NI 5922 キャリブレーション

各計測器は、それぞれの仕様範囲内で限られた温度範囲および期間で使用されます。温度が変化したり、指定されている使用期限が切れた場合、キャリブレーションを実行する必要があります。たとえば、デジタイザの確度が± (読み取りの1% + 10 mV) と指定されており、入力を5 Vとした場合、誤差は以下になります。

5 Vの1% + 10 mV = 60 mV (温度範囲が18~28℃の場合)

この例は、確度を特定するために用いられる従来の方法です。従来の方法では、システム環境において温度を容易に制御できないことが問題でした。システムが複数の計測器で構成されている場合、通気およびその他の要素によって温度上昇などが起こります。周辺装置による自己発熱、監視されていない製造現場の環境、および汚れたファンフィルタなどが要因となります。周囲温度が18~28℃の範囲外の場合、この温度変動を補正するために必要な測定確度を正確に把握する必要があります。従来の方法では、18~28℃の範囲外温度において指定した確度で集録する唯一の方法は、実際に使用する環境下でシステムの外部キャリブレーションを行います。ただし、外部キャリブレーションには時間とコストがかかり、頻繁に実行するのが難しいため、指定する確度を得るのは困難です。外部キャリブレーションについての詳細は、ni.com/calibrationを参照してください。例では、デジタイザの周囲温度が48℃の場合、温度係数 (TC) エラーは以下に示すように仮定します。

TC = (読み取りの0.1% +1 mV) /℃ (標準値は確度の10%/℃)

追加誤差は以下のとおりです。

20℃ x TC = ± (読み取りの2% + 20 mV) または120 mV

48℃の周囲温度による誤差の合計は、指定誤差の3倍 (上記の例で180 mV、それに対し温度の影響を考慮に入れない場合は60 mV)になります。

セルフキャリブレーション

NI-SCOPEには、温度変化により生じる誤差を回避するために、何度も繰り返し実行可能なセルフキャリブレーション機能が搭載されています。NI 5922のセルフキャリブレーション機能には以下の利点があります。

  • 精度および高安定内部電圧基準との比較によるデジタイザ内のDCゲインおよびオフセットエラーが補正される。これは、すべてのレンジおよび50Ωと1 MΩの力インピーダンスパスに対して行われます。
  • 入力バイアス電流補正。
  • ADCの非線形性の補正。
  • キャリブレーション完了までの時間は約2分。

セルフキャリブレーションを行うタイミング

最適な性能を実現するには、デジタイザが新しいシステムに組み込まれた時、そして前回セルフキャリブレーションを行った時点から5℃を超える温度変化がある場合、または1週間過ぎた時点でセルフキャリブレーションを行います。結果として、動作温度範囲および2年間のキャリブレーション間隔では、DC確度、AC応答、およびトリガレベル/タイミングにおいて、製品を最高精度で動作させることができます。2年間のキャリブレーション間隔が過ぎると、外部キャリブレーションが必要となります。

NI 5922には、温度変動を監視する温度センサが搭載されています。また、前回のセルフキャリブレーションを行った時間と日付も読み取れます。温度変動が深刻でない限り、セルフキャリブレーションを1日に2回以上行うことは奨励されていません。

セルフキャリブレーション中の入力接続

NI 5922の内部回路は、セルフキャリブレーション中に自動的に入力から絶縁されます。ただし、セルフキャリブレーション中に (500 V/µsスルーレートを超える)高電圧、高周波数信号が存在すると、問題が生じることがあります。判別がつかない場合は、説明に従って入力信号を取り外してください。入力信号の最大スルーレートが500 V/µs未満である場合は、セルフキャリブレーション中に入力信号を接続したまま実行することができます。

プログラミングフロー

以下のダイアグラムは、セルフキャリブレーションでの通常のプログラミングフローを示します。

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キャリブレーションオプションの要約

以下の表には、利用できるキャリブレーションオプション、および使用時期についての要約が記載されています。

キャリブレーション影響 時期 メモ
外部キャリブレーション オンボード基準の時間ドリフトをキャリブレートする 2年毎仕様を満たす校正および検証
セルフキャリブレーション
  • オフセットおよびゲイン
  • 線形性
  • バイアス電流
1週間、または5℃を超える温度変化があった場合範囲間での一致、トリガ確度、線形性、およびバイアス電流を確認
キャリブレーションなし なし (2年のキャブリレーション間隔以内、または温度変化が±5℃以内である場合) 5℃の範囲外で高確度を必要としない場合 セルフキャリブレーションを使用しない場合、性能は保証されません