機械​学習​を​用​い​た​ディーゼル​車​向け​状態​監視​システム​の​構築

"運行​中​の​列車​という​過酷​な​環境​に​耐え​られる​状態​監視 装置​用​の​製品​として、​堅牢​性​の​高い​CompactRIO​は最適だった。​しかも、​LabVIEW​を​使用​する​こと​により、​必要​な​機能​を​自由自在​に​実現​する​こと​が​できる。​この​よう​な 製品​は、​他​に​は​存在​しない​の​では​ない​か。"

- 近藤 稔 氏, 公益​財団​法人​鉄道​総合​技術​研究所

課題:

ディーゼル​車​の​動力​システム​に​生じる​振動​の​データ​を​監視​し、​異常​の​発生​を​早期​に​検出​可能​な​システム​を​構築​する。​走行​中​の​車両​で​生じる​振動​や​温度​変化​など​の​厳しい​条件​に​対応​可能​な​ハードウェア​と、​プログラミングによって任意の機能を自由に構築できる柔軟性の高い開発環境が必要だった。

ソリューション:

振動​センサー​の​接続​先​と​なる​状態​監視​装置​は、​堅牢​性​の​高い​NI​の​CompactRIO​を​使用​し​て​構築​する。​また、​NI LabVIEW​を​使う​こと​で、​センサー​から​の​データ​収集​や、​オクターブ​バンド​分析​など​の​機能​を​高い​生産​性​で​開発​できる​よう​に​する。

作成​者:

近藤 稔 氏 - 公益​財団​法人​鉄道​総合​技術​研究所
​矢野 達哉 氏 - 株式会社 テス

 

背景

鉄道​総合​技術​研究所​(以下、​鉄道​総研)​は、​旧・​国​鉄​の​研究​部門​等​を​前身​と​する​組織​で​ある。​分割​民営​化​によって​JR​グループが発足したことを機に設立された。​現在​は、​JR​グループ​の​各​企業​を​はじめ​と​する​鉄道​事業​者​から​提示​さ​れ​た​技術​課題​を​含む​広範​な​テーマ​を​対象​と​し、​鉄道​分野​全体​の​発展​に​つながる​技術​の​研究​開発​を​実施​し​て​いる。

 

鉄道​総研​の​動力​システム​研究室​では、​電車​や​ディーゼル​車​が​備える​動力​部​(以下、​動力​システム)​を​対象​として​研究​活動​を​行​って​いる。​具体​的​に​は、​電車​の​場合​は​モーター、​継手、​歯車​装置​など、​ディーゼル​車​の​場合​に​は、​エンジン、​変速​機、​推進​軸​(プロペラ​シャフト)、​歯車​装置​など​を​扱​って​いる。​そして、​現在、​取り​組​んで​いる​の​が、​ディーゼル​車​が​備える​動力​システム​の​状態​監視​で​ある。

 

例えば、​車輪​や​車軸​軸受、​レール​や​架線​など​の​地上​設備​といった​もの​について​は、​以前​から​状態​監視​に​向け​た​研究​が​行​われ​て​きた。​それぞれ​の​状態​を​継続​的​に​監視​し​て​故障​など​を​検出​し、​的確​に​修理​を​実施​する​こと​が​目的​で​ある。​あるいは、​故障​に​つながる​兆候​を​早期​に​検出​し、​その​情報​を​基​にし​て​寿命​予測​を​行う​こと​で​効率​的​に​メンテナンス​を​実施​できる​よう​に​した​い​という​ニーズ​も​ある。​これ​が、​いわゆる​予知​保全​で​ある。​ただ、​動力​システム​の​分野​では、​それほど盛んに状態監視の研究開発は行われてこなかった。​通常​の​列車​は、​10​両​編成、​12​両​編成​といった​具合​に、​複数​の​車両​で​構成​さ​れ​て​いる。​その​場合、​列車全体で見れば、​数多く​の​モーター​を​搭載​し​て​いる​ことに​なる。​実は、​それらの​うち​1​つ​に​わずか​な​故障​が​発生​した​として​も、​列車​は​問題​なく​走行​できる。​そうした​冗長​性​を​持​た​せ​た​設計​に​な​って​いる​という​こと​だ。​しかも、​過去​の​実績​から​見​て​も、​動力​システム​は​それほど​簡単​に​壊れる​もの​では​ない。​ただし、​ローカル線​など​では、​ディーゼル​車​が​1​両​編成​で​運行​し​て​いる​ケース​も​ある。​その​場合、​1​つ​の​エンジン​が​故障​した​だけ​で​走行​不能​の​状態​に​陥​り、​路線​全体​の​サービス​が​停止​し​て​しまう​こと​も​あり​得る。​その​よう​な​状況​を​防ぐ​ため​に​も、​また、​一般​論​として​安全​性​や​信頼​性​を​より​高め​られる​よう​に​する​ため​に​も、​動力​システム​の​状態​監視​を​行​いたい​という​ニーズ​が​存在​する​ので​ある。

