概要
「機能的プロトタイプ」シリーズでは、機能プロトタイプの作成(機能プロトタイピング)について工程ごとに解説していきます。プロトタイピングのキーコンセプトやメリット、プロトタイピング用ツールの選び方を説明するほか、参考になる技術資料の情報も紹介します。
目次
バーチャル試作とは?
バーチャル試作とは、制御系の設計に機械系のモデリングとシミュレーションを組み合わせる革新的な手法で、組込制御システムや組込機器の設計とプロトタイピングの効率を高められます(図1)。開発対象とするシステムのソフトウェア設計と制御アルゴリズムを3次元(3D)CADで作成した機械モデルに接続し、コンピュータ上で仮想的にテストできます。このため実機の試作品(物理プロトタイプ)を製作する前の段階であっても、機械系の動作を評価することが可能です。

図1 バーチャル試作の手法
3D機械モデル(3D Mechanical Model)と制御設計ソフトウェア(Control Design Software)を連携させることで、開発するシステムの機械系の動作をコンピュータ上で仮想的に評価します。このようなバーチャル試作を先に実施してから、その後で物理プロトタイプ(Physical Prototype)を製作すれば、開発を効率的に進めることが可能です。
バーチャル試作の必要性
バーチャル試作を実施すると、顧客の要求をより良く理解できるようになり、設計プロセスをより短期間で進められる上、デバッグを効率化することも可能です。これらの結果、機械設計に関連したリスクを低減することができます。バーチャル試作機が利用できなかった時代は、物理プロトタイプを製作しなければ、開発品の動作について顧客から具体的な意見をもらうことはできませんでした。バーチャル試作は、開発する装置の機械的な動作をコンピュータ上で仮想的に示すことが可能です。これを顧客に見せれば、実機の試作品を製作する場合に比べてより早い段階でより簡単に、精度の高い意見を吸い上げることができます。設計への顧客の関与を深められるので、プロトタイピングの工程において「顧客の意見を反映するにはもう手遅れだ」という事態を防ぐことが可能です。
さらに、バーチャル試作機を作成すれば、製品の市場投入に要する期間(TTM:Time to Market)を短縮することも可能です。仮想設計上でコンセプト化や試行錯誤を繰り返すことができるので、物理プロトタイプは一発で適切なものを製作できます。制御ソフトウェアを3D CADモデルに接続できるため、通常であれば物理プロトタイプを製作するまで発見できないような問題を容易に見つけ出し、あらかじめ解決しておくことが可能です。2D/3Dモーション(動き)プロファイルなど、機械モデルのモーションを制御するコードを記述して、その結果を3Dモデル上で見ることができます。このため、例えばある部品が大き過ぎてぶつかる危険性がある場合や、軌道動作と直線動作の差異を確認したい場合は、バーチャル試作機上でそれらの問題を解決したり、差異を検証したりできます。このようにバーチャル試作を駆使すると、従来型の手法に比べて設計上の大きな判断を早い段階で下すことが可能になります。

図2 バーチャル試作機を活用するFastek International社のKent Wedeking氏
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「今ではシステム全体を私自身で確認できます。開発の工程をシーケンシャルに(順序に沿って)進めるのではなく、コンカレントに(同時並行的に)進めることが可能です。デスクトップPC上で機械系を開発しながら、その動きを制御するコードもすべて開発できるのです。プロトタイプがデスクトップPC上で展開されているこの段階では、変更を加えるのはとても簡単です。プロジェクトのスケジュールも容易に半分まで縮められるでしょう」
Fastek International社でLabVIEW/メカニカルエンジニアを務めるKent Wedeking氏
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バーチャル試作の利点はこれだけではありません。開発完了までに製作しなければならない物理プロトタイプの数を減らすことで、期間と費用を節約することも可能です。機器の開発では機械系の変更がたびたび発生するので、かつては物理プロトタイプを数回にわたって製作する必要がありました。CADとシミュレーションソフトウェアが登場し、設計プロセスの全体を通して可視性が大幅に改善されたことで、こうした手法は過去のものになっています。現在では、かつては物理プロトタイプを製作しなければならなかった設計をソフトウェア上で形にして、テストしたり検証したりすることが可能です。開発対象とする製品の実環境における機械系の性能をデジタル的にシミュレーションして検証すれば、物理プロトタイプの製作回数を大幅に削減でき、期間と費用を節約できます。
バーチャル試作の利点として最後にもう1つ、開発する機器の品質と効率を高められることを挙げます。かつては、限られた情報に基づいてモータを選定しなければならなかった上に、安全面のマージンを確保するために機械系の設計が過剰になる可能性もありました。バーチャル試作を活用すれば、モータや制御アルゴリズム、物理構造といった要素からなるシステム全体の動的な振る舞いを早期にシミュレーションして、効率的かつ効果的な設計を実現するために必要な情報をすべて収集することができます。
NIが提供するバーチャル試作用製品のメリット
ナショナルインスツルメンツ(NI)は、グラフィカルプログラミング環境のNI LabVIEWを提供しているほか、そのアドオンツールとしてモーション制御ツールも用意しています。LabVIEWに3D CADソフトウェアのSolidWorksを組み合わせて使えば、機械系のバーチャル試作機を短期間で作成することができます。さらにNIは、高度な機械系のシミュレーションとモデリングに向けた先進的なソリューションをいくつも提供しています。以下では、それらをいくつか紹介していきます。
NI LabVIEWとSolidWorksによるバーチャル試作
LabVIEWを使えば、SolidWorksのメカニカルモデルに直接接続して、開発対象のシステムのバーチャル試作機を作成することが可能です。SolidWorksのモーション解析機能をLabVIEW 2009のNI SoftMotionモジュールと組み合わせ、同モジュールのモーション制御プログラミング関数を使ってSolidWorks内のシミュレーションを動かすことで、モーション制御システムのリアルなシミュレーションを実現することが可能です(図3)。LabVIEW用NI SoftMotionモジュールを利用すれば、高精度運動や協調運動に向けたモーション制御コードを構築して、その制御コードを直接SolidWorksの3Dメカニカルモデルに接続できます。

