目を集めています。Roland Berger GmbHは、HANNOVER MESSE (世界最大の産業見本市) の協力のもと、メカニカルエンジニアリング事業を手掛ける153社を対象にアンケート調査を実施しました。とくにトランスミッションエンジニアリング、メカニカルトランスミッション、油圧トランスミッション、電動オートメーション、ロボティクスなどの分野に対象が絞られました。その結果、回答した企業の81%が予知保全計画を導入し、そのうち約40%が関連する技術やサービスを提供していることがわかりました。一方、いまだ研究開発段階であるか、それに関連する作業を始めていない企業は多数存在します。

 

中国高速鉄道プロジェクト予知保全からられる洞察

中国の高速鉄道の革新は、世界の注目を集めています。新型車両「復興号」は時速350 kmで営業運転しており、これは世界の高速鉄道の中でも最高の営業速度です。高速走行には稼働時間の維持と安全性の確保が不可欠なため、予知保全はきわめて重要です。

 

高速鉄道向け予知保全ソリューションシステムの構築における第1段階は、機械学習アルゴリズムの開発です。そのために、モデルのトレーニング用に大量のデータを収集する必要がありました。データを短期間で収集できるよう、高速鉄道の試運転路線 (中国青島市のCRRC施設内) に回転部品を8つ取り付けました。これが概念実証として機能し、求められていた貴重なデータを得られたのです。回転部品それぞれの振動と速度を計測し、収集したデータを選別、解析しました。ここから、最終的にすべての回転部品について、その健全性に関する洞察を得ることができました。しかし、このプロトタイプ調査により、以下に述べる5つの大きな課題が明らかになりました。

 

リアルタイムのデータ収集  

リアルタイムのオンライン監視システムを早急に構築する必要がありました。10個の回転部品について、振動と速度のデータを1つの信号デバイスで同期して収集するには、20のデータ収集チャンネルが必要です。

 

サンプリング周波数

高速鉄道では、スピンドル速度が最大2,200 rpmとなります。また、サンプルの周波数レンジがあらゆる障害の周波数をカバーするには、25.6 kS/sのサンプルレートが必要でした。

 

連続集録

適切な解析のために、複数のセンサから継続的に高速データストリームを収集する必要がありました。

 

データ処理

高周波数データをマルチチャンネルで収集する場合、短時間で大量のデータが発生します。このデータから健全性の把握に必要な情報を得るため、信号処理と特徴抽出を行った後、サーバに渡します。そのため、非常に高度な演算能力とメモリ割り当てがテストシステムに要求されます。

 

時間の同期

機械学習アルゴリズムの開発時に効率よく利用できるよう、全チャンネルから収集したデータに対して高い精度で同期を取り、タイムスタンプを付与する必要がありました。さらに、このテスト装置のタイムスタンプは、サーバ側とも同期する必要がありました。それによって、タイムスタンプを他のソースから得られるデータと一緒にモデルに組み込むことができました。

 

 

当社ではデータ収集にInsightCMおよびCompactRIOを使用するソリューションを採用し、上記の課題に対処しました。チャンネル数やサンプリング周波数の要件に基づいて選んだのが、cRIO-9036コントローラとNI-9232音響/振動入力モジュールです。CompactRIOは、演算能力やメモリ割り当ての要件を完全に満たします。InsightCMを導入した結果、マルチチャンネルのデータ収集で同期を実現しただけでなく、NTPタイムサーバを利用してデバイスとサーバ間の時刻の一貫性も維持できるようになりました。

 

当社チームはCompactRIO上で質の高いデータを収集し、CompactRIO上で健全性予知アルゴリズムを実行しました。また、リアルタイムの要件を満たすCompactRIOのおかげで、高速鉄道のテスト中に発生するすべての障害を高い確度で解析できるようになったのです。

 

エッジコンティンクラウドコンティン統合し、データから洞察得る

CyberInsight Technology社はNIおよびCRRCと連携して、この予知保全用コネクテッドシステムのデータに関する課題のいくつかを解決しました。振動データは通常、高い収集レート (加速度計の1チャンネルあたり約1万~10万サンプル/秒) でサンプリングされます。CompactRIO上の処理要素により、このデータを計算処理してRMSやピーク振動のような特徴を抽出してから、サーバに送信します。この方式により、分散配備されたCompactRIOエッジノードと、列車の中心に位置するInsightCM Serverとの間で必要な帯域幅を抑えることができます。このような大量のデータを通常のネットワーク上で伝送するのは困難を伴い、高速で移動する列車の外部にデータを送信する場合には、さらにその費用と複雑さは増大します。現在、機械学習の研究や分析モデルの作成は、クラウド上で行っています。しかし今回のソリューションでは、列車内にローカルの分散型ネットワークをデプロイして、高速のセンサデータから特徴を算出し、診断結果を分析して、障害の兆候を早期に検出する計画です。この計画中のアーキテクチャでは、データのペイロードを衛星通信で伝送するため、前処理したデータをパックする方式に比べ、より高密度の情報となります。データ転送が最小限で済めば商業的にも成り立ちやすくなるので大規模にデプロイでき、鉄道事業者が運用する列車数が増加しても対応できます。

 

予知保全事業もたらす影響

テストデータおよび設備データをエンタープライズネットワークに接続できるようにすることは、設計および製造の次なる革新を見据えた重要な一歩といえます。CRRCは、CyberInsight社と連携してNIの技術を利用し、高速鉄道から得たデータをネットワークに接続しました。その結果、予知保全の活用によって列車の稼働時間が増えることになります。次世代の列車を運用するCRRCは、この素晴らしいテクノロジにより、はるかに短期間で投資を回収できるでしょう。

 

著者​情報:

Zhiqiang Zhang
CRRC Qingdao Sifang (青島中車四方軌道車輛有限公司)

 


図1. NIのプラットフォームを基盤とする、初期のシステムアーキテクチャ