LabVIEW​と​NI FlexRIO​を​用​い​た​滑走​路​異物​探知​用​ミリ​波​レーダ​の​研究​開発

"NI FlexRIO​と​デ​ジ​タイ​ザ​アダプタ​モジュール​を​用いる​こと​で、​リアルタイム​で​レーダ​信号​の​FPGA​高速​演算​処理​が​可能​となり、​従来にない高スループットのレーダスコープ描画が可能となった。​また、​大幅​に​規模​の​異なる​ターゲット​でも​プログラム​が​再​利用​できる​ため、​既存​の​コード​を​活用​する​こと​で、​10​分​の​1​以下​の​開発​期間​で​研究者​自身​が​プログラム​構築​でき​た。"

- Shunichi Futatsumori, Surveillance and Communications Department, Electronic Navigation Research Institute (ENRI), National Research and Development Agency

課題

滑走​路上​等​の​空港​面​における​小​異物​を​探知​する​ため​の​ミリ​波​レーダ​の​研究​開発​課題​に​対応​する​ため​に、​1​ヶ月​以内​の​短期間​で​レーダ​信号​処理​および​制御​システム​の​効率​的​な​試作​が​必要​で​あっ​た。​さらに、​ミリ​波​レーダ​の​大規模​な​データ​量​に​対応​可能​な​高性能​かつ​高速​な​ハードウェア​が​必要​で​ある​と同時に、​信号​処理​アルゴリズム​の​フレキシブル​な​追加​等​の​システム​拡張​性​が​求め​ら​れ​てい​た。

ソリューション

PXI​プラットフォーム​の​高速​データバス​に​直接​接続​可能​な​NI FlexRIO​と​デ​ジ​タイ​ザ​アダプタ​モジュール​を​用いる​こと​で、​リアルタイム​で​レーダ​信号​の​FPGA​高速​演算​処理​が​可能​となり、​従来にない高スループットのレーダスコープ描画が可能となった。​また、​グラフィカル​言語​を​用​い​た​一貫​開発​環境​により、​研究者​自身​で​の​機能​追加​が​随時​実現​でき​た。​また、​以前​に​構築​し​てい​た​NI Single-​Board RIO​等​の​コード​を​活用​する​こと​で、​大幅​に​規模​の​異なる​ターゲット​で​あっ​て​も​容易​に​プログラム​が​再​利用​可能​で​ある​ため、​10​分​の​1​以下​の​開発​期間​で​研究者​自身​が​プログラム​構築​を​終える​こと​でき​た。

背景

航空機​に​損害​を​与​え、​危険​な​事故​等​を​引き起こす​可能性​の​ある​空港​滑走​路上​の​異物​を​自動的​に​探知​する​システム​の​重要性​が​増し​て​いる。​滑走​路上​の​異物​が​事故​原因​と​さ​れる​2000​年​の​シャルル・​ドゴール​国際​空港​の​コンコルド​墜落​事故​以来、​大規模​空港​では​世界​的​に​これらの​異物​探知​の​課題​が​ある。​これ​は、​滑走​路​の​利用​効率​改善​の​ため、​落下​物​および​バード​ストライク​発生​時​等​における​異物​安全​点検​の​滑走​路​閉鎖​時間​が、​滑走​路​の​効率​的​な​使用​の​ため​に​無視​でき​ない​ため​で​ある。​電子​航法​研究所​では、​航空​交通​量​の​増大​や​航空​交通​の​安全​性​に​寄与​する​研究​を​重点​的​に​実施​し​て​おり、​その​中​で​航空機​の​安全​性​に​寄与​する​技術​として​新た​な​アーキテクチャ​に​基づく​ミリ​波​レーダ​を​試作​し、​異物​探知​技術​の​研究​を​行​って​いる。

 

課題

滑走​路面​上​異物​探知​システム​として、​天候​等​の​影響​を​受け​に​く​く、​小型​かつ​高​分解能​特性​を​実現​できる​ミリ​波​レーダ​を​用​い​た​レーダ​システム​を​提案​し​て​いる。​ミリ​波​レーダ​は、​様々​な​要素​回路​から​構成​さ​れる​が、​どの​方向​の​対象​物​を​探知​する​か​を​決定​する​走査​型​アンテナ、​ミリ​波​帯​信号​を​送受信​する​無線​回路、​対象​物​から​の​受信​信号​を​解析​する​信号​処理​回路、​および​レーダ​全体​の​動作​を​制御​する​制御​回路​など​が​主要​部分​で​ある。​今回​の​研究​プロジェクト​では、​ミリ​波​の​無線​回路​部分​が​主​な​研究​開発​要素​で​ある​と同時に、​いかに​レーダ​の​信号​処理​および​制御​を​行う​か​が​重要​な​検討​事項​で​あり、​以下​の​3​点​の​課題​が​あっ​た。