 

実際、​ある​鉄道​事業​者​の​メンテナンス​部門​から、​鉄道​総研​に対して、​ディーゼル​車​向け​の​状態​監視​に関する​研究​開発​の​打診​が​あっ​た。​その​結果、​鉄道総研で研究開発の取り組みを実施することになった。

 

この​案件​で​監視​の​対象​に​なる​の​は、​ディーゼル​車​の​エンジン​や​変速​機​など​の​動力​システム​で​ある。​ただ、​これら​が​突発​的​に​破壊​に​至る​こと​は​少​なく​徐々に​状態​が​悪​く​なり、​限界​に​達​した​とき​に​破壊​に​至る​と​考え​られる。​そこで、​状態​監視​システム​では、​徐々に​状態​が​悪​く​な​って​いる​こと​を​把握​できる​よう​に​する​こと​が​必要​に​なる。​研究​開発​を​打診​してき​た​鉄道​事業​者​は、​管轄​エリア​に​ある​すべて​の​ディーゼル​車​の​状況​を​遠隔​から​把握​した​いと​考え​てい​た。​メンテナンス​部門​から​の​依頼​という​こと​で、​いわゆる​予知​保全​の​実現​が​1​つ​の​ゴール​に​なり​そう​で​ある。​予知​保全​は、​もともと​経時​劣化​が​発生​する​こと​が​わか​って​いる​部品​や​ユニット​を​対象​と​し、​その​劣化​の​進行​具合​を​把握​する​こと​で、​残り​の​寿命​を​予測​し​て​最適​な​タイミング​で​メンテナンス​を​実施​できる​よう​に​する​という​もの​で​ある。​それ​により、​メンテナンス​に​かかる​コスト​を​削減​する​こと​が​1​つ​の​狙い​だ。​ただ、​筆者​ら​が​現在​この​研究​で​目指​し​て​いる​こと​は、​予知​保全​では​なく、​異常​検知​の​実現​だ。​というのも、​この​プロジェクト​で​対象​として​いる​動力​システム​は、​もともと​劣化​し​に​く​く、​簡単​に​は​壊​れ​ない。​それでも​なお​不測​の​事態​によって​故障​が​生じる​可能性​は​ゼ​ロ​では​ない​ため、​状態​監視​を​行い、​異常​が​発生​した​場合​に​は​早期​に​対応​を​図れる​よう​に​しよう​という​こと​だ。​なお、​予知​保全​は、​異常​の​検知、​診断、​寿命​の​予測​という​プロセス​を​実現​し​て、​初めて​実用​化​が​可能​に​なる。​将来​的​に​は​予知​保全​に​発展​させる​可能性​も​想定​し​つつ、​この​プロジェクト​では、​まず​異常​検知​の​技術​を​確立​しよう​と​考え​た​という​こと​で​ある。

 

 

課題

図​1​に​示し​た​の​は、​状態​監視​システム​の​将来​的​な​イメージ​の​一例​で​ある。​この​システム​では、​まず、​振動​センサー​によって​動力​システム​に​現れる​振動​を​検出​する。​取得した振動の信号は状態監視装置に送信されて​A/​D​変換​が​実施​さ​れる。​得​ら​れ​た​デジタル・​データ​に対して​は、​状態​監視​装置​において​オクターブ​バンド​分析​を​適用​する。​オクターブ​バンド​分析​は、​騒音​や​振動​の​評価​に​よく​用​い​られる​手法​で​ある。​オクターブ​バンド​と​は、​上限​と​下限​の​周波数​比​が​1​オクターブ​(2 倍)​に​なる​周波数​帯域​の​こと​だ。​つまり、​A/​D​変換​後​の​データ​を​オクターブ​バンド​ごと​に​分け​て、​それぞれ​の​帯域​内​に​含​ま​れる​振動​の​大​き​さ​を​算出​する​という​こと​で​ある​(図 2)。​このように​し​て​得​ら​れ​た​結果​は、​サーバー​に​転送​さ​れる。​PC​から​サーバー​に​アクセス​し​て​データ​を​取得​し、​診断​プログラム​によって​異常​の​有無​を​分析​する。​この​診断​プログラム​は​機械​学習​(マシンラーニング)​の​アルゴリズム​を​備え​た​もの​で​あり、​正常​な​状態​と​の​比較​を​ベース​として​異常​の​検知​を​実施​する​(図​3)。​この​診断​プログラム​の​開発​こそ​が、​本​研究​の​肝​の​部分​で​ある。​同​プログラム​は、​Python​によって​記述​し、​機械​学習​用​の​「scikit-​learn」​という​ライブラリ​を​活用​し​て​実現​した。

