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ITER核融合実験保守用いる精度リアルタイム制御システム構築

Jouni Mattila (ソース)、タンペレ工科大学

「LabVIEWは、遠隔保守システム使用する多様センサ、アクチュエータ、ソフトウェア環境インタフェース向けに、非常柔軟性高い環境提供ます。LabVIEWマルチコアプログラミング機能により、このよう複雑システム開発簡素することできます。」

- Jouni Mattila (ソース) - タンペレ工科大学

課題:

核融合実験炉であるITERの保守作業を、遠隔操作によってミリメートル以下の精度で行う。

ソリューション:

NI LabVIEW、LabVIEW Real-Timeモジュール、NIデータ収集ボードを使用して、高精度の制御システムを構築する。また、遠隔保守システムで使用する多様なセンサ、アクチュエータ、ソフトウェア環境に対応する柔軟性に優れたインタフェースを開発する。

作成​者:

Jouni Mattila (ソース) - タンペレ工科大学
Hannu Saarinen (ソース) - VTTフィンランド技術研究センター

 

核融合によるエネルギー生成

クリーンで持続可能なエネルギー源として核融合を利用する――。 ITERはその実現に向けて国際協力の下で開発された核融合実験炉です。ITERでは、核融合の実証用発電施設で利用される主要な技術に関するテストを行います。 それにより、核融合エネルギーの商用利用が可能であることを示すことが目標です。発電施設は、トカマク (Tokamak) の原理に基づいて設計されます。トカマク型の装置では、磁界で囲まれたドーナツ状の真空容器内に、1億℃という非常に高い温度でプラズマを維持します。

 

ITERにおける遠隔保守課題

ITERを適切に稼働させるための最大の課題は、容器内のコンポーネントの保守と交換を遠隔操作で行えるようにしなければならないということです。いったん稼働が開始すると、放射線の存在する領域にあるコンポーネントの変更、検査、修復は、遠隔操作以外の方法で行うことはできません。ITERには多くのコンポーネントが使われていますが、遠隔操作の複雑さを緩和するために、保守作業は比較的大きなモジュール式システムの取り外し/取り付けで行えるようになっています。

 

モジュール式での交換を可能にするために、ダイバータは、反応炉容器内に固定されたドーナツ型のレール上に個々に設置された54個のカセットで構成されています。各カセットの重さは約9トンで、外形寸法は長さ、高さ、幅がそれぞれ約3.5 m、2.1 m、0.8 mです。容器からカセットを取り外す際には、カセット台車と呼ばれる遠隔操作用の装置を使用します。

 

コンポーネントの重量が重く、また周囲のスペースが限られていることから、保守は非常に困難な作業となります。その操作には、高い確度で位置決めが行え、大きな動力を持ち、コンパクトなサイズのアクチュエータが必要になります。

 

NI LabVIEW遠隔操作装置開発

遠隔保守装置の開発とテストは、VTTフィンランド技術研究センターにあるITERダイバータテストプラットフォーム2 (DTP2:Divertor Test Platform 2) で行います。ITERに実装する前に技術に関するテストを行うために、2つの遠隔保守装置を開発しました。 それらの制御を担うシステムには、NI LabVIEWLabVIEW Real-Timeモジュール、NIデータ収集 (DAQ) デバイスを使用しました。LabVIEWは、遠隔保守システムで使用する多様なセンサ、アクチュエータ、ソフトウェア環境とのインタフェース向けに、非常に柔軟性の高い環境を提供します。LabVIEWのマルチコアプログラミング機能により、このような複雑なシステムの開発を簡素化することができます。

 

DTP2制御GUI

LabVIEWは、使いやすく強力なプログラミング機能を提供します。そのため、VTTでは、DTP2の制御室で使用するメインのユーザインタフェースはLabVIEWで実装しました。LabVIEWによってユーザインタフェースを実装するのは非常に容易で、テキストベースのプログラミング言語を使用する場合よりもかなりの労力を削減することができました。またメインの制御室において、ユーザインタフェースを使用し、DTP2のシステムを初期化して保守作業を行うためのパラメータを設定できるようにしました。

 

システムステータスの表示には、LabVIEWのフロントパネル用コンポーネントを使用しました。標準的な監視パラメータとしては、マニピュレータの関節部の状態、水圧の情報、ロボットの絶対位置と相対位置などがあります。また、ユーザインタフェースを使用して、診断システムから送られるすべてのエラー、アラーム、警告の情報を監視します。

 

 

機能カセット台車 (CMM) 用コントローラ開発

ITERでは、多機能なカセット台車 (CMM) によってダイバータ用の9トンのカセットの移動を行います。カセットは、ダイバータのアクセスダクト上の複雑な軌道に沿って輸送キャスクからプラズマ容器まで移動します。この処理には、高い確度が求められます。プラズマに触れるコンポーネントは慎重に取り扱わなければなりません。加えて、真空容器の表面から数cm以内の領域を通す必要があります。

 

CMMを制御するために、マルチコアのデスクトップターゲットをベースとし、LabVIEW Real-Timeモジュールを使用して高レベル制御 (HLC) システムを設計しました。HLCシステムでは、CMMのモーションリファレンスを算出し、それをCAN (Controller Area Network) バスを介してより低レベルのサーボ制御システムに引き渡します。また、システム診断を目的として、システムに対するすべての入力を監視し、緊急停止信号を処理します。さらに、LabVIEW Real-TimeモジュールをベースとするこのHLCシステムは、3Dのシミュレーション環境と、ロボットのダイナミックモデルを実行するリアルタイムシミュレータに対してシステムの情報を提供します。

 

 

CMM水圧マニピュレータ

フィンランドのタンペレ工科大学 液圧/自動化技術研究所は、水圧マニピュレータ (WHMAN) を構築しました。このWHMANは、パイプの切断/折り曲げ/溶接、カセットのロック/ロック解除、およびカセットの取り外し/取り付けを行う際のCMMのサポートなど、ITERのダイバータ内部で行う遠隔操作に使用します。WHMANはCMMの上部に取り付けられ、遠隔操作をサポートします。このマニピュレータは8の自由度を持つ関節部を備えており、ITERの保守用トンネルという限られたスペース内で多様な操作に対応します。

 

WHMANは、デスクトップターゲットでLabVIEW Real-TimeモジュールとNIデータ収集デバイスを使用して制御します。マルチファンクションDAQボードであるNI PCI-6031Eを使用して、圧力センサ、線形電圧差動変圧器 (LVDT) センサ、温度センサ、POT3センサなどさまざまなセンサの計測を実行します。PCI-6031Eが備えるアナログ出力チャンネルによって、WHMANシステムのサーボドライブとバルブを制御します。NI PCI-6703ボードを採用することで、将来的に制御チャンネルの数を増やすことも可能です。また、さまざまなサブシステムのI/Oにアクセスするための汎用入出力デバイスとして工業用デジタルI/OボードであるNI PCI-6514を使用しました。さらに、あるフォースセンサの操作には、専用のインタフェースカードが必要でした。このカードにはLabVIEWドライバが付属していませんでしたが、LabVIEWを使用することで、ドライバも簡単に開発することができました。

 

作成者:Samuli Bergstrom

マーケティングエンジニア―National Instruments Finland

高さ29メートル、直径28メートルのITERは、トカマク型の装置として世界最大規模のものになる見込みです。© ITER Organization
ITERの真空容器と44の保守ポート。その重量はエッフェル塔をやや上回る8000トンです。© ITER Organization
多機能なカセット台車
水圧マニピュレータ