マツダ​が​NI​の​HILS​を​利用​し​て​電装​品​用​の​自動​評価​環境​を​構築​―​試験​に​伴う​操作​や​結果​判定​に​かかる​工数​を​大幅​に​削減

Tomohiko Adachi, Mazda Motor Corporation

"NI​の​テスト​プラットフォーム​を​活用​する​こと​で、​HILS​だけ​で​なく、​ロボット​や、​音声​合成​システム、​GPS​シミュレータ​など​の​様々​な​要素​を、​豊富​な​エコ​システム​を通じて​実現​し、​電装​品​の​統合​自動​試験​環境​を​構築​する​こと​が​でき​た。​これ​により、​試験​に​伴う​操作​に​要する​工数​を​90%​削減​し、​また​結果​判定​に​かかる​工数​も​90%​削減​する​こと​が​でき​た。"

- Tomohiko Adachi, Mazda Motor Corporation

課題:

あらゆる​電装​品​を​協調​動作​さ​せ​た​状態​で​ロジック​(機能)​を​確認​する​こと​が​でき、​ロ​バスト​性​の​評価​も​実施​可能​な​システム​を​一​から​構築​する。​一連​の​評価​に​必要​な​操作​や​結果​の​判定​作業​も​自動的​に​行える​システム​と​する。

ソリューション:

PXI​製品、​再​構成​可能​I/​O​モジュール​(FPGA)、​LabVIEW​で​構成​さ​れる​NI​の​HILS​を​利用​し​て​システム​を​構築​する。​ロ​バスト​性​の​評価​を​行う​ため​に、​ノイズ​シミュレータ​や​GPS​シミュレータ、​音声​合成​システム​など​も​統合​する。​また、​自動化​を​達成​する​ため​に、​ロボット​や​画像​処理​システム​の​統合​も​図る。

作成​者:


​Tomohiko Adachi - Mazda Motor Corporation
​Hideyuki Okada - Mazda Motor Corporation
​Noriaki Kittaka - Mazda Motor Corporation
​Masaya Taniguchi - Mazda Motor Corporation
​Yasuhisa Okada - MAC Systems Corporation

 

背景

周知​の​とおり、​自動車​では​急速​に​電子​化​が​進​んで​いる。​ワイパー​や​ドア​ロック​の​制御​に​始まり、​照明​や​空調、​パワー​トレイン、​インフォテインメント、​さらには​各種​の​安全​システム​など、​現在​では​あらゆる​部分​に​電装​品​が​適用​さ​れ​て​いる。​当初、​自動車​に​搭載​さ​れる​CPU​の数はわずか数個程度だった。​それ​が​現在​では、​3​桁​に​迫る​勢い​と​言​われる​レベル​に​まで​増加​し​て​いる。

 

マツダ​の​電子​実​研​グループ​は、​顧客​に​品質​の​高い​製品​を​提供​する​ため​に、​すべて​の​電装​品​の​「ロジック」​と​「ロ​バスト​性」​を​評価​する​という​役割​を​果たして​いる。​ここ​で​言う​ロジック​と​は、​各​電装​品​が​備える​機能​の​こと​で​ある。​もう​一方​の​ロ​バスト​性​と​は​次​の​よう​な​もの​だ。​電装​品​の​動作​環境​は​必ずしも​理想​的​な​状態​に​ある​と​は​限​ら​ない。​例えば、​電源​電圧​が​変動​した​り、​ノイズ​が​加​わっ​たり、​望​ま​しく​ない​質​の​入力​信号​が​印加​さ​れ​たり​といった​具合​に、​厳しい​条件​に​さら​さ​れる​可能性​が​ある。​ロ​バスト​性​と​は、​その​よう​な​環境​に​耐え​て​正しい​ロジック​で​動作​する​能力​の​こと​だ。​つまり、​各​電装​品​が​厳しい​条件​に​どこ​まで​耐え​られる​の​か​を​評価​する​という​こと​で​ある。

 