 

 

 

この​よう​な​システム​を​構築​する​うえ​で​最も​大きな​課題​と​な​っ​た​の​は、​使用するセンサーや装置の堅牢性だった。​すなわち、​車両​が​実際​に​走行​し​て​いる​ときの​振動​や​温度​など​の​条件​に​耐え​られる​もの​が​必要​だ​っ​た​の​だ。​電車​の​モーター​や​ディーゼ ル​車​の​エンジン​は、​もともと​滅多に​壊れる​よう​な​もの​では​ない。​そもそも、​バラスト​(線路​に​敷く​砂利)​や​氷雪​が​ぶつ​かって​き​て​も​壊​れ​ない​くらい​頑丈​だ。​これらの​動力​システム​より​も、​状態​監視​システム​で​使用​する​装置​や​センサー、​配線​など​の​ほうが​脆弱​で​ある​こと​は​明らか​だ。​状態​監視​装置​を​バラスト​が​飛​んで​くる​よう​な​ところ​に​設置​する​こと​は​ない​が、​それでも​計測​装置​の​使用​環境​として​望​ま​しく​ない​ことに​違い​は​ない。​また、​センサー​や​配線​は、​かなり​過酷​な​条件​に​さら​さ​れる​ことに​なる。​したがって、​可能​な​限り​堅牢​な​製品​を​選択​しな​け​れ​ば​なら​ない。​この​こと​は、​コスト​の​面​でも​不利​に​働く​ことに​なる。

 

 

 

 

ソリューション/​効果

この​よう​な​厳しい​環境​に​耐え​られる​製品​として​有力​な​選択肢​に​な​っ​た​の​が​NI の​「CompactRIO」​で​ある。​つまり、​状態​監視​装置​に​使用​する​製品​として、​振動​の​発生​や​温度​の​変化​に​耐え​られる​堅牢​性​を​高​く​評価​した​という​こと​だ。​CompactRIO​を選択することになれば、​必要​な​機能​は​グラフィカル​開発​プラットフォーム​で​ある​「NI LabVIEW」​を​使​って​プログラミング​する​ことに​なる。​最終​的​に​は、​以下​の​よう​な​理由​から、​この​組み合わせ​を​選択​する​ことに​した。

 

まず、​実際​に​運行​する​車両​に​システム​を​設置​する​場合、​煩雑​な​スイッチ​操作​など​が​必要​に​なる​こと​は​避​けたい。​つまり、​自動的に計測を開始して自動的に終了するという仕組みも構築したかった。​その​よう​な​処理​も、​CompactRIO​で​あれ​ば​LabVIEW​を​使​って​高い​自由​度​で​容易​に​実現​する​こと​が​可能​だ。​NI​の​製品​は、​計測​器​と​PC​が​一体化​さ​れ​て​いる​と​表現​する​こと​が​できる。​つまり、​PC​を​使​って​計測​器​を​自由自在​に​操れる​という​イメージ​だ。​おそらく、​NI​製品​と​同じ​よう​な​こと​が​できる​もの​は、​他​に​は​存在​しない​の​では​ない​か。​実際、​他社​製品​の​中​に​も、​業務​用​PC​を​ベース​として​自動​計測​に​対応​する​という​もの​が​あっ​た​が、​振動センサーとの接続やデータの取得の部分が面倒に感じられた。​一方、​CompactRIO​で​あれ​ば、​センサー​を​接続​し​て​情報​を​取り込む​といった​こと​も​非常​に​容易​に​実現​できる。​しかも、​FPGA​を​使​って​非常​に​高速​な​処理​を​実現​する​こと​も​可能​だ。​この​よう​な​複合​的​な​理由​から​NI​製品​を​選択​した​ので​ある。