図3 LabVIEW用NI SoftMotionモジュールとSolidWorksの統合
LabVIEW 2009では、SolidWorksの3D CADモデルをLabVIEWのプロジェクトに追加できます。これにより、3D CADモデル内で定義したモータやセンサがプロジェクトに組込まれるので、ユーザはLabVIEWとNI SoftMotionのグラフィカル制御コードにこれらのモデルを簡単に接続することが可能です。
バーチャル試作から物理プロトタイプへの移行
LabVIEW用NI SoftMotionとSolidWorksの3D CADモデルを使って開発・検証したモーション制御アプリケーションは、リアルタイムプロセッサとFPGAを内蔵したNI CompactRIOハードウェアなどの組込モーションプラットフォームへ簡単に実装することができます(図4)。CompactRIOとNIのモーション駆動インタフェースを利用すれば、モーションモジュールに数百個ものステッピング/サーボ各モータやそれらのドライブを直接接続できるため、開発したアルゴリズムを物理プロトタイプや最終製品に簡単に適用することが可能です。このためシミュレーション上で開発・検証したコードを再利用して、そのソフトウェアコードをNI製ハードウェアを使って物理I/Oやモータに接続できます。

図4 バーチャル試作から物理プロトタイプに移行する
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「SoftMotionとSolidWorksを組み合わせるという、NIが確立した環境によって、モーション制御の開発は本当にシンプルになりました。思い立ったら今すぐにでもCAD内でマシンコードのプロトタイプを作成できます。そうして作成したプロトタイプは、直ちにCompactRIOに移して実際に走らせることが可能です」
Fastek International社でLabVIEW/メカニカルエンジニアを務めるKent Wedeking氏
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NIの先進的シミュレーションツール群
LabVIEWとSolidWorksのツール群を使えば、上記のようにバーチャル試作機を構築できますが、それだけではりません。LabVIEWは、あらゆるメカニカルシステムのシミュレーションに利用できます。アドオンモジュールのNI LabVIEW制御系設計/シミュレーションモジュール(NI LabVIEW Control Design and Simulation Module)を組み合わせれば、開ループモデルの挙動を解析したり、閉ループコントローラを設計したり、オンライン/オフラインのシステムをシミュレーションしたり、実機への実装を行うことが可能です(図5)。

図5 NI LabVIEWの制御系設計/シミュレーションモジュール
伝達関数や状態空間、またはゼロ点/極/ゲイン(Zero/Pole/Gain)の形式で表現し、モデルを作成できます。さらに、作成したモデルの開ループと閉ループの振る舞いを、時間応答やボード線図などの時間・周波数解析ツールを使って対話的に解析することが可能です。内蔵ツールは多入力多出力(MIMO:Multiple Input, Multiple Output)システムと単入力単出力(SISO:Single Input Single Output)システムの両方に利用できます。シミュレーション機能を生かせば、線形システムと非線形システムいずれのダイナミクスも検証可能です。このほか内蔵ツールを使えば、The MathWorks, IncのSimulink®ソフトウェアで開発したモデルをLabVIEW環境で動作するように変換することもできます。
次のステップへ
バーチャル試作は、設計プロセスを通して可視性を高められる有用なツールとして機能します。このツールを活用すれば、開発対象のシステムを構成するコンポーネントがさまざまな条件においてどのように振る舞い、どのような相互作用が生じるかについて理解を深めることができ、期間と費用を節約することが可能です。
バーチャル試作について技術的にさらに詳しくは、下記の関連資料をご覧ください。プロトタイピングの次の工程について引き続きご覧になるには、「機能的プロトタイプ」シリーズの一覧ページに戻ってください。
関連資料
Simulink®はThe MathWorks, Inc.の登録商標です。
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