課題

電装​品​の​ロジック​と​ロ​バスト​性​の​評価​は、​従来​も​行​って​い​た。​電装​品​の​種類​が​少​なく​機能​も​単純​だ​っ​た​ころ​に​は、​各​電装​品​を​単体​で​動作​さ​せ​られる​環境​を​用意​し​て​評価​する​という​手法​で​対応​でき​てい​た。​しかし、​電装​品​の​種類​が​増え、​それぞれ​の​機能​も​非常​に​複雑​に​な​っ​た​こと​から、​いくつかの課題が浮上することになった。​昨今​では​複数​の​電装​システム​の​間​で​通信​が​行​われ、​一方​の​システム​の​動作​結果​を​基​にし​て​もう​一方​の​システム​が​動作​する​という​形態​が​増え​て​きた。​そのため、​個々​の​システム​を​単体​で​試験​する​だけ​では​なく、​関連するシステムを協調動作させた状態で試験を行わなければ意味がないという状況になった。​また、​その​状態​で​ロ​バスト​性​の​評価​も​行える​よう​に​する​必要​が​あっ​た。​しかも、​コンポーネント​や​ユニット​の​種類​が​増える​と、​評価​項目​の​数​は​指数​関数​的​に​増加​し​てい​く。​そのため、​自動的に評価作業が行えるシステムが必要になることは明らかだった。

 

マツダ​では​この​よう​な​課題​について​10​年​ほど​前​から​認識​し​てい​た。​しかし、​これらすべての要件に対応可能な評価システムは世の中に存在しなかった。​この​よう​な​状況​を​受け​て、​私​たち​は​この​課題​に​真っ向​から​取り組む​ことに​した。​つまり、​あらゆる​電装​品​を​協調​動作​さ​せ​た​状態​で​ロジック​を​確認​する​こと​が​でき、​ロ​バスト​性​の​評価​も​実施​可能​で、​一連​の​評価​作業​を​自動化​できる​システム​を​一​から​構築​する​ことに​した​という​こと​で​ある。

 

ソリューション/​効果

構築​する​システム​は、​非常​に​大規模​で​複雑​な​もの​に​なる。​そのため、​その​開発​作業​は​数​年間​にわたって​段階​的​に​進める​ことに​した。​図​1​に、​その​第​1​段階​の​概念​図​を​示し​た。​システム​の​構成​要素​は、​HILS(Hardware-​in-​the-​Loop Simulation)​エンジン、​ロボット、​画像​処理​システム​で​ある。​HILS​エンジン​の​部分​に​は、​NI​の​HILS​を​採用​し​て​いる。​つまり、​ハードウェア​として​は、​PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)​製品​や​「再​構成​可能​I/​O​モジュール​(FPGA)」​を​使用​した。​それらの​ハードウェア​上​で​稼働​する​ソフトウェア​は​システム​開発​プラットフォーム​「LabVIEW」​を​使用​し​て​開発​した

 

この​システム​に​HILS​を​採用​した​理由​は​次​の​よう​な​こと​で​ある。​マツダ​は、​世界​初​の​物​を​開発​する、​世界​初​の​こと​を​やる​という​ことに​注力​し​て​いる。​1​つ​の​例​として、​他社​に​先駆け​て​モデル​ベース​開発​を​強​く​推進​し、​実用​レベル​で​活用​してき​た​こと​が​挙​げ​られる。​その​よう​な​背景​も​あり、​電装​品​の​評価​に​も、​でき​れ​ば​モデル​を​活用​し​てい​きた​いと​考え​て​いる。​しかし、​電装​品​の​評価​において​は、​どうしても​モデル​化​でき​ない​部分​という​もの​が​存在​する。​モデル​化​でき​ない​部分​へ​の​対応​の​ため​に、​通常​は​HILS​本体​以外​に​装置​システム​を​別途​用意​し​て​HILS​システム​を​構築​する​が、​マツダ​は​HILS​本体​を​拡張​する​こと​で​対応​した。​NI​の​PXI​プラットフォーム​は、​様々​な​テスト​装置​の​構築​に​適​し​て​いる​ため、​HILS​本体​と​拡張​部分​を​HILS​本体​システム​上​で​実現​でき​た。

 

 