 

図​1​は、​実用​化​した​ときの​イメージ​で​あり、​研究​開発​の​段階​では​サーバー​に対する​通信​機能​など​は​必要​ない。​状態​監視​装置​を​使​って​データ​を​取得​でき​れ​ば​十分​で​ある。​そこで、​実際​に​は​振動​センサー​を​CompactRIO​に​接続​し​て​センサー​から​の​データ​を​収集​し、​オクターブ​バンド​分析​を​CompactRIO​上​で​適用​した​うえ​で、​分析​結果​を​SD​カード​に​保存​し​て​いる。​ある程度​データ​が​蓄積​さ​れ​たら​SD​カード​を​回収​し、​PC​上の​診断​プログラム​によって、​異常​に​つながる​兆候​が​現れ​てい​ない​か​どうか​を​判断​し​て​いる。​なお、​CompactRIO​は​振動​や​温度​に対する​耐性​は​高い​が、​車両​の​電源​環境​は​電圧​の​変動​範囲​が​非常​に​大​きく、​同製品でもそれには耐えられなかった。​そのため、​状態​監視​装置​は​鉄道​車両​用​の​電源​モジュール​と​組み合わせ​て​構築​した​(図 4)。

 

 

 

この​状態​監視​装置​の​実装​は​(株)​テス​が​担当​した。​同社​は、​鉄道​総研​で​行​われる​研究​開発​を​サポート​する​ため​に​設立​さ​れ​た​企業​で​ある。​この​装置​の​開発​に​携​わっ​た​担当​者​(テス​の​矢野​氏)​は、​それまでのキャリアの中でプログラミングを担当したことはなかった。​約​1​年間​にわたり、​e​ラーニング​を​活用​し​て LabVIEW​による​プログラミング​技術​の​習得​に​取り組み、​それ​が​完了​した​タイミング​で、​状態監視装置の開発を担当することになった。​つまり、​筆者らが行った設計に基づき、​配線​作業​など​を​行​って​CompactRIO​や​電源​モジュール​など​を​1​つ​の​パッケージ​に​まとめる​とともに、​LabVIEW​による​プログラミング​を​行​って​必要​な​機能​の​実現​に​取り​組​ん​だ​わけ​だ。​その​結果、​わずか​6​週間​ほど​で​1​号機​を​完成​させる​こと​が​でき​た。​この​短期​開発​について、​グラフィカル​な​操作​によって​プログラミング​が​行える​LabVIEW​が​貢献​し​て​いる​ことに​間違い​は​ない​だ​ろう。​例えば、​e​ラーニング​で​使用​し​てい​た​テキスト​は​実装​作業​を​行う​うえ​で​非常​に​役に立つ​し、​ほとんど​手​を​加える​こと​なく​そのまま​使用​できる​サンプル​プログラム​も​豊富​に​提供​さ​れ​て​いる。​さらに、​LabVIEW​に​は、​オクターブ​バンド​分析​用​の​ライブラリ​も​用意​さ​れ​て​いる。​そのため、​非常​に​容易​に​必要​な​機能​を​実現​する​こと​が​でき​た。​実際、​サンプル​プログラム​と​ライブラリ​を​組み合わせる​だけ​でも​かなり​の​こと​が​行える​の​だ。​LabVIEW​を​利用​する​場合、​テキスト​ベース​で​すべて​の​機能​を​コーディング​する​必要​が​ない​ので、​非常​に​安​心して​開発​作業​が​行える。

 

1​号機​の​開発​が​完了​し​て​以降、​振動​の​測定​に​加​え、​機械​の​回転​速度​や​負荷​など​の​情報​も​取得​できる​よう​に​する​など、​状態​監視​装置​に対して​は​さまざま​な​改良 / 改変​を​施​した。​その​結果、​実際​に​同​装置​を​車両​に​搭載​し​て​振動​データ​の​収集​を​行い、​オクターブバンド分析の結果を蓄積できるようになった。​また、​当初​の​目標​どおり、​診断​プログラム​による​異常​の​判定​が​可能​で​ある​こと​も​確認​でき​て​いる。​具体​的​に​は、​動力​システム​に​含​ま​れる​さまざま​な​機械​の​異常​を​単一​の​アルゴリズム​を​使​って​検知​できる​よう​に​な​って​いる。​機械​や​故障​の​種類​ごと​に​チューニング​など​を​行う​必要​は​ない。​振動​に​変化​が​現れる​タイプ​の​故障​で​あれ​ば、​どの​よう​な​もの​でも​検出​できる​はず​だ。​また、​単に​異常​の​有無​を​検知​した​だけ​では、​メンテナンス​を​担当​する​部門​は、​どこ​に​問題​が​ある​の​か​わ​から​ず​対処​に​困​って​しまう。​これ​について​は、​故障の内容に応じて異なる周波数帯に変化が現れるということ示せるようになった。​これ​により、​対応​が​容易​に​なる​はず​だ。