  1. 滑走​路​監視​システム​の​研究​開発​は​4​年間​の​研究​プロジェクト​で​ある​が、​毎年​度​の​研究​目標​に​合わせ​た​試作​システム​を​構築​する​ため、​非常​に​短期間​で​レーダ​信号​処理​および​制御​システム​の​実現​が​必要​で​あっ​た。​スケジュール​に​合わせ、​電波​法​の​無線​局​免許​を​取得​し、​屋外​実験​を​実施​する​ため​に​は、​1​ヶ月以内の短期間でのシステム構築を行うことが求められた。
  2. ミリ​波​レーダ​は、​広帯域​な​ミリ​波​周波数​資源​を​用​い、​数​cm​以下​の​高い​距離​分解能​を​実現​可能​な​利点​が​ある。​一方、​高い​距離​分解能​を​滑走​路上​等​の​広い​面積​で​実現​する​際​に​は、​膨大​な​データ​量​を​短時間​で​演算​処理​する​必要​が​ある。​例えば、​距離​分解能​5 cm​で​半径​200 m​の​監視​範囲​を​0.036​度​おき​に​360​度​アンテナ​水平​走査​を​行う​場合、​データ​量​は​最低​でも​1.2 GB/​s(デジタイザ​垂直​分解能​16 bit)​となり、​FPGA​等​の​ハードウェア​ロジック​を​用​い​な​け​れ​ば​実現​不可能​で​あっ​た。
  3. 上記​の​処理​を​行う​ため​の​手段​として​専用​ハードウェア​および​ソフトウェア​の​発注​等​を​行​っ​た​場合、​大規模​システム​開発​と​なる​ため、​低​コスト​化​および​スケジュール​達成​が​困難​で​ある。​さらに、​研究​で​得​ら​れ​た​新た​な​知見​を​信号​処理​に​フード​バック​する​場合、​研究者​自身​で​アルゴリズム​を​追加​できる​システム​拡張​性​が​必要​で​あっ​た。

 

 

ソリューション/​アプリケーション​概要

上記​の​課題​を​解決​し​研究​スケジュール​を​円滑​に​進める​ため、​PXI​プラットフォーム​の​高速​データバス​に​直接​接続​可能​な​NI FlexRIO​と​デ​ジ​タイ​ザ​アダプタ​モジュール​を​用​い、​レーダ​システム​を​構築​した。​研究​を​行​って​いる​レーダ​システム​は、​ミリ​波​技術​および​Radio-​over-​fiber(RoF)​技術​を​組み合わせ​た、​分散​型​の​光​ファイバ​接続​型​ミリ​波​レーダ​システム​で​ある​(図​1)。​ここ​で​分散​型​と​は​建物​内​に​設置​する​中央​装置​と、​滑走​路​脇​に​設置​し、​それぞれ​の​探知​エリア​を​監視​する​複数​の​アンテナ​装置​から​構成​さ​れ​て​いる。​中央​装置​において​ミリ​波​レーダ​の​送信​信号​生成​および​受信​信号​処理​を​一括​し​て​行い、​アンテナ​装置​の​単純​化​を​計​って​いる。​ミリ​波​レーダ​の​送信​信号​源​は​中央​装置​内​に​あり、​ミリ​波​の​非常​に​高い​周波数​の​信号​を​光​信号​に​変換​し。​数​km​以上​の​距離​を​伝送​する​こと​が​可能​で​ある。​また、​レーダ​受信​信号​は​同様​に​中央​装置​で​信号​処理​を​行う​こと​で、​複雑​な​レーダ​信号​処理​を​集約​し​て​行う​ため、​高性能​かつ​高速​な​ハードウェア​が​必要​で​あっ​た​が、​試験​用​システム​の​レーダ​信号​処理​回路​および​制御​回路​を​NI LabVIEW​および​NI FlexRIO​を中心に構築することで実現可能となった​(図​2)。​FlexRIO「NI PXIe-7965R」​は​高速​FFT​処理​および​各種​レーダ​信号​処理​等​が​可能​な​十分​な​フリップフロップ​の​スライス​数​および​メモリ​容量​を​有​し​て​おり、​PXI Express​の​最大​8 GB/​s​を​活用​し、​信号​処理​結果​を​DMA FIFO​により​直接​ホスト​側​へ​の​データ​伝送​を​行う。​また、​FlexRIO​の​アダプタ​モジュール​に​は、​垂直​分解能​16 bit、​サンプリング​速度​250 MS/​s​で​デジタイズ​可能​な​NI 5762​を​用​い​た。​アダプタ​モジュール​に​は​FPGA​に​直接アクセス​可能​な​ディジタル​IO​が​12 ch​ある​ため、​信号​処理​の​トリガ​信号​および​アンテナ​走査​の​信号​処理​同期​等​を​FPGA​の​ハードウェア​クロック​で​高​精度​に​行う​こと​が​可能​で​ある。