モデル​化​が​でき​ない​部分​は、​いくつか​存在​する。​特に、​人​と​車​の​間​の​インタフェース​部​など​は​モデル​化​する​こと​が​でき​ない。​ここ​では​最も​理解​し​やすい​例​として​速度​メーター​を​取り上げる。​速度​メーター​に、​車両​の​速度​に​対応​する​値​として​「50 km/​h」​と​表示​する​ケース​を​考え​て​みる。​その​場合、​速度​メーター​を​制御​する​ユニット​から、​「50 km/​h​と表示せよ」​という​指令​を​意味​する​信号​が​出力​さ​れる​ことに​なる。​その​信号​は​シミュレーション​でも​評価​できる​し、​実機​でも​確認​可能​で​ある。​そして、​システム​が​正しく​機能​し​て​いる​なら、​その​信号​を​受け​取​っ​た​結果、​速度​メーター​に​は​「50 km/​h」​と​表示​さ​れ​て​いる​はず​だ。​ただ、​本当に​「50 km/​h」​と​認識​できる​よう​に​表示​さ​れ​て​いるか​どうか​は、​人間​の​目​で​確認​しな​け​れ​ば​わ​から​ない。​つまり、​車​から​の​情報​を​ドライバー​が​どう​認識​する​か​という​部分​は​モデル​化​でき​ない​という​こと​だ。​同様​に、​車​に対して​情報​を​伝達​する​ため​に​ドライバー​が​行う​操作​の​部分​も​モデル​化​する​こと​が​でき​ない。​例えば、​車​を​運転​し​て​いる​ドライバー​は、​ボタン​を​押して​エアコン​を​オン/​オフ​した​り、​タッチ​パネル​に​触れ​て​ナ​ビ​ゲ​ー​ション​システム​を​操作​した​り​する​はず​だ。​その​操作​において​生じる​可能性​の​ある​微妙​な​状態​を、​そっくり​そのまま​再現​する​こと​が​可能​な​モデル​を​構築​する​こと​は​でき​ない​ので​ある。

 

しかしながら、​「Be a driver」​を​掲げる​マツダ​として​は​上記​の​モデル​化​が​困難​な​領域​こそ​評価​として​注力​すべ​き​領域​で​ある​と​考え​た。​単純に考えれば、​車​(電装​品)​に対して​ドライバー​が​情報​を​伝達​する​に​は、​実際​に​人間​が​ボタン​など​を​操作​しな​け​れ​ば​なら​ない​という​ことに​なる​(事実、​そうした​手作業​による​試験​も​少​な​から​ず​行​って​きた)。​ただ、​それでは​評価​作業​に​莫大​な​工数​が​か​かって​しまう。​したがって、​評価作業を自動化するための仕組みも必要だった。​そこで​導入​した​の​が​電装​品​の​操作​に​使用​する​ロボット​だ。​この​ロボット​が、​コンピュータ​制御​の​下、​実際​に​ボタン​を​押し​たり、​タッチ​パネル​を​触​っ​たり​する​という​こと​で​ある。​同様​に、​車​(電装​品)​から​ドライバー​へ​の​情報​伝達​について​も​考える​必要​が​あっ​た。​速度​メーター​の​例​で​言う​と、​単純に考えれば、​表示​を​実際​に​人間​が​目​で​見​て​本当に​「50 km/​h」​と​認識​できる​か​否​か​を​判断​する​という​ことに​なる​(この​よう​な​方法​による​試験​も​実際​に​行​って​きた)。​画像​処理​システム​を​導入​した​の​は、​この​部分​を​自動化​する​ため​で​ある。​具体​的​に​は、​速度​メーター​の​表示​を​カメラ​で​撮影​し、​得​ら​れ​た​画像​に​処理​を​適用​する​こと​で、​OK/​NG​の​判定​を​自動化​できる​よう​に​した。​仮に、​速度​の​表示​が​7​セグメント​の​LED​で​行​われる​と​すると、​その​様子​を​カメラ​で​撮影​し、​画像​処理​によって​文字​を​認識​する​こと​で​表示​内容​を​確認​する​という​こと​で​ある。​あるいは、​速度​が​針​で​表示​さ​れる​ので​あれ​ば、​画像​処理​を​利用​し​て​針​の​角度​を​算出​し、​それ​によって​何​km/​h​を​指し​て​いる​の​か​を​判断​する。​制御​ユニット​から​の​信号​と​表示​の​両方​を​監視​し​て​突き​合わせ​を​行う​こと​で、​正しく​表示​さ​れ​て​いるか​否​か​を​判断​する​という​こと​で​ある。

