セルフキャリブレーション
- 更新日2023-07-12
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セルフキャリブレーション
各計測器は、それぞれの仕様範囲内で限られた温度範囲および時間で使用されます。温度および時間が指定した値を超えてしまい、実際に仕様に近い性能を必要とする場合、計測器を新しい温度または一定の期間に合わせて再度キャリブレーションする必要があります。NI 4070/4071/4072には、測定を行っている温度でキャリブレーションを実行可能なセルフキャリブレーション機能が搭載されています。
セルフキャリブレーションは、DC電圧および抵抗に対するすべてのレンジを再度キャリブレーションします。
セルフキャリブレーションを行うことで、NI 4070/4071/4072はどの動作温度 (従来の18~28℃範囲を大幅に超える) においても優れた確度と安定性を確保できます。
確度を表す一般的な方法は次のとおりです。
確度 = ±(読み取り値のX ppm + レンジのY ppm)
たとえば、最後のキャリブレーション(セルフまたは外部)が23℃で行われ、NI 4070/4072で10 Vレンジを使用し、18~28℃で5 V信号を適用している場合、2年間確度は次のようになります。
2年間確度 = ±(5 Vの25 ppm + 10 Vの6 ppm) = ±185 µV (不確定性)
この従来型計算式は、温度が厳しく管理されていない場合にエラーの原因になります。システムが複数の従来型計測器部品で構成されている場合、通気およびその他の要素によって温度上昇が起こる可能性があります。
周囲温度が18~28℃範囲外で、測定確度を計算したい場合、その周囲温度で計測器をキャリブレーションするか、またはキャリブレーション温度範囲外で1℃上昇するたびに温度係数確度を加算する必要があります。
ここでは、NI 4070/4072を使用し、周囲温度が38℃であると想定します。セルフキャリブレーションなしの温度係数 (tempco) は次のようになります。
Tempco = (読み取り値の1 ppm +レンジの1 ppm)/℃
38℃での2年間確度は次のようになります。
±[5 Vの25 ppm + 10 Vの6 ppm] + [(5 Vの1 ppm + 10 Vの1 ppm) x 10] = ±335 µV (不確定性)
システムを外部で再キャリブレーションするには困難が伴い経済的にも負担が多いため、一般的にあまり実行されません。
NI 4070/4071/4072には、DCVおよび抵抗用の独自セルフキャリブレーション機能が組み込まれています。この機能は、次の点でNI 4070/4071/4072固有のものです。
- セルフキャリブレーションは、優れた温度係数および時間ドリフト値を持つ精度、安定性の高い内部電圧基準を使用してDMM内のすべてのDCVゲインおよびオフセット誤差を修正します。
- また、すべての抵抗、ソースおよびゲインエラーも修正します。
- すべての抵抗誤差は1つの内部10 kΩ航空宇宙レベルの高安定性金属箔抵抗(全動作レンジにおいて0.8 ppm/℃内で安定)に合わせて修正されます。
38℃でセルフキャリブレーションを実行した後、温度変化に応じて不確定性を加算する必要はありません。
38℃でのセルフキャリブレーション後、2年間確度は次のようになります。
±(5 Vの25 ppm + 10 Vの6 ppm) = ±185 µV (不確定性)
キャリブレーションオプション | アプリケーション | 時期 |
---|---|---|
工場出荷時のキャリブレーション |
| 2年に1回 |
セルフキャリブレーション |
| 90日に1度、または最後のセルフキャリブレーションから5度以上温度が変動した場合。 |
ADCキャリブレーション |
| 選択された場合、毎回読み取り時。 |
なし |
| 拡張高速集録時。 |
NI 4070/4071/4072には、最後に行ったキャリブレーションからの温度変化を読み取る温度センサが組み込まれています。前回のセルフキャリブレーションを行った時間と日付を読み取ることもできます。確度を最大限に高めるには、24時間に1度、またはNI 4081およびNI 4071では±1℃を超える温度変化があった場合、NI 4070/4072では±5℃を超える温度変化があった場合にセルフキャリブレーションを実行することを推奨します。それ以外の場合は、90日ごとにセルフキャリブレーションを実行することを推奨します。
セルフキャリブレーション中は、内部回路は自動的に入力から切断されます。そのため、大部分のアプリケーションではセルフキャリブレーション中に手動で入力信号を切断する必要がありません。しかし、NI 4070/4071/4072の入力端子における過度の信号レベル (30 VDCを超す値、30 VACrmsを超す値、20 kHzを超す値) では、セルフキャリブレーションエラーが発生します。このエラーは、セルフキャリブレーション中、入力信号を切断することで発生しなくなります。スイッチシステムの一部としてNI 4070/4071/4072を使用している場合、NI 4070/4071/4072入力端子への接続をオープンに (切断) したり、接続されていないパスに切り替えたり、低電圧、低周波数のパスに切り替えたりすることができます。最適な信頼性を実現するには、セルフキャリブレーション中に電流をAmps端子に印加したり、30 Vを超える信号を電圧入力端子に印加しないようにします。