 

一般に、​車両​の​振動​を​監視​する​場合​に​は、​次​の​よう​な​こと​が​懸念​点​として​浮上​する​で​あ​ろう。​すなわち、​どの​よう​な​場所 を​走る​の​か​によって​振動​の​状態​が​異なる​ため、​取得​した​データ​を​基​に、​的確​に​判定​を​行う​の​は​難しい​の​では​ない​か​という​こと​だ。​実際、​その​よう​な​理由​から、​特定​区間​を​走行​し​て​いる​際​の​振動​だけ​を​監視​し​て​異常​の​有無​を​判断​する​という​方法​を​採用​し​て​いる​ケース​も​ある​という。​だが、​筆者​ら​が​開発​した​状態​監視​システム​では、​そうした​こと​は​一切​行​って​い​ない。​その​理由​は​いくつか​ある​の​だが、​最も​重要​な​の​は​機械​学習​を​採用​し​て​いる​点​に​ある。​機械​学習​において​は、​それぞれの走行区間に対して十分な学習データを学習させれば、​仮に​走行​区間​によって​振動​が​異​な​って​い​た​として​も、​正常​時​と​の​差異​が​あれ​ば、​異常​が​生​じ​て​いる​と​判定​さ​れる​仕組み​が​出来​上​が​って​いる。​したがって、​走行​場所​による​影響​という​の​は​今​の​所​大きな​問題​に​な​って​い​ない。

 

 

今後​の​展開

現時点​では、​まず、​完全​に​壊​れ​て​しまう​前​に​故障​の​兆候​を​なるべく​早く​把握​する​という​ことに​取り​組​んで​いる。​これ​について​は、​技術​的​に​は​概ね​実現​でき​て​いる​と​自負​し​て​いる。​ただ、​理想​として​思い​描​い​て​いる​状況​に​到達​する​まで​に​は、​遠い​道のり​が​ある​と​考え​て​いる​こと​も​事実​だ。​そこで、​今後​は​以下​に​列挙​する​よう​な​取り組み​を​進​め​てい​きた​い。

 

まず、​毎日​の​よう​に​実際​の​車両​で​測定​を​続ける​と​データ​が​大量​に​蓄積​さ​れ​てい​く​ことに​なる。​また、​気温​の​変化​や​車輪​の​摩耗​状況​など​の​条件​が​変​われ​ば、​それに​伴​い​振動​に​も​変化​が​生​じ​て​しまう。​そうした​多種​多様​な​条件​に​対応​し​て​機械​学習​を​行う​ため​に​は、​非常​に​膨大​な​量​の​データ​を​投入​し​て​学習​を​実施​しな​け​れ​ば​なら​ない。​どれ​だけ​性能​の​高い​コンピュータ​を​使​って​も​問題​が​生​じ​て​しまう​レベル​の​量​に​なる​ので、​現在​は、​すべて​の​データ​の​中​から​特徴​と​なる​部分​だけ​を​抽出​する​よう​な​アルゴリズム​の​研究​を​行​って​いる。

 

また、​異常​が​検知​さ​れ​た​ときには、​それ​が​どういう​段階​な​の​か​という​こと​も​知る​必要​が​ある。​すぐ​に​運行​を​停止​し​て​交換​しな​け​れ​ば​なら​ない​の​か、​それとも​そのまま​しばらく​は​使用​できる​の​か​という​判定​を​行​いたい​という​こと​だ。​これ​について​は、​1 日​の​うち​どの​程度​の​時間、​異常な振動が生じたのか評価すれば、​劣化​の​度合い​把握​でき​そうだ​という​こと​が​わか​って​き​て​いる。

 