 

なお、​この​システム​では、​ソフトウェア​で​実現​した​仮想​システム​(仮想​電装​品)​によって​各​電装​品​を​代替​する​こと​も​できる。​すべて​の​電装​品​が​完成​し​て​から​でなければ​評価​を​進​め​ら​れ​ない​という​こと​では​制約​が​大きい。​なるべく​早く​着手​し​て、​なるべく​早く​結論​を​出し​たい​ので、​実機​の​代わり​に​仮想​電装​品​を​利用​できる​よう​に​もし​て​いる​という​こと​で​ある。​この​仮想​電装​品​に​図​1. 第​1​段階​の​システム​の​概念​図​図​2. 第​4​段階​の​システム​の​概念​図​ついては、​単に​実機​と​同様​に​動作​する​という​こと​だけ​で​なく、​ルック​アンド​フ​ィ​ー​ル​も​含​め​て​実機​に​非常​に​近い​もの​に​な​って​いる。​試験​の​内容​に​応​じ、​本質​的​に​実機​を​使う​べ​き​ところ​は​実機​を​使用​し、​そう​で​ない​部分​は​仮想​電装​品​で​代用​する​といった​柔軟​な​運用​が​可能​に​な​って​いる​という​こと​で​ある。

 

ここ​まで​に​説明​した​内容​は、​基本​的​に​は​ロジック​を​検証​する​ため​の​仕組み​だ​と​言う​こと​が​できる。​それに​加​え、​この​システム​では​ロ​バスト​性​の​評価​も​行える​よう​に​する​必要​が​あっ​た。​現在、​マツダ​では​ロジック​を​単純​に​OK/​NG​で​判定​する​の​では​なく、​ロ​バスト​性​を​検証​する​こと​を​重要​視​し​て​いる。​マツダ​の​場合、​ロ​バスト​性​の​評価​では、​正しい​ロジック​で​の​動作​が​限界​を​迎える​条件​を​見極める​とともに、​それ​に対して​どれ​だけ​の​余裕​が​ある​の​か​を​確認​し​て​いる。​どれ​だけ​の​余裕​が​あれ​ば​合格​と​する​か​について​は、​マツダ​社内​で​独自​の​基準​を​設定​し​て​いる。​この​よう​な​評価​を​行う​こと​により、​優​れ​た​ユーザー​エ​クス​ペ​リ​エン​ス​を​提供​した​り、​サプライヤ​企業​を​含む​設計​部門​に対して​的確​に​情報​を​フィードバック​した​り​する​こと​が​可能​に​なる。

 

 

ロ​バスト​性​の​中​で​最も​代表​的​な​もの​として​は、​電源​電圧​の​変動​や​ノイズ​に対する​耐性​が​挙​げ​られる。​例えば、​電源​電圧​の​値​を​変化​さ​せ​ながら、​評価​の​対象​として​いる​電装​品​が​どこ​で​正しく​動作​し​なくなる​の​か​を​見極める​という​こと​で​ある。​この​よう​な​評価​を​実施​できる​よう​に​する​ため​に、​第​2​段階​の​システム​では​図​1​の​構成​に対して​ノイズ​シミュレータ​を​追加​した。

 

ただ、​電源​電圧​の​変動​や​ノイズ​だけ​が​ロ​バスト​性​の​評価​の​対象​に​なる​わけ​では​ない。​例えば、​自動車​の​機能​の​中​に​は、​ドライバー​から​の​操作​手段​として​発声​を​利用​できる​よう​に​な​って​いる​もの​が​ある。​これ​について​も、​ロ​バスト​性​の​評価​の​対象​と​なる。​そのため​に​追加​した​の​が、​音声​合成​システム​で​ある。​日本語​と​英語​に​対応​する​この​システム​により、​老若男女​の​声、​強弱、​滑​舌​など​の​面​で、​さまざま​な​バリエーション​の​操作​用​音声​を​発​せ​られる​よう​にし​て​おく。​それらの​バリエーション​に対し、​どこ​まで​なら​正しく​認識​し​て​指示​どおり​に​機能​が​働く​の​か​という​観点​から​ロ​バスト​性​の​評価​を​行う​という​こと​で​ある。