 

導入​効果

高性能​な​レーダ​信号​演算​回路​の​実現​は​直接​レーダ​の​探知​能力​改善​に​繋がる。​今回​は​グラフィカル​言語​で​ある​LabVIEW​の​メリット​を​最大限​に​活用​する​こと​が​可能​で​あり、​1​ヶ月​以内​という​通常​の​10​分​の​1​以下​の​開発​時間​で​システム​構築​が​可能​で​あっ​た。​これ​は​以下​の​3​つ​の​利点​による。​1​つめ​の​利点​は、​FPGA​部​と​ホスト​部​の​全て​の​プログラム​が​同一​の​LabVIEW​で​開発​可能​な​ため​で​ある。​構築​した​システム​は​リアルタイム​で、​1 GB/​s​を​超える​毎秒​10,000​回​の​FFT8,192​ポイント​の​処理​結果​を​ホスト​PC​に​遅延​無​く​伝送​する​こと​が​可能​で​あり、​前述の高距離分解能かつ複雑なレーダ信号処理を実現可能となった。​2​つめ​の​利点​は、​本​研究​課題​は​現在​4​年間​の​研究​期間​の​3​年​目​を​終​え​た​ところで​あり、​毎年​の​研究​進捗​に​併せて​機能​追加​等​を​行​って​いる​が、​研究者​自身​が​LabVIEW​で​プログラム​を​構築​可能​で​ある​ため、​外注​費​を​無視​できる​低​コスト​で​迅速​な​機能​追加​が​可能​な​こと​で​ある。​さらに、​以前​に​Single-​Board RIO​に​構築​した​信号​処理​アルゴリズム​を​含む​プログラム​を​ほとんど​変更​無​く​再​利用​可能​で​あっ​た​こと​も​大きな​利点​で​ある。​通常​の​VHDL​を​用​い​た​FPGA​プログラミングでは必要となる規模の異なるプラットフォーム間での細かいタイミング合わせ等を意識せずに、​LabVIEW​を通じて​IP​の​再​利用​が​可能​で​ある​こと​は​非常​に​大きな​メリット​で​ある。

 

今後​の​展望

NI LabVIEW​および​NI FlexRIO​を​用​い​た​信号​処理​および​制御​回路​を​用いる​こと​で​空港​面​異物​探知​用​ミリ​波​レーダ​の​試作​システム​を​効率​よく​迅速​に​構築​する​こと​が​でき​た。​これまでに​構築​した​システム​を​用​い、​その​実現​可能性​を​実際​の​空港​面​における​実証​実験​で​明らか​にし​て​いる​(図​3)。​これまで​は​アンテナ​装置​は​1​式​のみ​で​あっ​た​が​現在​複数​の​アンテナ​装置​を​接続​する​システム​に​変更​中​で​あり。​その​際​に​は​複数​の​NI FlexRIO​を​用いる​こと​と​なる​が、​これまでに​構築​した​プログラム​を​用いる​こと​で、​グラフィカル​言語​の​利点​を​最大限​に​活​かし、​スケーラビリティ​に​優​れ​た​迅速​な​開発​が​可能​で​ある​と​考え​て​いる。

 

著者​情報

Shunichi Futatsumori
Surveillance and Communications Department, Electronic Navigation Research Institute (ENRI), National Research and Development Agency
​Japan

図​1. ​ ​光​ファイバ​接続​型​ミリ​波​レーダ​の​概念​図 ​
図​2. (a) ​ ​光​ファイバ​接続​型​ミリ​波​レーダ​の​(a)​システム​全体​の​概観​および​(b)​信号​処理​部​ブロック​図 ​
(b)
Figure 4. ​ ​Overview of the optically-​connected, distributed-​type 96 GHz millimeter-​wave radar system with two antenna units ​
Figure 5. ​ ​Example of the combined radar scope obtained in the Sendai Airport field experiments ​
Figure 6.