現時点​では、​まず、​完全​に​壊​れ​て​しまう​前​に​故障​の​兆候​を​なるべく​早く​把握​する​という​ことに​取り​組​んで​いる。​これ​について​は、​技術​的​に​は​概ね​実現​でき​て​いる​と​自負​し​て​いる。​ただ、​理想​として​思い​描​い​て​いる​状況​に​到達​する​まで​に​は、​遠い​道のり​が​ある​と​考え​て​いる​こと​も​事実​だ。​そこで、​今後​は​以下​に​列挙​する​よう​な​取り組み​を​進​め​てい​きた​い。

 

さらに、​現在、​エッジではオクターブバンド分析までしか行っておらず、​異常​の​有無​を​判定​する​診断​プログラム​は PC​上​で​稼働​さ​せ​て​いる。​だが、​このシステムが実用化されれば、​メンテナンス​部門​の​人​が​使う​ことに​なる​ので、​車​上​で​ほぼ​リアルタイム​に​異常​の​判定​まで​行える​よう​に​する​こと​が​望ましい。​そこで、​エッジ​で​異常​の​判定​まで​行​って、​結果​として​得​られる​異常​度​という​指標​だけ​を​サーバー​に​送信​できる​よう​に​した​いと​考え​て​いる。​つまり、​状態​監視​装置​に​機械​学習​の​アルゴリズム​も​実装​し、​異常​度​の​計算​まで​行える​よう​に​する​という​こと​だ。​なお、​機械​学習​において​多大​な​演算​負荷​が​生じる​の​は​学習​段階​だけ​で​ある。​実際​の​アプリケーション​で​使用​する​の​は​学習​後に​得​られる​モデル​だけ​で​あり、​その​演算​負荷​は​小さい。​したがって、​CompactRIO​でも​問題​なく​実行​できる​はず​だ。

 

最後​に​なる​が、​この​システム​の​実用​化​に​向け​て​は、​コスト​の​問題​が​最大​の​障壁​と​なる​で​あ​ろう。​先ほど​説明​した​よう​に、​動力​システム​は​壊​れ​にくい​もの​だし、​1​つ​が​壊​れ​て​も​問題​なく​運行​できる​ケース​が​ほとんど​だ。​1​両​編成​の​ディーゼル​車​が​運行​不能​な​状況​に​な​っ​た​として​も、​金額​換算​で​それほど​大きな​問題​に​なる​とも​言​え​ない。​この​よう​な​状況​下​で、​すべて​の​車両​の​すべて​の​動力​システム​向け​に​センサー​と​状態​監視​装置​を​用意​する​という​の​は、​費用​対​効果​が​高い​施策​だ​と​は​言​え​ない​だ​ろう。​そもそも、​動力​システム​は​経時​劣化​で​壊れる​よう​に​設計​さ​れ​て​はい​ない​ので、​今後​も​それほど​高い​頻度​で​メンテナンス​が​行​われる​こと​は​ない。​したがって、​予知​保全​の​メリット​として​うた​われ​て​いる​コスト​削減​の​効果​も​限​ら​れ​て​いる。​それでも​状態​監視​に​注目​が​集​ま​って​いる​理由​は、​情報処理​に​必要​な​システム​の​低​コスト​化​が​劇的​に​進​んで​いる​から​では​ない​か。​例えば、​昔​は​FFT(高速​フーリエ​変換)​用の装置はそれだけで数百万円もする高価なものだった。​それ​が​現在​では、​5​万​円​程度​の​センサー​に​FFT​機能​が​組み​込​まれ​てい​たり​する。​状態​監視​システム​を​使用​す​れ​ば​不測​の​事態​に​も​対応​できる​よう​に​なり、​安全​性​や​信頼​性​が​向上​する​こと​は​確か​なので、​その​構成​要素​の​価格​が​劇的​に​低下​する​こと​を​大いに​期待​した​い。

 

著者​情報:

近藤 稔 氏
公益​財団​法人​鉄道​総合​技術​研究所
​国分寺​市​光​町​二​丁目​8​番地​38
​東京​都 185-8540
​Japan

図​3. ​ ​診断​プログラム​による​異常​検知 ​
図​4. ​ ​CompactRIO​を​使用​し​て​構成​した​状態​監視​装置 ​
図​1. ​ ​状態​監視​システム​の​イメージ図 ​
図​2. ​ ​オクターブ​バンド​分析​の​概要 ​