 

また、​第​3​段階​では​GPS​シミュレータ​も​追加​した。​これ​は、​国内​各地​の​座標​に​対応​する​GPS​の​電波​信号​を​模擬​的​に​生成​する​という​もの​で​ある。​これを利用すれば、​現地​に​赴く​こと​なく、​任意​の​場所​で​の​評価​を​模擬​する​こと​が​できる。​この​GPS​シミュレータ​から​の​電波​の​強度​など​について​も、​どこ​まで​なら​耐え​られる​の​か​という​評価​を​行う。​つまり、​これ​も​ロ​バスト​性​評価​の​1​つ​だ。​なお、​この​第​3​段階​では、​操作​用​の​ロボット​を、​複数個​所​に​同時に​触れ​られる​タイプ​の​もの​に​更新​した。

 

第​4​段階​では、​GPS​シミュレータ​を​全世界​対応​と​した。​また、​音声​合成​システム​では​スペイン​語​も​サポート​した。​さらに、​Bluetooth​信号​用​の​アナ​ラ​イザ​や、​セキュリティ​に対する​脆弱​性​を​検出​する​ため​の​ファジングツール​も​追加​した​(図​2)。​ただ、​これら​すべて​の​機能​に​対応​する​システム​は​かなり​の​設置​スペース​を​要する​もの​に​なる。​そこで​利便​性​を​考慮​し、​実際​の​試験​では、​機能​を​絞​って​小型化​した​システム​を​複数​台​利用​し​て​いる​(図​3、​図​4)。

 

このように​し​て、​複数​の​電装​品​を​協調​動作​さ​せ​た​状態​で、​ロジック​と​ロ​バスト​性​を​自動的​に​評価​する​こと​が​可能​な​世界​初​の​システム​を​構築​する​こと​が​でき​た。​上述​した​よう​に、​開発​した​システム​は、​世の中には存在しない新たな発想を基づいたものだった。​しかも、​非常​に​複雑​かつ​大規模​な​システム​で​ある。​この​よう​な​システム​を​実現​でき​た​背景​に​は​いくつか​の​要因​が​ある。

 

 

第一​に​挙​げ​られる​の​は​電子​実​研​グループ​の​存在​で​ある。​つまり、​マツダは社内に専属のテストエンジニアリングチームを擁しているということが重要なポイントだった。​将来​的​に​限界​を​迎える​で​あ​ろう​電装​品​の​評価​手法​を、​抜本​的​に​変革​する​に​は​どう​す​れ​ば​よい​の​か。​この​よう​な​大きな​課題​に​直面​した​際、​テスト​に関する​多く​の​事柄​を​外部​に​委託​する​という​スタイル​を​と​って​い​た​の​では​対応​でき​ない。​高い​専門​性​を​有​した​チーム​が​社内​に​存在​する​ため、​目​の​前​に​ある​大​図​3. 小型化​さ​れ​た​システム​の​外観​1​き​な​課題​に​真正面​から​対処​可能​な​方法​を​考案​し、​それ​を​具現​化​する​術​を​探る​こと​が​でき​た​ので​ある。​つまり​は、​課題​に​対処​する​ため​に​主導​的​な​立場​を​と​れる​組織​が​自社​内​に​存在​する​こと​が​重要​だ​っ​た​という​こと​だ。

 

もう​1​つ、​この​システム​の​構築​に​貢献​した​の​が​NI​の​製品​群​で​ある。​NI​の​強み​の​1​つ​は、​同社​の​製品​群​に​加​えて、​それら​と​の​統合​が​可能​な​他社​製品​や​パートナー​企業​など​で​構成​さ​れる​エコ​システム​を​活用​できる​点​に​ある​と​考え​て​いる。​例えば、​今回​の​システム​は、​ロボット、​画像​処理​システム、​音声​認識​システム​など、​さまざま​な​要素​を​使用​し​て​構成​さ​れ​て​いる。​それら​すべて​を​1​つ​の​企業​から​入手​する​という​の​は​難しい。​そのため、​NI​の​HIL​システム​と​併用​できる​最適​な​要素、​つまり​は​さまざま​な​企業​から​提供​さ​れ​て​いる​製品​の​中​から​最適​な​もの​を​集め​て、​LabVIEW​など​を​活用​し​て​統合​を​図る​こと​が​鍵​に​なる。​この​点​において、​NI​の​エコ​システム​が​大きな​支え​に​なる​という​こと​で​ある。​もちろん、​広​く​使​われ​て​いる​ターン​キー​型​の​ソリューション​を​使える​部分​について​は​それ​を​使​え​ば​よい。​しかし、​今回​の​システム​の​よう​に、​世の中​に​存在​しない​もの​を​一​から​構築​した​い​といった​場合​に​は​NI​の​ソリューション​が​適​し​て​いる。

 

また、​この​システム​開発​において​は、​NI​の​ハードウェア​が​備える​性能​の​高​さ​と、​プログラミングの自由度の高さがポイントになった。​ハードウェア​の​性能​として​は、​サンプリング​速度​(時間​分解能)​の​高​さ​が​重要​な​意味​を​持​って​い​た。​この​システム​の​場合、​ロジック​の​試験​に​は​ミリ​秒​オーダー​の​時間​分解能​で​対応​できる。​一方、​ノイズ​の​影響​など​は、​マイクロ秒オーダーの時間分解能でサンプリングできなければ評価が行えなかった。​そして、​マイクロ​秒​オーダー​で​サンプリング​を​実施​できる​もの​は​NI​の製品しか存在しなかった。​また、​NI​の​ソリューション​では、​製品​が​内蔵​し​て​いる​FPGA​も​ユーザー​の​手​で​プログラミング​する​こと​が​できる。​ここ​まで​の​自由​度​を​提供​し​て​いる​製品​も​ほかに​は​ない。​加​えて、​ターン​キー​型​の​ソリューション​の​場合、​自動車​の​世代​が​更新​さ​れ​た​ときには​システム​全体​の​買い替え​が​必要​に​なる​可能性​が​高い。​一方、​NI​の​ソリューション​は​拡張​性​や​柔軟性​に​優​れ​て​いる​ので、​大部分​の​ハードウェア​は​継続​し​て​使用​し​つつ、​必要​な​モジュール​だけ​を​追加/​変更​する​こと​で​対処​できる​だ​ろう。​このように、​将来​の​ニーズ​に​対応​できる​点​も​メリット​の​1​つ​だ。

 

 

今回​開発​した​システム​を​利用​する​こと​により、​数多くの電装品を協調動作させた状態でロジックとロバスト性を評価できるようになった。​これ​について​は、​そもそも​同じ​こと​が​できる​もの​が​世の中​に​存在​し​てい​なか​っ​た​ので、​非常​に​大きな​成果​が​得​ら​れ​た​ことに​なる。​しかも、​各​試験​に​必要​な​操作​と​結果​の​判定​を​自動化​でき​た​こと​で、​工数​削減​の​面​でも​大きな​メリット​が​得​ら​れ​て​いる。​ある​電装​品​の​例​では、​実車​を​使用​し​て​手作業​で​行​って​い​た​試験​と​比較​し​て、​操作​に​要する​工数​を​90%​削減​でき​た。​また、​速度​メーター​など​の​表示​を​カメラ​で​撮影​し、​その​映像​を​目視​で​確認​し​て​判定​を​行う​場合​と​比較​すると、​今回​の​システム​の​自動​判定​機能​により​工数​を​90%​削減​でき​た。

 

2019​年​時点​で​以下​の​様​な​効果​が​得​ら​れ​て​おり、​追記​する。

 

1.         サプライヤ​と​の​トラブル​シューティング​期間​の​短縮​と​試​作品​の​品質​向上​マツダ​と​サプライヤ​は​同じ​テスト​システム​を​使用​する​こと​により、​以下​の​様​な​効果​を​得て​いる。

 

  • 共通​の​評価​プラットフォーム​を​使用​し、​詳細​に​テスト​条件​を​共有​する​こと​により、​トラブル​シューティング​時間​を​短縮
  • 発生​頻度​の​低い​現象​を​再現​する​時間​の​短縮
  • より​包括​的​な​テストカバレッジ​により、​サプライヤ​が​開発​した​プロトタイプ​の​品質​向上

 

2.         アップ​グレード​に​かかる​費用​を​90%​削減

マツダ​が​次世代​自動車​の​仕様​に​合わせ​て​テスト​システム​の​構成​を​変更​する​必要​が​生​じ、​既存​の​イン​フ​ォ​テイ​メン​ト​評価​機能​に​加​えて​別​の​評価​機能​を​追加​する​必要​が​あっ​た。​その​際、​マツダ​は​いくつか​の​PXI​ボード​(例:​I/​O、​通信​I/​F​ボード)​の​追加​と​PXI​コントローラー​を​交換​する​こと​により、​既存​の​ハードウェア​を​再​利用​する​こと​で​システム​変更​を​スムーズ​かつ​低​コスト​で​実現​でき​た。​仮に、​他社​の​ターン​キー​ソリ​ュ​ー​ション​を​採用​し​てい​た​場合、​マツダ​は、​マツダ​は、​まったく​新しい​システム​を​新規​導入​する​必要​が​あっ​た​が、​NI​プラットフォーム​を​採用​した​こと​で、​新​世代​対応​の​ため​の​評価​システム​導入​は​およそ​10​分​の​1​の​トータル​コスト​で​実現​でき​た​と​見積​も​って​いる。

 

3.         市場​投入​まで​の​時間​短縮

通常、​新車​開発​の​期日​は​決まって​いる。​限​ら​れ​た​期間​の​中​で、​設計​開発​フェーズ​が​伸び​て​しまう​こと​で​評価・​検証​フェーズ​に​与​え​られる​スケジュール​の​比率​は​短​く​なる​ケース​が​よく​見​受け​られる。​テスト​エンジニア​に​は、​より​短い​期間​で​評価​環境​の​構築​と​テストカバレッジ​を​高め​てい​く​こと​が​求め​られる​が、​マツダ​は​NI​プラットフォーム​を​フル​活用​する​こと​で​この​課題​を​解決​した。

 

今後​の​展開

今回​開発​した​システム​について​は、​今後​も​段階​的​に​進化​さ​せ​てい​く​ことに​なる。​現在​は、​NI​製品​を​ベース​と​する​この​システム​によって、​すべて​の​電装​品​を​評価​できる​よう​に​する​こと​を​目指​し​て​取り組み​を​行​って​いる。​なお、​電子​実​研​グループ​が​対象​として​いる​の​は​すべて​の​電装​品​で​あり、​その​中​に​は、​パワー​トレイン​系​の​電装​品​も​含​まれ​て​いる。​ただし、​それら​に関して​は、​今回​の​システム​に​先行​し、​ターン​キー​型​の​HIL​システム​を​使​って​評価​を​行​って​い​た。​そのため、​NI​製品​を​ベース​と​する​システム​で​評価​の​対象​と​する​の​は、​パワー​トレイン​系​を​除く​すべて​の​電装​品​という​ことに​なる。​エンジン​にし​て​も、​電装​品​にし​て​も、​マツダ​は​引き続き​世界​初​の​もの​を​作り​出し​てい​く。​その​評価​に​も​世界​初​の​試験​システム​を​利用​すべ​く、​開発​に​取り​組​んで​いく。

 

補足​資料:

HIL​を​活用​した​電装​品​評価​システム​の​技術​構築​(マツダ​技​報、​No.​35.2018 pp.​61-65)

 

 

 

著者​情報:

Tomohiko Adachi
Mazda Motor Corporation
​広島​県​安芸​郡​府中町
​Japan

図​1. ​ ​第​1​段階​の​システム​の​概念​図 ​
図​2. ​ ​第​4​段階​の​システム​の​概念​図 ​
図​3. ​ ​小型化​さ​れ​た​システム​の​外観​1 ​
図​4. ​ ​小型化​さ​れ​た​システム​の​外観​2 ​